アナリストの忙中閑話【第27回】

アナリストの忙中閑話

(2013年8月20日)

【第27回】猛暑と映画、事実は小説より危なり

金融経済調査部 金融財政アナリスト 末澤 豪謙

今夏は四万十で過去最高気温を記録

今夏の猛暑は、記録的だ。今年は7月6日関東甲信地方で、同月8日には九州・四国・中国・近畿・東海で梅雨が明けたが、関東甲信では平年より15日、昨年より19日も早かった。

また、最高気温も、8月12日には高知県四万十市で国内観測史上最高となる41.0度を記録。2007年8月16日に埼玉県熊谷市と岐阜県多治見市で観測した40.9度を6年ぶりに更新した。四万十市と言えば、最後の清流と呼ばれる四万十川が有名だ。むしろ、避暑地的な響きがあるが、過去最高気温を観測した江川崎地区は四万十川の上流の谷間にあり、フェーン現象的に四国山地を超えて吹き下ろした暖かい空気がこもったことで高温となったようだ。

温暖化の影響で、梅雨前線が北上?

ただ、筆者には思い当たる節がある。
筆者の出身地は香川県。さぬきうどんで有名な日本で最も狭い県だ。面積は1,876平方キロメートルしかなく、日本の面積(377,950.10平方キロメートル)の約0.5%しかない。国内で最も面積の大きい北海道と比較すると、42分の1の大きさ。

その香川県で、もうひとつ有名なのが「ため池」だ。代表的なものは、空海が造成・修復に携わったとされる日本最大の満濃池だが、県内にはため池が数多く見られる。「ため池」数上位は、1位兵庫県、2位広島県、3位香川県、4位山口県、5位大阪府(2001年)で、何れも夏に雨の少ない瀬戸内海式気候だ。

但し、香川県に関しては、筆者が中学生時代の1974年に、徳島県・高知県・愛媛県の協力のもと、讃岐山脈にトンネルを掘り、四国三郎こと吉野川から水を引く「香川用水」が完成。当時、今後は夏の水不足の心配は無用と学校の授業で説明を受けた。
しかし、近年、地元では夏の水不足が再燃している。

吉野川総合開発事業で建設された早明浦ダムの貯水率は、8月19日午前11時現在で31.8%と、深刻な状況にある。19日午前9時からは、香川用水への供給量を50%カットする第3次取水制限に入った。3次制限入りは、2009年以来、4年ぶりのこととなる。

四国の水がめである早明浦ダムの底が見えるシーンはよくテレビでも放映されるが、近年、四国は瀬戸内側のみならず、太平洋側でも梅雨にあまり雨が降らないのだ。背景には温暖化のためか、梅雨前線の北上が関係していると考えられる。

以前、東京は梅雨が長く、7月一杯は雨の日が多かった。但し、今年の梅雨明けは7月6日だ。一方、北陸、東北地方の今年の梅雨明けは、8月3日と平年比6(〜)10日遅い。

梅雨前線の北上が早い関係で、本州南部や四国・九州では空梅雨になりやすく、北陸・東北では豪雨被害が発生しやくなっていると考えられる。

前述の四万十市での最高気温記録も、空梅雨の影響が大きい。今後とも、本州以南では猛暑に注意が必要だろう。

猛暑には映画鑑賞がお薦め

さすがに、35度を超える猛暑日となれば、屋外での活動は健康上も問題だ。特に都会では、ヒートアイランド効果もあって、日陰でも蒸し風呂状態だ。こうした日は、室内での映画鑑賞がお薦めと言えそうだ。
ということで、今回は、夏のお薦め映画をご紹介したい。

「風立ちぬ」と「終戦のエンペラー」

前回号以降、筆者が鑑賞した映画のうち、邦画では、「真夏の方程式」と「風立ちぬ」が良かった。

「風立ちぬ」は宮崎駿氏が原作・監督・脚本を務めたアニメーション作品。マスコミでは、喫煙シーンの多さが話題になっているが、宮崎アニメには珍しく、零式艦上戦闘機を設計した堀越二郎という現実に存在した人物が主人公となっている。

同作品は、結論を急がない、ストレートな物言いが少ない、然るにじわーとした極めて日本的な余韻が残る映画だ。いろいろな意味で宮崎アニメの集大成的な映画と言えるのではないか。

一方、洋画は、「モンスターズ・ユニバーシティ」、「ワールド・ウォーZ」、「ローン・レンジャー」、「パシフィック・リム」、「スター・トレック イントゥ・ダークネス」(先行上映)といった、「お化け、怪獣、宇宙人」を題材とした、これぞ夏休み映画の大作が続々封切られているが、今年の作品はどれも見ごたえがあった。

なお、8月は15日が終戦の日だが、現在、公開中の「終戦のエンペラー(原題:EMPEROR)」は、英国人監督の下、米国映画として製作された終戦直後の日本及びGHQ(連合国軍最高司令官総司令部)を舞台とした映画だ。

米国映画ではあるものの、製作スタッフには企画を持ち込んだ奈良橋陽子氏ら日本人も多く、時代考証はしっかりしている。マッカーサー元帥役には缶コーヒーのCMでおなじみのトミー・リー・ジョーンズを配し、有名日本人俳優も要所に起用され、映像的にも飽きない。但し、一番、興味深かったのは、日本人の心の奥底を米国人が理解するのに苦悩する場面だ。同映画によると、最終的には日本通のフェラーズ准将の熱意とマッカーサー元帥の政治決断で日本の戦後処理は大きな混乱なく開始されることとなるが、両氏がいなければ、戦後の歴史が大きく変わっていたかもしれない。

戦前・戦中・戦後史を巡っては、今なお、内外で議論が続いているが海外、特に米国がどのような視点で、当時の日本及び日本人を見ていたかを確認するには有意義な映画と言えそうだ。

「ホワイトハウス・ダウン」が現実に?

