アナリストの忙中閑話【第81回】

(2018年2月22日)
【第81回】冬季五輪とトイレ五輪、2018年の注目映画、2月に入り国際金融市場が動揺
金融経済調査部 金融財政アナリスト 末澤 豪謙
平昌五輪で羽生選手が2連覇、小平選手がスピードスケート女子初の金、スピードスケート女子団体追い抜きも金
前週末の2月17日の土曜日及び18日の日曜日は、近年低落傾向が続いているテレビ視聴率が大きく上昇したと思われる。
2月9日から25日迄開催中の第23回オリンピック冬季競技大会「平昌五輪」で最も金メダルの期待の大きかった男子フィギュアスケートの羽生結弦選手とスピードスケート女子500メートルの小平奈緒選手が何れも圧倒的な強さで、勝利したからだ。
SP首位の羽生選手は17日、ソチ五輪に続き金メダルを獲得したが、この種目での連覇は66年ぶり。一方、2016年10月からワールドカップなど国内外のレースで24連勝中の小平選手は日本のスピードスケート界では1998年長野五輪男子500メートル清水宏保選手以来、女子では初の金メダルを獲得。そのタイムは36秒94のオリンピックレコードでただ一人、36秒台という完勝。終わってみれば、世界王子(敢えて王者ではなく)と世界女王が遺憾なく実力を発揮した訳だが、ここまでの経緯を鑑みると並大抵の努力で獲れたメダルでないことは素人の筆者でもわかる。羽生選手は昨年11月のNHK杯での公式練習で、右足首を負傷した後、氷に乗れない日が続き、平昌五輪の出場さえ危ぶまれたこともあり、ぶっつけ本番での二大会連続金メダル獲得となった。また、羽生選手は2011年の東日本大震災で被災、練習ができない日々を過ごした経験もある。
また、31歳で3度目の五輪に臨んだ小平選手も信州大学を卒業した後、地元長野の相沢病院に就職、支援を受けて競技を続けてきているが、就職先を探すのに苦労していたことも知られている。小平選手は自分のレースが終わった後、声援を送るファンに対し、次のレースのために「静かに」というポーズをとった。また、今大会では銀メダルとなったが2010年バンクーバー大会から五輪連覇を果たしている世界記録保持者のイ・サンファ選手(韓国)とウイニングランで抱き合い、ライバルを慰めたシーンは大きな感動を呼んだ。日韓関係は様々な問題で今なおしこりをかかえているが、極寒の平昌から雪解け的な春風が吹いた感がした。
21日のスピードスケート女子団体追い抜き決勝でも、日本はオランダを破って、金メダルを獲得した。タイムは2分53秒89のオリンピックレコード。「ワンライン」にみられるチームプレイは、高木姉妹の葛藤も乗り越え、ここまで4年、年間300日以上を共に暮らすことで養えた技と言える。こちらも一朝一夕で獲得できたメダルではない。なお、高木美帆選手は、今大会、1,500メートルで銀、1,000メートルで銅メダルも獲得、3色のメダルを1大会で揃える日本女子史上初の快挙となった。
既に21日段階で、日本勢のメダル獲得は、金3、銀5、銅3の11個と長野五輪の10個(金5、銀1、銅4)を抜いて過去最多となった。今後もメダル積み増しに期待したいが、彼らの活躍はその「人徳」とともに、「継続は力なり」を実践した勝利で、その道のりも勘案すると、メダル数以上の価値があると言えそうだ。
2020年の東京夏季五輪まで2年半を切る、トイレ五輪では既に金メダル獲得?
