アナリストの忙中閑話【第104回】

アナリストの忙中閑話

(2020年1月23日)

【第104回】イラン危機、米中貿易合意に気候変動、GG賞とアカデミー賞ノミネーション

金融経済調査部 金融財政アナリスト 末澤 豪謙

令和初の正月を迎える2020年(令和2年)の干支は「庚子(かのえ・ね、コウ・シ)」

前月号でもお伝えしたように、今年の干支は「庚子(かのえ・ね、コウ・シ)」。

「庚」は植物の成長が止まって新たな形に変化しようとする状態を、「子」は植物の種子の中に新しい生命がきざし始める状態を表す。「庚子」では、新たな変化、潮流が生まれる可能性を表すということになり、レジーム更新や世代交代等に注目と、前月号では記したが、正月気分も抜けない中、金融市場は前年に続き、海外要因で上下に振らされる展開となった。

1月3日、米軍が無人機でイランのイスラム革命防衛隊の「コッズ部隊」のソレイマニ司令官らを殺害

米軍は現地時間1月3日未明、イラクの首都バグダッドのバグダッド国際空港付近で、無人機(MQ-9 リーパー)からの複数のミサイルで2台の車列を攻撃、イランのイスラム革命防衛隊(IRGC)の精鋭部隊である「コッズ部隊(Quds Force)」のガセム・ソレイマニ司令官とイラクのイスラム教シーア派武装勢力の連合体「人民動員隊」の副司令官でシーア派武装組織「カタイブ・ヒズボラ(神の党旅団:KH)のアブ・マフディ・アル・ムハンディス指導者らを殺害した。

イランのイスラム革命防衛隊(IRGC)は1月8日未明、在イラクの複数の米軍基地に弾道ミサイルによる攻撃を実施

司令官殺害に報復する形で、イランのイスラム革命防衛隊は1月8日未明、米軍が駐留するイラク西部のアンバール県に位置するアル・アサド空軍基地及びイラク北部のアルビル基地を短距離弾道ミサイルで攻撃。

トランプ大統領はイランが米国民等を攻撃した場合は、52か所を攻撃すると宣言していただけに、米国とイランの全面戦争が始まる可能性に一時は身構えることになった。

トランプ大統領が全米向けにテレビ演説、イラン向け経済制裁発動も報復攻撃には言及せず

但し、イランの攻撃で死傷者が発生しなかったことに加え(後日、米兵11人に脳震盪の症状が出ていることが判明)、日本時間の8日昼には、イランのザリーフ外相が報復攻撃の終了を表明していたことで、トランプ大統領は1月8日午前(米国時間、日本時間9日未明)、全米向けのテレビ演説で、イランに対する追加の経済制裁発動を表明する一方、報復攻撃に関しては、言及せず、事態のエスカレーションは避けられることになった。

司令官殺害後、一時大幅安となった内外の株式市場もトランプ大統領の演説後は高値追いの展開となった。

親イラン勢力のテロ・ゲリラ攻撃等に対し、米国が報復し、報復の連鎖が拡大する可能性

但し、今後、緊張が大きく緩和すると見るのは早計だろう。中長期的には、二つのルートで、本格的な戦争に向かう可能性は否定できない。

第1は、親イラン勢力のテロ・ゲリラ攻撃等に対し、米国が報復し、報復の連鎖が拡大する可能性だ。

イランの最高指導者ハメネイ師は8日、国営テレビの生放送で演説し、イラクに駐留する米軍に向けて実施したミサイル攻撃は米国への「平手打ち」だとしつつ、「今回のような軍事行動は十分でない。重要なのは、この地域における米国の不健全な存在を終わらせることだ」と述べ、米軍の中東からの撤退を求めている。

当面、イスラム革命防衛隊やイラン正規軍による米軍等への直接攻撃はなさそうだが、イランの影響下にある外国の武装勢力が、中東やアフリカ地域にある米軍や米国の大使館等にテロないしゲリラ攻撃を仕掛ける可能性は否定できない。米軍により殺害されたソレイマニ司令官が率いていたコッズ部隊はそうした外国の武装勢力との連絡窓口であり、イランの指示や要請がなくとも、自発的にテロやゲリラ攻撃を仕掛ける公算は高い。

