アナリストの忙中閑話【第78回】

アナリストの忙中閑話

(2017年11月21日)

【第78回】金融危機から20年、スター・ウォーズ新作2年ぶり公開、ラニーニャで寒い冬に?

金融経済調査部 金融財政アナリスト 末澤 豪謙

今から20年前の1997年11月、金融界は不穏な空気に包まれていた

今から20年前の1997年11月、金融界は不穏な空気に包まれていた。バブル崩壊により、戦後の日本経済の復興や成長を支えていた「土地神話」は過去のものになりつつあったが、「銀行不倒神話」までが崩れつつあったからだ。

金融危機の発端は三洋証券の破綻

発端は11月3日(文化の日の祝日)の三洋証券の会社更生法の申請にあった。証券会社の破綻自体は、戦後も例が無いわけではなかったが、三洋証券の破綻が金融危機の引き金となったのは、同社が11月4日期日の翌日物の無担保コール資金10億円をデフォルトしたからだ。その結果、金融機関間でも、無担保取引の市場が一挙に急縮小することとなり、11月15日の北海道拓殖銀行の破綻(北洋銀行への営業譲渡申請決定)、11月24日の山一證券の破綻(自主廃業申請決定)に繋がることとなった。

バブル崩壊後、1995年には第2地方銀行の兵庫銀行が戦後初めて、銀行として経営破綻していたが、大手銀行である都市銀行の北海道拓殖銀行(略称は「拓銀」ないし「北拓」)と、証券4社の一角である山一證券の破綻は、アナウンスメント効果が大きく、それ自体が金融株など株価の下落要因となり、一段と金融システム不安を助長することとなった。

拓銀の経営破綻を受けて、1998年3月には大手銀行に公的資金1兆8千億円が投入されるが、金融システム不安は沈静化しなかった。海外では、1997年9月のアジア危機が1998年にはロシア危機、また、米大手ヘッジファンド(LTCM)の破綻に繋がり、株価が世界的に下落、株式を大量に保有していた大手銀行の信用不安が一段と強まることとなった。

当時は、いわゆる「ジャパンプレミアム」(日本の金融機関が海外などで調達する金利の上乗せ幅)も0.7%程度(3か月物)の金利の上乗せ幅で発生していた。また、筆者の記憶では、1998年夏頃は大手銀行でも資金調達に窮することとなり、親密生命保険会社等に株式を担保として差し入れ、当面の必要資金を融通してもらうような状況に陥っていた。

結果、1998年10月には日本長期信用銀行が、同年12月には日本債券信用銀行が経営破綻し、同年成立した金融再生法により、特別公的管理下におかれ、一時国有化された。

1999年3月には、大手銀行等に第2次の公的資金7兆5千億円が投入され、ようやく、株価の下落は止まり、金融システム不安も徐々に沈静化することとなった。

金融危機は我が国の資金循環を大きく変化させた

但し、1997年から1998年の金融危機は我が国の資金循環を大きく変化させることになり、これは現在でも継続している。

1998年夏にかけては、長期金利は大きく低下するが背景には、いわゆる「質への逃避」があった。但し、その動きを一段と強めたのが銀行の行動だった。

銀行は、一段と国債志向を強めた。当時は、銀行株価が急落するとともに、ジャパンプレミアムが発生した結果、銀行は国内外問わず資金繰りに逼迫する事態に陥っていた。そうした中、「最後の貸し手」である日本銀行は、国債等担保の「日銀貸し出し」を再開、これによって、銀行は、担保ニーズとしても国債が必要になった。また、日銀は銀行向けの国債レポオペや現先オペも積極的に実施したが、銀行は国債を保有していないと資金調達ができない状況にあった。銀行は、当時、バーゼル規制上の所要自己資本比率を維持するため、事業法人等への貸し出しを絞り込む一方(いわゆる「貸し渋り」「貸し剥し」)、リスクウェート0の国債に資金をシフトさせることとなった。また、この年には「国債価格変動引当金」が撤廃(1998年3月)されたことから、銀行は、期末残を気にせずに、国債投資を手掛けられることとなった面も大きい。

