アナリストの忙中閑話【第54回】

アナリストの忙中閑話

(2015年12月11日)

【第54回】『スター・ウォーズ』新3部作第一弾が世界同時公開、歴史の節目に見たい邦画、2016年の干支は「丙申」、申酉騒ぐ?

金融経済調査部 金融財政アナリスト 末澤 豪謙

12月18日、『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』が全世界で同時公開

12月18日金曜日、『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』(原題:Star Wars: The Force Awakens)が全世界で同時公開となる。同作品は1977年に公開された『スター・ウォーズ』シリーズの新3部作の第一弾。

『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』

『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』
12月18日(金)18時30分 全国一斉公開
ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン
(C)2015Lucasfilm Ltd. & TM. All Rights Reserved

「遠い昔、はるか彼方の銀河系で。。。」で始まる『スター・ウォーズ』(1977年の公開時、現在の名称は『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』)は、その特撮技術と世界観で全世界を魅了、当時、子ども向けないしマニア向けとされていたSF:Science Fictionを映画の1ジャンルに引き上げた。実際、同作品はインフレ調整後の米国内の歴代興収ランキングで、『風と共に去りぬ』(原題:Gone with the Wind)に次いで現在でも第2位の座を維持している(12月10日現在、Box Office Mojo調べ)。ちなみに同ランキングでは、歴代興収ランキング1位の『アバター』も14位に過ぎない。

『スター・ウォーズ』や『E.T.』の成功で今やSFはハリウッドにとって、ドル箱のエンターテイメントと化している。また同作品は、ジョージ・ルーカス氏のオリジナルであったことから、ルーカス氏には関連グッズの権利も含め多大な富をもたらし、ルーカスフィルムは『スター・ウォーズ』シリーズのみならず、様々なジャンルの映画を世に送り出し、米映画の多様性を維持・向上することにも貢献したと言える。

ルーカス氏は当初、『スター・ウォーズ』シリーズの6部作(ないし9部作)の構想を映画配給会社数社に持ち込んだが、色よい返事は得られなかった。最終的に契約に至った20世紀フォックス、また、ルーカス氏本人でさえ同シリーズが売れるとは予想せず、最もエンターテイメント性の高いエピソード4を最初に製作したと言われている。実際、前述のように、『エピソード4/新たなる希望』との副題がつけられたのは、本作が大ヒットし、シリーズ化が決定した後の話である。

その後、『エピソード5/帝国の逆襲』と『エピソード6/ジェダイの帰還』は20世紀フォックスの下で製作されたが、『エピソード1/ファントム・メナス』、『エピソード2/クローンの攻撃』、『エピソード3/シスの復讐』は、ルーカス氏が自費で製作しており、超大型の自主製作映画とされる所以だ。

今回、公開される『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』は、2005年に公開された『エピソード3/シスの復讐』から10年ぶりとなるが、映画の上では、『エピソード6/ジェダイの帰還』から30年後の世界が描かれている。同作品が公開されたのは1983年であり、今から32年前。第1作目からは38年半が経過した。

主要出演者も当初の3部作に出演したメンバーがそのままの役で登場する。ルーク・スカイウォーカー役のマーク・ハミルさん、ハン・ソロ役のハリソン・フォードさん、レイア・オーガナ役のキャリー・フィッシャーさんらが元気な姿を見せている。但し、フォードさん以外は減量が大変だったとのこと。また、ドロイドのC-3PO、R2-D2、ウーキー族のチューバッカ等も登場する。一方、新たな主人公には、ヒロインのレイ役にデイジー・リドリーさん、強力なフォースを持つ戦士カイロ・レン役にアダム・ドライバーさん、脱走兵のフィン役にジョン・ボイエガさんらが登場する。

なお、『スター・ウォーズ』シリーズは第1作目から第6作目までは、20世紀フォックスが配給していたが、2012年10月に、ウォルト・ディズニー・カンパニーが製作元のルーカスフィルムを買収したことで、『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』以降の新3部作は、ディズニーの配給となる。