トランプ大統領のイランへの報復攻撃の「レッドライン(越えてはならない一線)」は、「米兵や米国民の死者が出ること」との見方があるが、永続的に死者をゼロに抑えることは困難だろう。

なぜなら、米軍の死者は、イラク戦争が始まった2003年3月以降、2011年12月の米軍の撤退迄で、延べ4,486人に上るが、2003年3月19日から4月30日までの米軍のイラク進攻期間中の死者は僅か139人に過ぎないからだ。死者の大半は、大規模な戦闘終結後に発生している。世界最強で、近代的装備に身を包む米軍も、自爆テロやゲリラ攻撃等の非対称的攻撃には脆い。

特に、イラク議会が5日、イラク国内に駐留する米軍など有志連合の外国軍全ての撤退を求める決議を可決したことで、米軍はイラク国内でも「四面楚歌」になりかねない状況にある。

現在、米軍はイラク国内に約6,000名、中東全域では約8万名が展開しているとみられるが、現在のイラク政府は、シーア派主導の政権であり、イラクの正規軍に加え、シーア派の民兵等も多数、存在する。

トランプ大統領が将来的に報復攻撃を行うとしても、まずは、米軍や米国政府関係者のイラクからの撤退を優先する可能性もある。

但し、この場合、ベトナム戦争におけるサイゴンからの撤退同様、2003年3月のイラク戦争以降の17年間に亘る米軍の犠牲や米国の財政負担等(民間試算ではイラク戦費は総額3兆ドルに上るとの試算も)は、実質的に無に帰する可能性もあり、外交・安全保障政策の失敗を厳しく問われることになりそうだ。

イラン核合意からのイランの全面離脱と、ウラン濃縮度の引上げの可能性

第2のルートは、イラン核合意からのイランの全面離脱と、ウラン濃縮度の引上げの可能性だ。

トランプ大統領は前述のテレビ演説の冒頭、「私が米国の大統領である限り、イランは核兵器を持つことを決して許されない」と述べている。

イランは今回の司令官殺害を受けて、もはや核合意には縛られないとし、核合意で定められた遠心分離機の数の制限に従わず、ウラン濃縮度を含め、濃縮活動の運用面での制限はなくなるとしている。尤も、IAEA(国際原子力機関)との関係については、これまでどおり維持するとしており、急速に濃縮度を高める可能性は低そうだが、今回が5回目となる核合意からの違反で、事実上、濃縮限度はなくなることになる。

元々、前オバマ政権が主導して2015年に合意したP5プラス1(国連安保理常任理事国及びドイツ)とイランとの核合意は、イランが核兵器を製造するまでに必要な期間(ブレーク・アウト・タイム)を合意前の数か月間から1年間に長期化することが主眼であり、イランは代替に経済制裁を解除され、原油輸出が可能となる枠組みであった。

核合意が事実上崩壊した今日、イランは今後、現在は5%程度とみられるウラン濃縮度を合意前の20%程度まで、徐々に引き上げる可能性が想定される。ウラン濃縮度が20%以上に高まれば、核兵器に転用が可能な90%以上への濃縮は容易だ。

こうした状況を、3月2日に1年で3度目となる総選挙を控えるイスラエルのネタニヤフ政権や大統領選を控えキリスト教福音派の支持固めに躍起なトランプ大統領が容認するとは思えない。

米国では、大使館襲撃問題は、過去、大統領選等にも影響する大きな事件

しかも、トランプ大統領の中東政策は、戦略的・長期的視点に欠け、場当たり的な印象が強い。

今回の危機に繋がったソレイマニ司令官の暗殺も、米国防当局が提案したオプションの中では、「最も極端な選択肢」だったとされる。

それを選択したのは、バグダッドの米大使館に暴徒が押しかけ、投石している映像を見せられてからとの報道もある。

米国では、大使館襲撃問題は、過去、大統領選等にも影響する大きな事件となっている。

一つはカーター政権下で発生した1979年に発生したイランのテヘラン大使館人質事件であり、もう一つは、2012年に発生したリビアのベンガジ領事館事件である。何れも映画化されたが、後者では、スティーブンス在リビア大使ら4人がイスラム武装勢力により殺害され、当時のヒラリー・クリントン国務長官が責任追及される事態となった。

