アナリストの忙中閑話【第48回】

アナリストの忙中閑話

(2015年6月23日)

【第48回】「ジュラシック・ワールド」が大ヒット、気候変動という「モンスター」にも注意

金融経済調査部 金融財政アナリスト 末澤 豪謙

6月12日に米国等で公開された『ジュラシック・ワールド』が大ヒット、オープニング興行成績は過去最高に

『ジュラシック・ワールド』

『ジュラシック・ワールド』
Chuck Zlotnick / Universal Pictures and Amblin Entertainment

6月12日に米国などで公開された映画『ジュラシック・ワールド』が大ヒットとなっている。オープニング週末3日間の興行成績は全世界で5億2,410万ドルに達した。5億ドル越えは史上初とのこと(ユニバーサル映画調べ)。

また、興行2週目で、約9億9千万ドルと2015年の世界興収ランキング第3位に登場。第1位は『ワイルド・スピードSKY MISSION』(原題: Furious 7)の約15億1千万ドル。第2位は『アベンジャーズ エイジ・オブ・ウルトロン』の約13億7千万ドル(6月22日現在、Box Office Mojo調べ)。ちなみに同2作品は現時点で、歴代世界興収ランキングでも第4位と第5位であり、今年は大ヒット映画の当たり年となりそうだ。

日本公開は8月5日(水)。

同映画は、マイケル・クライトン原作の小説をスティーヴン・スピルバーグ監督が1993年に映画化した『ジュラシック・パーク』シリーズの第4作目。第1作は世界各国で大ヒットし、全世界興行収入10億2,915万ドルは当時世界第1位となった。本作にもスピルバーグ氏は製作・総指揮として関わっているが、1997年公開の『ロスト・ワールド/ジュラシック・パークII』、2001年公開の『ジュラシック・パークIII』から、今回は14年の月日を経ての公開となる。

前作へのオマージュ的要素に加え、一段の映像技術の進歩もあり、家族で楽しめる作品

筆者は幸運にも6月22日の試写会で早速、『ジュラシック・ワールド』を鑑賞してきた。同作品は「ジュラシック・パーク」崩壊から22年後、遂に恐竜のテーマ・パーク「ジュラシック・ワールド」が完成し、1日2万人以上の観光客で賑わっているシーンからスタートする。本作品は前3作のオマージュ的な要素がふんだんに盛り込まれているが、映像技術は第3作から一段と向上、3D効果もあって、実際にパークの中にいる気分になる。主演が筆者が好きな映画である『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』でスター・ロード役を演じたクリス・プラットというところも良かった。また、恐竜に対する製作スタッフの愛情も随所に表れており、家族で楽しめる映画だ。日本の夏恒例の「恐竜展」も今年は同映画に観客を奪われるかもしれない。

『ジュラシック・パーク』は、『スター・ウォーズ』などとともに、SF映画界に一種の映像革命を起こした映画

実は、『ジュラシック・パーク』は、『スター・ウォーズ』とともに、SF映画界に一種の映像革命を起こした映画と言われている。

1977年に公開されたジョージ・ルーカス監督の『スター・ウォーズ』では、同氏が設立したインダストリアル・ライト&マジック社(ILM)で有名となったストップモーション・アニメーションなどSFX(特殊撮影)技術を多用。宇宙での戦闘シーン等でかつてない視覚効果を生み出し、SF界に革命をもたらしたと言われる。ちなみに『スター・ウォーズ』の撮影に使われた宇宙船の材料はタミヤなど日本製プラモデルの部品が多用されたと、当時報道されていた。

但し、その『スター・ウォーズ』も当初の3部作である『エピソード4〜6』の1977年、1980年、1983年の公開の後、エピソード7の1999年の公開まで16年の歳月を要している。背景には撮影技術上の限界の問題があったとされるが、ルーカス氏が『ジュラシック・パーク』の撮影を手伝っていた際、ILMのCG(コンピュータグラフィックス)技術に惚れ込み、『エピソード1〜3』の新3部作の製作を決断したとされている。

『ジュラシック・パーク』は、CGとアニマトロニクス、いわばロボット恐竜の新技術でSF映画の世界を新たに切り開いたが、ILM社が当時、ほぼ同時に撮影技術を提供していたのが1991年公開の『ターミネーター2』だった。

