アナリストの忙中閑話【第37回】

アナリストの忙中閑話

(2014年7月24日)

【第37回】USJでハリー・ポッターの世界を満喫、第一次世界大戦100周年、戦争と平和

金融経済調査部 金融財政アナリスト 末澤 豪謙

今夏は平年並みの暑さか、但し、スコールと台風には注意

今週22日(火)、関東・甲信で梅雨が明けた。気象庁によると、梅雨明けは、平年比では1日遅く、昨年比では16日遅かった。21日の海の日には、近畿・東海でも梅雨が明けているが、こちらは平年と同日だ。
今年の夏は、当初「エルニーニョ現象」の影響で冷夏との予測も出ていたが、同現象は秋以降に持ち越されそうなことから、ほぼ平年並みの暑さとなる可能性が高まっているようだ。梅雨明けは昨年比では、関東甲信では16日遅く、他の地域でも軒並み12(〜)15日遅い。昨年の夏が異常だった可能性が高い。
但し、今年も、「五月雨」的と形容されるような「ダラダラ」「シトシト」と断続的に続く梅雨ではなく、ゲリラ豪雨や雷雨、はたまた都内でも「雹(ひょう)」が広範囲に降ったりと、日本列島の亜熱帯化や極渦(きょくうず)の不安定化・偏西風の蛇行等、気象の異変を意識させるものが多かった。
超大型の台風も、沖縄(台風8号「ノグリー」)や中国南部(台風9号「ラマスーン」)に来襲するなど、「ディザスター(災害)映画」を地で行くような光景が至るところでみられた。
7月でこの状況だから、今後も台風や集中豪雨等への警戒を怠れないと言えそうだ。

ウィザーディング・ワールド・オブ・ハリー・ポッターがオープンしたUSJを訪問

海の日の3連休の一日を使って、大阪のユニバーサル・スタジオ・ジャパン「USJ」を訪れた。
USJ訪問は今回で4回目だが、今回のお目当ては今月15日にオープンした「ウィザーディング・ワールド・オブ・ハリー・ポッター」。
同エリアは、ハリー・ポッターの映画の世界を再現したものだが、予想以上の出来栄えに正直驚いた。ホグズミード村とホグワーツ城は、映画よりも若干ミニサイズなるも、雰囲気は映画そのまま。ホグワーツ城を巡りながら、最後にハリー・ポッターと空を駆け巡るアトラクションは、実際のライドの前に回遊する城内の装飾等が素晴らしいことから、もう少し並んでいたいと思わせるほどの出来栄えだ。
注意点は最後のライドは相当刺激的なこと。酒類等は控えた方が良さそうだ。USJはディズニーランドと違いアルコールが解禁されている。また、ディズニーシーとも違って、屋外でのビール等のワゴン販売も行っている。暑い「大阪の夏」は、ビールに最適なのだが、他のアトラクションもライド物が多いため、飲み過ぎには注意したい。なお、同エリアのみで販売している「バタービール」はノンアルコールなので問題はない。但し、甘い。
また、ハリーポッターのエリアは、現在、入場整理券が必要な状況となっている。確実に入場したければ、事前に「ユニバーサル・エクスプレスR・パス」(5ないし7、有料)か旅行会社が用意している入場確約券の予約が必要だ。筆者は朝9時過ぎに入場したが、パスは前日までに完売済で、入場整理券の時間は午後7時近くとなっていた。しかし、夜景は幻想的で、お薦めだ。
なお、お土産は、やや値がはるものの「魔法の杖」と「蛙チョコ 」か。お土産屋は大混雑しているので、「蛙チョコ」はワゴン販売を狙った方がよいかも。