平昌五輪が終われば、次は2020年の東京夏季五輪となる。開催期間は2020年7月24日から8月9日までのため、既に開会まで2年半を切った状態。
現在、新宿区霞ヶ丘町のオリンピックスタジアムや中央区晴海の選手村などでは、トラックや重機が多数集積し建設が急ピッチで進行中だが、東京都などでは公衆トイレの改修なども進められている。
政府も東京五輪開催年の訪日客4千万人を目標に掲げており、トイレの洋式化等改修を後押ししている。国内の公衆トイレは主な観光地だけでも約4千か所あるが、観光庁が2017年に全国の自治体を調査したところ、このうち洋式は58%、和式は42%だった。和式トイレは外国人のみならず、最近では日本人の若者や足腰に障害のある老人らからも不評で、観光庁は、2020年に向けて、観光地の公衆トイレを全て洋式に改修することを目指し、自治体に対して、改修工事の費用の3分の1を補助する事業を2017年度に開始した。豊島区は東京五輪を見据え、公園などのこれから改修する85か所の公衆トイレで、全て洋式に交換する方針で、東京都も駅や公共施設でのトイレの洋式化を進めることにしている。
こうした取り組みが続けば、2020年には、東京五輪のメダル獲得数は別として、トイレ五輪では1位に輝くのは間違いないと思われる。
というのは、海外では、公衆トイレに関して、整備とは逆行の動きがあるからだ。
筆者は前週、スペイン、フランス、イタリア、マルタを訪問した。ただ、海外では、日本と違い、トイレを探すのが大変だ。欧州では無料の公衆トイレはほとんどなく、有料でも数が少ない。上記4か国だと、50ユーロセントないし1ユーロを徴収されるところが多かった。そうした中、数少ない無料のトイレが百貨店にあるのだが、マルセイユでは百貨店のトイレが閉鎖されていた。フランスでは2015年11月のパリ同時多発テロの後も、2016年7月のニースでの車両突入事件等テロが続発、マルセイユでも昨年10月に主要駅で通行人らが襲撃され女性2人が殺害されるテロが発生しており、治安上の要請のようだ。ただ、その百貨店はモールと直結しており、そこに有料トイレがあるというので出向くと、アフリカ系と思しき家族連れがゲート式のトイレの前で10数人たむろしている。50ユーロセントを払ってトイレに入ると中は空いているのだが、彼らはゲートが開いた隙にコインを入れず、1人ずつ後ろからついて入っていた。ただ、透明板のゲート式のため追加で入るのは1人が限界のようで、コインを入れる客が来るまでトイレの回りにたむろしているようだった。
フランスは2017年11月1日、2015年11月のパリ同時多発テロ事件以降発出されていた非常事態宣言がようやく終了した。但し、同宣言は6回延長され、宣言下で例外的に容認してきた警察などの権限を認める2020年末までの「治安およびテロ対策強化に関する法律」が宣言を引き継いだ形になっている。
一方、25年ぶりにローマを訪れると、観光客はざっと数倍に増え、特に、25年前にはほとんど観光客がいなかったコロッセオ(円形闘技場)は中国人観光客らで溢れ返っていた。観光客とともに、増えていたのが25年前にはほとんど見かけなかった軍と武装警察。トレビの泉、スペイン階段、共和国広場等人が集まる場所では、其処ら中で自動小銃を持った軍人や警察官が警戒にあたっていた。そうした状況のため、トイレに行くには、カフェやバルに入るか、ジェラートを買うしかない。実質的には有料トイレ以上にコストがかかった。
我が国でも、G7サミット開催時等には、駅からごみ箱が撤去され、コインロッカーも使用中止となったりと、困ったことになるのだが、五輪開催時、公衆トイレや商店や駅のトイレの安全確保はどうなるのだろう。せっかく増やした最新の洋式トイレ等が使用停止とならないか、ふと心配となった。
2018年公開の注目映画
