コラム・インタビュー

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達人からのメッセージ Vol.1

ソムリエ 田崎真也さん

【後編】田崎流サービスの極意と人生の愉しみ方

前回、世界一のソムリエになるには、負けず嫌いで凝り性の性格だけでなく、努力と目標設定が大切だったと語った田崎さん。後編ではサービスのプロとしての仕事へのこだわり、そして「人生を愉しむ」とっておきの秘訣について伺いました。

田崎さんにとって、サービスの仕事というのは一体どういうものなのでしょうか。

私がよく思うのは、丁寧に作業することがサービスだと勘違いしている人が多いということです。たとえばワインをデキャンタに移すデキャンタージュは、サービスでも何でもなく作業なんです。たとえ小学生でも3日間手取り足取り集中的にトレーニングすれば完璧にこなすことができる。料理でも同じで、魚をきれいにおろせるとか肉をうまく焼けるということは作業であってサービスではない。食べる人の好みや健康状態、気分をいかに判断して考えることができるか、それがサービスです。

また、プロのソムリエになるためにはワインが好きすぎてもいけません。ワインに関して膨大な知識があったとしても、お客様においしいと思ってもらえるかどうかは別のこと。あまりにワインのことが好きすぎてマニアックに入り込みすぎてしまっては、ソムリエ本来の在り方すら見失ってしまう危険性があるのです。ワインを飲んでもらったお客様がいかにいい時間を過ごすことができるか、それを即座に見抜いてサービスすることが、ソムリエの仕事として一番大切です。

それでは、田崎さんが思う一流のサービスとは何なのでしょう?

私の考えるサービスは、提供する方のことをどれだけリサーチできるか、そして瞬間の判断力に長けているかということはもちろん、自分の立ち位置をきちんと理解していることが大切だと思います。サービスはお金をいただいて何かを提供する有償のものです。よく「おもてなし」という言葉と混同されがちですが、本来これは無償の提供物。私たちソムリエの仕事は、主人に仕える執事の役割です。執事はご主人がもてなすお客様の好みをリサーチして、調理長とメニューを相談し、その日のワインを決めて報告する。その準備を重ねてサービスを提供し、その宴が終了したときに主人から報酬をいただく。その関係が重要なんです。「もてなしている」と思った瞬間に気づかいがおせっかいになり、おごりが生じてしまいます。その線引きを常に意識して、あくまでも主人のアシスタントであるということを忘れない。似ていることですが、その線引きが大切なんです。

さらに、プロであるという意識を持ちお金を稼ぎ続けることも大切です。私はワインを飲みたくてソムリエをしているわけではありません。ソムリエはワインを売ってお金を稼ぐためのツールでしかないんです。雇われている立場であれば、自分がいることできちんと数字的に会社に貢献している、そのことを表現し続けることが、職業人として大切だと思います。

世界一のソムリエになることは、サービスのプロになるためにも必要な過程だったのでしょうか?

コンクールは競技として興味を持っただけで、ソムリエの仕事には全く関係ありません。たまたまソムリエという職業をしていたおかげで競技に出会っただけで、世界一になったからといって仕事に対するスタンスは変わらないんです。あくまでも16歳のときにナポリタンを作って「ありがとう、ごちそうさま」と言われて感じたことを、ずっと実践しているだけ。基本的には目の前のお客様と自分との関係ですから。

ただし私がお客様のことをリサーチする前に、お客様が私のことをリサーチして「この人に任せれば大丈夫」という前提で来ていただけるのは有利だと思います。サービスを提供する側にとっては、お客様にいかに信頼されるかが大切ですから。しかし、初めて会うお客様に一方的にイメージを持たれているということは、一歩間違えば、実際の私に会って「イメージと違う」と思われてしまうことにもつながりかねません。常にこちらはお客様のイメージ以上のサービスを提供しなければ信頼を失ってしまう。そのことを意識し続けることは、ある意味大変でしたね(笑)。

それでは、ワインを楽しむ者として伺います。飲むシチュエーションや食事、体調によっても選ぶものが違うということですが、初心者でもわかる、ワイン選びのコツについて教えてください。

例えば魚や野菜を選ぶとき、図鑑などで勉強して買いに行く人はあまりいませんよね。どうやって普段選んでいるかというと、お値段が安いとか、親切な店員さんがいるとか、きれいに陳列されているとか、お店選びから始まっているはずなんです。ワインの場合はもっと種類が多く勉強するのは大変なので、まずはバリエーションが豊富で選びやすい、買いやすいお店を探すことです。自分の好みのタイプのワインをきちんと選んでくれる人がいるお店や、パッとみて管理が行き届いている、商品の回転がよさそうなお店などを選んでみましょう。

あとはいろんな種類のワインを飲んでみることですね。カベルネ・ソーヴィニオンやピノ・ノワール、メルロなどぶどうの品種を覚えることは本当はどうでもいいこと。よくラベルを携帯の写メールで撮影して覚えようとする方がいますが、同じものを探すのは至難の業ですし、毎回同じものしか飲まなくなってしまいます。好みは毎日変わるものですから、ひとつに固執せず、バリエーションを増やしたほうがおいしいワインに出会えると思います。いろんなものを飲んでみて、もっと自分で勉強してみたいと思ったときには、ぜひ私のスクールに通ってみてください(笑)。

ソムリエとしてだけでなく、レストランやワインスクールの経営者として多忙な毎日を送る田崎さん。ご自身の「人生の愉しみ」は何ですか。

仕事が終わってレモンサワーに口をつけた瞬間ですね(笑)。ビールでもシャンパンでもいいのですが、ハードな仕事が終わってプライベートを楽しむために集まった仲間と過ごす最初の瞬間や、気のおけない仲間と釣りをしているときが本当に心地いい。人生はオフを楽しく過ごすためにあると思っていますから。その時間があるからこそ仕事に戻れると思うんです。

仕事を引退した後のセカンドライフについても40歳くらいから考えていて、退職後にどこでどう過ごすか、自分なりのプランを立てることがすごく楽しいんです。以前はバハマや石垣島で過ごすことを考えていたこともありましたが、今は短い時間でオンとオフの切り替えができるようになったので、熱海もいいなと思っていて(笑)。人それぞれ理想のセカンドライフは違うと思いますが、まずは今を楽しみながら、退職後の資産や過ごす場所などの具体的なプランを立てて、とことん努力することが大切だと思います。そのほうが、オフになったときの感動も大きくなりますから。

【前編】「田崎真也が世界の頂点に輝けた理由」へ

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