アナリストの忙中閑話【第28回】

アナリストの忙中閑話

(2013年10月7日)

【第28回】祝、2020年夏季オリンピック東京開催決定、半沢直樹とウルヴァリン

金融経済調査部 金融財政アナリスト 末澤 豪謙

2013年9月は、その月に撮られた映像が我が国のスポーツやエンターテイメントの歴史に深く刻まれる月に

日本時間9月8日(日)早朝、ブエノスアイレスで開催された国際オリンピック委員会(IOC)総会で、当時のジャック・ロゲ会長が発した「トウキョウ」の一言は、日本全国を歓喜の輪に包み込むこととなった。ややトーンの高いその言葉は、少なくとも2020年の夏(オリンピック開催期間:7月24日(〜)8月9日、パラリンピック開催期間:8月25日(〜)9月6日)まで、繰り返しテレビ等で視聴されることとなろう。

1回目投票では一瞬ヒヤリとさせられたが、決戦投票では東京が圧勝

但し、1回目の投票では、IOC会場の画面に東京の名前がなく、一瞬ヒヤリとさせられた。実は東京は第1位の42票を得たものの、イスタンブールとマドリードが26票でタイとなり、最下位決定の投票が行われることとなったため、両国の名前が画面に残ったのが真相だ。2回目の投票結果はイスタンブールが49票で、マドリードの45票を上回り、東京との決戦投票に臨むこととなった。決戦投票では、東京が過半数の49票を大きく上回る60票を獲得、最終的に開催権を得た。

東京では1964年以来56年ぶり2回目の夏季オリンピック開催。1972年の札幌、1998年の長野の冬季オリンピックを含めれば、日本で4回目のオリンピック開催となる。

東京の勝因は、イスタンブールの治安問題、マドリードの財政問題に加え、プレゼンテーションの大成功

2020年夏季オリンピックの開催地に関しては、春ごろまでは、「イスラム圏初、アジアと欧州の懸け橋」を謳うイスタンブールが最有力とみられていた。筆者も、猪瀬知事の失言もあって、4月にはほぼ諦めていたのは事実だ。

しかし、その後、反政府デモの発生に加え、隣国シリアの内戦が泥沼化するに到り、イスタンブール開催の可能性は低下した。

6月に公表されたIOC評価報告書でも、イスタンブールは治安問題、マドリードは財政問題に対し、大きな懸念が示されていた。対して東京は、メリットとして①コンパクトで移動時間が少ない、②約4,000億円の基金をはじめとする強固な財政基盤、③非常によく練られた安全性、④宿泊施設の多さ、⑤世界で最も優れた交通システム、⑥国による強固な支援等が挙げられたのに対し、デメリットは①ホテルの値段の高さ、②射撃とゴルフ会場は移動時間が比較的長い等、限られていた。

2014年ソチ冬季オリンピックや2016年のリオデジャネイロ夏季オリンピックでの競技施設やホテル建設の遅れが、実績のある東京に有利に働いたとも言えそうだ。

また、2024年夏季オリンピックの開催地に1924年の前回開催から100周年を記念してフランスのパリが、さらに、2022年冬季オリンピック開催地にドイツのミュンヘンが立候補するとの観測も、欧州票が東京に流れた要因と考えられる。

その他にも、総会最終日の10日に実施されたIOC会長選が東京に有利に働いたとの見方もある。最有力とみられ、実際に当選したバッハ副会長はドイツ出身であり、かねてから東京支持とみられていた。同じIOC総会で、オリンピック開催地と会長は同じ大陸から選出されにくいことも、欧州票が東京に流れた要因と考えられる。

ただ、東京も土壇場で東京電力福島第一原発の放射能汚染水漏れ問題が欧米のマスコミで大きく取り上げられ、ネガティブ材料となったが、この点は最終のプレゼンテーションで安倍首相が安全面を保証したことで、票離れに繋がらなかったとみられる。

また、IOCの第1公用語であるフランス語を多用したり、選手自身の障害や被災経験などを率直に語ったプレゼンテーションがIOC委員から高く評価されたことも大きな勝因と言えそうだ。