前月号で特集したように、3月4日(日本時間の3月5日)には、米国の第90回アカデミー賞授賞式が開催され、直前の3月2日には第41回日本アカデミー賞の授賞式が開催される。両賞の受賞作品(日本アカデミー賞は最優秀賞)は、来月号で特集予定だが、以下では2018年公開(日本で3月以降公開)の注目映画を取り上げる。
今年も洋画は4月公開の『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』や7月公開の『ジュラシック・ワールド/炎の王国』等大作が目白押しだ。といっても、近年の傾向ではあるが、大ヒット映画の続編やプリクエル(前日譚)、スピンオフ、リブート作品が多い。製作費の高騰に伴う興行リスク低減が背景か。
一方、邦画は、コミックやアニメの実写版や学園モノが多い。こちらも近年の傾向を踏襲。
2017年の日本国内での映画興収は前年比2.9%減の2,286億円と過去2番目の高水準に
ちなみに、映画製作配給大手4社で構成される一般社団法人日本映画製作者連盟によると、2017年の興行収入は、過去最高となった2016年(2,355億800万円)比2.9%減の2,285億7,200万円と、興収統計を発表し始めた2000年以降で2番目の高水準となった。2016年の『君の名は。』や『シン・ゴジラ』のような大ヒット作がない中でも堅調な結果となった。内訳は邦画が前年比15.6%減の1,254億8,300万円、洋画は同18.6%増の1,030億8,900万円だった。構成比は邦画の54.9%に対し洋画は45.1%と、前年(63.1%:36.9%)比洋画シェアが拡大した。
公開本数は1,187本と過去最高更新。内訳は邦画が594本、洋画が593本。平均入場料金は1,310円と2016年(1,307円)比、3円上昇し、過去最高更新。
入場人員数は2016年(1億8,018万9千人)比3.2%減の1億7,448万3千人で、1974年以来42年ぶりに1億8千万人の大台を超えた2016年比では減少したものの高水準を維持した。
足元の入場者数や興収の増加傾向を支えている背景として、映画公開本数の増加とスクリーン数の増加が挙げられる。特にシネコンの普及により、人々の多様な嗜好に対応した映画を大中小、様々な規模のスクリーンで並行的に多数上映できるようになったことも大きい。中高校生をターゲットとした学園モノが多数公開されている背景にもこうした事情がありそうだ。
現時点で2018年の米国及び世界興収トップ作品が3月1日に公開
ブラックパンサー
3月1日(木)全国ロードショー
©Marvel Studios 2018 All rights reserved.
3月1日公開の『ブラックパンサー』は、マーベルコミックのキャラクターで『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』(2016年公開)にも登場した漆黒の戦闘スーツに身を包んだヒーローの活躍を描いた作品。国王とブラックパンサーという2つの顔を持つ男ティ・チャラが、超文明国家ワカンダの秘密を守るため、戦いに挑んでいく。主演のチャドウィック・ボーズマンさんは本コラムでも取り上げた2013年公開の『42 世界を変えた男』では、メジャーリーグ・ベースボール史上初の黒人選手ジャッキー・ロビンソン役を演じた。現時点で2018年の米国及び世界興収ナンバー1となっている(Box Office Mojo調べ)。
3月1日公開の『15時17分、パリ行き』はクリント・イーストウッド監督がメガホンをとり、2015年8月に発生したイスラム過激派によるアムステルダム発パリ行の高速列車でのテロ事件を映画化。
ダウンサイズ
2018年3月2日(金)TOHO シネマズシャンテ他全国ロードショー
©2017 Paramount Pictures. All rights reserved.
