FPの相続コラム「子々孫々へ遺す想い」
【第35回】

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(2017年2月23日)

【第35回】もう一つの相続対策、「相続手続き対策」は必要!?

FPの相続コラム「子々孫々へ遺す想い」では、毎月1回、相続に関連したお役立ち情報から最新の話題までをお伝えしております。第35回目のコラムは、相続手続きの備えについてのお話です。

一般的に認識されている3つの相続対策

2015年の相続税改正以降、相続対策に関心を持ち、対策を実行される方が増えています。一般的に相続対策といえば3つの対策が挙げられます。争族を防ぐための“遺産分割対策”、納税期限までに現金(原則現金納付)を確保するための“納税資金対策”、税負担を軽くするための“相続税の軽減対策”、この3つの対策が網羅されていれば、ほぼ準備万端といったイメージはあります。ですが、3つの対策が施されていたケースであっても、実際に身内の相続を振り返ると「相続手続きが大変だった〜」と仰る方がいらっしゃいます。

「相続手続き」ってそんなに大変!?

身内に相続が発生すると、どこにどんな財産があるか把握することから始まり、相続人同士での遺産分けの話し合い、遺産分割協議書の作成、金融機関での相続手続き、税務申告のための税理士探し、すべての財産の名義変更等々・・・やらなければならないことはたくさんです。もし、銀行や証券会社などの金融機関に複数の口座があると、すべての財産を把握するのに相当な時間が掛かります。各金融機関で相続手続きをする際、遺言書が作成されていないケースでは、通常、金融機関へ提出する戸籍謄本は生まれてから亡くなるまでの連続した戸籍謄本の提出が求められます。故人が結婚する前の戸籍謄本(両親の戸籍謄本)や引っ越し等を理由に戸籍を転籍している場合は転籍前の戸籍謄本も必要になります。頻繁に転籍されている方であれば、それぞれの自治体から取り寄せなければいけません。遺言書があれば、財産の把握や相続人同士でどう分けるかといった面倒な行程は軽減されますが、複数の金融機関に提出する書類はそれぞれ様式が異なり作成するのが大変です。このように金融機関での相続手続き一つとってもやることはたくさんあります。不動産などその他の遺産の分割、名義変更(相続登記)・・・等々、やはり相続手続きは大変です。

「相続手続き」を軽減するための対策

財産の所在が分からなかったり相続人同士で遺産分割の話し合いが必要になると想定以上に時間が掛かったり、争族により手続きに着手できない場合がありますので、遺言書を作成しておくことは重要です。遺言書があれば財産把握が容易にでき、遺産分けでもめることも軽減されます。遺言書の中で「遺言執行者」を指定すれば、遺言執行者が相続人を代理して相続手続き全般を行うことになります。遺言執行者には身内の方が就くケースが多いのですが、利害関係がない第三者に任せることでスムーズに手続きが進む傾向にありますので、費用が掛かっても検討する余地はあるかと思います。

遺言書がないケースでも相続人全員が第三者に相続手続き全般を委託するサービス(遺産整理)があります。日中仕事をされている方であれば、手続きのための時間を確保することは困難です。相続人が全国各地に散らばっている場合は、協力し合って手続きを進めるといっても相当の時間と労力が掛かってしまいます。多少費用が掛かっても効率良く確実に相続手続きを実施してくれる遺産整理サービスを利用する方は増加傾向のようです。

相続手続き対策は、財産を遺す側の生前対策が基本ですが、相続する側でもできる対策があることを知っていただけたら幸いです。

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