1984年公開の『ターミネーター』は、後にカリフォルニア州知事も務めた俳優アーノルド・シュワルツェネッガーさんの出世作とも言えるが、本年7月10日(日本公開予定、全米公開は7月1日)には、2009年公開の『ターミネーター4』から6年ぶりに、『ターミネーター:新起動/ジェニシス』が公開される。シュワルツェネッガーさんも2003年公開の『ターミネーター3』以来、12年ぶりに「ターミネーターT-800」として出演、元気なところを見せている。

今年は、5月1日には歴代興収第3位の『アベンジャーズ』の第2弾『アベンジャーズ エイジ・オブ・ウルトロン』が全米で公開され(日本公開7月4日)、『マッドマックス 怒りのデス・ロード』も国内で前週末の6月20日に公開された。

『アベンジャーズ エイジ・オブ・ウルトロン』の米国内の興行成績は約4億5千万ドルと、約3億5千万ドルの『ワイルド・スピードSKY MISSION』(原題: Furious 7)を抜いて既に今年のトップに浮上した。『ジュラッシク・ワールド』は約4億ドルで第2位に浮上(6月22日現在、Box Office Mojo調べ)。

今後も8月7日には、『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』が、12月4日には『007』シリーズ第24作『スペクター』、12月18日には『スター・ウォーズ』シリーズ第7作目となる『スター・ウォーズ フォースの覚醒』が公開される(何れも日本公開日)。

まさしく今年はSF大作の当たり年と言え、興行成績のワールドレコードの行方も気になるところだが、実はSF大作と興行成績には明確な関係がある。

過去のコラムでもご紹介したように、「お化け、恐竜、宇宙人」が最近の夏映画の定番になっているのも、新興国市場などを念頭に置いたハリウッドの興行戦略の影響と考えられる。

【第5回】夏の風物詩と言えば、お化け、恐竜、宇宙人?

夏の風物詩と言えば、お化け、恐竜、宇宙人、国内でもモンスター映画が公開予定

国内でも今後、夏休みに向けて、モンスター映画の封切が予定されている。

8月には既刊16巻が全世界累計5,000万部という諫山創氏の大ヒットコミック「進撃の巨人」を実写映画化した2部作『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN』の前編が公開される。

『バケモノの子』

『バケモノの子』
© 2015 THE BOY AND THE BEAST FILM PARTNERS

7月11日に公開される『バケモノの子』は、独特の世界観で海外からも高い注目を浴びる細田守監督によるアドベンチャーアニメ。同作品は、仏大手映画会社ゴーモン(120周年を迎える世界最古の映画会社)との提携もあり、すでにフランスをはじめとした世界36の国と地域で配給が決定しているとのこと。

同作品では人間の世界とバケモノの世界という、本来なら交わるはずのない2つの世界に住む、ひとりぼっちの少年と暴れんぼうのバケモノが出会い、奇想天外な冒険を繰り広げるさまが描かれる。

細田監督の作品は、2006年7月には『時をかける少女』、2009年8月には『サマーウォーズ』、2012年7月には『おおかみこどもの雨と雪』が公開されており、3年毎の夏公開は今回が3回目。完成披露会見で監督は、夏休み公開の映画は続いていることに対し、「夏休みにアニメ映画を観るのはすごく子供にとって重要な事だと思う。その時見た作品は、子供時代の夏を彩っていたし、大きくなってから思い出すような夏の彩りを作りたかった」とコメントしている。

筆者も同感だ。夏休みは、児童や生徒、学生が学校の授業以外の場で、人間として成長するために必要な常識を養い、社会のルールを学び、自我を形成するためにも重要な期間だ。クラブやサークル活動、ボランティアやNPO等の活動しかり、友達との交遊しかり、家族旅行しかり、帰省しかり。

特に核家族化が進行している日本では、夏休みを使って、国内外を訪れ、普段会えない人達や自然・文化等に触れることは極めて重要と思われる。

最近はスマホやタブレットで、映画を見る人も多いようだが、やはり、映画館の大画面・音響の迫力には適わないだろう。特に最近は、2D以外に3D、4Dといった趣向も楽しめる。