3月2日公開の『ダウンサイズ』は、マット・デイモンさん主演。ノルウェーの科学者が人間の身体のサイズを13cmに縮小する方法を発見。地球規模の社会問題となった人口過多を一気に解決するための全人類縮小200年計画がテーマ。
3月10日公開の『坂道のアポロン』長崎県佐世保市を舞台にした小玉ユキ氏の同名コミックを実写映画化。主演はHey! Say! JUMPの知念侑李さん。
3月10日公開の『北の桜守』は、『北の零年』『北のカナリアたち』に続く吉永小百合さん主演の「北の三部作」最終章。『おくりびと』『ラストレシピ 〜麒麟の舌の記憶〜』の滝田洋二郎監督がメガホンをとった。
3月16日公開の『リメンバー・ミー』は、死者の国に迷い込んだ少年の冒険を描くディズニー/ピクサーのアドベンチャーアニメ。第90回アカデミー賞長編アニメ映画賞ノミネート作品。
ちはやふる -結び-
公開日:2018年3月17日
全国東宝系にてロードショー
©2018映画「ちはやふる」製作委員会
©末次由紀/講談社
3月17日公開の『ちはやふる―結び―』は広瀬すずさん主演で、末次由紀氏のコミックを原作に競技かるたに打ち込む高校生の青春を描いた作品。本コラムでも紹介し、2016年に大ヒットした『ちはやふる』二部作の第3弾。監督は前二作に続き小泉徳宏氏。
3月21日公開の『ボス・ベイビー』は『怪盗グルー』のユニバーサル・スタジオとドリームワークスが初タッグを組み、絵本「あかちゃん社長がやってきた」にインスパイアされたCGアニメ。第90回アカデミー賞長編アニメ映画賞ノミネート作品。
3月21日公開の『曇天に笑う』は、唐々煙(からからけむり)氏の人気コミックを福士蒼汰さん主演で実写映画化。
日本関連のハリウッド映画も公開
トゥームレイダー ファースト・ミッション
2018年3月21日 全国公開
配給:ワーナー・ブラザース映画
©2017 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND METRO-GOLDWYN-MAYER PICTURES INC.
3月21日公開の『トゥームレイダー ファースト・ミッション』は日本のスクウェア・エニックス社が2013年に発売した人気ゲーム「トゥームレイダー」を実写映画化。本作はリブート作品で主人公のララ・クロフトは前2作のアンジェリーナ・ジョリーさんから、オスカー女優のアリシア・ヴィキャンデルさんに交代。本作では日本近海の神話上の島が舞台となっている。
絵文字の国のジーン
2月17日(土)よりユナイテッド・シネマ、シネプレックス(全36館)にて公開
配給: ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
©2017 Sony Pictures Animation Inc. All Rights Reserved.“ emoji”TM is a trademark of emoji company GmbH used under license.
日本関連のハリウッド作品としては、現在公開中の『絵文字の国のジーン』は、原題も『The Emoji Movie』でメールなどで使われる日本発祥の絵文字をモチーフに描いたハリウッド製3DCGアニメーション。どうも、「エモジ」は国際的に通用するらしく、東京五輪でも活用が期待できそうだ。
3月30日公開の『ヴァレリアン 千の惑星の救世主』は、リュック・ベッソン監督が名作コミック「ヴァレリアン」を映画化したSF超大作。舞台は西暦2740年、連邦捜査官のヴァレリアン(デイン・デハーン)とローレリーヌ(カーラ・デルヴィーニュ)は宇宙の平和を守る任務に就き、銀河をパトロールしていた。
第90回アカデミー賞ノミネート作品も続々公開
3月30日公開の『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』は、監督がスティーヴン・スピルバーグ氏、主演がメリル・ストリープさんとトム・ハンクスさんで、第90回アカデミー賞で作品賞及び主演女優賞にノミネートされている。ウォーターゲート事件が発覚する少し前のベトナム戦争を舞台とした実話。演技派を揃えた良く出来た作品だが、どうしても、ニクソン大統領とトランプ大統領が重なって見える。アカデミー賞の行方に注目したい。
同じく3月30日公開の『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』は、チャーチルの英国首相就任からダンケルク撤退作戦までの4週間を描いた作品。第90回アカデミー賞で6部門でノミネート。