商人の街、大阪が観光都市に変貌する時

筆者は、今から30年以上前に、大阪に住んでいたことがあるが、当時、大阪人は「大阪は商人(あきんど)の街で、観光は京都や奈良・神戸に任せたらええねん」的な感覚が強かったと記憶している。実際、当時、大阪城の周りは、戦時中の軍事工場(大阪工廠)の跡地が広がっており、観光客を東京や海外から呼び込もうという雰囲気は乏しかった。
当時、大阪に本社を置いていた大企業も多くが東京に移転、ビジネス面における過去30年間の大阪の地盤沈下は顕著だ。一方、空港は伊丹空港に加え、関西国際空港、神戸空港が開港。大阪市内も超高層オフィスビルが聳え、大阪城周辺や大阪湾岸等のレジャー施設も整備された。欧米の高級ホテルも多数開業、観光インフラはかつてとは比較にならないほど整備された。
また、賛否はあるものの、現在、国会で審議されている統合リゾート(IR)法案が成立すれば、大阪湾に浮かぶ夢洲(ゆめしま)が、カジノ等を有する我が国における統合リゾートの第1号となる可能性もある。
問題は、東京等関東圏の居住者や海外の観光客が関西を訪問しても、京都・奈良止まりで、大阪まで足を延ばすことが案外少なかったことにある。今回、ハリー・ポッター効果で、宿泊付の大阪観光が一般的となれば、「安い、うまい、早い」が定番の大阪の食文化やショッピングを楽しむことで、テレビで見る「お笑い」以外の大阪や関西の良さを実感する人が増えそうだ。
ちなみに、「【第35回】GW映画は「アナと雪の女王」が圧勝、成熟国としてのビジネスモデル」でお伝えしたように、ディズニーランドのシンデレラ城は、現在、フロリダのオーランドと東京にしかないが、ハリー・ポッターのアトラクションもやはり、オーランドと大阪にしかない(2015年にはハリウッドでもオープン予定)。
レジャーに目の肥えた日本で成功すれば、世界中で成功するというテスト・マーケティングの位置づけにあるのかもしれない。

2014年1-6月期の訪日外客数、前年同期比26.4%増の626万人と過去最多

日本政府観光局(JNTO)によると、2014年1-6月期の訪日外客数(推計値)は、前年同期比26.4%増の626万人と過去最多となったとのこと。通年では2013年の1,036万人が最多だが、このままのペースで推移すれば、今年は1,200万人台ないし1,300万人台に乗りそうだ。
政府は、東京オリンピックが開催される2020年に訪日外客数を2千万人に、2030年には3千万人に増やすことを目標としている。
然るに、東京圏のみならず、近畿、また、北海道、東北、北陸、中部、中四国、九州・沖縄等、日本の各地域が役割分担しつつ、それぞれの魅力を発信していかなければ、観光面での国際競争力やキャパシティの面でも目標達成は困難だろう。

2020年2千万人、2030年3千万人の目標達成には、日本全国の連携ときめ細かいマーケティングとサービスの改善が必要

ちなみに、ある意味当然であるが、USJの海外観光客は台湾や中国等アジアからが大半だ。欧米人の比率は少ない。一方、欧米人は神社仏閣等我が国の伝統的文化に興味を持つケースが多いがアジア人はそうでもない。むしろ、日本食やショッピングが目的のケースが多い。また、自国にない自然、富士山やスキー、マリンスポーツ等アクティビティを目的とする観光客が増えている。特に、リピーターにその傾向が強い。日本観光の目的は人種や民族・宗教、個人の趣味によっても大きく異なることから、TPOをわきまえた、きめ細かいマーケティングやサービスの改善が必要だろう。
まずは、大量輸送手段である新幹線等を活用した東西の観光地巡りを国内のみならず、海外の観光客に堪能してもらえるよう、ハードのみならず、ソフト面でも整備することが必要となりそうだ。筆者の提案は、アジア等物理的に近い国の観光客はなるべく地方空港に格安に誘致しつつ、欧米等の観光客は成田ないし羽田で入国し、関西から出国してもらう。及びその逆のケースを航空会社とJR等がコラボして、日本列島を横断的に観光してもらうことだ。
また、仮に2020年の東京オリンピックまでに、リニア新幹線が東京から山梨まで開通し、富士山観光の足として、活用できることとなれば、海外観光客には人気のコースとなろう。

