アナリストの忙中閑話【第99回】

(2019年8月22日)
【第99回】変動の大きい今夏、世界的には観測史上最も暑い夏に、秋に向けた政治リスクにも注意、初秋の注目映画
金融経済調査部 金融財政アナリスト 末澤 豪謙
変動の大きい今年の夏、世界的には観測史上最も暑い夏に
本コラム6月号でも、今夏は気温等の変動の大きい夏を予想していたが、全国的に7月下旬の梅雨明け以降、「梅雨寒」から一転、最高気温35度以上の猛暑日が相次ぐことになった。歴代最高気温ランキングにも、8月15日に40.6度を観測した新潟県の寺泊が第10位に入り、歴代21位内に今年は3地点が入った(8月21日時点)。埼玉県熊谷で41.1度の過去最高気温を観測し、歴代21位に7地点が入った2018年ほどではないものの、昨年と今年で上位21位の半分の10地点を占めているのは異常だろう。
ちなみに、最低気温の高いランキングでは、8月15日に31.3度を記録した新潟県糸魚川が歴代第1位、同じく30.8度を記録した新潟県相川が第2位と、今年は最高記録を更新し、歴代14位までに6地点がランクインした(8月21日時点)。
一方、台風6号、8号に続き、列島を縦断した台風10号は、お盆真只中の14日に西日本を直撃したことで、帰省客や阿波踊り等の盆踊りや夏祭り等にも大きな影響を与えることになった。
実は、今夏が異常だったのは世界的にも同様だ。米海洋大気庁(NOAA)は15日、今年7月の平均気温が、20世紀の平均15.78度(カ氏60.4度)を0.95度(1.71度)上回り、1880年の観測開始以降で最高を記録したと発表した。これまで最も暑かった7月は2016年。NOAAによると、7月の気温が高い上位10年のうち9年が2005年以降で、上位5年は2015年から2019年とのこと。
また、NOAAの観測記録によると、北極圏の海面上にある氷の面積は7月、1981〜2010年の平均を19.8%下回り、観測史上で最小を更新。南極圏の海面上の氷も同4.3%下回り、41年ぶりの小ささだった。
7月25日にはパリで観測史上最高の42.6度を記録。ベルギーやドイツ、オランダでも40度を超える高温に見舞われ、各国の最高記録を相次いで更新した。
国連の世界気象機関(WMO)によると、今年の6月は観測史上最も暑い6月であったとのことであり、6-8月を通した今夏(南半球は今冬)が観測史上最も暑い夏(冬)になる可能性も高そうだ。
秋に向けては、金融市場も変動が大きくなる可能性
一方、株式市場も8月に入り、米中貿易戦争の一段の激化で、変動が激しくなっている。
今後も秋に向けて、海外では政治イベントが相次ぐことから、天候や気候のみならず、金融市場も変動が大きくなる可能性に留意する必要がありそうだ。
トランプ大統領は、中国・上海で開催された閣僚級の米中貿易協議で大きな進展がみられなかったのを受けて8月1日、「米国は9月1日から、中国から入ってくる商品や製品の残り3,000億ドル分に10%という僅かな追加関税をかける」とツイートした。米国はすでに中国からの輸入品2,500億ドル分に、25%の追加関税を課しており、9月にこの措置が発動されたら、中国からの輸入品全てに追加関税が課されることになる(その後、クリスマス商戦に向けて携帯電話等一部の輸入品の関税引き上げは12月15日まで延期を発表)。また、トランプ大統領は、記者会見で関税率を25%にまで引き上げる可能性にも言及した。
この発言を受けて、1日の米国市場では引けにかけて株価が急落、2日の東京市場でも、日経平均株価は前日比453円安となった。週明け5日には、1ドル:105円台まで円高が進行したことから、日経平均株価は前週末比366円安の2万0,720円まで下落し、約2ヵ月ぶりの安値で引けた。ちょうど、米国では7月31日のFOMC(連邦公開市場委員会)で、FRBが10年7ヵ月ぶりに、0.25%の利下げに動いたことで、日米金利差の縮小から、円が買われやすい地合いだった。