4月6日公開の『ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル』は、一部で2020年の米大統領選に出馬観測のあるドウェイン・ジョンソンさんが製作・主演を務めた『ジュマンジ』の続編。ゲームの世界に入り込んだオタクの高校生が全く異なったキャラに入れ替わり、ジャングルを探検するアドベンチャー。
4月13日公開の『パシフィック・リム:アップライジング』は、イェーガーとKAIJUの死闘を描いた『パシフィック・リム』(2013年公開)の続編。前作に続き、菊地凛子さんが出演。また、本作には新田真剣佑さんも出演。前作で監督を務めたギレルモ・デル・トロ氏は本作では製作を担当。KAIJU襲来で東京壊滅か。
やはり4月13日公開の『名探偵コナン ゼロの執行人』は人気アニメ「名探偵コナン」の劇場版第22弾。
4月20日公開の『レディ・プレイヤー1』は、スティーブン・スピルバーグ監督で、西暦2045年の仮想ネットワークシステム「オアシス」を舞台としたSFアドベンチャー作品。「機動戦士ガンダム」等日本のアニメ等のキャラクターも多数登場。
世界興収歴代10位内作品の続編も日本先行公開
4月27日公開の『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』は、『アベンジャーズ』シリーズ第3弾。地球を破壊するほどのパワーをもつラスボス・サノスとアベンジャーズとの決戦を描く。アイアンマン、キャプテン・アメリカ、マイティ・ソー、スパイダーマンや前述のブラック・パンサーらに加え、マーベルのスーパーヒーロー・ヒロインが集結。全米公開は5月4日で日本が先行公開。なお、前作は世界興収歴代第7位、2012年公開の『アベンジャーズ』は第5位となっている(Box Office Mojo調べ)。
4月27日公開の『となりの怪物くん』は、ろびこ氏原作の同名コミックを実写化。出演は菅田将暉さん、土屋太鳳さんら。
5月4日公開の『ラプラスの魔女』は、東野圭吾氏原作の同名小説を三池崇史監督、櫻井翔さん主演で映画化。他に広瀬すずさんや福士蒼汰さんらが出演。
5月4日公開の『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』は、女子フィギュアスケーター、トーニャ・ハーディングの半生を描いた作品。
5月18日公開の『ランペイジ 巨獣大乱闘』は、アーケード・ゲーム「ランペイジ」を実写化。遺伝子実験で巨大し続ける動物と闘う男をドウェイン・ジョンソンさんが演じるアクション映画。
5月公開の『GODZILLA 決戦機動増殖都市』は、アニメ版の『GODZILLA 怪獣惑星』に続く第2弾。
5月公開の『ピーターラビット』は、「ピーターラビット」のCGアニメと実写の融合作品。
6月8日公開の『羊と鋼の森』は、宮下奈都氏原作で「2016年 本屋大賞第1位」に輝いた同名の小説を山崎賢人さん主演で映画化。
6月15日公開の『空飛ぶタイヤ』は、池井戸潤氏原作の同名小説を映画化。主演は長瀬智也さん。
6月29日公開の『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』は、若き日のハン・ソロを描いた『スター・ウォーズ アンソロジー』として製作されるスピンオフ第2弾。『スター・ウォーズ』シリーズでハリソン・フォードさんが務めた主演のハン・ソロ役はオールデン・エアエンライクさん。
6月公開予定の『メイズ・ランナー:最期の迷宮』は、サバイバル・アクションの『メイズ・ランナー』シリーズの第3弾にして完結編。
同じく6月公開予定の『デッドプール2』は、本コラムでも紹介したR指定の過激なヒーロー作品として話題を集めた2016年公開の『デッドプール』の続編。世界のためでも人類のためでもなく、自分のためだけに闘う、無責任で自己中心的なアンチヒーローを描いた作品。引き続きライアン・レイノルズさんが主演。
7月13日公開の『劇場版ポケットモンスター2018(仮題)』は、 人気シリーズの劇場版第21作。
7月13日公開の『ジュラシック・ワールド/炎の王国』は、『ジュラシック・パーク』シリーズ誕生25周年、第5弾。なお、前作の2015年公開の『ジュラシック・ワールド』は世界興収歴代第4位(Box Office Mojo調べ)。
