アナリストの忙中閑話【第71回】

アナリストの忙中閑話

(2017年4月20日)

【第71回】北朝鮮情勢緊迫化、今年のGW商戦を制する映画は?日本関連のハリウッド作品も多数公開中

金融経済調査部 金融財政アナリスト 末澤 豪謙

北朝鮮が俄かに緊迫化

今月に入り、北朝鮮が俄かに緊迫化してきた。

米国は4月7日(現地時間、米国東部時間6日午後8時45分)、シリア中部ホムス近郊の空軍基地に対し、米海軍艦船から、巡航ミサイルによる攻撃を実施した。

米国はシリア政権軍に対し巡航ミサイル攻撃、朝鮮半島近海に無敵艦隊派遣

国防総省によると、米軍は地中海東部に展開する米ミサイル駆逐艦、「ポーター:USS Porter, DDG-78」及び「ロス:USS Ross, DDG-71」から計59発の巡航ミサイル「トマホーク」をシリア中部ホムス近郊のシュアイラート空軍基地の航空機や武器庫、防空施設、レーダー、給油施設などに向け発射した。

今回の攻撃は、4月4日、シリア北西部イドリブ県の反体制派が支配するハンシャイフンで、化学兵器の使用が疑われる空爆で、100人規模の死者が出たことを受けた措置とされる。

オバマ前政権は2013年秋、アサド政権の化学兵器使用疑惑を受けて、有志連合軍による空爆を準備したものの、内外で議会の支持が得られず、最終的に見送った。その後、有志連合軍によるIS(イスラム国)への空爆を開始したが、シリア軍への直接攻撃は避けており、米軍がアサド政権軍を狙って攻撃したのは今回が初めて。

米軍の攻撃は、トランプ大統領と中国の習近平国家主席の首脳会談中に実施されたことから、中国に対し、北朝鮮の核問題への強い関与を求めるメッセージとなったと言えそうだ。

その後も、トランプ政権は北朝鮮への牽制を強めた。

米海軍第3艦隊は8日、シンガポールを出港した原子力空母「カール・ビンソン:USS Carl Vinson, CVN-70」を主力とする第1空母打撃群がオーストラリア・フリーマントルへの寄港予定を変更し、西太平洋へ向かったと明らかにした。トランプ大統領は、TVのインタビューで無敵艦隊(Armada)を派遣と言及、金融市場でも一気に地政学的リスクが意識された。

実際には、4月8日にシンガポールに寄港していたカール・ビンソンは、14日までは南シナ海を航行、15日にスマトラ島とジャワ島の間にあるスンダ海峡を通過したことが米海軍の発表で明らかとなっており、その後、直行したとしても朝鮮半島近海への到着は4月最終週となりそうだ。

米軍が新型の超大型爆弾、MOABを実戦で初めて使用

また、4月13日には、米軍はアフガニスタンで、IS(イスラム国)掃討のため、新型の超大型爆弾GBU-43/Bを使用した。米軍国防総省の発表によると、GBU-43/Bは、現地時間13日午後7時32分、アフガニスタン東部のナンガルハル州アチン地区で、ISIS-K(別名、コラサングループ)の地下トンネル施設向けに投下された。

GBU-43/Bは、MOAB(大規模爆風爆弾:Massive Ordnance Air Blast bomb)と呼ばれるもので、投下は特殊輸送機MC-130コンバット・タロンから投下された模様だ(報道ベース)。

GBU-43/Bは、米軍が保有する非核の通常兵器では破壊力が最大で、その威力から、配備されている米空軍内部では Mother Of All Bombs(MOAB:全ての爆弾の母)とも称されている。

MOABは、人口衛星を使ったGPSによる精密誘導機能を備えた「スマート爆弾」で、重量2万1,000ポンド(約9.5トン)。2003年に初の実用弾が軍に納入された。

イラク戦争で実戦配備されたものの、最終的に使用されなかった新型爆弾MOABがこのタイミングで投下された背景には、やはり、北朝鮮情勢が関連している可能性が高そうだ。

トランプ大統領は13日の会見で、攻撃について「オバマ政権時代の8年間と比べたら驚くほどの違いがある」(TBS)、「新たな仕事を成功させた。我々の軍を誇りに思う」(同)と述べ成果を強調した。また、記者団に「今回の攻撃は北朝鮮に対するメッセージにもなるか」(同)と聞かれ、トランプ氏は「わからない」(同)とする一方で、「北朝鮮は問題だ。問題は解決する」(同)と述べた。