ディズニーは、マーベル社やピクサー社の買収で、『アベンジャーズ』シリーズや今年アカデミー賞を受賞した『ベイマックス』等、作品の領域を大きく広げているが、今後は『スター・ウォーズ』シリーズも傘下に加わることとなる。映画業界でも、M&A旋風が吹き荒れていると言えそうだ。

既に、『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』は、全世界で、クリスマス商戦とも絡み、相当な盛り上がりを見せているが、同映画の特徴は全世界同時公開という点。最近のハリウッド映画において、我が国は主要国では最後の公開となることが多かった。世界同時というだけでも、来週末に劇場に足を運ぶ価値はありそうだ。筆者は既に予約済だが、まだの方は年末年始の休暇の際のお楽しみにとっておいてもよいかもしれない。

『杉原千畝 スギハラチウネ』と『海難1890』、歴史の節目の今年是非ご覧頂きたい映画

一方、12月公開の邦画でお薦めしたいのは、『杉原千畝 スギハラチウネ』と『海難1890』だ。前者は戦後70年、後者はエルトゥールル号遭難事故から125年の節目に製作された。何れも実話を映画化したもの。なお、後者は日本とトルコの合作。

唐沢寿明さん演ずる「杉原千畝」は日本の外交官で、リトアニアのカウナス領事代理の際、外務省本省に無断でユダヤ人に大量のビザを発給し(およそ6,000人を救ったとされる)、後に外務省を追われることとなった人物。但し、映画では杉原氏が行っていた諜報活動やユダヤ人救出に際しての他の現地事務官や外交官等の協力も描かれており、骨太だが多面的で新鮮な映画に仕上がっていた。また、ユダヤ系の血を引き米国人と日系人のハーフであるチェリン・グラック監督の作品だけあって、歴史考証が素晴らしい。たとえば、当時の服装や邸宅等を再現し、リトアニアにドイツ軍が侵攻した際は「I号戦車」が、終戦時のポーランドのシーンでは「パンターV号戦車」が登場している。また、全編ポーランドで撮影されており、ポーランドの有名俳優が多数出演、字幕が多く、邦画の枠を超えた作品と言える。

一方、『海難1890』には冒頭、トルコのエルドアン大統領が登場、あいさつを述べるシーンがあるように、トルコサイドの力の入れ方もすごい。また、内野聖陽さんやケナン・エジェさんら、日本・トルコ双方の俳優陣の熱演も見どころだ。

ちなみに、エルトゥールル号事件とは、1887年に小松宮彰仁親王同妃両殿下が欧州訪問の帰途にオスマン帝国を公式訪問したことに対する答礼として、アブデュル・ハミト2世が特使としてオスマン提督を日本に派遣した際、エルトゥールル号が帰路、紀州・串本沖で沈没。乗組員581名が死亡したが、日本側官民あげての手厚い救護により69名が救助され、日本の巡洋艦によりトルコに送還された事件である。

また、1985年3月、イラン・イラク戦争の最中、テヘランで孤立した邦人を救出するためにトルコ政府がトルコ航空の特別機を派遣した出来事も、映画で描かれている。

『杉原千畝 スギハラチウネ』

『杉原千畝 スギハラチウネ』
2015年12月5日
全国東宝系にてロードショー
(C)2015「杉原千畝 スギハラチウネ」製作委員会

今年は、エルトゥールル号事件から 125 周年となり、様々な記念事業が行われた。串本における洋上及び陸上の追悼式典に加え、式典に合わせ来日したトルコ海軍の軍艦「TCGゲディズ」の一般公開、トルコ・オスマン軍楽隊公演、ルトゥフィエ・バトゥカン氏の人形展などが開催された。筆者は6月7日の日曜日、東京の晴海埠頭に係留されたフリゲート艦「ゲディズ」号と海上自衛隊の護衛艦「たかなみ」に乗艦したが、同日は、両国の友好を祝うかのように晴天に恵まれた。