7月20日公開予定の『BLEACH』は「週刊少年ジャンプ」に2016年まで連載されていた人気漫画「BLEACH」の実写映画。主人公の黒崎一護役は福士蒼汰さんが務める。
8月1日公開の『インクレディブル・ファミリー』は、2004年公開の『Mr.インクレディブル』の続編で、ピクサー・アニメーション・スタジオのアニメ作品。
8月3日公開の『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』は、トム・クルーズさん主演の人気スパイアクションシリーズ第6弾。前作は2015年公開の『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』。
8月17日公開の『銀魂2(仮題)』は、2017年公開の『銀魂』の続編。「週刊少年ジャンプ」に連載中の漫画「銀魂」を実写化。主演は小栗旬さん、監督・脚本も前作に続き福田雄一氏。
8月24日公開の『マンマ・ミーア! ヒア・ウィー・ゴー』は2008年公開の『マンマ・ミーア!』の続編。
夏公開予定の『アリタ:バトル・エンジェル』は、木城ゆきと氏原作の「銃夢」(ガンム)を巨匠ジェームズ・キャメロン氏の製作・脚本で実写化。
冬公開予定の『ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生』は、魔法動物学者の魔法使いが主人公の『ファンタスティック・ビースト』シリーズ第2弾。前作は2016年公開の『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』。
2月に入り、国際的に金融市場が動揺
米長期金利の上昇等を背景に、2月に入ってから国際的に金融市場が動揺している。5日のニューヨーク金融市場ではダウ工業株30種平均は大幅に続落し、前週末比1,175ドル21セント(▲4.60%)安の2万4,345ドル75セントと2017年12月8日以来2カ月ぶりの安値水準で終えた。下げ幅は、リーマン・ショック時の2008年9月29日の777ドル68セントを上回り、史上最大となった。取引時間中には一時、下げ幅が1,597ドルまで拡大する局面もあった。米国では年明け後、米長期金利が急上昇、堅調推移となっていた原油価格も下落、リスク資産全般が売られる展開となった。
実は、2月5日同様、月曜日の株価暴落で有名なのは、1987年10月19日(月)、いわゆる「ブラックマンデー(暗黒の月曜日)」だ。ちょうど今から30年4か月前のことになる。
それは、1929年の10月24日の暗黒の木曜日(ブラックサーズデー)と、続く10月28日(暗黒の月曜日)の下げ率(12.8%)を大きく上回る、率にしてマイナス22.6%、価格で508ドル安(ダウ工業株30種平均)という前代未聞の大暴落であった。
日経平均株価も翌日の10月20日には、前日比3,836円48銭安(▲14.90%)の2万1,910円08銭と過去最大の暴落となった。当時、ディーリングルームの株価ボードが下落を示す「青一色」となった光景が今なお目に浮かぶ。
今回も日経平均株価は6日には前日比1,071円84銭安(▲4.73%)と大幅下落したが、本家「ブラックマンデー」と比較すると現時点では、「コレクション(調整)」に過ぎないとも言える。
1987年の暴落の原因は、日米欧の金融政策をめぐる不協和音に加え、米国のイラン海上油田攻撃等がきっかけとされるが、下げ幅を拡大させたのは、プログラム・トレーディングと言われている。
プログラム・トレーディングとは、その名のとおりコンピュータプログラムの指示に基づいて株式を売買する手法であるが、当初は主に先物と現物の価格差による値鞘を稼ぐアービトラージ等が主体であった。その後、年金資金を主体に広まったポートフォリオ・インシュアランス(フロアーを確保すべくダイナミック・ヘッジ・オペレーションを実施)の手法がアービトラージの普及と相まって、史上最大の株価暴落を演出したのである。
1987年10月と2018年2月、時代も環境も異なるが、似た要因もある。今回も株価急落の犯人は、ポートフォリオ・インシュランスやリスク・パリティ戦略がプログラムされたアルゴリズム取引と考えられ、当時と急落の背景は基本的に同様である。
特に、2000年代以降、リスク管理が厳格化したことで、変動率の上昇がポジションの圧縮、アンワイドを招き、アンワインドの動きが一段の変動率の上昇を招きやすくなっていると考えられる。これは株式相場でも債券相場、商品相場でも同様で、相場下落時に増幅される傾向がある。相場上昇局面では、常に利益確定売りが上値に出るため、上昇スピードが緩やかとなり、結果、変動率が低下することで、上昇相場がどこまでも続く一方、相場下落局面では、利益確定売りに加え、ロスカット売りが入るため、下落が止まらなくなり、変動率の上昇が一段のアンワインド売りを招きやすいという特徴がある。