5日の米国市場では、米中貿易戦争激化を受けて、ニューヨークダウが前週末比767ドル安と今年最大の下げ幅となった。その後、人民元安を受けて、米財務省は中国を為替操作国に認定、中国も米農産品の購入停止を発表するなど、米中貿易戦争の解決の糸口がますますみえなくなってきた。14日にはニューヨークダウが前日比800ドル安と今年最大の下げ幅を更新。日経平均株価も8月5日以降は20,000円台の推移が続いている。米株安と円高は、日本株にはダブル・パンチとなったと言えそうだ。
欧州では今秋から来春までに、総選挙が相次ぐ可能性
一方、欧州でも今秋から来春までに、総選挙が相次ぐ可能性が想定されるなど、「政治リスク」が一段と高まりそうだ。
5月に実施された欧州議会選挙の結果を受けて、すでに、ギリシャでは7月7日に総選挙の前倒しが実施され、4年半ぶりに、急進左派連合(SYRIZA)から、新民主主義党(ND)政権に交代した。
4月に総選挙が実施されたスペインでも、9月23日までにペドロ・サンチェス暫定首相が議会で信任されない場合、11月10日に再選挙が実施される。オーストリアでも9月下旬には前倒し総選挙が実施される予定だ。
また英国では、ブレグジットをめぐる混乱から辞任したテリーザ・メイ首相の後任に、ボリス・ジョンソン氏が首相に就任したが、ジョンソン氏はEUとの離脱合意期限の10月31日には、合意があろうが無かろうがEUから離脱すると宣言、閣内に離脱戦略委員会を設け、「合意無き離脱」への備えを進めている。一方、議会では、合意無き離脱に反対する勢力が過半を占めるとみられ、このまま、ジョンソン氏が合意無き離脱に進めば、10月までに、一部与党議員の造反で内閣不信任案が可決され、解散・総選挙となる可能性が高い。
ドイツでも、欧州議会選挙での惨敗を受けて、キリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)のメルケル政権と大連立を組んでいる社会民主党(SPD)のアンドレア・ナーレス党首が6月に辞任、現在は、暫定的に副党首三人が党運営を担っている。10月に新党首を選出する党員投票が実施される予定だが、退潮著しい社会民主党では、大連立からの離脱を主張する候補が新党首に就く可能性もある。その場合、大連立政権は崩壊、ドイツも連邦議会の解散・総選挙が来春までに実施される可能性がある。
一方、左派のポピュリスト政党の五つ星運動と極右の同盟の連立政権が2018年6月に発足したイタリアでは現在、政党支持率が選挙前と逆転、同盟がトップになっている。もともと「反緊縮」以外では政策に隔たりがある両党の確執が強まっており、同盟は8月9日、コンテ内閣の不信任案を提出した。コンテ首相は20日、辞表をマッタレッラ大統領に提出、大統領は受理した。現在、新たな連立政権に向けた協議が行われているが、イタリアでも今秋から来春までに、前倒し総選挙が実施される可能性が高まっている。
アベンジャーズ、アッセンブル
欧米と異なり、政治の安定が際立っている日本でも、今秋以降は、波風が高まることも予想される。
第25回参院通常選挙から一夜明けた7月22日、安倍首相(自由民主党総裁)は党本部で記者会見を行い、与野党に衆参両院の憲法調査会で憲法改正の議論を進めるよう呼びかけた。参院選では、自民・公明の与党は、改選過半数を上回る71議席を確保したものの、日本維新の会や非改選の改憲派無所属議員3人を合わせた、いわゆる「改憲勢力」は160議席となり、改憲発議に必要な3分の2(164議席)に4議席足りない結果になった。