東京開催は2度目、複数開催経験のある都市としては5都市目

東京での開催は2度目となる。過去、2度以上のオリンピック開催経験のある都市は、ロンドン(3回)、パリ(2回)、ロサンゼルス(2回)、アテネ(2回)に続いて5都市目。

東京オリンピックは2020年7月24日から8月9日まで開催

日本オリンピック委員会(JOC)と東京2020オリンピック・パラリンピック招致委員会は、オリンピックを2020年7月24日(金)から8月9日(日)まで、パラリンピックを同年8月25日(火)から9月6日(日)まで開催する計画だ。

競技数は前者が28競技、後者が22競技。なお、未定となっていた28種目目のオリンピック競技には、第1回大会から実施されているレスリングが存続することとなった。

1964年の東京オリンピックの記憶

前回東京オリンピックが開催されたのは1964年10月10日から24日だ。

当時、筆者は3歳になったばかり。さすがにライブでの競技の記憶はないが、祖母に連れられて訪れた自宅近くの地方銀行の支店で、オリンピック記念の100円銀貨を両替した思い出が残っている。

普通3歳児の記憶は薄れていくものだが、100円記念硬貨を大事に持っていた記憶だけは今なお鮮明だ。

その理由はこうだ。1964年以降もオリンピックは4年に一度、冬季も含めると1994年以降は2年に一度実施されてきた。そのたびに、東京オリンピックの映像もテレビ・新聞に大写しにされる。少なくとも4年に一度は記憶がリニューアルされてきたことが、幼児の記憶が今なお残っている要因と考えられる。

2024年大会以降は、開催権獲得競争が激化へ

2024年以降は、オリンピックの開催権の獲得は一段と困難になるとみられる。東京同様、複数回の開催を狙う都市の立候補が増えるとともに、インフラの整った新興国の立候補も急増すると予想されるからだ。

2020年の開催地に立候補して敗れたイスタンブール(トルコ)、マドリード(スペイン)に加え、一次選考で落選したドーハ(カタール)、バクー(アゼルバイジャン)、また、立候補後に欧州財政危機で断念したローマ(イタリア)も、手を挙げる可能性がある。さらに、前述のように2012年大会で最有力とされながら敗れたパリや、やはり2012年大会に立候補したニューヨーク、2016年大会の当初最有力候補とされたシカゴといった米国勢が続々と名乗りを上げる可能性がある。米国とIOCでは永年、オリンピック収入の分配比率問題が争点となっていたが、同問題が最近解決し、今回のIOC総会ではUSOCのラリー・プロブスト会長がIOC委員に就任し、米国のIOC委員は4人となった。

こうした状況から、2020年大会の次に日本で開催される夏季オリンピックは、当分見通せない。筆者にとっては、2020年大会がこの目で見ることのできる最後の大会となる可能性が高い。家族とともに一生の記憶として、深く刻み込みたいと考えている。

1964年の東京オリンピックは、戦後復興、高度成長の象徴

一方、1964年の東京オリンピックは、戦後復興、高度成長の象徴として位置づけられることが多い。

実際、10月10日の東京オリンピック開催直前の10月1日に東海道新幹線(東京-新大阪間)が開通。東京国際空港(羽田空港)も拡張され、同空港と浜松町を結ぶ東京モノレールも1964年9月17日に開業している。

1959年5月の東京オリンピック開催決定直後の同年6月に誕生した首都高速道路公団は、オリンピック開催決定を受けて工事を迅速化。1962年12月には、首都高初の京橋-芝浦間4.5kmが開通し、オリンピック開催前に順次、区間が拡大した。名神高速道路も1963年7月に栗東-尼崎間で日本初の都市間高速道路として開通。

東京では、いわゆる「環7」(東京都市計画道路幹線街路環状第7号線)は駒沢競技場などと羽田空港を結ぶ幹線道路として、「六本木通り」(東京都市計画道路幹線街路環状第7号線)は千代田区と、選手村や国立代々木競技場、東京体育館のある渋谷区を結ぶ幹線道路として、オリンピック開催前に開通している。

