アナリストの忙中閑話【第26回】

アナリストの忙中閑話

(2013年6月26日)

【第26回】米独立記念日と情報・広報活動

金融経済調査部 金融財政アナリスト 末澤 豪謙

7月4日は米国の独立記念日

7月4日は、米国の独立記念日(Independence Day)だ。

英国によって統治されていた13の植民地が1776年7月4日に大陸会議を開き、独立宣言を採択し、アメリカ合衆国が独立した記念日である。

7月4日はアメリカ合衆国の祝日と定められており、その前後は、商店等ではセールを行うこともある。

夏映画は今年も「宇宙物」が満載

また、ハリウッドのいわゆる「夏休み映画」も独立記念日前後に封切られるものが多い。

本コラムの【第5回】「夏の風物詩と言えば、お化け、恐竜、宇宙人?」でも取り上げたが、独立記念日前後に封切られる映画は、近年、宇宙ないし宇宙人、深海等を舞台とした物が多い。

今年、筆者が既に鑑賞した作品では、「オブリビオン」、「アフター・アース」が良かった。今後も「パシフィック・リム」や「スター・トレック イントゥ・ダークネス」、「マン・オブ・スティール」、「エリジウム」等が国内で封切られる。

背景には、冷戦が終結し、旧東側諸国もハリウッド映画の商圏と化した今日、新興国を含むグローバルな営業面からも、宇宙人を仮想敵と見立てたり、大災害等を題材とすることで、思想上や宗教上の制約を逃れるビジネスモデルが近年採られているものと見受けられる。

ちなみに、昨年話題となった古代マヤ歴をヒントとした世界終末映画である「2012」(日本公開2009年)では、「箱舟」は中国製の設定となっている。このあたりは中国市場を意識したものと言えそうだ。

今年はホワイトハウスを舞台としたものも

但し、今年の場合、ホワイトハウスや米大統領をテーマにしたものも多い。たとえば、3月封切りの「エンド・オブ・ホワイトハウス」(原題:OLYMPUS HAS FALLEN、日本公開中)や6月に封切られる「ホワイトハウス・ダウン」(日本公開8月)は、ホワイトハウスがテロリストらに乗っ取られるストーリーとなっている。

映画「インデペンデンス・デイ」では、宇宙人の乗った宇宙船による攻撃で、ホワイトハウスが一瞬で消滅するが、今年封切りの2本も、ホワイトハウスが相当なダメージを受ける内容だ。

さすがに、ホワイトハウス自体でのロケは許されなかったようだが、内容的には、「インデペンデンス・デイ」も「エンド・オブ・ホワイトハウス」でも、米大統領は極めて格好良く、勇猛果敢で家族想いの良き夫、良き父の設定となっている。

このあたりは、ワールドワイドに、ハリウッド映画を配給する米国のイメージ戦略と言えなくもないが、米国に親近感を覚えるのも事実であり、平和的な外交手段とも言える。

ちなみに、「インデペンデンス・デイ」も「ホワイトハウス・ダウン」も監督は、ドイツ人のローランド・エメリッヒ氏。同監督は、ハリウッド版「ゴジラ(原題:Godzilla)」を手掛けるとともに、「デイ・アフター・トゥモロー」や「2012」等、いわゆる「ディザスター・ムービー」(我が国では「パニック映画」や「災害映画」のジャンル)の巨匠として知られている。予告編を見る限り、前述の「パシフィック・リム」と「ゴジラ」は似た雰囲気がある。

米大統領の支持率は情報問題で急落

ところで、現実の米国の大統領であるオバマ氏は、足元、支持率の急落に見舞われている。背景には、米国家安全保障局(NSA)による情報収集活動を暴露し、スパイ活動取締法違反容疑などで訴追された中央情報局(CIA)元職員エドワード・スノーデン容疑者(30)の存在がある。

真相は藪の中だが、NSAやCIAの諜報活動をテーマとした映画は多い。代表作は、前述の「アフター・アース」では親子共演を果たしているウィル・スミス主演の「エネミー・オブ・アメリカ」か。

また、「エリジウム」にも出演するマット・デイモン主演の「ボーン」シリーズも有名だ。マット・デイモン氏は、CIAが前身のOSS(戦略情報局)から冷戦を経て、改組・増強される過程を描いた「グッド・シェパード」でも主演を務めている。

