アナリストの忙中閑話【第14回】

アナリストの忙中閑話

(2011年12月6日)

【第14回】「師走」に感じるアラフィフの憂鬱と楽しみ

金融経済調査部 金融財政アナリスト 末澤 豪謙

今年も12月、師走を迎えることとなった。
年をとるほど、1年が短くなると感じるが、よく考えると当然かもしれない。
ちなみに私は今年8月に50歳の誕生日を迎えたが、生涯における相対的な時間は、小学生だった10歳当時の1年と比較すれば今年の1年は5分の1に過ぎないからだ。

そうはいっても、特に今年1年は慌ただしく、あっと言う間に過ぎ去った感が強い。
振り返ると、1月には、ジャスミン革命と名付けられたチュニジアの民主化が北アフリカ・中東に一挙に伝染、原油価格が上昇。
2月には、商品価格の高騰等受けて、新興国の金融引き締めが本格化。
2月のニュージーランドに続き、3月には、M9.0と我が国では過去最大規模の東北地方太平洋沖地震が発生。後に東日本大震災と名付けられた大地震は津波被害と東電福島第一原発事故をもたらし電力不足から東京電力管内では計画停電が実施された。
4月には、ギリシャ危機が再燃。
5月には国際テロ組織アル・カイーダの最高指導者:ウサマ・ビンラディン容疑者が米特殊部隊によって殺害されたと報じられた。
6月には内閣不信任決議案に絡む菅前首相の退陣表明を巡り国内政局は混乱。
7月には、なでしこジャパンがFIFA女子ワールドカップで初優勝という快挙を成し遂げた。
また、ノルウェーでは連続テロ事件が発生、国内では地上デジタル放送へ移行した。
8月には、債務上限問題のもつれから米国債が格下げされ、内外で株価が暴落。ギリシャ財政危機がスペイン等周辺国に加え、G7の一角であるイタリアに伝染。
9月には、野田政権が発足。平成最悪となった台風12号に加え台風15号も上陸、大きな被害が発生。
10月にはタイで大洪水が起き、震災に続きサプライチェーンが寸断された。財政問題はフランスにも波及。ドル円相場は31日には1ドル75円55銭と過去最高値を付け、円売り為替介入が9.1兆円実施された。
11月には、財政危機に見舞われたギリシャ、イタリア、スペインで政権が交代、国内でも大阪市長選、大阪府知事選で大阪維新の会候補が勝利。財政危機というウイルスの伝染力は強く11月にはドイツ長期金利も上昇に転じた。
この1年間、従来では、「想定外」とも言える事態が矢継ぎ早に発生している。

12月12日(月)には、恒例となった「今年の漢字」が京都・清水寺で発表されるが、今年の漢字を「一文字」で表すのは難しそうだ。既に、1995年に「震」が、04年には「災」、06年には「命」も選出されているが、今年の災害等の規模の大きさを勘案すると、「超」や「驚」、「巨」、若しくは「絆」や「協」、「希」といった漢字がふさわしいのかもしれない。
兜町の相場格言では、「辰巳天井、午尻下がり、未辛抱、申酉騒ぐ、戌笑い、亥固まる、子は繁栄、丑つまずき、寅千里を走り、卯跳ねる」とあるが、大地や水、風、人心、経済や金融システム等は揺れ動いたものの、肝心の本邦株価は、底を這うばかりの1年であった。

一方、日本の国債市場が今年、財政危機による金利上昇というウイルスに伝染しなかったのは、過去蓄積した体力、具体的には、世界最大の対外純資産、世界第2位の外貨準備、ホームカントリーバイアスと安全志向の強い個人金融資産等の賜物である。但し、震災の発生により、国力とブランド価値は大きく毀損、サプライチェーンの寸断により韓国勢等他国にシェアが奪われる事態となっている。他方、円高・電力不足、税・社会保障の負担増は企業の多国籍化、産業の空洞化をかつてない勢いで後押ししつつある。
団塊世代は2015年には65歳、25年には75歳に全員到達する。高齢化が日本経済、財政等に本格的な影響を及ぼすのはこれからであり、経常収支の黒字構造も将来は心許ない。このままでは、復興需要の顕在化が予想される2012年・13年の辰巳の年が国力の天井となり、その後は長期の衰退局面に陥りかねない。ウイルス抵抗力のある時間は限られていると言えそうだ。

最後に、年をとって嬉しいこともあるので、一言。師走になると、忘年会や同窓会が増えるが、今年は、特に同窓会の誘いが多い。地元及び東京で、高校や大学、はたまた、中学の同窓会の誘いも久しぶりに舞い込んだ。50歳は、「知命」、すなわち「天命を知る」という年にあたるが、子育て等が一段落すると、自らの趣味や生きがいに関心が移るからか、内輪の勉強会や宴会の開催が増えるようだ。
また、50歳は、「夫婦50割引」の対象となり、どちらかが50歳であれば、映画であれば、二人で2,000円に割引となる。映画鑑賞が趣味の私には大変ありがたいサービスだ。
また、年をとると、年齢別スポーツ大会等では、アドバンテージが上がることもある。
私は、近年、11月3日に開催されている全国年齢別水泳大会に出場しているが、今年は、50(〜)54歳の部にステージが上がったことで、出場3種目全てで3位内に入ることができた。1位には金メダルが、2位・3位には表彰状が贈られる。来年からは年齢というハンディが増すこととなるが、10年後か20年後かの金メダルを目指して精進したいと思っている。

我が国の人口ピラミッドは、間もなく、高齢者の割合が高い「壺型」となる。全年齢がほぼ均等な「釣鐘型」のスウェーデン等の高福祉国と違って、我が国の場合、現状の「中福祉・中負担」やスウェーデン等の「高福祉・高負担」は持続できず、将来は、「中福祉・高負担」か「低福祉・中負担」のどちらかにならざるを得ない。その時、どのような老後を過ごすか。やはり、健康面・精神面をどうやって、充実・維持させるかが鍵となりそうだ。

末澤 豪謙 プロフィール

末澤 豪謙

1984年大阪大学法学部卒、三井銀行入行、1986年より債券ディーラー、債券セールス等経験後、1998年さくら証券シニアストラテジスト。大和証券SMBC金融市場調査部長、SMBC日興証券金融市場調査部長等を経て、2012年よりチーフ債券ストラテジスト。2013年より金融財政アナリスト。2010年には行政刷新会議事業仕分け第3弾「特別会計」民間評価者(事業仕分け人)を務めた。日経債券アナリストランキング、14年連続10位内ランクイン。日経財政アナリストランキング2位(2004年〜2006年)。財政制度等審議会委員、国の債務管理の在り方懇談会委員、地方債調査研究委員会委員。趣味は、映画鑑賞、水泳、スキューバダイビング、アニソンカラオケ等。

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