安倍首相は会見の冒頭、「この選挙では、憲法改正も、大きな争点となりました。少なくとも『議論は行うべきである』というのが国民の審判。野党は、この民意を正面から受け止めていただきたい」と、改憲への意欲を示した。 また、「自民党のたたき台は、最善と考えるものを提案しているが、この案だけにとらわれることなく、柔軟な議論を行っていく考えだ」と、柔軟姿勢を見せつつ、改憲に向けた協議入りを野党に強く呼びかけた。
安倍首相は、第二次内閣発足以来、国勢選挙の後は毎回、自民党本部で記者会見を行っている。今回は6回目だったが、過去5回の会見では、冒頭発言で経済対策や災害対策等には触れているが、憲法改正問題には自らは一度も言及していない。質疑応答の際、記者による質問に答えただけだった。そういう意味でも、22日の会見では、改憲に向けた安倍首相の並々ならぬ意欲が筆者には感じられた。
その際、筆者の頭の中をよぎった台詞がある。それは、「アベンジャーズ、アッセンブル(Avengers Assemble)」という言葉だ。米マーベル・コミックのキャラクター、「キャプテン・アメリカ」が、ヒーロー・チーム「アベンジャーズ」のメンバーに向かって、いざという時に使う決まり文句で、直訳すれば、「集合」「集結」の意味になるが、「出動」「出撃」といった意味で使われている。
実写映画では、2019年4月に公開され、ちょうど参院選が実施された7月21日に歴代世界最高興収記録を塗り替えた『アベンジャーズ/エンドゲーム』で、「キャプテン・アメリカ」が敵のサノス率いる大軍に対峙した際、「アベンジャーズ」のメンバー及び味方の大軍に対し、使ったのが初めてだ。
私的な恨みを晴らす意味の「リベンジ」と異なり、「アベンジ」には公的な報復をするという意味があることから、筆者は短命に終わった第1次安倍内閣の雪辱を果たすために登場した第2次安倍内閣を「アベンジャーズ内閣」と称し、対比したことがあるが、『アベンジャーズ/エンドゲーム』は、その目的を果たすため、「アベンジャーズ」のメンバーにも大きな犠牲を強いることになる。
安倍首相が仮に自民党総裁任期の2021年9月までに、戦後70数年間一度も実施されなかった憲法改正を実現しようとすれば、自らの政治資本を含め、相当大きな消耗を迫られる可能性が高い。政局の混乱も予想され、金融市場も改憲の動きが具体化するにともなって不安定さを増すことになろう。今秋以降、内外の「政治リスク」が一段と顕在化する可能性に留意が必要か。
なお、『アベンジャーズ/エンドゲーム』の世界興収累計は、7月21日に27億9,020万ドルと、2009年に公開された『アバター』の27億8,970万ドルを超え、歴代第1位となったが、8月21日現在では27億9,594万ドルまで記録を伸ばしている(Box Office Mojo調べ)。
「梅雨寒」と「猛暑」のせいか、我が国でも今夏は映画興収が好調
「梅雨寒」と「猛暑」のせいか、我が国でも今夏は映画館の入りが良かったようで、累計興収が100億円を突破する作品が3〜4本出現しそうな勢いだ。
前週末(17-18日)の国内観客動員ランキング(興行通信社調べ)では、前週に2位スタートとなった『ライオン・キング』が首位を獲得。累計では動員236万人、興収は33億円を突破。第2位の『天気の子』は累計動員717万人、興収は96億円を突破。配給元の東宝によると21日には100億円を突破したとのこと。前週首位スタートの 『劇場版 ONE PIECE STAMPEDE』は累計では間もなく動員250万人、興収33億円に達する勢い。第4位の『トイ・ストーリー4』は累計679万人、興収88億円。第5位の『ワイルド・スピード/スーパーコンボ』も累計164万人、興収23億円を突破している。なお、6月公開の『アラジン』は既に累計興収119億円に上り、歴代第21位に浮上(興行通信社調べ)。
8月下旬から9月に向けては、内外の注目作品が多数公開
8月下旬から9月に向けても内外の注目作品が多数公開される。
