アナリストの忙中閑話【第15回】

アナリストの忙中閑話

(2011年12月26日)

【第15回】2012年の干支は「壬辰」、辰巳天井?人事が要諦に

金融経済調査部 金融財政アナリスト 末澤 豪謙

2012年(平成24年)の干支は、「壬辰(みずのえ・たつ、じん・しん)」。

「壬辰」は、「干支」の組み合わせの第29番目で、陰陽五行では、十干の「壬」は「水」の「兄(陽)」、十二支の「辰」は、「土」の「陽」で、「相剋(土剋水:「土は水を濁す。土は水を吸い取り、水をせき止める。」の意)」である。

「壬」は、人、人事と繋がりが深い

「壬」は、3つの意があるとされる。第1は、「壬」は、その上に物を載せて工作する叩き台の象形とされ、荷を担うということから、事を担当するという意味で、「任」に通じ、「任命」、「任用」という義が生じたとされる。第2は、「壬」は、一説には真中が膨らんだ糸巻きの象形文字で、「妊」に通じ、女性の懐妊の姿を表すとされる。万物をはらみ始めるとされる。第3は、「へつらう」、「おもねる」という意味で、「佞(ねい)」に通じ、「佞人」、「佞者」、「佞臣」といった使われ方をされる。全体として、「壬」は人、人事に繋がりが深い。

「辰」は、「振」、「震」に通ずる

一方、「辰」は、十二支の第5番目で、動物では「龍」、方角は東南東、時刻は午前8時、月では旧暦3月を表す。「辰」は、手で岩石を動かす象形や、「蜃(しん:大はまぐり)」の象形文字で、大蛤が足の肉を動かしている姿とされている。「蜃」は、「みずち」といわれる「蜃気楼」を作り出すといわれる伝説上の生き物である。「辰」は、「振」や「伸」、「震」に通ずるとされる。植物が若芽をなびかせて動き、盛んに成長するさまを表す。

「壬」と「辰」を合わせると、2008年の「戊子」の混乱の中、生まれた新興勢力が、2009年の「己丑」で、表舞台に立つのだが、依然、周囲の抵抗に出会い、完全には伸び切れない。2010年の「庚寅」の年になると、矛盾が噴き出し、2011年の「辛卯」で、新たな変化、再編が生じ、2012年の「壬辰」の年、その胎動は一段と大きくなり周囲も無視できなくなるという意味ともとれる。最近の地域政党の動き等を暗示しているようにもみえる。

前回、60年前の「壬辰」である1952年(昭和27年)は、サンフランシスコ平和条約が発効し、日華平和条約や日印平和条約にも調印、IMFや世界銀行加盟と、我が国が国際社会に本格的に復帰した年である。
その後、戦後の辰年は、1964年には東京オリンピックが開催され、高度成長を謳歌、但し、1976年には、オイルショック後の混乱の中、ロッキード事件が表面化、政界が徐々に流動化、バブル真只中の1988年には、リクルート事件が表面化、その後の細川非自民政権の成立に繋がって行く。2000年には衆院総選挙で自民党が再度過半数を割り込み、民主党が躍進、参院のネジレも相まって、連立政権が常態化することとなる。
経済の成熟化とともに、政界も徐々に自民党の一党支配の構図が崩れ、政権交代の流れが強まることとなった。

壬辰の年は、オリンピックと選挙の年

2012年は、7月27日から8月12日までの17日間、ロンドンオリンピックが開催される。
海外でも、オリンピックの開催年は、米大統領選等、選挙の年でもある。

2012年も、1月14日には台湾(中華民国)の総統選挙が、3月4日には、ロシア大統領選挙が、11月6日には、米大統領選と議会選が予定されている。フランスの大統領選も4月及び5月に、韓国大統領選も12月に予定されており、秋に開催される第18回中国共産党大会では、胡錦濤国家主席の後継が選出される。北朝鮮でも金日成生誕100年・金正日生誕70周年の節目にあたるが、金正日氏の死去に伴い、三男の正恩氏への政権移譲が行われるものと見込まれる。