北朝鮮は過去、何らかの記念日前後に、弾道ミサイルの発射や核実験を実施していることが多い

北朝鮮は過去、何らかの記念日前後に、弾道ミサイルの発射や核実験を実施していることが多い。

4月は、11日に開催された北朝鮮最高人民会議に続き、15日には故金日成主席生誕105周年、25日には、朝鮮人民軍創建85周年の記念日を控えているため、その前後で、北朝鮮が弾道ミサイルの発射実験や核実験を行うとの観測が強まったものとみられる。

特に、核実験は、新型のICBM(大陸間弾道ミサイル)やSLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)の発射実験の前後(4回中3回は後)に実施されているため、スカッドやノドン等のIRBM(中距離弾道ミサイル)ではなく、ICBMやSLBMの発射実験が行われた場合、実施可能性が高まると言えそうだ。

米国の北朝鮮に対する軍事オプション行使には多くのハードル

トランプ大統領の警告も、このような長距離の弾道ミサイルの発射及び核実験を対象としているものと考えられる。

但し、仮に北朝鮮が近い将来、長距離弾道ミサイルの発射や核実験を実施したとしても、米国が直に軍事攻撃に踏み切るとみるのは早計だろう。

ハードルは少なくとも4つほど考えられる。

まず、第1に、トランプ大統領はフロリダで開催された米中首脳会談を踏まえ、中国に対し、北朝鮮への対応を求めることとなろう。既に、中国は北朝鮮からの石炭の輸入を禁止、トランプ大統領も評価するコメントを出している。今後、パイプラインによる北朝鮮向け石油の輸出を止める措置等が考えられる。中国は北朝鮮に対し、長距離弾道ミサイル発射や核実験に関する警告を発出している可能性もあり、当面は中国の対応を見極めることとなろう。

第2に、軍事オプションの準備に一定の時間がかかることだ。現時点で「カール・ビンソン」の随伴水上艦はミサイル巡洋艦1隻とミサイル駆逐艦2隻に過ぎない。攻撃型原子力潜水艦も随伴していると考えられるが、第1攻撃後に、北朝鮮が反撃した場合のケースを勘案すると、到底足りない。既に、アメリカ西海岸からミサイル駆逐艦数隻が西太平洋に向かっているとの情報もあるが、横須賀に停泊している「ロナルド・レーガン:USS Ronald Reagan, CVN-76」を主力とする第5空母打撃群に加え、太平洋に展開している「ニミッツ:USS Nimitz, CVN-68」を主力とする第11空母航空団あたりも、作戦可能域への配備が必要となろう。

また、地下深くに掘られた北朝鮮のミサイル基地を攻撃するには、大型貫通爆弾(MOP)GBU-57等を積載できる戦略爆撃機のB1及びB2のグァム基地等への配備が必要となる(米本土からの作戦行動も可能だが、制約を受ける)。

第3に、米国では北朝鮮情勢への関心の高い国民は少ないとみられるが、米国の一般市民に被害が出れば話は別である。少なくとも、米軍基地に居住する米軍人の家族やソウル等北朝鮮国境に近い米国民には避難勧告ないし命令を出す必要がある。

第4に、同盟国であり、北朝鮮から直接攻撃を受ける可能性が生じる韓国及び日本との事前協議が必要となる。

北朝鮮の核問題は1994年にも浮上、米朝核危機と言われたように、当時のクリントン政権が北朝鮮の核施設への攻撃を検討したが、最終的には北朝鮮の反撃による韓国の被害等を考慮し、外交オプションに切り替え、カーター元大統領が訪朝、米朝枠組み合意に双方が調印した経緯がある。

韓国は朴槿恵前大統領が弾劾・罷免され、大統領選の真最中であり、政治判断できる状況にはない。

大統領選は5月9日に投開票されるが、次期大統領の有力候補は、革新系「共に民主党」の文在寅前代表及び中道系の野党第2党「国民の党」の安哲秀前共同代表であり、米国の軍事オプションに賛成する可能性は何れも低いと想定される。

北朝鮮に対し融和的で支持率第1位だった文氏を、安氏が一部保守層の支持を得て急速に追い上げていることも、北朝鮮にとっては、暫く様子見を続ける誘因になるかもしれない。

このように考えると、朝鮮半島における米国の軍事オプション行使の前には、幾つかの段階があり、また、最終的に米朝が軍事衝突する可能性は低いと考えられる。但し、従来の常識がアウトサイダーを自称するトランプ政権には通じない可能性もある。事態の推移を注視することは必要だろう。

今年のGW商戦を制する映画

足元、きな臭さが強まった極東情勢だが、遠出をしない方は、映画館で注目映画を鑑賞するのはいかがだろう。

ここ数年、ゴールデン・ウィーク(GW)商戦は、ディズニーが制してきたが、アニメの健闘も光った。2014年は『アナと雪の女王』、2015年は実写版『シンデレラ』が人気を博した。

2016年は後にアカデミー賞を受賞した『ズートピア』と邦画アニメの『名探偵コナン 純黒の悪夢(ナイトメア)』がいい勝負となったが、年間興収では前者の76.3億円に対し後者は63.3億円と『ズートピア』が上回った(日本映画製作者連盟資料)。

今年の台風の目はアニメとディズニー作品か

今年の台風の目は、過去2年同様、『名探偵コナン から紅の恋歌』(4月15日公開)に加え、『美女と野獣』(4月21日公開)。邦画アニメとディズニー実写版の対決となりそうだ。

『美女と野獣』
4月21日(金)全国公開
© 2017 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.