トランプ氏は二つの事件に関し、民主党を非難しており、それらの事件の「二の舞」になることをおそれた可能性が考えられる。

11月3日の米大統領選を控え、トランプ氏は今後も予測不能な行動を起こす可能性

問題なのは、ベテランの国防関係者がホワイトハウスからいなくなったことだろう。

トランプ政権発足時、ワシントンでは「3G政権」との言葉が聞かれた。「Gazillionaire:兆万長者」、「Goldman sachs:ゴールドマン・サックス」、「General:将軍」の頭文字をとったものだ。但し、現在、兆万長者、ゴールドマン・サックス出身者は減少、将軍はゼロとなった。言わば、トランプ大統領1人の「1T政権」化が進んだと言えそうだ。

ジェームズ・マティス国防長官は海兵隊大将、ジョン・ケリー国土安全保障長官(その後、大統領首席補佐官)は、退役海兵隊大将、ハーバート・マクマスター大統領補佐官は陸軍中将だった。一方、マイク・ポンペオ国務長官の除隊時の階級は陸軍大尉、マーク・エスパー国防長官は同陸軍中佐だ。

11月3日の米大統領選を控え、トランプ氏は、今後も予測不能な行動を起こす可能性が想定され、イラン情勢は予断を許さないと言えそうだ。

米中貿易戦争も休戦、第1段階の経済貿易合意に署名

一方、米中貿易戦争も、2018年以来、双方の関税賦課合戦等で深刻化していたが、一旦、休戦となった。

米国のトランプ大統領と中国の劉鶴副首相は1月15日、ワシントンDCのホワイトハウスで、「米中経済貿易合意」に署名した。

今回の合意は、米中貿易協議における「第1段階の合意」と呼ばれるもので、米国は2019年9月に中国からの輸入品1,200億ドル相当に課した追加関税15%を、署名から30日後の2月中旬に、半分の7.5%に引き下げる。

多くの構造問題は、「第2フェーズ」に持ち越されることに

一方、中国は今後2年間で、米国からの輸入を計2,000億ドル増やす。1年目は767億ドル、2年目は1,233億ドル。基準となる2017年の輸入額は1,860億ドル。また、知的財産権の保護強化、技術移転の強要の禁止、金融サービスにおける外資規制等の緩和、為替操作の禁止、紛争解決制度の創設等も盛り込まれた。但し、米国が中国からの輸入品2,500億ドル相当に課している25%の追加関税は維持される。また、今回の合意に、中国の産業補助金の是正や国有企業改革等は盛り込まれず、多くの構造問題の解決は、「第2フェーズ」に持ち越されることとなった。

今回の「第1段階の合意」は11月3日の米大統領選のキャンペーンの一環

今回の「第1段階の合意」が、11月3日の米大統領選を意識したものは、署名式からも明らかだ。

今回の署名式に、トランプ大統領は、農業団体や経済団体、金融機関の関係者など200人以上を招待。トランプ氏は劉鶴副首相ら中国の代表団を横に立たせたまま、実際の署名までの約1時間、檀上で演説、当に独演会の様相となった。再選を狙うトランプ大統領にとっては、今回の「第1段階の合意」も選挙キャンペーンの一環に過ぎないと言えそうだ。

米中貿易協議の今後の推移は、米大統領選の動向次第で変化

ということは、米中貿易協議の今後の展開もトランプ大統領の支持率や大統領選の当選確率次第で変化することが予想される。仮に、再選に向け苦戦が伝えられるような状況になれば、トランプ氏は支援者を鼓舞するため、中国に対し、一段の輸入拡大や構造改革を要求、再度の追加関税の実施に踏み切ることも予想される。