7月28日で第一次世界大戦勃発100年

夏休み入りし、日本の観光地やプール・海等では、子供らの歓声が響いている今日だが、今から100年前の1914年7月28日、第一次世界大戦が勃発した。
きっかけは、1カ月前の6月28日、オーストリア・ハンガリー帝国の皇太子夫妻が現在のボスニア・ヘルツェゴビナの首都であるサラエボで、セルビア人民族主義者に暗殺されたことだ。
第一次世界大戦は、英国、フランス、ロシア帝国を中心とする連合国に対し、ドイツ帝国、オーストリア・ハンガリー帝国、オスマン・トルコ、ブルガリア等の中央同盟国が戦った当時としては史上最大の世界大戦。戦死者数900万人から1,000万人と推定され、英国等では、第二次世界大戦よりも戦死者数が数倍多い。なお、死者数では1850年に起こった「太平天国の乱」が約2千万人で当時は最多とされる。ちなみに、第二次世界大戦の死者数は諸説あるものの、軍人約1,700万人、民間人約3,300万人の5千万人超にのぼるとされている。
日英同盟を結んでいた日本は連合国側で参戦。
米国はいわゆる「モンロー主義」のもと、当初中立を決め込んでいたが、ドイツの潜水艦「Uボート」による民間船への無警告・無差別攻撃を含めた無制限潜水艦作戦の実施を受けて、連合国側に参戦したことで、最終的に連合国が勝利することとなった。

第一次世界大戦とスペイン風邪の死者を合計すると5千万人規模にのぼる?

一説には、スペイン風邪の大流行が終戦を早めた要因とされるが、スペイン風邪は米国の五大湖近辺が発生源であり、米軍の大戦参戦に伴い、欧州大陸に感染(コンテイジョン)。大戦下、パンデミック(大流行)となり、約5億人(諸説有)が感染、最終的に5,000万人(諸説有)近くが死亡したとされる。なお、第一次世界大戦の死者数にはスペイン風邪による死者も相当数含まれている。
第一次世界大戦はかつてない規模の人的・経済的損害をもたらしたことで、多くの帝政が崩壊。ロシア革命や独伊等におけるファシズムの台頭をもたらした。
特に、当時、敗戦国は、多額の賠償と領土の割譲を求められたことから、経済が困窮。その不満が第二次世界大戦の遠因となった。また、バルカン半島や中近東等、同盟国の領土であった地域は、連合国の植民地や衛星国と化すこととなり、その後の混乱は、ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争やコソボでの内戦、足元で起きているウクライナや中東等での混乱にも繋がったと考えられる。
ちなみに、ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争をテーマにした米映画には、今年日本で公開された「キリングゲーム」がある。
また、2001年に公開されたジョン・ムーア監督の「エネミー・ライン」は、停戦維持のため、ボスニア上空を警戒飛行中の米空母の艦載機がセルビア人武装勢力により、旧ソ連製の地対空ミサイルで撃墜されるところから物語が始まる。
地対空ミサイルの機種は、9K35「ストレラ-10」(NATOコード名:SA-13「ゴファー」)短距離地対空ミサイルと推定される。
前週、ウクライナ東部で悲劇的な事件が発生した。当初は3月に行方不明となったマレーシア航空機の残骸がようやく発見されたとのかと勘違いしたが、撃墜の可能性が高いとわかった段階で、筆者はなぜか、民兵的な武装勢力が技術的に高度な地対空ミサイルを安易に扱っている同映画のシーンを思い出し、陰鬱な気分となった。

「地政学的リスク」という暗雲が再度、内外の金融市場を覆うことに

20日(日曜日)夕方の関東の天候ではないが、前週末は「地政学的リスク」という暗雲が再度、内外の金融市場を覆うこととなった。
17日午後4時20分頃(日本時間17日午後10時20分頃)に、ウクライナ東部上空で、マレーシア航空MH17便のボーイング777旅客機が地対空ミサイルにより撃墜され、乗客乗員298人が全員死亡した。マレーシア航空(MH370便)は3月8日にも、乗客乗員239人を乗せたボーイング777機が、南シナ海で消息を絶っており、2重の悲劇に見舞われた形となった。
また、やはり17日深夜(日本時間18日早朝)には、イスラエル軍がパレスチナ自治区のガザを侵攻、地上戦を開始、その後の地上戦の拡大で、既にパレスチナ側で民間人主体に700人近くが死亡、イスラエル側も兵士主体に40人近くが死亡している。
一方、イランとP5プラス1との核協議は、今月20日の合意期限を前に、一定の進展があったとして、11月24日まで期限を延長して、協議が継続されることとなった。