招致委試算の東京オリンピックの経済波及効果は約3兆円、雇用増15万人

2020年東京オリンピックは、我が国に何をもたらすのであろうか。

東京2020オリンピック・パラリンピック招致委員会では、東京オリンピックの経済波及効果について、約3兆円との試算を弾いている。雇用増は約15万人。対象期間は2013年(〜)2020年。2012年の試算であり、今後再算定の予定。

経済波及効果については、投資や消費⇒生産⇒付加価値(所得)⇒消費⇒生産⇒付加価値(所得)までの第2次間接波及効果までを対象とし、2005年東京都産業連関表を利用し、算出されている。

需要増加額1.2兆円のうち、資本投資(施設整備費)3,557億円は2020年大会で用いられる予定の競技会場や選手村などの大会関係施設のみを対象とし、大会開催の有無に関わらず整備される道路や鉄道等のインフラ整備費は対象外とされている。

消費支出には大会運営費3,104億円は開閉会式、競技運営、輸送・セキュリティ費用等。その他5,578億円は大会関係者や観戦客の消費支出(交通費、宿泊費、飲食費、買物代等)及び家計消費支出(オリンピックグッズやテレビの購入費)など。

波及効果は、インフラ整備と観光立国化で大きく変化、10倍返しも

招致委はこの数字に関し、特にインフラ関係に関しては、控え目な数字としている。

東京都はオリンピック誘致に向け、石原都政下に約4,000億円の基金を用意しているが、箱物に税金を使っているとの批判をおそれ、施設整備費は大会関係施設のみが対象とされている。

実際には、道路や鉄道等のインフラ整備費が相当額必要になると考えられる。

1964年当時とは比較できないものの、今回の大会施設は選手村を含め、中央区や江東区の東京湾臨海部に集中する。当該地区とメインスタジアムとなる新国立競技場(新宿区)や羽田空港、成田空港等との移動手段の整備が課題となろう。

1964年大会にはなかったパラリンピックも2020年大会では開催される。バリア・フリー等、障害者や高齢者向けの歩道、エレベーター等の整備も今回は必要だ。

また、依然、海外観光客にとっては大きな不安要因となっている地震・津波対策も徹底する必要があろう。

さらに、海外の選手団に加え、オリンピックに合わせて来日する外国人観光客へのハード・ソフト両面でのサポートが重要だ。今後、彼らが観光客としてリピーター化することが、政府が掲げる「訪日外国人3,000万人プログラム」(2012年実績835万8,105人、日本政府観光局)、「観光立国」実現のための最低条件となろう。

政府は、同プログラム実現のためにビジット・ジャパン(VJ)事業を展開しているが、今後は、オリンピック招致を起爆剤にして、次元の異なる観光政策が必要となりそうだ。

「異次元カンコウ」政策が重要

筆者は、我が国が中長期的に抱えている最大のリスクは、新興国の台頭等グローバル化と少子高齢化の2つと考えている。

「観光立国」は、その2つのリスクを軽減する大きな武器ともなりうる。

新興国の台頭、生活水準の向上は、我が国でもみられたように、膨大な外国観光需要を生み出すこととなる。

しかも、今後の観光は、箱物や自然遺産だけではなく、食やスポーツ、芸術等のアクティビティ、ソフト面が重要となろう。実際、リピーター化には、ソフト面の充実は欠かせない。「百聞は一見に如かず」と言うが、単に歴史的建造物や自然遺産を見るだけなら、一度の来日で十分だ。但し、そこで、アートを楽しんだり、山登り、海水浴、スキー、ゴルフとなれば、何度でも来日は可能だ。

特に、1日通常3回も摂取する「食」は重要だ。筆者も年に数回海外を訪れ、延べ20数カ国を訪問したが、日本ほど「食」が充実している国はない。味、見た目、サービス、料金に加え、バラエティーの面でもダントツだろう。基本的に毎日外食しても飽きない食文化と店が存在する。

料理は高齢者でも相当程度可能だ。脱サラ後に料理店を開いたり、趣味で料理学校に通う風景もよくみられる。また、海外でも我が国でも、ガイドが高齢者のケースは多い。高齢化対策としても、観光産業の振興は今後、肝要だろう。