8月23日公開の『二ノ国』は、人気ロール・プレイング・ゲーム「二ノ国」を長編アニメ映画化。現実世界の自分と命がつながっている、もうひとりの自分がいる魔法の世界「二ノ国」を舞台に繰り広げられる少年たちの冒険を描く。スタジオジブリで高畑勲監督や宮崎駿監督と映画製作に関わった百瀬義行氏がメガホンをとった。音楽もジブリ作品を手掛けた久石譲氏が担当。
冷静沈着で車椅子生活を送る高校生ユウ、バスケ部の人気者ハルと、ハルの彼女コトナは幼なじみ。ある日、事件に巻き込まれたコトナを助けようとしたユウとハルは、現実世界と並行する魔法の世界「二ノ国」に引き込まれ、そこでもうひとりのコトナであるアーシャ姫と出会う。ユウはアーシャにひかれていくが、コトナを救うためにはアーシャの命を奪わなければならないということを知り、2人は究極の選択を迫られる。
主人公ユウ役を山崎賢人さん、ハル役を新田真剣佑さん、コトナ/アーシャ役を永野芽郁さんと、アニメ映画の声優初挑戦となる若手俳優たちが務めた。
同じく23日公開の『ロケットマン』は、英国出身の世界的ミュージシャン、エルトン・ジョンの半生を描いた作品。タイトルはシングル「ロケット・マン」からとられている。
『ボヘミアン・ラプソディ』でメガホンをとったデクスター・フレッチャー氏が監督を務め、『キングスマン』シリーズのマシュー・ボーン氏が製作を担当。『キングスマン』シリーズで若手スパイ役を演じたタロン・エガートンさんがエルトン役を務め、吹き替えなしで歌唱シーンもこなした。エルトン・ジョンは製作総指揮に名を連ねている。
なお、エルトン・ジョンは同シリーズ2作目の『キングスマン:ゴールデン・サークル』に出演しており、『キングスマン』繋がりと、『ボヘミアン・ラプソディ』が本作にも影響しているようだ。既に試写会で鑑賞したがエルトン・ジョンのファンには必見の作品。筆者はクイーンの歌曲の方がなじみは多かったが。
8月30日公開の『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』はレオナルド・ディカプリオさんとブラッド・ピットさんという2大スターを初共演させ、落ち目の俳優とそのスタントマンの2人の友情と絆を軸に、1969年ハリウッド黄金時代の光と闇を描いた作品。『ジャンゴ 繋がれざる者』などのクエンティン・タランティーノ監督がメガホンをとった。
テレビ俳優として人気のピークを過ぎ、映画スターへの転身を目指すリック・ダルトンと、リックを支える付き人でスタントマンのクリス・ブース。ある日、リックの暮らす家の隣に、時代の寵児ロマン・ポランスキー監督と、その妻で新進女優のシャロン・テートが引っ越してくる。1969年8月9日、彼らの人生を巻き込み映画史を塗り替える事件が発生する。
『引っ越し大名!』
2019年8月30日(金)全国公開
©2019「引っ越し大名!」製作委員会
8月30日公開の『引っ越し大名!』は、 生涯に7回もの国替えをさせられ、「引っ越し大名」とあだ名された実在の大名、松平直矩(まつだいら なおのり)をモチーフにした土橋章宏氏原作の「引っ越し大名三千里」を映画化。土橋氏が脚本も担当した。監督は『のぼうの城』の犬童一心氏、主演は星野源さん。高橋一生さん、高畑充希さんが共演。
姫路藩書庫番の片桐春之介は人と接するのが苦手で、いつも書庫にこもり書物にあたっていた。幕府から豊後(大分県)の日田への国替えを言い渡された藩主の松平直矩は、度重なる国替えからの借金と、これまでにない遠方への引越し、さらに減棒と、国の存亡が危うくなるほどのピンチに頭をかかえていた。
この国難を乗り切れるかは、国替えを仕切る引っ越し奉行の腕にかかっていたが、前任者は激務が原因ですでに亡くなり、国替えのノウハウも失われていた。そんな中で、書物好きなら博識だろうという理由から、春之介が引っ越し奉行に任命されてしまう。
『SHADOW』