こういったいくつかの要因が重なった結果、1998年10月2日には、10年物の国債の利回りが、一時、0.775%まで急低下することとなった。

但し、11月下旬には国債市場の環境は一変した。いわゆる「(第2次)資金運用部ショック」の発生である。実は金融危機対応の1998年度第2次補正予算策定までの原資調達は、当時、ほとんど公的部門(資金運用部と郵便貯金金融自由化対策資金)が担っていた関係で、秋になり、総額24兆円規模の「緊急経済対策」策定の動きが報道される中でも、11月中下旬までは、国債の増発は市場の関心事となっていなかった。

ちなみに、なぜ、公的部門が補正予算の原資を担えたかと言うと、これは、前述の金融システム不安とリンクする。当時は、拓銀などの破綻が相次いだことで、大手銀行を含む民間金融機関から大量の資金が郵便貯金に移動していた。また、「財投改革」前のため、郵貯に集まった資金は基本的に資金運用部に長期預託され、資金運用部は郵貯に集まった資金で1998年度の第1次、第2次補正予算の原資となる10年国債を引受けることが可能となった。結果、1998年の第1次、第2次の補正予算分の国債は市中に出回ることはなかった(2次補正は金融システム対策のため実際の国債増発はなされていない)。

しかし、第3次まで補正が続くと、事情が違ってきた。10月に金融再生法、早期健全化法等いわゆる「金融関連9法」が成立すると、金融不安が幾分収まり、郵便貯金への資金流入も止まった。資金運用部の余裕資金が減少、第3次補正予算の原資の大半は民間から調達された。背景には、「高金利定額貯金の集中満期」や「財投改革」を控え、これ以上資金運用部の資金を固定できないといった事情もあったが、市場参加者が資金運用部の資金繰り逼迫を懸念し始めたのが、11月下旬から12月。そこから、金利が一挙に上昇し始め、12月下旬には、運用部の国債買い切りオペ中止の決定も加わったことから、国債金利は、1999年2月には、10年物で2.5%水準までの急騰を演ずることとなった。10年物の長期国債の発行額は、当時、1兆4千億円であったが、1999年1月には1兆8千億円と一挙に4千億円もの増発がなされている(3月債からは、1兆4千億円に減額)。

この間、本邦企業は銀行等への借金返済に追われるとともに、設備投資等を抑制、内部留保を充実させることが「常識」となった。金融危機以前は本邦企業の自己資本比率は欧米企業に見劣りすると言われていたが、金融危機後は一変、近年では内部留保を設備投資や賃金の引き上げ等に振り向けさせることが政策課題となり、先の衆院総選挙では、「内部留保課税」の導入(検討)を公約に掲げる政党まで出現した。

日本経済がデフレ経済に突入したのも1998年

こうした結果、1998年度以降、我が国の資金循環は大きく変化、非金融法人企業が資金不足セクターから資金余剰セクターに転換、非金融法人企業に代わって、一般政府が大幅な資金不足セクターとなり、今日に至っている。

実は、日本経済がデフレ経済に突入したのも1998年からだ。背景には、金融危機後の金融機関のみならず、企業や家計部門も含めた「縮み志向」があったと考えられる。筆者がかねて指摘している「団塊ジュニア世代」の「ジュニア世代」が発現しなかったのも、バブル崩壊及び金融危機後の就職難やその後の雇用不安等が影響したとみられ、金融危機は我が国の人口動態にも大きな禍根を残したと考えられる。

銀行等預金取扱金融機関の仲介機能は大きく低下したまま?

前週発表のGDP統計で、2017年7-9月期GDPデフレーターが前年同期比0.1%のプラスとなった。国内需要デフレーターはプラス0.5%と2015年1-3月期(プラス1.5%)以来の高水準となった。市場の一部には、これで政府がデフレ脱却宣言を出すとの見方も浮上しているようだが、20年前と比較すると、人口動態等社会構造が大きく変化している面もある。

また、資金循環をみると、銀行等預金取扱金融機関の仲介機能は大きく低下したままとも言える。これは、「貸し渋り」といった問題ではなく、企業の資金調達構造が変化し、金融機関の存在意義が問われている面もあろう。金融機関の2017年9月期決算が出そろったが、大手・中小問わず、本業の業務純益は前年比で不芳なところが大半だった。

背景には日銀によるマイナス金利政策やYCC(長短金利操作付き量的・質的金融緩和)政策の影響もあるが、金融危機後、最大の資金不足セクターと化した一般政府の資金調達ニーズ、国債増発需要に本業をシフトしすぎた影響も大きいと言えそうだ。