「情報」の重要性

今回は、「情報」の意味を考えてみたい。

古来、戦争時、「情報」は、最新兵器以上に重要であった。これは、古今東西問わない。我が国の歴史においても、織田信長が今川勢を破り、天下統一の足がかりとなった「桶狭間の戦い」等、情報格差が戦局を左右した事例には事欠かない。

「商戦」と言われるように、「情報」の重要性は、ビジネスの世界においても同様であるが、とりわけ、金融など第3次産業においては、たとえば自動車メーカーのような製造業と違い、スタイルや機能の面において差別化でき、目に見える製品が存在しないことから、より重要と言える。

英ロスチャイルド家が、財閥化した大きな契機が、ワーテルローの戦いでナポレオンが敗退したことをいち早く知り、株取引で巨額の利益を上げたことにあるのも有名な話だ。

インサイダー取引規制等、情報管理に関するルールが厳格化された背景も、金融、特に市場取引においては「情報」が極めて重要であることの証左とも言えよう。

一方、現代の情報社会では「情報」の質も問われることとなる。

現在、金融市場を含め、社会全般には、情報が氾濫しており、多くの情報は無料で提供されている。我が国でも「ただほど高いものはない」という格言があるが、米国でも、「There's no such thing as a free lunch.」(ただ飯は存在しない)という言葉がある。

「グッド・シェパード」の中で、マット・デイモン氏扮するOSS工作員、エドワード・ウィルソンは、赴任先のロンドンで、先輩工作員から情報工作の「いろは」を教え込まれるが、その最初の仕事は偽情報を敵国に信じ込ませることだった。つまり、ただの情報、アクセスのしやすい情報の中には、いわゆる「ポジション・トーク」や誤った情報、少なくとも陳腐化した情報が多く含まれることに注意すべきだろう。

近年は「情報管理」においても、大きな変化が見られた。「個人情報保護法」や「金融商品取引法」の施行により、民間会社においても、今や「情報管理」には多くのコストが払われている。

エドワード・ウィルソンは、CIAの防諜部門のトップに上りつめることとなるがその過程で失う代償も大きい。

欧米では、主に対外情報の収集・分析を行う機関と国内情報の海外流出を防ぐ機関を別個に設立している例が多い。英国のMI6(正式名称SIS:秘密情報部)とMI5(正式名称SS:保安局)の関係やフランスのDGSE(対外治安総局)とDST(国土監視局)の関係、米国のCIAとFBI(連邦捜査局)の関係もそれらに近い。情報活動には、攻めと守りがあるが、相互けん制のため、担当機関を分けているのだ。

金融市場における情報活動でも、攻めの分野が筆者の属する調査部門やマーケティング、ディーリングや商品組成部門とすれば、顧客情報管理やポジション管理を含めたリスク管理部門等は守りの分野と言えるかもしれない。

6月23日、新垣結衣さんや綾野剛さん主演の日曜劇場「空飛ぶ広報室」(TBS系)の最終回が10分拡大版で放送された。

ドラマは、今年映画化された「図書館戦争」シリーズや「フリーター、家を買う。」などで知られる有川浩さんの人気小説が原作。航空自衛隊航空幕僚監部総務部広報室などが舞台で、空自の全面協力の下、毎話、航空機やヘリが登場するというかつてない試みだった。共演には、柴田恭兵さんのほか、筆者の故郷である「うどん県副知事」の要潤さんらが出演。

筆者も全話視聴したが、自衛隊の広報活動も大きく変化したと感じる作品だ。なお、同広報室はHPもあり、実在するようだ。

今日、色々な面で、情報活動、広報活動は変化を遂げ、リスクも大きくなっているが、リターンも大きい時代に突入しているように思われる。

末澤 豪謙 プロフィール

末澤 豪謙

1984年大阪大学法学部卒、三井銀行入行、1986年より債券ディーラー、債券セールス等経験後、1998年さくら証券シニアストラテジスト。大和証券SMBC金融市場調査部長、SMBC日興証券金融市場調査部長等を経て、2012年よりチーフ債券ストラテジスト。2013年より金融財政アナリスト。2010年には行政刷新会議事業仕分け第3弾「特別会計」民間評価者(事業仕分け人)を務めた。日経債券アナリストランキング、14年連続10位内ランクイン。日経財政アナリストランキング2位(2004年〜2006年)。財政制度等審議会委員、国の債務管理の在り方懇談会委員、地方債調査研究委員会委員。趣味は、映画鑑賞、水泳、スキューバダイビング、アニソンカラオケ等。

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