気象庁のエルニーニョ監視速報、同現象強まると指摘、今年は過去最強となる可能性も

実は今年の夏は、結果的に映画館が家族や友人との交流の場になりやすいかもしれない。

前月号でもお伝えしたが、今年はエルニーニョ現象が強まりそうだからだ。気象庁が6月10日に発表したエルニーニョ監視速報(No.273)によると、「エルニーニョ現象が続いており、強まりつつある」「今後、冬にかけてエルニーニョ現象が続く可能性が高い」としている。

気象庁も一度出した終息宣言を修正したように、冬場に一旦、終息したかに見えたエルニーニョ現象だが、4月以降、一転、強まりつつあるようだ。ペルー沖のエルニーニョ監視海域の海面水温の基準値との差は5月は+1.2度となり、4月の+0.8度から0.4度拡大した。

気象庁の予想では、今後、冬に向けて基準値との差は一段と拡大する見込みであり、前回同現象が現れた2009年〜2010年を大きく上回りそうな勢いとなっている。

オーストラリア気象庁も6月9日、「エルニーニョ関連指数は5つの全てが基準値を少なくとも1.2度上回っている。熱帯太平洋のこれほど広い範囲で水温が上昇するのは異例だ。1997〜1998年のエルニーニョ現象以降で初めてだ」(ブルームバーグ)と指摘した。米海洋大気局(NOAA)によれば1997〜1998年のエルニーニョ現象は過去最強だったとのことであり、実際、エルニーニョ監視海域の海面水温の基準値との差は1997年暮れには+3度を超えて拡大している。

今回、気象庁の予測でも、本年暮れには、予測平均で+3度強、場合によっては+4度まで上昇する可能性が示されている。現時点での気象庁の予測では、過去最強規模のエルニーニョ現象が今年発生する可能性が示されていると言えそうだ。

なお、気象庁では、エルニーニョ監視海域の海面水温の 基準値との差の5カ月移動平均値が6カ月以上続けて+0.5度以上となった場合を「エルニーニョ現象」、-0.5度以下となった場合を「ラニーニャ現象」と定義している。

気象庁によると、同現象の5月の天候への影響は、日本では明瞭には見られなかったとしているが、東南アジアの高温・少雨と米国西部の低温がエルニーニョ現象時の天候の特徴と一致していたとしている。但し、5月に日本列島を襲った熱波も同現象が遠因となった可能性がある。

東京都心では、①5月の平均気温が21.1度と観測史上1位、②夏日(25°C以上)の日数も22日と観測史上1位(過去は18日が最高)、③真夏日(30°C以上)の日数も3日と2004年と並んで観測史上1位、④5月の最高気温記録も32.2度(31日に観測)と観測史上1位と、過去最も暑い5月となった。同様の傾向は各地で記録されている。

今年の5月は暑い割にはカラっとした乾燥した日が多かった。これは、大陸性の高気圧が張り出していた影響だが、エルニーニョ現象で太平洋高気圧が例年より弱く、梅雨前線の北上が遅れた影響とも考えられる。実際、気象庁もエルニーニョ現象の特徴として3月から5月の高温を挙げており、整合的だ。そういう意味では5月に関して言えば、晴天が続き、消費や夏物衣料等の消費にもプラスだったと考えられるが、内外の気象庁等の予測に基づけば、今年は過去最強のエルニーニョ現象が発生する可能性もあり、昨年同様夏場の消費動向が心配だ。

冷夏よりも大雨、洪水、土砂災害等に注意

既に北陸以西で梅雨入りした今日、懸念されるのは、夏場の気象だ。エルニーニョ現象が発生すると、日本では梅雨明けが遅れ、冷夏や暖冬になりやすいとされる。一方、オーストラリア、東南アジア、インドなどでは、少雨となり、干ばつが発生しやすいとされる。

気象庁の6月から8月までの3カ月予報でも、「この期間の平均気温は、沖縄・奄美で平年並または高い確率ともに40%。降水量は、全国で平年並または多い確率ともに40%」となっている。沖縄・奄美では6月に雨が多いものの7月・8月は平年並みとなる見通し。一方、沖縄・奄美以外は、全国的に6月は平年に比べ曇りや雨の日が少ない見込みであるが、7月は平年に比べ曇りや雨の日が多く、8月は平年に比べ晴れの日が少ない見込みとなっている。