どちらも、日本の近代史において重要な事件だが、従来、国内ではあまり知られておらず、海外の方が有名な話だ。歴史の節目の今年、日本人として、是非鑑賞すべき作品と言えそうだ。

2016年(平成28年)の干支は「丙申(ひのえ・さる、ヘイ・シン)」

2016年(平成28年)の干支は「丙申(ひのえ・さる、ヘイ・シン)」。

「丙申」は、「干支」の組み合わせの第33番目で、陰陽五行では、十干の「丙」は「火」の「兄(陽)」、十二支の「申」は、「金」の「陽」で、「相剋(火剋金:『火は金属を溶かす』の意)」である。

「丙」は十干の3番目の干で、「丙」は台座の象形とされる。また、「一」と「冂」と「入」から成り立つ。「一」は陽気を意味し、活動が進展するがその後、カコイの中に入ることを示す。「炳(あきらか、つよし)」に通じ、植物が伸長し、その姿が著明となった姿を表す。方角は南、季節は夏を示す。

一方、「申」は十二支の第9番目で季節は旧暦の7月、動物では「猿」に配されている。方角は西南西、時刻は午後4時を表す。「申」は電光が走る姿の象形文字とされ、「伸」に通じ、伸びるという意味がある。また、「呻く(うめく)」に通じ、草木の果実が成熟して締め付けられ、固まっていく姿を表す。

「丙申」の年、勢力は一段と拡大するが新陳代謝が進まないとピークアウトも

「丙」と「申」を合わせると、2008年の「戊子(つちのえ・ね)」の混乱の中で生まれた新興勢力が、2009年の「己丑(つちのと・うし)」で表舞台に立つのだが、依然周囲の抵抗にあい、完全には伸び切れない。2010年の「庚寅(かのえ・とら)」の年になると、矛盾が噴き出し、2011年の「辛卯(かのと・う)」で新たな変化、再編が生じ、2012年の「壬辰(みずのえ・たつ)」の年、その胎動は一段と大きくなり周囲も無視できなくなる。2013年の「癸巳(みずのと・み)」の年、ついに地中から這い出し、世に出たが、旧来勢力は既に衰えを見せ、2014年の「甲午(きのえ・うま)」には反対勢力も台頭する。2015年の「乙未(きのと・ひつじ」には、より抵抗が激しくなる。2016年の「丙申(ひのえ・さる)」には一段と勢力が拡大するが、「盛者必衰のことわり」ではないが、新陳代謝(改革)が進まないとその勢いにも陰りが生じ、ピークアウトを迎えるということか。

前回の「丙申」は1956年、戦後の「申年」の出来事

前回60年前の「丙申」である1956年(昭和31年)、我が国は神武景気の真っ只中で、経済白書で「もはや戦後ではない」と表現される一方、水俣病が公式確認され、公害問題が徐々に拡大する発端となった年でもある。第3次鳩山一郎内閣下で日ソの国交が回復し、12月には日本は国連に加盟した。

海外では旧ソ連において、フルシチョフ第1書記がスターリン批判を展開、スーダンに続き、モロッコ、チュニジアが独立。エジプトではナセル氏が初代大統領に就任し、スエズ運河の国有化を宣言した。ハンガリーでは反ソ暴動が発生し、その後ソ連軍がハンガリーに介入。イスラエル軍がエジプトのシナイ半島を侵攻、英仏両軍がスエズ運河地帯に進入と、1948年のイスラエル建国後の中東の対立図が鮮明化した年でもある。