なお、前回号で取り上げた「ホワイトハウス・ダウン」も面白い。今年は、3月封切りの「エンド・オブ・ホワイトハウス」(原題:OLYMPUS HAS FALLEN、日本6月公開)と「ホワイトハウス物」が2連作続いた。ストーリーはよく似ているが監督の個性が出ていて、双方見比べるとより興味深い。

ちょうど、1998年に公開された「アルマゲドン」と「ディープ・インパクト」の関係に似ている。当時は、ヘール・ボップ彗星の通過等もあり、ディザスター映画としては、隕石物が旬だったのかもしれないが。今回は米国の中枢が危機の舞台となる設定だ。

但し、ホワイトハウス炎上は、オバマ大統領にとっては人ごとではないかもしれない。
前回号でも触れたように、NSA問題で大統領の支持率が低下する中、秋には重要なイベントを控えているからだ。

現在、米議会は9月7日までは、夏季休会だが、9月には財政問題が噴出する可能性が高い。

既に3月1日から、10年で1.2兆ドルの歳出削減のトリガー条項が発動され、7月からは米国防総省の文民65万人に対し週に1度レイオフ(一時帰休)が実施されている。当該職員にとっては給与が2割減となる計算だ。また9月末までに、2014会計年度予算(本予算ないし暫定予算)を成立させないと10月以降、ガバメント・シャットダウン(政府窓口閉鎖)のリスクが高まることとなる。米政府の債務上限の引き上げも未解決のままであり、10月頃には、米政府の資金繰りが枯渇する可能性がある。

そうした中、早ければ9月には、米量的緩和の縮小がスタートする。背景にはバーナンキFRB議長の任期(2014年1月)問題もあり、オバマ大統領は9月頃には後任を指名する必要がある。市場で有力視されているイエレン副議長やサマーズ元財務長官は上院での承認が難航するおそれもある。現在の米上院の構成は民主党の55議席(無所属2含む)に対し、共和党は45議席だ。米上院での承認には、議事妨害(フィリバスター)に対抗するクローチャー決議のため、実質的に100人中60人の協力が必要となる。金融緩和派のイエレン副議長には共和党の反対が強いのに対し、サマーズ氏には民主党内で敵が多い。オバマ大統領は、あと2名程度、有力な候補が存在するとしているが、場合によっては、ガイトナー元財務長官らが浮上する可能性もありそうだ。ちなみに、オバマ大統領、ガイトナー氏は、何れも筆者と同じ1961年8月生まれ。

支持率の低下傾向に歯止めをかけられず、2014年の中間選挙で敗退することとなれば、完全にレームダック政権となろう。

オバマ大統領にとっては、今後、年末に向けて、ホワイトハウスを炎上(ダウン)させるのではなく、どうやって人気をアップさせるかが、最大のミッションとなりそうだ。

「ホワイトハウス・ダウン」や「エンド・オブ・ホワイトハウス」では、味方の裏切りはあるものの、「ダイ・ハード」ばりの有能な警護官の活躍で、大統領は九死に一生を得、支持率は回復、たぶん再選を果たすこととなる。

米国経済、ひいては、オバマ大統領にとって、新たなFRB議長は、有能な警護官になりうるのだろうか。金融市場においても、暫くは目を離せないと言えそうだ。

冒頭の話題に戻ると、我が国を含め地球全体の環境も地震、火山の爆発、猛暑、洪水と毎年、変動率が拡大しているように思われる。

「事実は小説よりも奇なり」と言うが、ホワイトハウスや地球環境にとっては、「事実は小説よりも危」かもしれない。

末澤 豪謙 プロフィール

末澤 豪謙

1984年大阪大学法学部卒、三井銀行入行、1986年より債券ディーラー、債券セールス等経験後、1998年さくら証券シニアストラテジスト。大和証券SMBC金融市場調査部長、SMBC日興証券金融市場調査部長等を経て、2012年よりチーフ債券ストラテジスト。2013年より金融財政アナリスト。2010年には行政刷新会議事業仕分け第3弾「特別会計」民間評価者(事業仕分け人)を務めた。日経債券アナリストランキング、14年連続10位内ランクイン。日経財政アナリストランキング2位(2004年〜2006年)。財政制度等審議会委員、国の債務管理の在り方懇談会委員、地方債調査研究委員会委員。趣味は、映画鑑賞、水泳、スキューバダイビング、アニソンカラオケ等。

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