17日のマレーシア航空機撃墜は、親ロシア勢力による誤射の可能性

欧米当局や国連の発表等を元に分析すると、マレーシア航空MH17便は、旧ソ連製の中距離地対空ミサイル9K37「ブーク」(NATOコード名SA11「ガドフライ」)を使用して、親ロシア武装勢力により撃墜された可能性が高い。
理由は、第1に墜落地点が、親ロシア勢力が実効支配するウクライナ東部ドネツク州のロシア国境近辺であること。ロシア当局も「ブーク」が使用された可能性を認めているが、「ブーク」は、ロシア軍(約350基「ミリタリーバランス2014」より)及びウクライナ軍(約60基同)が正式に配備しているものの、同機の射程は3,000(〜)32,000メートル)とみられ、親ロシア派が支配する地域から発射された可能性が高いからだ。
第2に、ウクライナ軍やロシア軍は、自国の防空システム(レーダーサイト網等)と連動して、地対空ミサイルを運用していることから、敵味方の識別や民間機の識別が可能であるが親ロシア勢力は防空システムを保有していない。同機は、当初からウクライナ領空とロシア領空を飛行する予定であり、両国の管制は同機の進路を把握していたものと推測される。
第3に、親ロシア勢力は6月頃までは、携行型の短距離ミサイルは保有していていたものの高高度を飛行する旅客機を撃墜できるような中距離ミサイルは保有していないとみられていた。但し、7月中旬以降、高高度を飛行中のウクライナ軍の輸送機や攻撃機が撃墜されており、7月以降、親ロシア派が中距離地対空ミサイルを入手した可能性が高いこと。
第4に、ウクライナ当局が公開した親ロシア派とロシア軍の情報機関GRU(ロシア連邦軍参謀本部情報総局)将校との会話とされる電話の内容や「ブーク」がトレーラーで運搬されている画像が、親ロシア派の誤射の可能性を示唆すること(この点はロシア側は否定)。
第5に、21日、ロシア軍参謀本部高官は会見で、ロシア政府が「ブーク」を親ロシア派に供与した事実はないと主張したが、同時に、マレーシア機が撃墜された同時刻、ウクライナ空軍のSU25が近くを飛行していた事実を公表、空軍機を狙った誤射の可能性を示唆したことだ。ちなみにSU25は基本的に地上兵力を対象にした攻撃機であり、空対地ミサイルや爆弾の積載が一般的である。空対空ミサイルの搭載も可能だが、射程の短い赤外線追尾式のミサイルであり、ウクライナ軍はレーダー管制システムを保有しており、目視可能な距離で民間機を誤射する可能性は低いと考えられる。
第6に、当時、ICAO(国際民間航空機関)は、ウクライナ東部上空を飛行禁止区間に指定はしていなかったものの、マレーシア航空以外の多くの航空会社、米航空会社や英BA、独ルフトハンザ航空等はルートを自主的に変更しており、親ロシア派は上空を民間機が通過することはないと思い込んでいた節がある。マレーシア航空MH17便も一部乗務員が飛行ルートが危険だとして搭乗拒否をしたとの報道があるが(20日付け英メール・オン・サンデー)、3月の事故の影響で経営が一段と悪化していたことから、燃料費節約のため、アムステルダムからクアラルンプールへの最短コースを選択した可能性がある。

マレーシア航空機撃墜問題の今後の展開

今後の展開だが、21日午後(日本時間22日未明)、国連安全保障理事会は、「マレーシア航空機の墜落を最も強い言葉で非難する」とともに、「ウクライナの武装勢力が、調査関係者の迅速で安全な現場立ち入りを妨げている」とし、墜落現場を支配下に置く親ロシア派武装勢力に対し、調査関係者の安全かつ無制限の立ち入りと現場の保全等を要求する決議をロシアを含む全会一致で採択した。拒否権を持つロシアの要求で「撃墜」が「墜落」に変更されたものの、本決議により、調査活動の進捗と遺体や残骸等の保全が期待される。プーチン大統領も安保理決議を受けて、声明で調査に協力する姿勢を示した。
ブラックボックスも22日、親ロシア派からマレーシア軍関係者に提供されたが、真相解明の鍵を握る機体やミサイルの残骸の多くが既に持ち去られたとの報道もあり、原因究明には、ロシアや欧米各国の衛星等によるミサイルの追跡情報等の公開も必要となりそうだ。
今後の責任問題の追及や賠償請求には、事実関係の確認が必要だが、親ロシア派には政府としての実体がなく、航空会社以外による賠償は、ロシアが責任を認めない限り、実施されない可能性もある。
欧米世論は対ロシアへの強硬姿勢を強めると推測され、経済制裁の強化が想定される。3月のロシアによるクリミア編入段階では、ウクライナ西部と親密なポーランドやリトアニア等東欧諸国の強行姿勢に対し、フランスやドイツ、オランダ等西欧諸国は対ロシア制裁強化に慎重だったが、自国民に多くの人的被害が出たことで、状況は大きく変化しそうだ。
但し、仮に親ロシア派の犯行であった場合でも、誤射が原因と予想されることと、当事者が犯行を認めない可能性が高いため、即時に軍事的に事態が悪化することはないと考えられる。
しかし、真相究明が遅れることで、対ロシア制裁が強化・長期化することとなれば、ロシア経済の一段の圧迫要因となるものと予想される。対抗制裁により、欧州経済の悪化要因ともなりそうだ。
なお、事実関係の解明のため、米国は証拠を一部開示する予定だが、軍事機密に属する部分も多いため、完全公開は不可能だろう。
オバマ大統領にマレーシア航空機の墜落を真っ先に伝えたのは、当時電話会談中のプーチン大統領であり、事実関係を最も掌握しているのもプーチン大統領とみられる。解明状況はプーチン氏の姿勢次第か。

