アナリストの忙中閑話【第24回】

アナリストの忙中閑話

(2013年2月26日)

【第24回】天気晴朗なれど風強し、東京マラソン。オリンピック招致には沿道の応援が重要

金融経済調査部 金融財政アナリスト 末澤 豪謙

2月24日(日)、東京マラソン2013(英文名:Tokyo Marathon 2013)が実施された。東京マラソンは2007年にスタートし今回が第7回目となる。
東京マラソンは、東京都庁から江東区有明の東京ビッグサイトまでの42.195キロで行われ、招待選手に加え、市民ランナー等を含めた過去最多の約3万6,676人が健脚を競った。うちマラソンには3万6,228人が参加し、3万5,289人が完走。全体での完走率は96.2%だった。
マラソンの応募倍率も今回は過去最高の10.3倍となった。

東京マラソンもメジャーの仲間入り

今回から、世界最高峰の「ワールド・マラソン・メジャーズ」(WMM)に加入。ボストン、ロンドン、ベルリン、シカゴ、ニューヨークシティーの世界6大都市マラソン大会の2013年の先駆けの大会となったことで、東京ではフジテレビが朝の9時前から16時半頃まで生中継し、海外でも69カ国・地域へ生中継された。

東京マラソンには、申込も含め参加経験はないものの、自宅のすぐ近くがマラソンコースとなっていることもあり、私は第2回大会以来、毎年、応援にかけつけている。

今年は、朝9時段階で、東京は雲一つない晴天に恵まれたが、寒風が強く、向かい風となった前半はペースもスロースタートとなった。但し、追い風となった後半は急激にペースが上がり、その高速に日本勢はついていけず、男女とも上位3名はアフリカ勢となり、日本人トップはマラソン男子が4位、同女子が5位にとどまった。

日本人選手の記録的には、今一つとも言える結果だが、今回の東京マラソンには、2020年のオリンピック招致への起爆剤とするという、もう一つの目的がある。この点は大成功だったのではないか。

沿道の応援は170万人、選手と観客が一体となる東京マラソン

沿道の応援には、173万5,000人(主催者発表)が繰り出し、約1万人のボランティアが給水や会場誘導などに当たった。

私は、毎回、スタートから40キロ地点手前の豊洲近辺で応援しているのだが、佃大橋のアップ・ダウンを乗り越え、苦渋の色を浮かべていたランナーが観衆の応援で元気を出す姿を幾度も見た。一方、制限時間の7時間近くを使ってゴールするランナーの多くはお祭り気分で、観衆とハイタッチをしながら駆け抜け(ないし早歩き?)ていく。何れも、沿道の観客との一体感が強く醸成されていたのは間違いない。

東京オリンピック招致の課題は支持率の低さ

東京へのオリンピック招致の最大の課題は、前回同様、日本国民及び東京都民の支持率の低さにあると言われる。

2009年10月2日、筆者は首相官邸の隣にある内閣府の建物で、当時の菅副総理兼国家戦略相らと、第1回マーケット・アイ・ミーティングに臨んでいた。会合では、(1)長期金利と国債市場、(2)経済動向、(3)雇用動向、(4)為替動向、(5)株価動向について、議論を交わしたのだが、今思うと日本国・日本経済の活性化のための成長戦略や少子化対策に、もう少し時間をかけるべきであったと思う。というのは、その日の夕方のトップニュースは、2016年のオリンピック開催地がブラジルのリオデジャネイロに決まったことだったからだ。

あの報道で、新政権の出鼻が挫かれたと感じたのは私だけかもしれないが、やはり、目標を持って、皆で頑張ろうという気持ちがないと、組織もまとまらないし、元気も出ない。当然、消費も投資も停滞し、経済もよくならない。

当時のオリンピック開催に手を挙げていたのは、東京、リオデジャネイロに加え、スペインのマドリードと米国のシカゴだった。

シカゴは、当時国際的にも人気の高かったオバマ大統領の地元であったが、リーマン・ショックの後遺症や地元の支持率の低迷から早々に脱落。ロンドンオリンピックに続く欧州開催の可能性は乏しいとの観測からマドリードと比較すれば東京優位との見方もあったが、東京は2回目の投票で脱落。3回目の投票では、地元の支持率が高く、ブラジルのみならず、南アメリカ大陸で初の開催となるリオデジャネイロが大統領のトップセールスも相俟って、マドリードをダブルスコアで下し、招致を獲得することとなった。

当時は、我が国では政権交代直後だったこともあり、オリンピック招致に関しては、民主党政権と東京都との連携も今一つだったが、やはり地元の支持率が低かったのが、リオデジャネイロのみならず、マドリードにも敗れた要因と考えられる。
今回のライバルは、同じくマドリードとトルコのイスタンブール。開催地の決定は9月7日の予定だ。

オリンピックの効果を疑問視したり、副作用を指摘する向きもあるが、「上を向いて歩こう」が流行った高度成長期と比較し、最近の日本人は、地面に落ちた硬貨を探しているとも思えないが、いつも下を向いて歩いている感じがする。

その点、中国等新興国を訪問すると、熱気に驚かされる。やや自分勝手な雰囲気がしないでもないが、上を向いて、胸を張って、周りを掻き分け、歩いている。皆が国家の成長や自身の生活の改善を信じて疑わないようだ。