古くからの相場格言に「上げ100日、下げ3日」(100日間の上昇分を3日間で下落、というのがあるが、リスク管理の厳格化により、その傾向は一段と強まっているとみられる。
また、1987年の「ブラックマンデー」や、1990年初頭の我が国の株式バブル崩壊等は、過去のPER等と比較して割高となった株価が金利上昇を背景に急落した面も強く、その点も今回の急落と似ている。
1月段階では米S&P500のPERは20倍を超えており、税制改革法の成立を織り込んでも割高感は否めなかった。また、既に、米FRBのFFレートの誘導目標は1.25-1.50%に上昇しているが、今年は0.75〜1.00%引き上げられる可能性があることを勘案すると、調整が入ってもおかしくないレベルであったと言えそうだ。特に、経常収支に加え、財政収支も赤字の「双子の赤字」の米国においては、大型減税等は財政赤字拡大、ドル安、インフレ懸念、長期金利上昇に結び付きやすい。1980年代もレーガノミックスの影響等で、「双子の赤字」が拡大、ドル安と長期金利の上昇が懸念材料となった。大型減税等レーガノミックスによる株式ブームは、「ブラックマンデー」によって終焉した経緯にある。
また、1987年も今年も、FRBの議長交代直後という点も似ている。1987年には8月にポール・ボルカー氏からアラン・グリーンスパン氏に、今回は、ジャネット・イエレン氏からジェローム・パウエル氏に交代した(5日午前、第16代議長に宣誓就任)。
イエレン氏とパウエル氏の考え方は似ていると思われるが、トップ交代で金融政策の不透明感が増すという見方があることに加え、米国では、バーナンキ元議長も含め過度にハト派との見方も払しょくするため、就任当初はやや引き締め気味に舵を取る傾向があることが警戒された可能性もある。
強気相場は悲観の中に生まれ、懐疑の中で育ち、楽観の中で成熟し、幸福感の中で消えていく
加えて、株式相場であろうが仮想通貨であろうが、強気相場への過信は禁物だろう。我が国の株式バブルに関しても、日経平均株価が史上最高値をつけてきたのは、1989年の大納会の3万8,915円87銭だが、当時はいわゆる「Qレシオ」等を根拠に「日経平均10万円」説がまことしやかに吹聴されていた。
但し、既に、日本銀行は公定歩合を1989年5月には0.75%、10月には0.5%、12月にも0.5%引き上げ、5月段階の2.5%が年末には4.25%まで上昇していた。日経平均株価は1990年の年明けには急落、同年末の終値は2万3,848円71銭と前年末比1万5千円以上も下落して引けた。実は今年は1989年末と似た雰囲気があった。年末年始のメディア等の報道でも、2018年の株価は堅調予想が大半を占めたからだ。
米国の著名な投資家、故ジョン・テンプルトンの言葉に、「強気相場は悲観の中に生まれ、懐疑の中で育ち、楽観の中で成熟し、幸福感の中で消えていく:Bull markets are born on pessimism, grow on scepticism, mature on optimism and die on euphoria.」というのがある。そして、「最も悲観な時が絶好の買い場であり、最も楽観な時が絶好の売り場である:The time of maximum pessimism is the best time to buy, and the time of maximum optimism is the best time to sell.」と続く。そろそろ、警戒が必要なタイミングだったとも言えそうだ。
末澤 豪謙 プロフィール
1984年大阪大学法学部卒、三井銀行入行、1986年より債券ディーラー、債券セールス等経験後、1998年さくら証券シニアストラテジスト。同投資戦略室長、大和証券SMBC金融市場調査部長、SMBC日興証券金融市場調査部長等を経て、2012年よりチーフ債券ストラテジスト。2013年より金融財政アナリスト。2010年には行政刷新会議事業仕分け第3弾「特別会計」民間評価者(事業仕分け人)を務めた。財政制度等審議会委員、国の債務管理の在り方懇談会委員、地方債調査研究委員会委員。趣味は、映画鑑賞、水泳、スキューバダイビング、アニソンカラオケ等。