日本の味を海外に上手く売り込めれば、毎年ないし毎シーズン、日本を訪れる外国人観光客が急増するのは間違いないのではないか。

特に「晴海」に設置される選手村は、「銀座」からは徒歩圏内だ。筆者の足だと選手村から30分程度かかるが、オリンピック選手なら20分程度か。是非、アスリートには、選手村に設置される食堂以外でも日本の味を堪能してもらいたいものである。

そのためには、成田及び羽田の各国際空港の拡張・整備に加え、空港と都心とのアクセス改善、外国語での施設及び道路の表示等の充実が欠かせない。このあたりは、お隣の韓国や中国、香港、シンガポール等を見習う点が大きいと言える。何れも、国際便の数も多く、都心までのアクセスもしっかりしている。

「観光立国」を単なるお題目にせず、「異次元カンワ」政策ならぬ、「異次元カンコウ」政策の導入が重要となろう。政策効果が上手く発揮されれば、経済効果も3兆円の「倍返し」どころか「10倍返し」も可能ではないか。

「倍返し饅頭」と「次郎飴」が人気化

「倍返し」と言えば、今、東京赤坂のTBS本社などに設置されているTBSストアでは「倍返し饅頭」が東京土産として人気を集めている。

筆者は9月末に金沢に出張したのだが、当地の「あめの俵屋」で販売している「次郎飴」にも観光客が列をなしていた。

何れも、9月22日に最終回を迎えたTBS系日曜劇場「半沢直樹」(午後9時)の関連商品だ。

関東地区の平均視聴率は平成の民放ドラマでトップを記録、関西地区では民放ドラマで過去最高

9月の映像の記憶と言えば、「半沢直樹」抜きには語れない。9月22日の最終回(第10話)の平均視聴率は関東地区で42.2%、関西地区で45.5%となった(ビデオリサーチ社調べ)。

ビデオリサーチによると、関東地区の平均視聴率(42.2%)は、同日までの今年のテレビ番組の視聴率では最高で、1989年以降の平成の民放テレビドラマのなかでトップとなった。

オンライン調査が始まった1977年以降に放送された民放テレビドラマのレギュラー番組の視聴率(関東地区)では、「積木くずし・親と子の200日戦争」の45.3%(1983年3月29日)、「水戸黄門」の43.7%(1979年2月5日)、「日曜劇場・女たちの忠臣蔵」の42.6%(1979年12月9日)に次いで4番目の高さ。ただ上位3位は、いずれもテレビが娯楽の王様だった頃の30年以上前の作品。

ちなみに、関西地区の平均視聴率45.5%は民放テレビドラマでは過去最高。

瞬間最高視聴率は、関東地区では46.7%、関西地区では何と50.4%と50%の大台を超えた。

同シーンは、父親を自殺に追い込んだ大和田常務に「100倍返し」を成功させたが、中野渡頭取から、東京中央銀行の子会社である東京セントラル証券への出向を命じられ、半沢が眉間にしわを寄せるクローズアップシーンの直後。

また、関東地区では、第1回放映以降一度も視聴率が低下しないという記録も作り上げた。

半沢人気の秘密

「半沢直樹」は、堺雅人さん演じるメガバンク(東京中央銀行)の行員が上司や国税庁・金融庁など内外の圧力と対決するドラマ。

原作は、直木賞受賞作家・池井戸潤氏の「オレたちバブル入行組」と「オレたち花のバブル組」。

高視聴率の一端は、半沢直樹の「やられたらやりかえす。倍返し、いや10倍返しだ!」という決め台詞に多くの視聴者がしびれていることが挙げられる。

「半沢直樹」は隣の中国でもネット等で注目を浴びているようだ。ちなみに「やられたらやりかえす。倍返しだ」は、中国語では「人若犯我、必然加倍奉還」とのこと。

池井戸潤氏はTBSのホームページで同ドラマに関し「相手が上司だから、顧客だから、度胸がないから──。いろんな理由で、反論したくてもできなかった理不尽な経験は誰にだってある。思わず唇を噛んだその悔しさを、半沢直樹が晴らしてくれる。基本は性善説。やられたら、倍返し──。サラリーマンは決して、真似をしてはいけない」と綴っている。