20年後は地域銀行等を含め一段と再編・統合が進捗している可能性

金融危機から20年が経過、不良債権処理も進み、自己資本も充実したものの、本業が冴えないという状況は深刻だろう。

筆者が銀行に入行した1984年当時、大手銀行は都市銀行13行、長期信用銀行3行、信託銀行7行の計23行が資本関係等も独立して存在していたが、金融危機を経て、現在は5グループに集約された。但し、このまま、少子高齢化が進展、人口が減少する一方、都市部に人口が集中することとなると、20年後は地域銀行等を含め一段と再編・統合が進捗している可能性が高そうだ。

せわしない師走、欧米ではクリスマス休暇向けに大作映画が公開

来週の金曜日は12月1日。「師走(しわす)」だ。師走は極月(ごくげつ)同様、陰暦の12月の異称だが、語源は定かではない。但し、字体をみても「せわしない」雰囲気が醸し出されてくる。実際、12月は忘年会も多いし、クリスマス、年末、正月と行事が続き、官公庁では翌年度の予算編成が佳境に入る。テレビも特番が増え、いやがうえにも、多忙な雰囲気となってくる。

一方、欧米では長いクリスマス休暇を取る習慣があることから、映画の大作の公開が集中する時期でもある。もっとも我が国では12月というよりは、年末から正月休み向けか。

『スター・ウォーズ』シリーズ新作が2年ぶりに公開

今年は、1977年初公開の『スター・ウォーズ』シリーズ第8作目、『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』が12月15日に公開される。米国公開も12月15日。全米興行収入ランキング歴代1位、日本でも興行収入116億円の大ヒットを記録した 『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』(2015年12月公開)の続編で「エピソード8」。なお、『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』は全世界興収ランキングでも『アバター』『タイタニック』に次いで歴代3位となっている(Box Office Mojo調べ)。

『スター・ウォーズ』シリーズは前作から中国での興行が本格化している。本作が全世界興収ランキングでトップに迫ることが出来るか注目だ。配給はディズニー。

監督及び脚本はライアン・ジョンソン氏。前作で製作・監督・脚本を担当したJ・J・エイブラムス氏は製作総指揮に回った。なお、2019年12月公開予定の『スター・ウォーズ エピソード9(仮題)』ではエイブラムス氏が再度、メガホンをとる予定。

本作では、伝説のジェダイの騎士ルーク・スカイウォーカーを前作で探し当てた主人公レイの新たな物語が描かれる。なお、2016年12月に死去したレイア姫役のキャリー・フィッシャーさんにとっては本作が遺作となる。

なお、ルーカスフィルムは11月9日、『スター・ウォーズ』シリーズの新たな3部作の製作を発表。ジョンソン氏が脚本と監督を兼ね、これまでに描かれたことのない銀河の片隅を舞台に、新しいキャラクターたちを登場させるとのこと。

アガサ・クリスティ原作のミステリー映画も43年ぶりに映画化

オリエント急行殺人事件
公開日:2017年12月8日
(C)© 2017Twentieth Century Fox Film Corporation

12月8日公開の『オリエント急行殺人事件』は、アガサ・クリスティ原作で名探偵エルキュール・ポアロを主人公とした推理小説の映画化作品。

トルコ発フランス行きの寝台列車オリエント急行で、大富豪ラチェットが刺殺された。車両には、教授、執事、伯爵、伯爵夫人、秘書、家庭教師、宣教師、未亡人、セールスマン、メイド、医者、公爵夫人、車掌の13名が乗り合わせた。そして、もう一人が「世界的名探偵」で「正しき物の守護者」エルキュール・ポアロ。

本作は20世紀フォックス製作だが、1974年にも『オリエント急行殺人事件』のタイトルでMGMにより映画化されている。当時はポワロ役はアルバート・フィニーさん、ギャングで大富豪のラチェット役はリチャード・ウィドマークさんだったが、本作では前者はケネス・ブラナーさん、後者はジョニー・デップさんが演じている。なお、ケネス・ブラナーさんは主演の他、監督及び製作も担当。

大ヒットコミックの実写映画とススキノ探偵シリーズ第3弾が12月1日公開

邦画では、12月1日公開には、『鋼の錬金術師』が公開される。今年は、コミックの実写映画が多数公開されたが、本作も2001〜10年に「月刊少年ガンガン」で連載され、テレビアニメ版も大ヒットを記録した荒川弘氏の人気コミック「鋼の錬金術師」を実写映画化。『ピンポン』の曽利文彦監督。