一方、中国サイドも、米大統領選の動向等を睨みながら、譲歩策を調整する可能性があろう。民主党勝利の可能性が高まれば、一段の譲歩策等は2021年の新大統領就任後に、対米交渉のカードとして残すことも有力な選択枝となりそうだ。

当面は、両者とも「第1段階の合意」の履行チェック等、腹の探り合いとなり、「第2フェーズの合意」は、早くとも米大統領選直前ないし大統領選後、民主党勝利の場合は、新大統領就任後となる可能性が高いのではないか。

2020年代は「気候変動問題」が最重要テーマとなる可能性

なお、昨年来「もう一つの危機」として急浮上しているワードが、「Climate emergency(気候非常事態)」だ。

英国の「オックスフォード英語辞典」を出版するオックスフォード大学出版局は11月21日、2019年を象徴する「Word of the Year 2019(今年の言葉)」に「Climate emergency(気候非常事態)」を選んだと発表した。ちなみに、「コリンズ英語辞典」は同月7日、「Word of the Year 2019(今年の単語)」に、「Climate strike(気候ストライキ)」を選出と、世界的に気候変動問題が「流行語」となっている。

グローバルリスクレポート2020では調査開始以来、初めて、「発生可能性の高いリスク」上位5位が全て「環境リスク」に

WEF(世界経済フォーラム)は1月15日、21日開幕のダボス会議に併せ、2020年版の「グローバルリスクレポート」を発表。

15回目となる2020年版のグローバルリスクレポートでは、調査開始以来、初めて、「発生する可能性の高いリスク」上位5位が全て、「環境リスク」となった。

具体的には、今後10年間に発生する可能性の高い上位5リスクは、①異常気象現象(例:洪水・暴風など)、②気候変動の緩和・適応の失敗、③大規模な自然災害(例:地震・津波・火山爆発・地磁気嵐)、④大規模な生物多様性の喪失と生態系の崩壊、⑤人為的な環境損害・災害。

気候変動対策が2020年代初頭に世界的なブームに進展するか否かは、11月の米大統領選次第

2019年は7月25日にはパリで観測史上最高の42.6度を記録するなど世界的に猛暑となり、世界の年平均気温は2016年に次いで第2位となった。

オーストラリアでは正のインド洋ダイポールモード現象発生の影響等で猛暑・干ばつとなり、大規模な山火事が発生、現在も続いている。

我が国の2019年の年平均気温は過去最高となり、海面水温の上昇で台風被害も相次いだ。

こうした気候変動問題への関心の高まりを受けて、EUは14日、10年間で総額1兆ユーロ規模の「欧州グリーン・ディール投資計画」を発表。

11月3日の米大統領選で、トランプ大統領に対峙する民主党候補もその大半が大規模な気候変動対策を公約に掲げている。少なくとも、民主党支持者や無党派の間では気候変動問題は大統領選の一つの争点となりそうだ。

一方、「地球温暖化はでっちあげ」とするトランプ大統領は「パリ協定」から離脱し、次々と環境規制の撤廃や緩和を打ち出している。

気候変動対策が2020年代初頭に世界的なブームに進展するか否かは、11月の米大統領選次第とも言えそうだ。

今年のダボス会議では、トランプ大統領に加え、環境活動家のグレタ・トゥンベリさんも21日にスピーチを行った。昨年秋の国連総会ではニアミスで終わったが、質疑応答等での直接対決を見たかったのは筆者だけであろうか。

2019年公開映画の受賞レースも、山場に向け激戦

正月早々、やや物騒な展開となったが、今月は2019年公開映画の受賞レースも、山場に向け激戦が繰り広げられた。

1月5日(日本時間6日)、ハリウッド外国人記者クラブ(HFPA)が主催する第77回ゴールデングローブ賞の受賞結果が発表された。「アカデミー賞の前哨戦」として知られる映画界のビッグ・アワードだ。