ちなみに、鳩山一郎元首相(故人)の生年月日は1883年(明治16年)1月1日の未年生まれだ。戦後の首相経験者で未年生まれは、鳩山氏以外に、1907年(明治40年)生まれの三木武夫氏(故人)、1919年(大正8年)生まれの宮澤喜一氏(故人)、1931年(昭和6年)生まれの海部俊樹氏がいる。

前年の午年生まれの戦後の首相経験者は、田中角栄氏(故人)、中曽根康弘氏、小泉純一郎氏、安倍晋三氏と未年生まれと同様4名だが、午年生まれの首相にやや「タカ派」的人物が多いのに対し、未年生まれは総じて「ハト派」が多い。

一方、2016年の十二支である申年生まれの首相経験者には、1884年(明治17年)9月25日生まれの石橋湛山氏(故人)、1896年(明治29年)11月13日生まれの岸信介氏(故人)氏の2人がいる。安倍首相の母方の祖父である岸氏は2016年と同じ「丙申」生まれ、つまり120年前に生誕している。そういう意味でも、2016年7月頃に実施される参院通常選挙(投票日は7月10日か24日が有力)は、岸氏のライフワークでもあった憲法改正の是非との関係で安倍首相にとっても極めて重要な選挙となりそうだ。

1956年には第16回夏季オリンピックが開催されているが、この回は異例であった。まず、第2次中東戦争とハンガリー動乱、中華民国の参加の影響で多くの国がボイコットしたことと、オーストラリアのメルボルンとスウェーデンのストックホルムの2カ国で開催されたことだ。1896年にスタートした近代オリンピックで2カ国開催は第16回のみ。メルボルンが主会場だったが検疫の関係で馬術競技のみ先行して、ストックホルムで実施されたことが背景。また、南半球で初めてのオリンピック開催となり、開催期間は11月から12月と北半球の冬に行われた。加えて、当時は冬季・夏季大会が同一年に行われており、1956年1月にはコルチナ・ダンペッツオ(イタリア)で冬季オリンピックが開催され、同一年の冬(北半球)に2回の開催となった。

申年は、オリンピックが開催され、米国では大統領選が実施される。2016年は8月5日からブラジルのリオデジャネイロで夏季オリンピックが開催される(21日迄)。一方、米大統領選の投票日は11月8日だ。

また、申年は未年同様、海外では紛争を含め、中東にまつわる出来事が多い。前述のように、1956年には第2次中東戦争が勃発したが、1968年にはアラブ石油輸出国機構(OAPEC)が設立され、その後のオイルショックの遠因ともなった。1980年にはテヘランの米大使館人質救出作戦が失敗し、9月にイラン・イラク戦争が勃発した。2004年3月11日にはスペインで列車爆発事件が発生し191人が死亡、2,000人以上が負傷した。2015年11月13日に発生したパリ同時多発テロ同様、イスラム過激派による犯行とされている。当時、スペインはイラク戦争に派兵していた。日本も2004年には自衛隊をイラクに派遣。

