アナリストの忙中閑話【第51回】

アナリストの忙中閑話

(2015年9月25日)

【第51回】好天に恵まれたシルバーウイーク、不正ソフト使用でVWに多額の制裁金?信用・信頼は家族や社会のインフラ

金融経済調査部 金融財政アナリスト 末澤 豪謙

好天に恵まれた「シルバーウイーク」、次回は2026年と11年後

9月19日(土)から23日(水)にかけての5日間の大型連休、「シルバーウイーク」は全国的に好天に恵まれ、行楽地は大賑わいだったようだ。我が家は遠出はせず、近場を回遊しただけだったが、5日間連続で午後0時から6時まで実施されていた銀座の「歩行者天国」は、日本人・外国人の観光客でごった返していた。

特に最近の海外からの観光客の特徴は、その量と人種の多様性だろう。中国人観光客の多さには言及する必要がなさそうだが、1ユーロが160円台まで円安が進んだ2007年当時同様、最近は欧米からの観光客も目立つ。実質実効為替レートが1985年のプラザ合意以前の円安水準に達している証左とも言えそうだ。

ところで、「シルバーウイーク」と聞いて、「そんな連休あったかな」と思った方も多いだろう。筆者もその一人だが、前回が2009年で今回が2回目、ちなみに次回は2026年、11年後となることから、相当稀な連休であることは間違いない。毎年訪れる5月の「ゴールデンウイーク」との違いは、昼夜の長さが等しい「秋分の日」の日程が天文学上の理由で年によって異なることが大きい。「ハッピーマンデー制度」により、1月15日の「成人の日」、10月10日の「体育の日」が第2月曜日に、7月20日の「海の日」と9月15日の「敬老の日」が第3月曜日に移動し、土曜を併せた3連休は毎年成立することとなったが、「秋分の日」は、23日になったり、22日になったり、稀に24日になったりすることで曜日が定まらない。また、国民の祝日にはさまれた平日を「国民の休日」とする「祝日法」により、「敬老の日」と「秋分の日」にはさまれた22日(火)も「国民の休日」になったことで、今年は見事5連休という稀有なケースとなった。

但し、次回は11年後と知ったのは筆者も「シルバーウイーク」に入ってから。既に旅行には手遅れで、結局、近場のモールでのスポーツジムと映画通いという通常の週末で終わってしまった。消費マインド発揚のためにも、11年後には、政府・民間を挙げた大々的な広報を期待したい。

内外株価は軟調推移、中国問題、米利上げ観測に加え、VWで不正ソフト問題浮上

台風続きの天候から晴天となった「シルバーウイーク」と裏腹に、内外の株価はさえない状況が続いている。

前月号でも特集した中国経済の停滞観測に加え、9月は見送られたものの年内の米利上げ観測も引き続き残存する中、ドイツ自動車大手「フォルクス・ワーゲン(VW)」社の不正ソフト問題発覚で、「シルバーウイーク」明け9月24日の日経平均株価は前週末比498円安の17,571円と急落して引けた。中国発の世界同時株安で急落した9月8日の17,427円以来の低水準であり、本年3月末の水準(19,206円)も大きく割り込んだ。

VWと言えば、前身はナチスドイツのヒトラー総統が提唱した国民車(フォルクス・ワーゲン)計画に則り、設立された自動車メーカーである。著名な自動車設計者であるフェルディナンド・ポルシェによって設計された「フォルクスワーゲン・タイプ1」が有名で、同車は戦後は「ビートル」として親しまれ、累計生産台数2,100万台以上の世界記録を持っている。現在、VWの傘下には、「ポルシェ」に加え、「アウディ」等高級自動車メーカーもあり、「ダイムラー・ベンツ」、「BMW」と並び、「技術大国ドイツ」のブランドを代表する会社と言える。特に、VWは今年上半期(1−6月)、グループ全体で世界販売503万9,000台とトヨタグループを(同502万2,000台)抜いて世界一となっており、今後の影響は大きいと言えそうだ。

