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- 高橋 進の経済コラム【第11回】

(2012年1月31日)【第11回】世界経済の行方−依然として欧州債務危機が最大のリスク−
新年入り後も、欧州債務危機が世界経済にとって大きなリスク要因になっています。欧州中央銀行(ECB)の資金供給によって、金融市場の動揺は少し収まっていますが、いまだにギリシャを始めPIGSやイタリアの国債市場は緊張状態が続いており、債務危機の抜本解決には程遠い状況です。欧州債務危機の帰趨によっては、世界経済がリーマン・ショックのような同時不況に陥る危険も否定できません。
改めて欧州債務危機の現状をみると、ギリシャばかりでなくイタリアの債務問題が深刻化し、スペインなど他の南欧諸国の債務問題もくすぶっています。当面のポイントは、ギリシャやイタリアの政府債務の返済が滞らないか、言い替えると債務不履行(デフォルト)にならないかです。ギリシャは債務残高が大き過ぎて返済が過大になっているため、民間債権者との間で債務削減交渉を行っていますが、その成否は予断を許さない状況です。もし、ギリシャのデフォルトが回避できないときは、その影響が他の南欧諸国にドミノ倒しのように広がるのをくい止めることができるかどうかがカギとなります。イタリアについては今年春までに多額の国債償還が予定されており、この資金繰りが付けられるかどうかがポイントです。もし、ユーロ圏3番目の大国であるイタリアがデフォルトに陥るようなことになれば、ユーロ圏の統合全体が崩壊の危機に瀕する恐れが強く、イタリアでは財政再建のための緊縮策が打ち出され、ユーロ首脳の間でも支援策の検討が続けられています。
もっとも、両国が当面の債務危機を乗り切ったとしても、債務危機の克服にはまだまだ時間がかかるとみられます。各国で財政緊縮→景気悪化→財政悪化の悪循環が続いており、この悪循環から抜け出せなければ、債務問題は解決に向かいません。また、ユーロ圏の通貨・金融統合が今日の債務危機の根源にあるといわれ、債務問題の抜本的解決のためには、各国が歳出抑制を通じて財政赤字を削減するだけでなく、ユーロ圏の統合を金融だけでなく財政統合にまで進めていく必要があります。しかし、これは少なくとも数年〜10年を要する長い道のりでしょう。
こうした、ユーロ圏の債務危機は、実体経済に大きな影響を与えています。債務問題の深刻化が民間企業や家計のマインドに大きな影響を与えているばかりでなく、財政緊縮と景気悪化の悪循環が発生しています。また、ユーロ域内の金融機関は保有する国債の価格下落によって多額の引き当てを余儀なくされており、貸出余力が低下していることも、企業や家計の活動に大きな影響を与えています。こうしたことから、ユーロ圏は今年、マイナス成長に陥る公算が高いとみられます。
そして、欧州の債務危機と景気悪化は様々な形で世界経済に影響を及ぼしています。中国など新興国からの対欧輸出の減少は、新興国の成長鈍化につながっています。また、ユーロ危機は世界的な株価の下落などを通じて、経済にマイナスの影響を与えています。さらに、ユーロ圏の金融機関の経営悪化は、世界的な信用収縮につながり、新興国からの資金流出を招く恐れもあります。
これまでのところ、今年は欧州の景気悪化は不可避なものの、アメリカや日本の景気は前年に比べ若干改善すると見込まれています。新興国についても、スローダウンは免れないものの、各国で国内需要が拡大していることもあって、景気の失速などは避けられそうです。ただし、欧州債務危機がさらに深刻化して、ユーロ地域が大幅なマイナス成長に陥り、それが世界経済に波及するという、リーマン・ショック・パートⅡを回避できるかどうか、まだまだ油断を許しません。
高橋 進 プロフィール
1976年、一橋大学経済学部卒業後、株式会社住友銀行に入行。調査部にてロンドン駐在等を経て、株式会社日本総合研究所へ出向。1996年、調査部長/チーフエコノミスト、2004年理事に就任。2005年から2年間は、内閣府政策統括官(経済財務分析担当)を務め、政策立案等も担当。2007年に副理事長として日本総合研究所へ復帰。2011年6月、理事長に就任し、現在に至る。テレビの報道番組への出演、新聞に定期執筆など多数。

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