2020年は重要な節目、たまには、ポジティブ志向とアンチ・エイジングが重要に

日本人も、もう一度、東京の沿道やスタジアムで内外の選手を応援する機会に恵まれたら、若干はポジティブな発想に変わるのではないだろうか。

実は、日本経済にとって、2020年は重要な年だ。1947年から1949年に生まれたいわゆる「団塊の世代」は、2020年には全員70歳代に突入している。高齢化が一段と本格化し、都会の風景も現在の地方のように、老人主体に変わっていることも想定される。

2012年11月14日の野田前首相による衆院解散発言以降、金融市場では、円安、株高が継続している。

背景には、自民党の安倍氏が掲げるリフレ政策があるが、12月16日の衆院選に勝利し、首相に就任した安倍氏は、年明け以降、矢継ぎ早に、金融緩和、財政出動、成長戦略を具体化してきている。足元では、次期日銀総裁に黒田東彦アジア開銀総裁を、副総裁に岩田規久男学習院大教授らを任命するとの観測が強まっている。両氏は何れも金融緩和派である。

但し、金融緩和、財政出動だけでは、少子高齢化の流れは止められないだろう。今後は、ブラジルやスペイン等を見倣って、ポジティブ志向、お祭り思考を持って、経済面や健康面で、アンチ・エイジング(抗老化)に取り組むことが必要ではないか。

米国で第85回アカデミー賞が発表された

なお、2月24日には、米国で第85回アカデミー賞が発表された。
結果は、「ライフ・オブ・パイ トラと漂流した227日」(アン・リー監督、日本公開中」が監督賞、撮影賞、視覚効果賞、作曲賞の最多4部門で受賞した。

作品賞と脚色賞、編集賞は「アルゴ」(ベン・アフレック監督、日本公開2012年10月)が、脚本賞は「ジャンゴ 繋がれざる者」(クエンティン・タランティーノ監督、同3月1日)が受賞した。

主演男優賞は、「リンカーン」(スティーブン・スピルバーグ監督、同4月19日)のダニエル・デイ=ルイス、主演女優賞は「世界に一つのプレイバック」(公開中)のジェニファー・ローレンス、助演男優賞は、「ジャンゴ 繋がれざる者」のクリストフ・ヴァルツ、助演女優賞は「レ・ミゼラブル」(トム・フーバー監督、公開中)のアン・ハサウェイが選ばれた。「レ・ミゼラブル」は録音賞とメイクアップ&ヘアスタイリング賞も受賞。
長編アニメ賞は「メリダとおそろしの森」(同2012年7月)が受賞した。

最多受賞作品はアジア人監督

今回、下馬評では、最多の12部門にノミネートされていたスティーブン・スピルバーグ監督の伝記映画「リンカーン」が作品賞や監督賞等で有力視されていたが、同作品の受賞は美術賞と主演男優賞にとどまった。

一方、最多の4部門受賞となった「ライフ・オブ・パイ トラと漂流した227日」は、私も視聴したが不思議な感覚のする映画だ。原作は小説であり、やや荒唐無稽なストーリーだが、ノンフィクションのような実体感がある。監督は台湾人のアン・リー。映画の最後には、保険会社の調査員役で日本人も出て来るのだが、アジアン・テーストがより映画の演出を際立たせているようだ。

ちなみに、本コラムの第22回で取り上げた、「007スカイフォール」は、今回、「ゼロ・ダーク・サーティ」(キャスリン・ビグロー監督、公開中)とともに、音響編集賞を同時受賞した。2作が1つの賞を同時受賞するのは、第41回授賞式以来44年ぶり。また、今回、「007スカイフォール」は歌曲賞も受賞したが、「007」シリーズのアカデミー賞受賞も47年ぶり。

グローバル化し、多極化する世界と、その中で苦悩する最近の米国の姿をアカデミー賞の審査員は強く意識?

今回のアカデミー賞は、アジア人監督の作品が最多の部門賞を獲得するとともに、1979年のイランの米大使館人質事件を描いた「アルゴ」が作品賞をとり、19世紀の解放奴隷の主人公らが織りなす西部劇「ジャンゴ 繋がれざる者」が脚本賞と主要な賞を受賞した。

また、音響編集賞にとどまったものの、国際武装組織アルカイダの指導者ウサマ・ビンラディン容疑者の殺害を描いた「ゼロ・ダーク・サーティ」や奴隷解放を決めた大統領の伝記映画「リンカーン」等、社会派の映画の受賞が多い。「ジャンゴ 繋がれざる者」はブラック・ユーモア作品か。

グローバル化し、多極化する世界と、その中で苦悩する最近の米国の姿をアカデミー賞の審査員は強く意識していることが背景にあるのかもしれない。

2020年のオリンピック・マラソンの沿道の風景を世界に発信へ

最後になるが、震災から復興した日本、高齢化の中でもアンチ・エイジングに成功した我が国の姿を、2020年のオリンピック・マラソンの沿道の風景を通して、是非とも世界に発信したいものである。

末澤 豪謙 プロフィール

末澤 豪謙

1984年大阪大学法学部卒、三井銀行入行、1986年より債券ディーラー、債券セールス等経験後、1998年さくら証券シニアストラテジスト。大和証券SMBC金融市場調査部長、SMBC日興証券金融市場調査部長等を経て、2012年よりチーフ債券ストラテジスト。2013年より金融財政アナリスト。2010年には行政刷新会議事業仕分け第3弾「特別会計」民間評価者(事業仕分け人)を務めた。日経債券アナリストランキング、14年連続10位内ランクイン。日経財政アナリストランキング2位(2004年〜2006年)。財政制度等審議会委員、国の債務管理の在り方懇談会委員、地方債調査研究委員会委員。趣味は、映画鑑賞、水泳、スキューバダイビング、アニソンカラオケ等。

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