『美女と野獣』は、『ハリー・ポッター』シリーズのハーマイオニー役で知られるエマ・ワトソンさん主演。なお、『美女と野獣』は、フランスの民話を元に1991年にディズニーが長編アニメーションを製作している。実写版の映画も過去3本作られた。2016年には原作の舞台フランスで製作された作品が日本でも公開され好評を博した。

ディズニーにとっては、同様にアニメから実写版を製作した『シンデレラ』以上の成果を挙げられるかが焦点か。ちなみに、4月19日現在で、『美女と野獣』は、米国内及び世界興収ともに、2017年の第1位となっている(Box Office Mojo調べ)。

ハリウッドの大作が続々公開

加えて、洋画の注目作品としては、『グレートウォール』(4月14日公開)、『バーニング・オーシャン』(4月21日公開)、『ワイルド・スピード ICE BREAK』(4月28日公開)。

グレートウォール
2017年4月14日(金)より全国ロードショー
(C) Universal Pictures

『グレートウォール』は、トランプ大統領の選挙戦公約「Pay for the Wal(壁の建設代金を支払わせる)」にあやかって製作された訳ではなさそうだが、まさに、タイトル通り「万里の長城」の建設秘話(?)が明かされる。

監督は、『HERO』や『LOVERS』を監督し、2008年の北京オリンピック開幕式の演出も担当した中国を代表する巨匠チャン・イーモウ氏。主演は「ジェイソン・ボーン」シリーズのマット・デイモンさん。中国と米国の合作。

「万里の長城」は、総延長が2万キロを超える人類史上最大の建造物として知られる。筆者も、北京郊外の長城の上を歩いたことがあるが、極めて勾配が急なことと、尾根沿いに地平線の果てまで続いていたことが記憶に残っている。かつて、中国が世界の文明の最高峰にあった様子が、映画の中でも語られるが、本作品の製作費は1億5千万ドルと、中国で撮影が行われた映画の中で最高額の予算で作られた。鑑賞した印象は、『ロード・オブ・ザ・リング』に近く、壮大な作品に仕上がっている。

中国映画というイメージからか米国内での興収はいまひとつだが、4月19日時点で2017年の世界興収第8位に食い込んでいる(Box Office Mojo調べ)。

ワイルド・スピード ICE BREAK
4月28日(金)よりTOHOシネマズ 日劇ほか全国ロードショー
(C) Universal Pictures

『ワイルド・スピード』シリーズは毎回、規模が拡大する。それが人気の源泉とも言えそうだが、2015年公開の前作『ワイルド・スピード SKY MISSION』は歴代世界興収ランキング第6位(Box Office Mojo調べ)にあるだけに、第8弾となる本作がどこまで興収を伸ばすことができるか。

原題は『The Fate of the Furious / Fast & Furious 8 』で「FF」がキャッチフレーズ。ニューヨークでの膨大な数のカーチェイス、氷上の対決とCGを使わないアクションが見ものだが、本作ではもう一つの「F」、ファミリーの絆も主題となっている。ヴィン・ディーゼルさんと並ぶ主演のポール・ウォーカーさんが前作の撮影終了後、事故死したことで、シリーズの先行きに一時暗雲が拡がったが、本作では新たな若手も参加。試写会で鑑賞したが中々の出来で、まだまだシリーズは続きそうだ。

実は前作の興収は、中国が米国を大きく上回った。本作も前週末のオープニング世界興収は5億3,250万ドルと、2015年の『スター・ウォーズ フォースの覚醒』の5億2,900万ドルを抜いて新記録を樹立している。米国の9,878万ドルに対し、中国での興収は1億9,000万ドルと約2倍に達した。2017年分どころか、歴代世界興収ランキングでも10位内に入ってきそうな勢いだ。

本作や『グレートウォール』も中国における興収が鍵を握りそうだ。何やら、北朝鮮情勢と似た展開か。

『バーニング・オーシャン』は史上最大の人災とも言われる2010年にメキシコ湾にある英石油大手BP:ブリティッシュ・ペトロリアムの石油掘削施設「ディープウォーター・ホライゾン」で発生した海底油田爆発事故を映画化したもの。