<戦後の「辰年」の出来事>

  • 2000年 「Y2K」問題が懸念されたが深刻な問題は生じず、台湾総統選、小渕首相死去、森内閣発足、プーチン氏がロシア大統領に就任、九州・沖縄サミット、シドニーオリンピック開催、米大統領選ブッシュ氏(共和党)当選
  • 1988年 青函トンネル開業、瀬戸大橋(児島・坂出間)開業、リクルート事件、ソウルオリンピック開催、米大統領選ブッシュ副大統領(共和党)当選、消費税導入を柱とする税制改革法成立
  • 1976年 ロッキード事件、新自由クラブ結成、カンボジア:ポル・ポト政権成立、田中前首相逮捕、モントリオールオリンピック開催、ベトナム社会主義共和国成立、米大統領選カーター氏(民主党)が現職のフォード氏破り当選、福田内閣発足、
  • 1964年 第1回国連貿易開発会議(UNCTAD)開催、経済協力開発機構(OECD)加盟、米公民権法制定、トンキン湾事件、東海道新幹線開業、東京オリンピック開催、フルシチョフ解任、第一次佐藤内閣発足、公明党結成、米ジョンソン大統領(民主党)再選
  • 1952年 エリザベス2世即位、日航もく星号墜落、サンフランシスコ平和条約発効、日華平和条約調印、メーデー事件、日印平和条約調印、エジプト革命、ヘルシンキオリンピック開催、IMF、世界銀行加盟、第4次吉田内閣発足、警察予備隊が保安隊に改組、米大統領選アイゼンハウアー氏(共和党)当選

12年前の辰年の2000年、我が国では、1998年の金融危機・デフレ経済を受けて、1999年2月に日銀が導入した「ゼロ金利政策」を、8月に解除したが、その後、ITバブルの崩壊等受けて、翌2001年3月には量的緩和政策を導入することとなった。

国債市場では、1998年暮れのいわゆる「(第2次)運用部ショック」を受けて、1999年初頭に長期金利が2.5%程度まで急騰。そうした経験から、国債管理政策の重要性が再認識され、市場参加者との対話を充実するため2000年9月に第1回の国債市場懇談会が開催された。

一方、政界では、2000年4月に小沢一郎氏が率いる自由党が自自公連立政権から離脱、直後に小渕首相が死去し、5月に森内閣が発足するも、6月の衆院総選挙では、「神の国」発言等から、与党は惨敗した。一方、民主党は、32議席増の127議席獲得と大躍進、その後、2002年に自由党と合併、2009年の政権交代に繋がることとなる。

2012年、海外では、重要な選挙や政権交代が予定

2012年は、海外では、重要な選挙や政権交代が予定されているが、国内でも、遅くとも2013年夏には衆院総選挙が実施されることから、年末に向けては、永田町は騒がしくなりそうだ。

9月には、民主党代表選と自民党総裁選も予定されており、政党交付金の基準日である年末前に、新党結成の動きが急浮上することも予想される。
野田首相は、民主党代表選で勝利し、衆院総選挙を2013年夏の参院選との同日選挙としたいものと想定されるが、2013年夏は東京都議会選挙も予定されており、自公両党は、早期解散でタッグを組み、みんなの党や近年躍進が続く地域政党も早期の解散を求めて来るものと想定される。

一方で、内外ともに、問題となっているものは財政問題だ。欧州財政不安は、既に1年半が経過、依然、収束の目途は立っていないが、2012年7月に1年前倒しされた欧州安定化メカニズム(ESM)の導入が最終的な解決策の糸口になるものと期待している。
国内では、社会保障と税の一体改革、特に、3月頃に国会へ提出予定の消費増税準備法案の成否が第1関門となるが、前述のような政治状況下、超党派の合意がすんなりとなされるとは考えにくい。秋に向けては、政局リスクが高まりやすいと想定される。
「壬辰」の年である2012年、野田首相にとって、政権運営の「要諦」は「人事」と言えるかもしれない。
なお、政局リスクの高まりは、日本国債の格下げリスクも同時並行的に高めることとなりそうだ。

株式相場に関する相場格言

株式相場に関する相場格言では、「辰巳天井、午尻下がり、未辛抱、申酉騒ぐ、戌笑い、亥固まる、子は繁栄、丑つまずき、寅千里を走り、卯跳ねる」とされている。

東日本大震災の発生もあり、2011年は、大地や水、風、人心、経済や金融システム等は揺れ動いたものの、肝心の本邦株価は、底を這うばかりの1年であった。
2012年は、「辰巳天井」の1年目だが、政治・政策次第では、復興需要の顕在化が予想される2012年・13年が国力の天井となり、その後は長期の衰退局面に陥りかねない。

末澤 豪謙 プロフィール

末澤 豪謙

1984年大阪大学法学部卒、三井銀行入行、1986年より債券ディーラー、債券セールス等経験後、1998年さくら証券シニアストラテジスト。大和証券SMBC金融市場調査部長、SMBC日興証券金融市場調査部長等を経て、2012年よりチーフ債券ストラテジスト。2013年より金融財政アナリスト。2010年には行政刷新会議事業仕分け第3弾「特別会計」民間評価者(事業仕分け人)を務めた。日経債券アナリストランキング、14年連続10位内ランクイン。日経財政アナリストランキング2位(2004年〜2006年)。財政制度等審議会委員、国の債務管理の在り方懇談会委員、地方債調査研究委員会委員。趣味は、映画鑑賞、水泳、スキューバダイビング、アニソンカラオケ等。

このページの関連情報