高視聴率の背景として、第1に、主演の堺雅人さんに加え、半沢の同期の渡真利忍役の及川光博さん、同じく同期の近藤直弼役の滝藤賢一さん、東京中央銀行の大和田常務を演じる香川照之さん、同行の中野渡頭取を演じる北大路欣也さん、大阪国税局査察部統括官(東京編では金融庁主任検査官)の黒崎駿一を演じる片岡愛之助さんら、キャラの濃い俳優が名演を繰り広げたことが挙げられる。

第2に、「半沢直樹」は人物名だが、通常、我が国の番組で人物名がタイトルにつくのは、「水戸黄門」「大岡越前」「遠山の金さん」など時代劇か、「NARUTO」「ルパン三世」「サザエさん」といったアニメだ。「半沢直樹」は原作以上により劇画的な作りとなっている。映像と音楽がマッチし、ムードを盛り上げている。出演者も大体、顔つきで悪役の判別がつくように単純化されている。「不良債権」や「金融庁検査」という一般人にはわかりにくいテーマも、ドラマにおいてフリップで説明されており、ストーリーがわかりやすい。

第3に、第2の理由とも関係するが、明日から仕事が始まるという日曜夜9時からという「憂鬱」な時間帯に視聴者を「元気」づけてくれることだ。あれだけ逆境にある半沢は最後までめげずに頑張り、最後は「勧善懲悪」で終わる。安心して眠れるといった点か。

「半沢直樹」続編に期待

ドラマ「半沢直樹」は筆者に懐かしい記憶とともに、様々な思いを感じさせた。

第1に、半沢が大阪で勤務していた東京中央銀行大阪西支店は、ドラマでは阪急ビルに入居している設定だ。筆者の入行店は大阪の梅田支店であったが、同支店は当時、新阪急ビルに入居しており、筆者は都銀入行2年目の時、融資課に配属されていた。ドラマでは中島裕翔さん演じる中西英治役か。

第2に、半沢は東京に転勤し、本店営業第二部の次長に就任する。東京中央銀行の本店はドラマでは東京・日本橋にある旧三井本館が使われている。但し上層階はCG。筆者はかつて同ビルに勤務し銀行の営業第二部で調査役として大企業取引を担当していた経験がある(同ビルは筆者が勤める銀行の旧本店ビルでもあった)。こちらはドラマでは牧田哲也さん演じる小野寺順治役か。

第3に、ドラマの第6話や最終話などには、岸川取締役(森田順平さん)邸として、瞬時だが東京湾岸部にある筆者の自宅マンションが映っている。最終話では半沢と金融庁主任検査官の黒崎(片岡愛之助さん)が筆者自宅近隣のマンション玄関で対峙するシーンも登場した。

第4に、最終話終盤で半沢が同期の渡真利(及川光博さん)、近藤(滝藤賢一さん)とビールを酌み交わすシーンは、筆者の現勤務先のビル(7階?)で撮影されている。

第5に、最終話で頭取から告げられる半沢の出向先は、筆者の現勤務先同様、銀行の子会社である証券会社だ。

最後に、「半沢」の「半」、上下ひっくり返すと「末沢」となる。

ここまで、筆者を含め視聴者の興味を集めたからには、「半沢直樹」続編に期待する他なさそうだ。続編があるとすれば、原作は池井戸潤氏の「ロスジェネの逆襲」となろうが、第1作同様、原作を超えた新展開にも注目したい。

そして、2020年の東京オリンピックに向け、我が国及び我が国経済が良い意味で世界に「逆襲」する機運を盛り上げてもらいたいものである。

「ウルヴァリン・SAMURAI」の日本ロケは、ハリウッド映画として史上最大規模

今回は、ニュース映像とテレビドラマをとりあげたが、9月に視た映画では、「ウルヴァリン・SAMURAI」が印象に残った。

アメコミを原作にした内容には好き嫌いがあろうが、舞台はほとんど日本。新幹線(やや内装等は異なるが)でのアクションシーンに加え、東京の街並み、増上寺、新宿、上野、秋葉原のパチンコ店等をウルヴァリン役のヒュー・ジャックマンが駆け巡る。