米環境保護局(EPA)の18日の発表等によると、VWは米国のの排ガス規制をクリアするためディーゼル車に不正なソフトウェアを搭載していたとのことだ。同ソフトは、車が試験場などで検査される際はNOx(窒素酸化物)等の有害物質の量を大幅に減らすよう設定されているが、通常の道路走行時には排出ガス処理システムは作動せず最大で基準の40倍に上るNOxなどを排出していたとのこと。このソフトの存在を指摘したのはウエストバージニア大学のNGO組織であり、VWはこの指摘を即座に認めた。結果、対象となる48万2,000台のリコールが行われる。対象車両は、ジェッタ(2009年〜2015年)、ビートル(2009年〜2015年)、ゴルフ(2009年〜2015年)、パサート(2014年〜2015年)、アウディA3(2009年〜2015年)。EPAによると、VWに対して1台当たり3万7,500ドル合計で約180億ドル、日本円で2兆円以上という莫大な制裁金が課せられる可能性があるとのこと。

「信用・信頼」を失うのは簡単だが、取り戻すのは難しい

同ソフトを搭載したディーゼル車の全世界での販売台数は1,100万台に上るとのことだが、同ソフトを搭載したディーゼル車の大半は欧州と中国で販売されている。なお、日本国内での正規代理店での販売実績はないとのこと。既に、独仏英の運輸当局が調査に乗り出しているとのことであり、同社の財務やブランドにも大きな影響を与えることとなりそうだ。VWは既に65億ユーロ(約8,700億円)の引当金を計上すると発表しているが、ウィンターコルン会長は23日、同問題の責任をとって辞任する意向を明らかにした。

筆者もVWと聞いて当初は耳を疑ったが、「信用・信頼」を失うのは簡単だが、取り戻すのは難しい。日本企業もここは「他山の石」として、事態の推移を見守る必要がありそうだ。

「信用・信頼」の重要性は、企業のみならず、家族や友人関係でも同様だ。

親子愛や夫婦愛、友情を主題とした映画が多数公開

『カリフォルニア・ダウン』

『カリフォルニア・ダウン』
9月12日(土)
新宿ピカデリー・丸の内ピカデリー他 ロードショー
ワーナー・ブラザース映画
©2014 VILLAGE ROADSHOW FILMS (BVI) LIMITED, WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC

9月・10月は、夏休み映画とクリスマス・正月映画の狭間で、大作の公開は本来少ないが、今年は注目映画が多数公開されている。その中でも、親子愛や夫婦愛、友情を主題とした映画をご紹介したい。

洋画では、まず、現在公開中の『カリフォルニア・ダウン』(原題:SAN ANDREAS)。「サン・アンドレアス」は実在する断層の名前であり、米太平洋岸のカリフォルニア州南部から西部にかけて約1,300kmにわたって続く巨大な断層である。断層活動によってサンフランシスコ等周辺地域は大地震の多発地帯となっている。太平洋プレートと北アメリカプレートの境界をなすトランスフォーム断層であることも我が国とよく似ている。

本作品は、同断層活動が活発化し、ロサンゼルスやサンフランシスコが大地震に見舞われる設定となっていることから、地震や台風被害の続いた我が国では、公開が延期されたりしたが、2015年の世界興収ランキングでは現在9位とヒット作となっている(9月24日現在、Box Office Mojo調べ)。

ちなみに、第1位は『ジュラシック・ワールド』、第2位『『ワイルド・スピードSKY MISSION』(原題: Furious 7)、第3位『アベンジャーズ エイジ・オブ・ウルトロン』、第4位『ミニオンズ』、第5位『インサイド・ヘッド』(原題: Inside Out)、第6位『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』、第7位『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』、第8位『シンデレラ(2015)』、第10位『ターミネーター:新起動/ジェ二シス』の順(同)。

『カリフォルニア・ダウン』で注目したのは、予告編でも映し出されているリアリティ溢れる大災害のシーンもそうだが、主演の“ザ・ロック”ことドウェイン・ジョンソンさんが本作では一度もマッチョな姿を見せず、災害救助に尽力し、家族を絶対絶命の淵から救うシーンだ。ジョンソンさんは「ザ・ロック」の名で知られるプロレスラーだが、最近は『ワイルド・スピード』シリーズや『G.Iジョー』、『ヘラクレス』など数々のヒット作に出演しており、本業は俳優と化している。特に、筆者の脳裏に焼きついているのは『ヘラクレス』の1シーン。鎖に繋がれた主人公が「フー・アー・ユー」と聞かれ、「アイ・アム・ハーキューリーズ(ヘラクレス)」と叫んで、鎖をぶち切るシーンは圧巻だった。同シーンの撮影時にはジョンソンさんがあまりに全身に力を入れ過ぎたため失神したとのこと。その「ザ・ロック」が救助隊の服を着て、前妻(正確には離婚寸前)や娘を救助することで、再度、家族がまとまるストーリー。ベタだがこれぞ「アメリカン・ファミリー」か。