2019年9月6日(金)より、TOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー
©2018 Perfect Village Entertainment HK Limited Le Vision Pictures(Beijing)Co.,LTD Shanghai Tencent Pictures Culture Media Company Limited ALL RIGHTS RESERVED
9月6日公開の『SHADOW/影武者』は、2008年北京オリンピックの開会式を指揮し、『HERO』や『LOVERS』でメガホンととったチャン・イーモウ監督の最新作。
時は戦国時代、一人の影武者が、無謀な任務に挑もうとしていた。彼の暮らす沛(ペイ)国が領土を、強大な炎国に奪われて20年。奪還を願う男たちの燃え上がる闘志を束ねる、頭脳明晰で武芸の達人の重臣・都督(トトク)の影武者だ。影武者と都督、そしてその妻に騙されている若き王は、炎国と休戦同盟を結び、平和だが屈辱的な日々に甘んじていた。だが、影武者は都督の命令に従い、炎国の将軍にして最強の戦士・楊蒼(ヤン・ツァン)に対決を申し込む。
都督は影武者に、自由と引き換えに、敵地での大軍との戦いを命じていたのだ。都督の勝手な行動に怒り狂う王も、実はある作戦を秘めていた。果たして、影武者を待つのは光か闇か、それとも。
9月6日公開の『かぐや様は告らせたい〜天才たちの恋愛頭脳戦〜』は、「週刊ヤングジャンプ」に連載中の赤坂アカ氏原作の漫画「かぐや様は告らせたい〜天才たちの恋愛頭脳戦〜」を実写映画化。
将来を期待されたエリートたちが集う私立秀知院学園。頭脳明晰で全国模試上位常連の生徒会会長・白銀御行(シロガネミユキ)と、文武両道で美貌の持ち主・大財閥の娘である生徒会副会長・四宮かぐやは互いに惹かれ合っていた。しかし、高すぎるプライドが邪魔して、告白することが出来ずに、半年が経過。素直になれないまま、いつしか自分から告白することが「負け」という呪縛にスライドしてしまった2人は「いかにして相手に告白させるか」だけを考えるようになっていた。
生徒会会長・白銀御行に平野紫耀(King & Prince)さん、生徒会副会長・四宮かぐやに橋本環奈さんという初共演の2人に加えて佐野勇斗さん、池間夏海さん、浅川梨奈さん、嶋政宏さん、佐藤二朗さんら個性的キャストが集結。『翔んで埼玉』の脚本を担当した徳永友一氏が本作でも脚本を『チア☆ダン』の河合勇人監督がメガホンをとった。
『記憶にございません!』
2019年9月13日(金)全国東宝系にてロードショー
©2019フジテレビ 東宝
9月13日公開の『記憶にございません!』は、記憶をなくした総理大臣が主人公の政界コメディ。三谷幸喜監督。
病院のベッドで目が覚めた男。自分が誰だか、ここがどこだか分からない。一切の記憶がない。こっそり病院を抜け出し、ふと見たテレビのニュースに自分が映っていた。演説中に投石を受け、病院に運ばれている首相・黒田啓介。そう、なんと、自分はこの国の最高権力者だったのだ。そして石を投げつけられるほどに、すさまじく国民に嫌われている。部下らしき男が迎えにきて、官邸に連れて行かれる。
「あなたは、第百二十七代内閣総理大臣。国民からは史上最悪のダメ総理と呼ばれています。総理の記憶喪失はトップシークレット、我々だけの秘密です」真実を知るのは、秘書官3名のみ。進めようとしていた政策はもちろん、大臣の顔と名前、国会議事堂の本会議場の場所、自分の息子の名前すら分からない総理。そしてよりによってこんな時に、米国大統領が来訪。他国首脳、政界のライバル、官邸スタッフ、マスコミ、家族、国民を巻き込んで、記憶を失った男が、捨て身で自らの夢と理想を取り戻す。果たしてその先に待っていたものとは。