○戦後の「申年」の出来事

  • 2004年
    • 【国内】(1月)自衛隊のイラク派遣開始、(5月)小泉首相が北朝鮮を再訪問、拉致被害者の家族5人帰国、(7月)第20回参院通常選挙、(10月)台風23号上陸(死者・不明98人)、新潟県中越地震発生(死者68名)、(11月)新紙幣発行。
    • 【海外】(3月)スペイン列車爆発事件、ロシアでプーチン大統領再選、(8月)アテネオリンピック、(11月)米大統領選で共和党のブッシュ氏が勝利、(12月)スマトラ島沖地震発生(M9.1、死者22万人以上)。
  • 1992年
    • 【国内】(2月)東京佐川急便事件、(7月)第16回参院通常選挙。
    • 【海外】(2月)マーストリヒト条約調印、アルベールビル冬季オリンピック、(4月)ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争勃発、ユーゴスラビア社会主義連邦共和国解体、ロス暴動発生、(7月)ミュンヘンサミット、バルセロナオリンピック、(11月)民主党のクリントン氏が米大統領選で勝利。
  • 1980年
    • 【国内】(6月)衆参同日選挙(第36回衆院総選挙、第12回参院通常選挙)、大平首相が選挙期間中に急死、自民圧勝、(7月)鈴木善幸内閣発足、モスクワオリンピック不参加、冷夏。
    • 【海外】(3月)イスラエルがシナイ半島から撤退、エジプトと正式に国交樹立、(4月)ジンバブエ共和国独立、テヘランの米大使館人質救出作戦失敗、(5月)韓国で光州事件、(7月)モスクワオリンピック、(9月)イラン・イラク戦争勃発、ポーランドで「連帯」組織、(11月)共和党のレーガン氏、米大統領選で勝利。
  • 1968年
    • 【国内】(5月)イタイイタイ病を公害と認定、(5月)小笠原諸島が日本に復帰、(7月)第8回参院通常選挙、(12月)3億円事件。
    • 【海外】(1月)ブエブロ号事件、プラハの春、アラブ石油輸出国機構(OAPEC)設立、南ベトナムでテト攻勢、(3月)ジョンソン大統領が北爆の一方的停止発表、(4月)キング牧師暗殺、(6月)大統領候補ロバート・ケネディ上院議員暗殺、(7月)核拡散防止条約調印、(8月)チェコ侵攻:プラハの春終焉、フランスが水爆実験、(10月)メキシコシティーオリンピック、(11月)共和党のニクソン氏が米大統領選で勝利。
  • 1956年
    • 【国内】(5月)水俣病公式確認、(7月)第4回参院通常選挙、経済白書「もはや戦後ではない」と表現、(9月)横浜市・名古屋市・京都市・大阪市・神戸市が初の政令指定都市、(10月)日ソ共同宣言に調印:日ソ国交回復、(12月)国連加盟決定。神武景気。
    • 【海外】(1月)スーダン独立、(2月)フルシチョフ第一書記がスターリン批判、(3月)モロッコ独立、チュニジア独立、(7月)エジプトがスエズ運河国有化宣言、(10月)ハンガリーのブダペストで反ソ暴動、イスラエル軍がエジプト侵入:第2次中東戦争、英仏軍がスエズ運河地帯に侵入、(11月)共和党のアイゼンハワー氏が米大統領選で勝利、ソ連軍がハンガリーに軍事介入、イスラエル停戦、(12月)国連総会で日本の加盟を全会一致で可決。

2016年は、内外で政治リスクが意識される展開に

2016年は、内外で政治リスクが意識される展開となりそうだ。また、米国の金融政策にも一段と注目が集まりそうだ。

我が国では、第24回参院通常選挙が7月(10日か24日が有力)に実施される見込みだ。一方、米国では11月8日(火)に大統領選・議会選・知事選が実施される。

2014年12月の衆院総選挙では自公両党が連続して大勝し、衆院定数の3分の2を引き続き確保した。但し、憲法改正の発議には、参院でも3分の2の議席が必要となる。特に、参院は解散がなく、任期が6年と長いため、憲法の改正には、次回の参院選の結果が極めて重要だ。ここで与党が大敗すれば、最短でも2022年まで憲法改正の発議は困難となり、自民党の党則を改正して、3期に総裁任期を延長しても安倍政権下では不可能となる。

一方、内閣支持率は安全保障関連法案の国会審議が行われていた夏場に下落したものの、株価の回復とともに、復調傾向にある。やはり、安倍内閣においては、景気回復期待、その先行指標である株価が内閣支持率に相当程度影響している可能性が考えられる。参院選までは、株価を下支えする政策がとられやすいと考えられるが、海外情勢は予断を許さないと言えそうだ。

1980年の申年は衆参同日選挙となった。過去、同日選は1980年と1986年のみだが、安倍首相が2016年1月4日の通常国会召集を表明したことで、今回も一部にはそうした観測が浮上している。