ゴールデングローブ賞は『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』が最多3冠

ドラマ部門の作品賞を受賞したのは、『1917 命をかけた伝令』(2月14日公開)。第一次世界大戦を舞台にした戦争映画だが、メガホンをとったサム・メンデス氏は監督賞も受賞。既に、試写会で鑑賞したが、「屋外ロケでワンカット撮影」という手法が視聴者自身も戦場にいる臨場感を醸成していた。台詞が少なく、クリストファー・ノーラン監督の『ダンケルク』(2017年公開)に似た雰囲気の作品。

本コラムでも特集、R指定映画として初めて世界総興収10億ドルを超える大ヒットを記録した『ジョーカー』は、ホアキン・フェニックスさんが主演男優賞(ドラマ)と作曲賞を受賞。主演女優賞(ドラマ)は、『ジュディ 虹の彼方に』(3月6日公開)のレニー・ゼルウィガーさんが受賞。

コメディ/ミュージカル部門の作品賞を受賞したのは、本コラムでも紹介したクエンティン・タランティーノ監督の『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』。同作品は、ブラッド・ピット氏が助演男優賞、タランティーノ氏が脚本賞を受賞し、最多3冠に輝いた。

『ロケットマン』はタロン・エガートンさんが主演男優賞(コメディ/ミュージカル)、主題歌賞も受賞。主演女優賞(コメディ/ミュージカル)は、『フェアウェル』(4月公開予定)でオークワフィナさんがを受賞し、アジア系アメリカ人女優として初のゴールデングローブ賞に輝いた。なお、オークワフィナさんは現在公開中の『ジュマンジ ネクスト・レベル』にも出演。

アニメーション映画賞は『ミッシング・リンク』(秋公開予定)が受賞。

パラサイト 半地下の家族

『パラサイト 半地下の家族』
2020年1月10日(金)全国大ヒット上映中!
©2019 CJ ENM CORPORATION, BARUNSON E&A ALL RIGHTS RESERVED

外国語映画賞は、カンヌ国際映画祭で韓国映画初となるパルムドールに輝いたポン・ジュノ監督の『パラサイト 半地下の家族』(公開中)が受賞。

同賞受賞も韓国史上初。同作品は、韓国の格差社会をテーマにしたものだが、脚本の出来が良く、ストーリー展開が斬新で、面白い。国内では上映スクリーンが少なく、筆者が鑑賞した日比谷の映画館は満員状態だった。

『アナ雪』と『スター・ウォーズ』、国内での直接対決は『アナ雪』が勝利

前週末(1月18-19日)の国内観客動員ランキングでも、『パラサイト 半地下の家族』は2週連続5位にランクイン(興行通信社調べ、以下同じ)。

1位は、『アナと雪の女王2』。累計観客動員数980万人、累計興収は125億円を突破。第2位は『カイジ ファイナルゲーム』、第3位は『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』。累計観客動員数431万人、累計興収は64億円を突破。

結果、クリスマス・年末・年始商戦は『アナと雪の女王2』の勝利と言えそうだ。

第4位には初登場の『ラストレター』がランクイン。

『ラストレター』は前月号でも取り上げたが、『Love Letter』の岩井俊二監督の下に、松たか子さん、広瀬すずさん、福山雅治さん、神木隆之介さん、庵野秀明さん、森七菜さんら豪華俳優陣が集結し、手紙の行き違いをきっかけに始まったふたつの世代の男女の恋愛と、それぞれの心の再生と成長を描く。映像も美しく、脚本の出来も良く、お奨めの作品。

第92回アカデミー賞のノミネーション発表、最多ノミネートは『ジョーカー』の11部門

一方、 米アカデミー賞を主催する映画芸術科学アカデミーは1月13日(日本時間14日)、第92回アカデミー賞全24部門のノミネーションを発表した。

最多ノミネートは『ジョーカー』の11部門。その後を『1917 命をかけた伝令』、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』、マーティン・スコセッシ監督作の『アイリッシュマン』(2019年Netflix配信)が10部門で続く形となった。

