アナリストの忙中閑話【第22回】

アナリストの忙中閑話

(2012年10月18日)

【第22回】スカイツリーとスカイフォール、映画と債券

金融経済調査部 金融財政アナリスト 末澤 豪謙

今、日本で、人気スポットと言えば、「東京スカイツリー」をイメージする人が多いだろう。東京スカイツリーに加え、創建時の姿に復元された東京駅丸の内駅舎、東京ディズニーランド等、東京は、最近、観光スポットとしても注目を浴びている。東京駅に隣接する当社オフィス周辺も、このところ、特に夕方になると、カメラを片手にした観光客と思しき人々で賑わっている。

ところで、前週末の13日と14日、「東京スカイツリー」の入り口前で、「コカ・コーラ ゼロ」と映画「007 スカイフォール」のコラボイベントが開催された。その心は、「コカコーラ ゼロ」と「007(ゼロ ゼロ セブン)」、「スカイツリー」と「スカイフォール」と、言わば「ゼロ」・「スカイ」繋がりというものだ。

今から、ちょうど50年前の1962年10月5日、007シリーズの第1作「007、ドクター・ノオ(Dr. No)」がイギリスで公開された。我が国では1963年6月に公開され、日本初公開時のタイトルは、「007は殺しの番号」。「007 スカイフォール(Skyfall)」は、007シリーズ第23作目であり、50周年記念映画の位置付けにある。
「007」は、英SIS(情報局秘密情報部:Secret Intelligence Service)、旧称、MI6(軍情報部第6課:Military Intelligence section 6)の工作員(スパイ)の設定であり、本国は英国だ。先のロンドン・オリンピックでも、開会式に、007役のダニエル・クレイグがエリザベス2世女王をエスコートする形で登場、英国民も、007は英国映画との認識を強く持っていることを裏付けた。ちなみに、007シリーズを製作しているMGMは、現在、ソニーピクチャーズの傘下にあり、ハリウッド映画ではあるが、我が国とも関係しているとも言える。本国イギリスでの公開は、今月10月26日予定だが、我が国では、12月1日(土)に公開予定。

ところで、本コラムは、「債券ストラテジストが語る映画と世界情勢」と題しているが、債券と映画に接点はあるのだろうか。

国債等債券は、株や為替と違って、一般の方には、なじみが薄いのも事実だろう。かろうじて、個人向け国債を購入した経験があるという程度ではないか。

実は、筆者も、今から26年前、銀行入行2年目の冬、支店長から異動の発令を受け、「サイケン・ディーラーグループ」と告げられた際、おもわず「車でも売るのですか」と問うた過去がある。当時は、1984年5月の「日米円・ドル委員会報告書」で、「円の自由化」と「金利の自由化」が決まり、支店長からは、今後は、銀行も喫茶店経営に乗り出すかもしれないと常々言われていたので、「ディーラー」=「車の販売」と発想したのである。ただ、サイケンが何を意味するかは、よくわからなかった。銀行員にとって、「サイケン」は「債権」を意味するが、銀行本部での審査業務等は、ベテラン銀行員の仕事であり、新人行員が担当するとは思えなかったからだ。

後に、「サイケン」とは、「債券」を意味し、銀行のディーリング業務とは、国債等公共債の売買を意味すると説明を受けたが、国債と言っても実感がわかない。ようやく、上司に頼んで、国債の現物(げんぶつ)の本券(ほんけん)を見せてもらい、やや理解が深まった。

今では、ペーパーレス化(無券面化)の影響で、国債現物の本券は存在しないが、当時、存在していた国債の本券、たとえば、償還期間10年の国債の本券は、縦40cm、横30cm程度はあったと記憶している。上部に元本の券面があり、下部には利金の券面が20枚印刷されており、半年毎に利金の部分をハサミで切って、日銀に持ち込むのである。

今では、国債も株券もペーパーレス化され、オンラインで名義の移転が可能となったが風情は失われたとも言える。よく「倒産で株券が紙切れになった」と言うが、今では、「倒産で株券がディリート(消去)された」がより正確だ。

ところで、債券セクションに配属された後、債券に初めて親しみを感じたのが、その英語名を聞いた時だ。たとえば、日本国債は、英語では、「JGB(Japanese Government Bond)」と言う。当時、米国債の指標銘柄であった30年米国債は、「T-Bond(Treasury Bond)」と呼ばれていた。

筆者は、高校時代、部活動で8ミリの自主映画を作成していたが、当時は、洋画と言えば「007(ダブルオーセブン)」シリーズ、憧れが強く、同映画のパロディー等も撮ったことがある。

読者においては、もうおわかりかと思うが、007シリーズの主人公は、ジェームズ・ボンド(James Bond)。MI6にて、殺しのライセンスを持つ00セクションに属し、7番のコードネームを持つエージェントだ。

但し、ジェームズ・ボンドという人名は、英語圏では、極めて普通の名前であり、007シリーズの原作者であるイアン・フレミングは愛読する鳥類研究書の著者名から採ったとのこと。

ちょうど、日本人名では、「鈴木一朗」に類する名前と言えるのかもしれない。但し、今では、「ジェームズ・ボンド」も、「イチロー・スズキ」も世界的に有名で、尊敬を集めている。やはり、名前よりも、実績が重要と言うことだろう。

ところで、最新作「007 スカイフォール」だが、筆者もまだ見ていないので評価はできないが、007役が、ダニエル・クレイグに代わってから(今回で3作目)、007シリーズは、それまでのエンターテイメント映画から、ハードボイルドな大人の映画に大きく変わった。今回も、渋い007に期待したい。

なお、ダニエル・クレイグに代わってから、007の架空の生年月日は、1968年4月13日に変更されている。つまり、現在の年齢は、44歳ということになる。まだ、アラフォーだ。

筆者の生年月は、米国のオバマ大統領と同じ1961年8月、既に51歳となった。オバマ氏は、10月3日の第1回目の公開討論会で、共和党のロムニー氏に完敗。16日の第2回目の討論会では、雪辱を果たすべく、攻撃的な姿勢を見せ、世論調査でも支持がやや盛り返すこととなっている。ロムニー氏も65歳としては極めて精力的だ。米大統領選を見るたびに、筆者も頑張らねばとは思うものの、体はついてこない。せいぜい年齢別水泳大会で入賞を狙うのが、目下の目標である。

ちなみに、債券ストラテジスト(Bond Strategist)の仕事内容を理解するには、本年8月に「ポプラ文庫」から出版された小説「青い約束」がお薦めだ。著者の田村優之氏は、某経済新聞の現役記者であり、債券市場の基礎知識を身につけるにも、初心者にはうってつけか。

末澤 豪謙 プロフィール

末澤 豪謙

1984年大阪大学法学部卒、三井銀行入行、1986年より債券ディーラー、債券セールス等経験後、1998年さくら証券シニアストラテジスト。大和証券SMBC金融市場調査部長、SMBC日興証券金融市場調査部長等を経て、2012年よりチーフ債券ストラテジスト。2013年より金融財政アナリスト。2010年には行政刷新会議事業仕分け第3弾「特別会計」民間評価者(事業仕分け人)を務めた。日経債券アナリストランキング、14年連続10位内ランクイン。日経財政アナリストランキング2位(2004年〜2006年)。財政制度等審議会委員、国の債務管理の在り方懇談会委員、地方債調査研究委員会委員。趣味は、映画鑑賞、水泳、スキューバダイビング、アニソンカラオケ等。

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