既に本格化している米国の大統領選予備選は極めて異例な展開となっている。民主党は、本来大本命のクリントン前国務長官がようやく独走態勢を固めつつあるが、一時はメール問題等の対応で支持率が急落、高齢のバイデン副大統領の出馬も取りざたされた。

一方、共和党では、大統領候補の指名争いに有力候補が17人出馬、現在も14名の混戦状態にある。そうした中、当初本命と言われたブッシュ元フロリダ州知事が失速、7月以降はホテル王のトランプ氏が支持率で1位を維持、黒人で元小児神経外科医のカーソン氏も11月中旬までは2位につけていた。この2名に関しては、米国のほぼ全ての主要メディアが当初泡沫扱いしていたが、第1回目のTV討論会以降4回連続で、トランプ氏は支持率1位を確保し、カーソン氏も上位5位以内に食い込んでおり、主要メディアの見立てとは様相が大きく異なっている。それだけ、米国の有権者、特に共和党支持者の既存政治家への不信感が強いということだろう。さすがに、共和党の大統領候補がトランプ氏では、大統領選の帰趨を握るいわゆる「スイング・ステート」での勝利は望めないと予想しているが、政治風土が大きく変化しているとすれば、予断は禁物かもしれない。現実離れした公約を掲げているトランプ氏らが、仮に本選に進むとなると、現在は冷静な国際金融市場にも激震が走るおそれがありそうだ。

当経済面では米国の金融政策が焦点に

経済面では米国の金融政策が焦点となりそうだ。FRB(米連邦準備制度理事会)は2015年12月にも、2004年6月以来となる利上げ方向への転換を行う可能性が高い。問題は、2016年にはどの程度のペースで利上げを継続することになるかだ。2004年から2006年の利上げ局面では年8回開催されるFOMC(連邦公開市場委員会)で毎回各0.25%引き上げを実施し、2年間で政策金利を計4%引き上げたが、今回は半分以下のペースとなるものと見込まれる。米国自体は雇用環境や住宅市場の改善等を背景に個人消費等内需は当面堅調を維持するとみられるが、世界経済への影響はゼロという訳にはいかないだろう。

欧州経済に加え、中国経済の減速で、他の新興国経済の先行きも不透明化している中、米国の利上げ継続期待は海外からの資金還流を招き、新興国経済等に一段のダメージを与える可能性もある。アジア向けの輸出比率の高い我が国にとっては、悪影響が及ぶおそれもある。また、賃金の伸びが鈍い中で円安・物価高が進むことは、国内の個人消費の圧迫要因になりかねず、2017年4月に予定されている消費税の再増税に関しても、軽減税率の対象も絡み影響を与えかねないと言えそうだ。

中国では習近平氏が国家主席に就いて4年目に入る。2014年央から本格化した反腐敗運動の影響は予想以上に中国経済や体制に悪影響を与えている可能性もある。

2015年11月には北京市共産党委員会の呂錫文副書記と上海市の艾宝俊副市長が「重大な規律違反」で解任されたと伝えられた(新華社)。北京市幹部の更迭は反腐敗運動開始後初めてとみられるが、依然、同運動による捜査が継続していることが明らかとなった。同運動に目途がつくまでは、国内での高額消費や地方政府による公共投資や住宅投資にも停滞感が漂いそうだ。この状態で7%近い経済成長を維持するには相当な困難を伴うのではないか。投資主導から消費主導への経済構造の変革は中国にとって必要なプロセスではあるが、成長率の急激な鈍化は、失業者や暴動の増加等社会不安にも繋がりやすい。環境汚染等社会不安も深刻化している。引き続き注視が必要か。

欧州では、財政問題はほぼ終息したが、緊縮財政等に伴い成長率とインフレ率の低迷が課題となっている。また、最近ではドイツにおけるVW問題に加え、テロに伴う消費や観光等への影響も懸念される。金融緩和とともに財政出動による景気対策が2016年の焦点となりそうだ。なお、ギリシャ問題はギリシャへの第3次支援が切れる3年後が焦点か。