過去も地対空ミサイルによる誤射や民間機撃墜事件が発生

実は、地対空(艦対空)ミサイルによる民間機への誤射は、1988年には米国のフリゲート艦が、2001年にはウクライナ軍によって行われているが、この2ケースに関しては、当事者が誤射を認め賠償等が実施されている。
誤射でなく、軍事基地の近くを飛行したとして民間機が戦闘機により撃墜されたケースは、1973年のイスラエル軍によるリビア・アラブ航空機撃墜、1983年のソ連軍による大韓航空機撃墜などがある。
なお、ウクライナ情勢は、今回の撃墜事故により、ロシア軍による親ロシア派支援が慎重化すれば、ウクライナ軍が短期的には、より優勢となる可能性もあるが、先行きは依然不透明だ。

17日、イスラエル軍がガザで地上戦を開始

一方、イスラエル軍によるイスラム原理主義勢力「ハマス」が実効支配するパレスチナ自治区「ガザ」への軍事侵攻は、現地時間17日に開始されたが、18日、20日と順次強化されている。
イスラエルは既に予備役を5万3千人以上招集しており、2008年末から2009年初に実施されたガザ侵攻を上回る規模の地上戦が繰り広げられる可能性もある。既にイスラエル閣議では18日、6万6千人までの予備役招集を承認している。
今回、イスラエルは、ガザとイスラエルを結ぶ地下トンネルを徹底的に破壊する方針とみられ、イスラエルとの国境近くの市街地では、民間人主体に多くの被害が出ている。
こうした中、国連の潘基文事務総長がハマスと関係の深いカタールを訪問したのに続き、既に停戦案を提示しているエジプトを訪問、事態打開に動き出している。
米国のケリー国務長官も21日(現地時間)、カイロに到着、当面期限を設けず中東に滞在し、イスラエルとハマスとの停戦合意に向けて、イスラエル及びパレスチナ自治区を訪問、本格的な調停に乗り出した。
近代的装備を誇るイスラエル軍とハマスでは、軍事的能力には大きな差があるが、ハマス側がエジプトの停戦案に反対したことで、イスラエルによる地上戦が開始された経緯があるだけに、今後の展開は予断を許さない。ハマスが停戦案に合意しない限り、イスラエル国境に近い市街地は、地下トンネルの排除のため、破壊しつくされる可能性もあろう。

イランとP5プラス1との核協議は18日、交渉期限を今月20日から、11月24日まで延長すること

一方、イランとP5プラス1(国連常任理事国5カ国とドイツ)とのイランの核開発問題を巡る協議は、18日、交渉期限を今月20日から、11月24日まで延長することで合意が成立した。
アーネスト米大統領報道官は18日の声明で、交渉期限延長に関し「現実的な差異がある一方で、幾つかの分野で進展を得た。包括的な合意へ確かな見通しがある」(時事通信)と述べた。
国際原子力機関(IAEA)は、21日に発表した報告書で、イランが2013年11月にP5プラス1と結んだ暫定合意の内容を履行し、最も問題視されている核物質の処理を完了したと発表した(AFP)。
IAEAによると、イランは今月20日の期限までに、保有している濃縮度20%のウランの半分を5%程度にまで希釈し、残り半分については酸化ウランへの転換を済ませていたという。さらに、5%を超えるウラン濃縮活動はいかなる施設でも行っていないとしている。
これにより、P5プラス1側は、制裁を緩和し、イランの資産28億ドルの凍結を解除する方針。
P5プラス1の責任者であるEUのアシュトン外交安全保障上級代表(外相)やケリー米国務長官の弁のように、ウラン遠心分離機の保有台数等で「重要な隔たり」が残っているものの、今回の交渉で一定の前進が確認されたのも事実であり、イランの核問題は当面は、小康状態が続くこととなろう。