かつて、国際石油資本セブン・シスターズの一員として、隆盛を誇ったBPも事故で巨額の補償を要求され大打撃を被った。大企業と言えども、小さな判断のミスが屋台骨を揺るがす可能性に留意する意味でも、経営者やサラリーマンにお奨めの作品。

邦画は人気コミックの実写版が多数公開

邦画では、『クレヨンしんちゃん襲来!!宇宙人シシリ』(4月15日公開)、『3月のライオン 後編』(4月22日)、『無限の住人』(4月29日公開)、『帝一の國』(4月29日公開)等に注目。

『無限の住人』(4月29日公開)は、昨年末に解散した「SMAP」の木村拓哉さんが不死身の用心棒侍を演じる。沙村広明さん原作の人気時代劇コミックを実写化。

帝一の國
2017年4月29日より全国東宝系にてロードショー
(C)2017フジテレビジョン 集英社 東宝

『帝一の國』は古屋兎丸さん原作のコミックを実写化。菅田将暉さん演ずる主人公は、全国屈指の頭脳を持つ800人のエリート学生達が通う、日本一の超名門海帝高校で生徒会長を目指す。権謀術数と実社会でも流行の忖度が渦巻く学園コメディ。学園ドラマ隆盛の最近の邦画界だがやや趣の異なった作品だ。

『3月のライオン 後編』は、前編が3月に公開された。こちらも羽海野チカさん原作の大ヒットコミックを映画化したもの。プロ棋士の世界を描いたものだが、将棋になじみがない方でも十分楽しめる。主演は『君の名は。』で声優としての才能も開花させた神木隆之介さん。

アニメ作品もランキング上位占有か、日本関連のハリウッド作品も公開中

なお、既に3月から公開済だが、興収上位を継続している『SING/シング』、『モアナと伝説の海』あたりも、ファミリー向けに上質の作品だけに、TOP10を維持する可能性があろう。

ちなみに、『ズートピア』同様、『モアナと伝説の海』もディズニー作品だが、第89回アカデミー賞長編アニメーション部門にノミネートされた。

一方、『SING/シング』には、声優として有名俳優や歌手が登場するが、楽曲の中には日本の有名歌手の作品も登場するのでお見逃しなく。筆者は字幕版しか視聴していないが、字幕版と吹き替え版の双方を楽しむ観客も多いとのこと。

なお、『SING/シング』で、マシュー・マコノヒーさんらとともに声優を務めているスカーレット・ヨハンソンさんは、現在公開中の『ゴースト・イン・ザ・シェル』で主演し、「少佐」役を務めている。

同作品は士郎正宗さん原作のSFアクション「攻殻機動隊」をハリウッドの実写化したもの。北野武さんが荒巻大輔役と助演級の役割で出演しているほか、桃井かおりさんの好演も印象に残った。

3月25日に公開された『キングコング』の新作『キングコング:髑髏島の巨神』は、過去の『キングコング』作品とは撮影手法等作風が大きく異なる。舞台も1944年の太平洋戦争中と米軍がベトナム戦争から撤退した1973年。ベトナム戦争がモチーフとなっている点も最近の映画とは雰囲気が異なる。

作風は、2014年公開のハリウッド版『GODZILLA ゴジラ』に似ている。これは、何れの作品も、レジェンダリー・ピクチャーズ製作で、東宝と提携し世界観を共有したモンスターバース(MonsterVerse)作品であることが背景にある。

『GODZILLA ゴジラ』は続編が2本製作される予定だが、そのあたりの事情は、『キングコング:髑髏島の巨神』のエンドロール(エンドクレジット)後にヒントが隠されている。最後までご覧頂きたい。怪獣映画ファンには必見の作品だ。

以上、GWまでに公開される作品を紹介してきたが、日本を取り巻く地政学的リスクだけは、「事実は小説よりも奇なり(Fact is stranger than fiction.)」とならないよう願いたい。

末澤 豪謙 プロフィール

末澤 豪謙

1984年大阪大学法学部卒、三井銀行入行、1986年より債券ディーラー、債券セールス等経験後、1998年さくら証券シニアストラテジスト。大和証券SMBC金融市場調査部長、SMBC日興証券金融市場調査部長等を経て、2012年よりチーフ債券ストラテジスト。2013年より金融財政アナリスト。2010年には行政刷新会議事業仕分け第3弾「特別会計」民間評価者(事業仕分け人)を務めた。日経債券アナリストランキング、14年連続10位内ランクイン。日経財政アナリストランキング2位(2004年〜2006年)。財政制度等審議会委員、国の債務管理の在り方懇談会委員、地方債調査研究委員会委員。趣味は、映画鑑賞、水泳、スキューバダイビング、アニソンカラオケ等。

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