今夏も本土では、いわゆる冷夏ないし長雨が懸念される長期予報と言える。但し、過去の記録でも、エルニーニョ現象が即、冷夏とは限らない。特に、近年は地球温暖化の影響で、平均気温が上昇していることから、同現象が発生しても、平均気温は平年並みとなるケースが増えている。然るに、エルニーニョ現象やラニーニャ現象が発生すると、日本を含め世界中で異常な天候が起こることが多いのは事実だ。

ちなみに関東甲信地方での梅雨入りは平年で6月8日頃、梅雨明けは7月21日頃だが、1951年以降で、エルニーニョ現象が発生した年は、梅雨入りが平年より早かったのは18回中9回、梅雨明けが平年より遅かったのは18回中10回であり、必ずしも長梅雨とは言えない。但し、梅雨の時期の降水量は18回中13回で平年より多くなっている。エルニーニョ現象が発生すると、太平洋高気圧の張り出しが弱くなり、梅雨前線の北上が遅れ、日本列島に停滞することで、冷夏になりやすいと従来指摘されてきた。但し、近年は、低温よりも、地球温暖化に伴う飽和水蒸気量の増大や偏西風の蛇行等によって発生する大雨や洪水に警戒すべきかもしれない。

気象庁も地球温暖化の影響で、エルニーニョ現象が即、冷夏になるとは考えていないようだが、思い起こされるのは、昨年夏の西日本での長雨と土砂崩れ等の災害だ。

昨年8月に広島市で発生した土砂災害では74人の死者が発生、国内では過去最大級の土砂災害となった。土砂災害が発生した広島市北部は花こう岩が風化してできた「まさ土」という地質が広がっている地域だ。「まさ土」は水分を多く含むと劣化しやすいため、大雨による崩落が起きやすいとされる。「まさ土」は、広島県のみならず、岡山県や愛媛県、香川県等瀬戸内海沿岸地域に多く分布している。

従来、あまり問題視されなかったのは、「瀬戸内式気候」という夏季に少雨となる気候条件があったためと考えられる。但し、昨年は、地球温暖化に加え、エルニーニョ現象の影響等もあってか、瀬戸内で地区によっては、平年の数倍から10倍の降水量を記録している。

今月、既に南九州等では記録的な大雨となっているが、今夏はエルニーニョ現象が過去最大規模に拡大する可能性を踏まえると、従来の常識は通じないかもしれない。気候変動を前提とした全国的な洪水・土砂災害対策の見直しが急務だろう。

『予告犯』と『天皇の料理番』に見る減量のヒントは?

最後に、夏が近づくと、薄着となることもあり、体型が気になる方も多いのではないか。

今年の夏は前述のように天候不順となる可能性もあるが、地球温暖化の影響で蒸し暑い中、プールや海には人出が予想される。筆者を含め、メタボ予備軍が注目しているのが(?)、現在公開中の生田斗真さん主演の映画『予告犯』に予告犯グループ「シンブンシ」の一員役として出演している鈴木亮平さん。鈴木さんは、TBSテレビ60周年特別企画・日曜劇場『天皇の料理番』では佐藤健さん演ずる主人公・秋山篤蔵の兄の秋山周太郎役を演じているが、同一人物とは到底思えない。

6月21日に放送された同ドラマでは、鈴木さん演じる周太郎の臨終シーンが放映されたが、鈴木さんはその役を演じるにあたり、76キロあった体重を半年で20キロ減量したとのこと。20キロは極端だが、10キロぐらいの減量策を是非、伝授してもらいものだ。

末澤 豪謙 プロフィール

末澤 豪謙

1984年大阪大学法学部卒、三井銀行入行、1986年より債券ディーラー、債券セールス等経験後、1998年さくら証券シニアストラテジスト。同投資戦略室長、大和証券SMBC金融市場調査部長、SMBC日興証券金融市場調査部長等を経て、2012年よりチーフ債券ストラテジスト。2013年より金融財政アナリスト。2010年には行政刷新会議事業仕分け第3弾「特別会計」民間評価者(事業仕分け人)を務めた。財政制度等審議会委員、国の債務管理の在り方懇談会委員、地方債調査研究委員会委員。趣味は、映画鑑賞、水泳、スキューバダイビング、アニソンカラオケ等。

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