主人公のエドワード役には山田涼介さん、共演に本田翼さんやディーン・フジオカさんらが参集。

探偵はBARにいる3
公開日:2017年12月1日
(C)2017「探偵はBARにいる3」製作委員会

同じく12月1日公開の『探偵はBARにいる3』は東直己氏の「ススキノ探偵シリーズ」を映画化したシリーズ第3弾。探偵役の大泉洋さん、相棒役の松田龍平さんに、北川景子さん、前田敦子さんらも共演。本作は『疾風ロンド』の吉田照幸監督がメガホンをとった。大泉洋さんと言えば、北海道江別市出身。私事ながら私の妻も江別出身であり親近感を感じる俳優だ。「ススキノ探偵」がはまり役となったが、昨年はNHKの大河ドラマに出演するなど、プレゼンスも上昇、一段の活躍に期待したい。

日本版ファンタジー映画も公開

DESTINY 鎌倉ものがたり
公開日:2017年12月9日
(C)2017「DESTINY鎌倉ものがたり」製作委員会

『DESTINY 鎌倉ものがたり』は12月9日公開。西岸良平原作のベストセラーコミック「鎌倉ものがたり」を『ALWAYS 三丁目の夕日』の山崎貴監督が実写映画化。堺雅人さんと高畑充希さんが年の差夫婦役で初共演。他に堤真一さんや安藤サクラさん、田中泯さん、ムロツヨシさんらが共演。

堺さん演じる主人公は鎌倉に住むミステリー作家の一色正和。一色先生は犯罪研究の腕を買われ、迷宮入りしそうな事件の折には鎌倉警察に協力している。但し、鎌倉では魔物や幽霊も事件に関係するものだから、事件解決は一筋縄ではいかない。同作品は最新のCG等も駆使したファンタジー映画に仕上がっている。

日本列島に寒波到来、ラニーニャ現象で今冬は寒い?太平洋側での大雪にも注意

前週来、日本列島は寒気に見舞われ、気温が急低下している。11月20日には、真冬並みの強い寒気が入り込み、多くの地域で今季一番の冷え込みとなった。気象庁によると、東京都心の最低気温は平年より3.7度低い3.6度。この時期としては36年ぶりに4度を下回り、12月中旬並みの寒さとなった。

日米の気象当局は10月以降、「ラニーニャ現象」発生時の特徴が持続していると発表している。ちなみに、エルニーニョ現象が「冷夏・暖冬」を招きやすいとされるのに対し、ラニーニャ現象は「猛暑・厳冬」と反対の特性がある。

また、太平洋を流れる黒潮の「大蛇行」が12年ぶりに発生していることで、首都圏に大雪をもたらす「南岸低気圧」が寒気を呼び込みやすいルートを通る可能性も指摘されている。東京など普段雪の降らない太平洋側での大雪にも要注意か。

気象庁の3か月予報では今冬の平均気温は平年並みの予想となっているが、地球温暖化やエルニーニュ現象の影響で近年、暖冬が続いていたことを考えると、平年並みでも今冬は相当寒く感じられそうだ。忘年会帰りに風邪をひかないように注意が必要だろう。

猛暑の夏同様、寒波到来時、屋内での映画鑑賞は老若男女にとって、廉価でお手軽な娯楽と言えそうだ。

末澤 豪謙 プロフィール

末澤 豪謙

1984年大阪大学法学部卒、三井銀行入行、1986年より債券ディーラー、債券セールス等経験後、1998年さくら証券シニアストラテジスト。大和証券SMBC金融市場調査部長、SMBC日興証券金融市場調査部長等を経て、2012年よりチーフ債券ストラテジスト。2013年より金融財政アナリスト。2010年には行政刷新会議事業仕分け第3弾「特別会計」民間評価者(事業仕分け人)を務めた。日経債券アナリストランキング、14年連続10位内ランクイン。日経財政アナリストランキング2位(2004年〜2006年)。財政制度等審議会委員、国の債務管理の在り方懇談会委員、地方債調査研究委員会委員。趣味は、映画鑑賞、水泳、スキューバダイビング、アニソンカラオケ等。

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