3つの地政学的リスクのマーケットへの影響は、中長期的には、大きなリスク要因に転化する可能性があるものの、短期的には限定的か

以上3つの地政学的リスクのマーケットへの影響は、引き続き中長期的には、大きなリスク要因に拡大する可能性はあるものの、短期的には一段の軍事衝突の拡大に繋がるようなものとは考えにくく、当面は限定的と予想される。
但し、欧米株価等は、史上最高値圏にあることもあり、夏休みを控え、市場参加者は、上値では、リスク資産の利益確定売りを優先することとなりそうだ。
結果、「Frozen相場」とも言える金融市場の膠着状況は、秋頃までは継続する可能性が一段と高まったと言えそうだ。

中東問題しかり、ウクライナ問題しかり、近年の「地政学的リスク」の高まりは、「超大国米国」が、経済力等国力の相対的低下や米国内での政治的な内向き志向の高まりによって、「世界の警察官」の地位を放棄しつつあることが背景にあると考えられる。
結果的に、第二次世界大戦後の世界の秩序、ルールが変化しつつある。特に、歳出の強制削減とオバマ政権のレームダック化がこの傾向に拍車をかけており、収拾がつかないまま、紛争が拡大すると、核戦争や第三次世界大戦の発生確率が高まりかねない。
引き続き、状況を注視する必要がありそうだ。我が国も外交面や経済面で、紛争解決への協力が求められていると言えよう。

いよいよ「GODZILLA ゴジラ」が日本で公開、平和には文化交流が重要

ゴジラ

(C) 2014 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. & LEGENDARY PICTURES PRODUCTIONS LLC

今週末25日には、いよいよ「GODZILLA ゴジラ」が日本で公開される。今年は、ゴジラ生誕60周年だが、ハリウッド版第2作となる「GODZILLA ゴジラ」も1954年の原作のテーストを生かした構成・展開となっており、期待したい。
但し、最近はなぜか、ハリウッド映画の公開は、大ヒットした「Frozen」(邦題「アナと雪の女王」)を含め、日本が最も遅いケースが多い。
日本発祥の「ゴジラ」も日本がほぼ大トリの公開だ。ちなみに、今年公開されたハリウッド映画の興行成績では、現時点で7位につけている。
1位は、「キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー」。
やはり日本が原作で直近公開の「トランスフォーマー/ロストエイジ」は既に4位であり、一段の浮上が予想される。
しかし、同映画が世界中で最もヒットしているのは中国。既に、興行収入は16億元(約2.6億ドル、約260億円)を突破。歴代世界興行収入1位の「アバター」が2010年に中国で打ち立てた興行収入記録2.2億ドルを破り、歴代興収第1位に輝いた。しかも、この記録は、本国米国の現時点の記録約2.3億ドルも抜いている。日本公開は、8月8日。
1982年にスタートしたアニメ「超時空要塞マクロス」シリーズは、「歌」が宇宙戦争を終結に導くストーリーだったが、ギクシャクしている日中関係等の打開の糸口もこのあたりにあるのかもしれない。

末澤 豪謙 プロフィール

末澤 豪謙

1984年大阪大学法学部卒、三井銀行入行、1986年より債券ディーラー、債券セールス等経験後、1998年さくら証券シニアストラテジスト。大和証券SMBC金融市場調査部長、SMBC日興証券金融市場調査部長等を経て、2012年よりチーフ債券ストラテジスト。2013年より金融財政アナリスト。2010年には行政刷新会議事業仕分け第3弾「特別会計」民間評価者(事業仕分け人)を務めた。日経債券アナリストランキング、14年連続10位内ランクイン。日経財政アナリストランキング2位(2004年〜2006年)。財政制度等審議会委員、国の債務管理の在り方懇談会委員、地方債調査研究委員会委員。趣味は、映画鑑賞、水泳、スキューバダイビング、アニソンカラオケ等。

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