『パラサイト 半地下の家族』は、韓国映画としては初めてノミネートとなった国際長編映画賞に加え、作品賞、監督賞、編集賞、脚本賞、美術賞の6部門に名を連ねた。

第92回アカデミー賞授賞式は2月9日(日本時間10日)、米ハリウッドのドルビー・シアターで行われる。

第43回日本アカデミー賞『翔んで埼玉』が最多12部門で優秀賞

国内では15日、「第43回日本アカデミー賞」正賞15部門の各優秀賞の他、新人俳優賞、協会特別賞などが発表された。

作品賞には『翔んで埼玉』(最多12部門受賞)、『閉鎖病棟−それぞれの朝−』(11部門受賞)、『キングダム』(9部門受賞)、『蜜蜂と遠雷』(6部門受賞の他、新人俳優賞2名)、『新聞記者』(6部門受賞)が決定した。

授賞式は3月6日(金)に開催され、各部門の最優秀賞が発表される。

向こう1カ月公開の注目作品

以下では、ゴールデングローブ賞受賞作品を除いた向こう1カ月公開の注目作品を特集。

1月24日公開の『キャッツ』は、世界中で愛され続けるミュージカルの金字塔「キャッツ」を実写映画化。『レ・ミゼラブル』のトム・フーパー監督がメガホンをとり、スティーブン・スピルバーグ氏が製作総指揮を務めた。

満月が輝く夜。若く臆病な白猫ヴィクトリアが迷い込んだのは、ロンドンの片隅のゴミ捨て場。そこで出会ったのは個性豊かな「ジェリクルキャッツ」たち。ぐうたらな猫、ワイルドな猫、お金持ちでグルメな猫、勇敢な兄貴肌の猫、不思議な力を持つ長老猫。様々な出会いの中でヴィクトリアも自分らしい生き方を見つけていく。そして今宵は新しい人生を生きることを許される、たった一匹の猫が選ばれる特別な夜。一生に一度、一夜だけの特別な舞踏会の幕が開く。

同じく24日公開の『シグナル100』は原作・宮月新氏、作画・近藤しぐれ氏による同名コミックを橋本環奈さん主演で実写映画化。

担任教師・下部(中村獅童)の手により、突如として自殺催眠をかけられた36人の生徒たち。遅刻をする、電話をかける、涙を流す、ふだん行っていた行為が死を招く。その催眠発動(自殺)のシグナルは全部で100。死の暗示を解く方法はクラスメイトの死のみ。生徒たちが続々と自殺に追い込まれる中、死への恐怖から人間の本性が徐々に暴かれていく。催眠を解くのが先か、自分以外のクラスメイト全員が死ぬのが先か。生き残りを賭けた狂気と絶望のデスゲームがはじまる。

1月31日公開の『AI崩壊』は、『22年目の告白 私が殺人犯です』の入江悠監督が自身のオリジナル脚本で、AIを題材に描いた近未来サスペンス。

2030年。人々の生活を支える医療AI「のぞみ」の開発者である桐生浩介(大沢たかお)は、その功績が認められ娘と共に久々に日本に帰国する。英雄扱いを受ける桐生だったが、突如「のぞみ」が暴走を開始。人間の生きる価値を合理的に選別し、殺戮を始める。警察庁の天才捜査官・桜庭は、AIを暴走させたテロリストを開発者である桐生と断定。日本中に張り巡らされたAI監視網で、逃亡者・桐生を追い詰める。桐生が開発したAIを管理していたのは、桐生の亡き妻でありAI共同開発者の望の弟、西村。事件の鍵を握る西村も奔走する一方で、所轄のベテラン刑事・合田と捜査一課の新米刑事・奥瀬は足を使った捜査で桐生に迫る。

同じく31日公開『バッドボーイズ フォー・ライフ』は、ウィル・スミスさんとマーティン・ローレンスさん主演による大ヒットアクション映画『バッドボーイズ』の17年ぶり新作となるシリーズ第3弾。マイアミ市警の敏腕刑事コンビ、マイク・ローリーとマーカス・バーネット。ブランド物のスーツを着こなし、ポルシェをかっ飛ばすマイクに対し、マーカスは家族こそが守るべき大切なものと考え、そろそろ引退を考えている。若いエリートたちと組むことになった2人は、自分たちが年寄り扱いされることに我慢できない。そんな中、マイクが何者かに命を狙われ、バッドボーイズ最大にして最後の危機が訪れる。