一方、妻と完全に別れた設定は『アントマン』(原題:Ant-Man)。身長1.5cmの「最小ヒーロー」の活躍を描いた作品。やはり、別れた娘を悪役から救い、娘や前妻の夫らとの絆が深まるストーリーとなっている。また、「アントマン」を作った父と娘の葛藤と和解もテーマとなっている。実は当初あまり期待していなかったのだが、笑いが絶えない面白い作品だった。こちらは、マーベルコミックの『アベンジャーズ』シリーズの系譜を組む作品で、次回の『Captain America:Civil War(原題)』には、「アントマン」が登場しそうな予感がする。

ちなみに映画評論家の評価は高いとは言えないが、青春期にアーケード・ゲーム(業務用ゲーム)に興じた世代には、『ピクセル』もお薦めか。パックマンの開発者である岩谷徹東京工芸大教授が劇中に登場するとともに、ご本人もナムコの技術者役でカメオ出演している。こちらは、「オタク」の友情がテーマ。

一方、邦画では、10月公開の『岸辺の旅』も見てみたい作品だ。湯本香樹実さんの同名小説が原作で黒沢清監督作品。死んで帰ってきた夫との旅を通じて夫婦の絆を確かめるという物語。5月のカンヌ国際映画祭の「ある視点」部門に招待され、監督賞を受賞するなど、海外での評価も高い。

現在公開中の『心が叫びたがってるんだ。』は、過去のトラウマから喋ることができなくなった女子高生を主人公に、ひょんなことからミュージカルに取り組むことになった高校生たちの葛藤と成長を描く青春群像劇(アニメ作品)。

『図書館戦争 THE LAST MISSION』

『図書館戦争 THE LAST MISSION』
(C)2015“Library Wars -LM-” Movie Project

10月10日公開の『図書館戦争 THE LAST MISSION』は、有川浩さん原作で佐藤信介監督作品。思想検閲が横行する時代に「本を読む自由」を守る図書隊の活躍を描いた作品。通勤電車でも本を読んでいる人をほとんど見なくなった今日ではあるが、国際情勢等を勘案すると、本を読む自由の重要性を再認識するには良い作品か。テーマは主人公の教官(岡田淮一さん)と女性隊員(榮倉奈々さん)の師弟愛がテーマ。

2013年に第1作が公開され、今回は第2弾。主演の岡田准一さんは、V6の一員だが、最近は大河ドラマ『軍師官兵衛』やテレビドラマ『SP 警視庁警備部警護課第四係』で主演を務めるなど、完全に俳優のイメージが確立している。ドウェイン・ジョンソンさん同様、一芸に秀でる人は何をやらせても多芸の証左か。

但し、人生80歳以上の今日、まだまだ先は長い。リタイア後、「亭主、元気で留守が良い」と言われたくないこともあり、実は筆者にも隠れた才能があるのではと、アンチ・エイジングの秘訣を究明しつつ、新しい事にチャレンジを続けている日々である。

末澤 豪謙 プロフィール

末澤 豪謙

1984年大阪大学法学部卒、三井銀行入行、1986年より債券ディーラー、債券セールス等経験後、1998年さくら証券シニアストラテジスト。大和証券SMBC金融市場調査部長、SMBC日興証券金融市場調査部長等を経て、2012年よりチーフ債券ストラテジスト。2013年より金融財政アナリスト。2010年には行政刷新会議事業仕分け第3弾「特別会計」民間評価者(事業仕分け人)を務めた。日経債券アナリストランキング、14年連続10位内ランクイン。日経財政アナリストランキング2位(2004年〜2006年)。財政制度等審議会委員、国の債務管理の在り方懇談会委員、地方債調査研究委員会委員。趣味は、映画鑑賞、水泳、スキューバダイビング、アニソンカラオケ等。

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