新三本の矢実現のための具体策が重要

2016年は安倍政権が発足して実質的に4年目となる。また、2年で2%の物価目標達成に向けて導入された日銀の「異次元緩和」も丸3年を超え、その成否が問われることとなる。

黒田日銀は、2014年10月31日に追加緩和を実施したが、その効果は、円安・株高等に限られ、実質賃金や年金の目減り等から個人消費は停滞気味だ。そうした中、一段の国債買入増は流動性の枯渇と出口政策の困難さを増すことに加え、「1票の格差」の大きい参院選を控えた中、株価対策はさておき、一段の円安政策は取りづらいのではないか。

2015年10月の消費再増税は2017年4月に先送りされたこともあり、4月の賃上げ動向を含め、2016年度中に、実質賃金の一段の上昇等で消費者にも景気回復が実感できるか否かが、物価や内閣支持率の動向にも大きな影響を与えることとなろう。また、2016年は「成長戦略」に加え、第IIフェーズの「新三本の矢」実現のための具体的政策が、アベノミクスの評価を左右することとなりそうだ。

成長戦略関連では、安倍首相が2016年度に標準税率で30%割れ実現を指示した法人実効税率の引き下げ、「IR(統合型リゾート)法案」、「TPP(環太平洋連携協定)」、各種規制改革の具体化等が焦点となりそうだ。但し、参院選を控え、「IR法案」の国会審議は不透明だ。また、「TPP」は米国での予備選本格化で、オバマ大統領が2月に署名したとしても議会による批准は2017年以降に持ち越される可能性もある。むしろ、日本経済や財政等にとって長期的に重要なのは、新三本の矢の「GDP600兆円」「希望出生率1.8」「介護離職ゼロ」実現のための具体策だろう。

申酉騒ぐ?

株式相場に関する格言では、「辰巳天井、午尻下がり、未辛抱、申酉騒ぐ、戌笑い、亥固まる、子は繁栄、丑つまずき、寅千里を走り、卯跳ねる」とされている。

図表1のように、2014年までで見ると、相場格言と日経平均株価225種の年間騰落率は相当程度フィットしている。

【図表1】
十二支ごとの日経平均年間騰落率
(1950〜2014年平均)

『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』

出所: QUICK資料等よりSMBC日興証券作成

最近でも2012年と2013年は、「辰巳天井」の相場格言通り、日経平均株価は年末高で終えている。2014年は、「午尻下がり」の格言通り、地政学的リスクの台頭や欧州・新興国の景気低迷等を受けて、夏までは、本邦株価は調整局面が続いたが、10月末の日銀の追加緩和、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の運用見直し等を受けて急伸。安倍首相は、消費増税の先送りとともに衆院の解散総選挙を決めた。

2015年は、株価は前半堅調を維持したが、夏には中国発の世界同時株安で急落、米国の利上げ開始も遅らせることとなった。その後は、内外ともに、株価は反発基調にあるが、その結果、米国では12月に利上げが開始される可能性が高くなった。過去の米利上げ開始局面では米経済の好調さを背景に暫く世界的に株価は堅調を維持したが、今回は米経済が「一人勝ち」的な状況にあるため、新興国等海外経済や金融市場へ影響が懸念される。

2016年は、大統領選の結果や金融政策次第では、米国発で「申酉騒ぐ」年の初年度となる可能性も否定できない。

また、中東やアフリカ、場合によっては、欧州やアジアを含む地域での「地政学的リスク」は高止まりが予想されることに加え、気候変動リスクも無視できないと言えそうだ。現在、過去最強並みに勢力を拡大している「エルニーニョ現象」は2015年末にピークを迎えると見込まれるが、その後は反動として、過去最強の「ラニーニャ現象」が発生する可能性もある。特に、ラニーニャ現象は地球温暖化と相俟って、西太平洋での台風発生・拡大リスク等、世界的に豪雨及び干ばつを誘発する可能性もあり注意が必要だ。