また、本作の特徴は、英語版でも日本語のシーンが多いことであり、配給元の嫌がる英語字幕が多いことだ。

俳優陣も、従来のハリウッド映画と違い大半がネイティブな日本人を使っている。特に、日本人女優陣の活躍は、最近のハリウッド英語の特徴とも言える。同作の主演女優であるモデルのTAOさんや、共演のモデルの福島リラさんも大きな存在感を発揮していた。

同作に出演している真田真之さんや「インセプション」や「ラスト・サムライ」などに出演した渡辺謙さん含め、ハリウッドでも最近、日本人男優の地位が向上してきたが、今年は8月公開の「パシフィック・リム」で主演女優をこなした菊池凜子さんなど、女優陣の活躍も光る。

背景には「ウルヴァリン・SAMURAI」の監督のジェームズ・マンゴールド監督や「パシフィック・リム」のギレルモ・デル・トロ監督など、日本映画やアニメなどのマニアが監督で活躍していることが挙げられる。

既にシニアとなった「スターウォーズ」シリーズのジョージ・ルーカス監督や「ジュラシック・パーク」シリーズのスティーブン・スピルバーグ監督を含め、映画の世界では親日家は多いが、筆者のようなアニメ世代の監督・製作者の地位がハリウッドでも向上してきたことで、今後、日本を舞台にした映画を撮ろうという監督はどんどん増えてくるものと予想している。

「ウルヴァリン・SAMURAI」の日本ロケは、ハリウッド映画として史上最大規模と言われている。

筆者の記憶では、時代は異なるが1967年封切り007シリーズ第5作「007は2度死ぬ」(ルイス・ギルバート監督)以来か。他に大阪を舞台とした映画ではあるが、1989年封切りの「ブラック・レイン」(リドリー・スコット監督)が思い出される。

実は、前述の新幹線でのアクションシーンは、様々な制約からオーストラリアで撮られたとのことだが、次回は是非、乗降シーンだけでも、日本で実際の車両を使っての撮影を期待したい。報道によると、今回もJR東日本の協力でもう一歩のところまで行ったとのこと。

2020年の東京オリンピック開催とともに、国内映画の海外配給や海外映画の日本ロケ誘致も、観光立国化の重要なツールに

一方、9月27日には、橋田壽賀子原作のテレビ小説を映画化した「おしん」(冨樫森監督)が中国本土最大の映画祭である第22回「金鶏百花映画祭」の国際映画部門で日本映画初となる最優秀作品賞を受賞した。

また、9月28日には、福山雅治さん主演の「そして父になる」(是枝裕和監督)がドリームワークス製作でハリウッド版がリメークされることが明らかになった。同作品は5月に「第66回カンヌ国際映画祭」で審査員賞を受賞している。ドリームワークスは、スティーブン・スピルバーグ監督らが設立した映画会社。

政府は、2030年に「訪日外国人3,000万人プログラム」(2012年実績835万8,105人、日本政府観光局)を掲げ、「観光立国」は成長戦略の政策の一つの柱となっている。

2020年の東京オリンピック開催とともに、国内映画の海外配給や海外映画の日本ロケ誘致も、日本に外国人観光客を呼び込むための重要なツールになりうるのではないだろうか。

末澤 豪謙 プロフィール

末澤 豪謙

1984年大阪大学法学部卒、三井銀行入行、1986年より債券ディーラー、債券セールス等経験後、1998年さくら証券シニアストラテジスト。同投資戦略室長、大和証券SMBC金融市場調査部長、SMBC日興証券金融市場調査部長等を経て、2012年よりチーフ債券ストラテジスト。2013年より金融財政アナリスト。2010年には行政刷新会議事業仕分け第3弾「特別会計」民間評価者(事業仕分け人)を務めた。財政制度等審議会委員、国の債務管理の在り方懇談会委員、地方債調査研究委員会委員。趣味は、映画鑑賞、水泳、スキューバダイビング、アニソンカラオケ等。

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