史上最低の支持率を叩き出した総理大臣を中井貴一さんが演じ、ディーン・フジオカさん、石田ゆり子さん、草刈正雄さん、佐藤浩市さんら豪華キャストが共演。
同じく13日公開の『人間失格 太宰治と3人の女たち』は、小栗旬さん主演で、小説「人間失格」の誕生秘話を、太宰を取り巻く3人の女性たちの目線から描いた蜷川実花監督作品。
天才作家、太宰治。身重の妻・美知子とふたりの子どもがいながら恋の噂が絶えず、自殺未遂を繰り返す。その破天荒な生き方で文壇から疎まれているが、ベストセラーを連発して時のスターとなっていた。太宰は、作家志望の静子の文才に惚れこんで激しく愛し合い、同時に未亡人の富栄にも救いを求めていく。ふたりの愛人に子どもがほしいと言われるイカれた日々の中で、それでも夫の才能を信じる美知子に叱咤され、遂に自分にしか書けない「人間に失格した男」の物語に取りかかるのだが。
太宰を小栗旬さん、正妻・美知子役を宮沢りえさん、太宰の愛人であり弟子でもある静子役を沢尻エリカさん、太宰の愛人で最後の女・富栄役を二階堂ふみさん、坂口安吾役を藤原竜也さん、三島由紀夫役を高良健吾さんが演じる。
トランプ大統領がデンマーク領グリーンランドの買収を検討
トランプ大統領は現在、デンマーク領グリーンランドの買収を検討しているようだ。最初は昨今流行の「フェイク・ニュース」かと疑ったが、ウォール・ストリート・ジャーナルとニューヨーク・タイムズが8月15日、トランプ氏が何人もの顧問たちに複数回にわたり、グリーンランド購入について意見を求めたと伝えており、トランプ氏も18日、記者団にデンマーク領グリーンランドの買収に関心があると認め、政権内で協議したと語っている。
トランプ氏は政権にとって買収は優先事項ではないとしたが、19日には自身のツイッターに、デンマーク領グリーンランドに「トランプ」のロゴ入りの高層ビルが建つ合成写真を掲載し、「グリーンランドにこういうことをしないと約束する」と書き込んだ。20日には、デンマークが買収協議を拒否したことを理由に今月末からの同国訪問の中止を発表しており、買収に強い関心を持っているのは間違いないとみられる。
トランプ氏がグリーンランド買収に拘るのは、第1に、トランプ氏同様ドイツ系で共和党のドワイト・アイゼンハワー大統領がアラスカとハワイを州に格上げしたことに倣い、グリーンランドを買収し、第51番目の州とすることで、「レガシー(遺産)」作りを狙っている可能性がある。
第2に、グリーンランドは豊富な天然資源とともに、地政学的重要性を持つが、その価値がより高まるのは、地球温暖化により、北極の氷が一段と減少し、北極海航路が実用化された際とみられることだ。
「地球温暖化はでっち上げ」としていたトランプ氏も、さすがに今夏の猛暑で考えを改めたのかもしれない。むしろ、一段の地球温暖化を見込んで、今が「買い時」と判断した可能性もありそうだ。一方、今や、この世界に「タブー」は存在しないとも言えよう。仮にグリーンランドの氷が全て解けたら、海面は約7メートル、南極の氷が全て解けたら、同約66メートル上昇するとの見方もある。今後も残暑が厳しくとも、地政学的リスクや気候変動リスクの高まり等で「胆が冷える」ことだけは勘弁してほしいものだ。
末澤 豪謙 プロフィール
1984年大阪大学法学部卒、三井銀行入行、1986年より債券ディーラー、債券セールス等経験後、1998年さくら証券シニアストラテジスト。同投資戦略室長、大和証券SMBC金融市場調査部長、SMBC日興証券金融市場調査部長等を経て、2012年よりチーフ債券ストラテジスト。2013年より金融財政アナリスト。2010年には行政刷新会議事業仕分け第3弾「特別会計」民間評価者(事業仕分け人)を務めた。財政制度等審議会委員、国の債務管理の在り方懇談会委員、地方債調査研究委員会委員。趣味は、映画鑑賞、水泳、スキューバダイビング、アニソンカラオケ等。