2015年は「少子高齢化本格化元年」

我が国では、指摘されて久しい「少子高齢化」が足元で本格化しつつある。筆者は2015年を「少子高齢化本格化元年」と名付けている。背景には、1947年から1949年生まれの「団塊世代」が2014年末で全員65歳以上の「前期高齢者」となったのに加え、1971年から1974年生まれの「団塊ジュニア世代」が全員40歳代に達したことがある。10年後には、前者は全員75歳以上の「後期高齢者」、後者は全員50歳代となる。医療・介護問題に加え、雇用問題(若年層の減少と役職定年層ないし生活保護層の増大)が深刻化するおそれもある。

2016年を我が国の新陳代謝を高めるための「構造改革政策発動元年」に

日本経済の長期的な成長のためには、少子高齢化対策や将来的にも国際競争力が維持・強化可能な分野への重点的・戦略的な投資、規制改革や税制改革、行財政改革、財政健全化等、長期的な視点に立った政策の策定と実行が重要だろう。筆者はそれらを「アンチ・エイジング政策」と総称している。

2016年を我が国の新陳代謝を高めるための「構造改革政策発動元年」としたいものである。 

昨年の年末コラムでも紹介したが、最近は、映画製作費の高騰

昨年の年末コラムでも紹介したが、最近は、映画製作費の高騰に伴う興行リスク低減等のため、『スター・ウォーズ』新3部作のような後日譚、前日譚、外伝、スピンオフ、リブート作品等が隆盛を誇っている。

2016年には、マーベルの『アベンジャーズ』シリーズに触発されてか、DCコミックスの2大ヒーローの対決を描く『バットマンvsスーパーマン ジャスティスの誕生』(原題:BATMAN V SUPERMAN: DAWN OF JUSTICE)の公開が予定されている(日米で公開3月)。

一方、『アベンジャーズ』シリーズの続編も言える『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』は4月29日に日本公開となる予定。5月6日の全米公開に先駆けての劇場公開。同作品には、原作では「アベンジャーズ」の一員でありながら、映画化権の関係で登場していなかったスパイダーマンも、今回、ソニー・ピクチャーズとマーベルが提携した関係で、登場する模様。

また、『インデペンデンス・デイ』から20年後を描く『インデペンデンス・デイ:リサージェンス』も夏頃に公開される予定だ。

ハリー・ポッターたちが魔法学校で使っていた教科書を編纂した魔法使いが主人公の物語『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』は冬に公開される予定。

次号では2016年の注目映画を特集したい。

年末のご挨拶

最後に、1年間、「アナリストの忙中閑話」におつきあい頂き誠にありがとうございました。2016年も、「映画と世界情勢」に関する話題を主体に、面白い話、役に立つネタ等をご提供したいと存じておりますので、よろしくお願い申し上げます。

末澤 豪謙 プロフィール

末澤 豪謙

1984年大阪大学法学部卒、三井銀行入行、1986年より債券ディーラー、債券セールス等経験後、1998年さくら証券シニアストラテジスト。大和証券SMBC金融市場調査部長、SMBC日興証券金融市場調査部長等を経て、2012年よりチーフ債券ストラテジスト。2013年より金融財政アナリスト。2010年には行政刷新会議事業仕分け第3弾「特別会計」民間評価者(事業仕分け人)を務めた。日経債券アナリストランキング、14年連続10位内ランクイン。日経財政アナリストランキング2位(2004年〜2006年)。財政制度等審議会委員、国の債務管理の在り方懇談会委員、地方債調査研究委員会委員。趣味は、映画鑑賞、水泳、スキューバダイビング、アニソンカラオケ等。

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