同じく31日公開『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』は『スター・ウォーズ 最後のジェダイ』のライアン・ジョンソン監督が脚本も執筆したオリジナルの密室殺人ミステリー。『007』シリーズのダニエル・クレイグさん、『アベンジャーズ』シリーズのクリス・エバンスさんら豪華キャストが共演。

NYの豪邸で世界的ミステリー作家ハーラン・スロンビーの85歳の誕生日パーティーが開かれた翌朝、ハーランが遺体となって発見される。名探偵ブノワ・ブランは匿名の人物から事件の調査の依頼を受けることに。パーティーに参加していた資産家の家族や看護師、家政婦ら屋敷にいた全員が第一容疑者。調査が進むうちに名探偵が家族のもつれた謎を解き明かし、事件の真相に迫る。

ヲタクに恋は難しい

『ヲタクに恋は難しい』
2020年2月7日(金)全国東宝系にてロードショー
©2020映画「ヲタクに恋は難しい」製作委員会
©ふじた/一迅社

2月7日公開の『ヲタクに恋は難しい』は、2018年にテレビアニメ化もされたふじた氏原作の人気コミックを実写映画化。高畑充希さんと山崎賢人さんを主演に、『銀魂』シリーズの福田雄一監督がメガホンをとった。

26歳OLの桃瀬成海は、転職先の会社で幼馴染の二藤宏嵩と再会する。ルックスが良く仕事もできる宏嵩は、実は重度のゲームヲタク。そして成海もまた、隠れ腐女子であった。周りの人々にヲタクだとバレる「ヲタバレ」を何よりも恐れている成海は、その本性を隠している。そんな成海が真実の自分をさらけ出せるのは、ヲタク友達の宏嵩の前だけ。会社が終われば2人はいつもの居酒屋で呑みながら、ヲタ話に花を咲かす。男を見る目がない事を嘆く成海に対して宏嵩は「ヲタク同士で付きあえば快適なのでは?」と交際を提案。こうして2人はお付き合いすることに。

7月24日の東京オリンピック開会式まで半年、少子高齢化時代のモデルケースに

7月24日の第32回オリンピック競技大会・東京オリンピック開会式まで半年となった。

前回の1964年、今から56年前の東京オリンピックの時の記憶は祖母に連れられて近くの銀行へ記念硬貨を交換しに行ったものしかない。

今回は国内で直接見られるのも最後と思い切って「フィールド・キャスト」と呼ばれるボランティアに申し込み、先般、共通研修を受講してきた。参加者は老若男女様々だが、若い方主体かと思いきや同世代ないし先輩の方も多くやや意外であった。

2019年の出生数(日本における日本人)が86万4千人(推計)まで減少、世界最速の少子高齢化が進んだ我が国では、今回のオリンピックが地域や公共機関・学校等における「全世代参加型社会」のモデルケースになるのかもしれない。

一方で、中国武漢市での新型コロナウイルス(2019-nCoV)による肺炎のアウトブレイク(集団発生)もあり、感染症対策等はしっかりとした準備が必要になろう。人手不足も深刻化、観光立国を目指す我が国としては、これも必要な試練と前向きに捉えるしかなさそうだ。

末澤 豪謙 プロフィール

末澤 豪謙

1984年大阪大学法学部卒、三井銀行入行、1986年より債券ディーラー、債券セールス等経験後、1998年さくら証券シニアストラテジスト。大和証券SMBC金融市場調査部長、SMBC日興証券金融市場調査部長等を経て、2012年よりチーフ債券ストラテジスト。2013年より金融財政アナリスト。2010年には行政刷新会議事業仕分け第3弾「特別会計」民間評価者(事業仕分け人)を務めた。日経債券アナリストランキング、14年連続10位内ランクイン。日経財政アナリストランキング2位(2004年〜2006年)。財政制度等審議会委員、国の債務管理の在り方懇談会委員、地方債調査研究委員会委員。趣味は、映画鑑賞、水泳、スキューバダイビング、アニソンカラオケ等。

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