アナリストの忙中閑話【第108回】

アナリストの忙中閑話

(2020年5月21日)

【第108回】COVID-19第2波への備えを、新しいライフスタイル、20世紀名作映画特選(洋画)

金融経済調査部 金融財政アナリスト 末澤 豪謙

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する緊急事態宣言が39の県で解除、21日には京阪神も

5月14日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する緊急事態宣言が39の県で解除された。

14日時点では、北海道、東京、千葉、埼玉、神奈川、大阪、京都、兵庫の8都道府県は維持されたが、本日21日にも、大阪、京都、兵庫の3府県では解除される見込みだ。

現在の期限(当初は5月6日)の31日迄には、北海道と東京圏の4都県でも解除される可能性が高まっている。

宣言発令前後からの外出や営業の自粛効果により、4月下旬以降、新規感染者が減少傾向となり、病院のICU等にも余裕が出始めたことが最大の要因だが、自粛による経済への負荷が極めて大きく、段階的な解除を求める声が強まってきたことも大きい。

海外でも事情は同様で、3月以降、いわゆる「ロックダウン(都市封鎖)」を実施した欧米の都市でも、大半で段階的な経済活動再開の動きが出ている。

但し、新規感染者数が一桁にまで減少、大幅な制限解除を行った韓国や中国では、新たなクラスターの発生が確認されており、油断すると、直ぐに感染が再拡大する危険性も隣り合わせだ。

EUの「COVID-19の封じ込め策解除のためのロードマップ」

そうした状況下、EUでは、「COVID-19の封じ込め策解除のためのロードマップ」を発表している。我が国でも参考になりそうなので、概略をご紹介したい。

EUでは、タイミングが重要としており、継続的な監視と新しい政策を調整及び再導入する準備が必要であり、市民との明確かつタイムリーなコミュニケーションと透明性が不可欠としている。

なお、対策の評価には、「3つの基準」を考慮する必要があるとしている。

第1に、疫学的基準。これは、入院数や新しい感染者の推移等の基準。

第2に、十分な医療機関の能力。十分な数のベッド数、医薬品や機器の在庫など。

第3に、適切な監視機能。感染者を迅速に検出して隔離する大規模な検査機能や、追跡システム。

EUは、状況は加盟国間で大幅に異なるが、共通のアプローチの下で活動することが不可決であり、「3つの原則」がEUと加盟国を導くことが必要であるとしている。

第1に、行動は科学に基づくべきである。社会的及び経済的救済のバランスを取りながら、公衆衛生を中心に置く。

第2に、行動は加盟国で調整されるべきである。全ての加盟国への悪影響と政治的摩擦を避けるため。

第3に、加盟国間の尊重と連帯。健康と社会経済的影響を緩和し、調整し、コミュニケーションを図るために不可欠。

そして、行動制限措置を段階的に廃止するための付随的措置として、以下が求められるとしている。

  • データの収集とレポート作成による加盟国の共有。
  • プライバシーを尊重した上で、モバイルアプリを使用して、追跡と警告のフレームワークを作成。
  • 検査能力を拡張し、調和させる必要。迅速で信頼性の高いテストは、迅速な診断と母集団の獲得免疫を測定するための鍵。
  • 医療システムの能力と回復力を高める必要。
  • 医療用および個人用保護具の可用性を高める必要。共同調達を通じて、備品を備蓄し、配布することで加盟国を支援。
  • ワクチン、治療法、医薬品の導入を開発し、迅速に進める。安全で効果的なワクチンの開発は、コロナウイルスの発生を終わらせ、状況を変える重要なものとなる。

なお、行動制限措置は段階的に解除され、その効果は時間をかけてしか測定できないため、手順の間に十分な時間が経過する必要があるとしている(たとえば1か月)。

EUは27カ国で成り立つ。感染の状況や医療体制等は加盟国で異なることから、経済活動の再開にあたっては科学的データに基づく判断とコミュニケーションの重要性が強調されている。

我が国でも、5月14日に変更された基本的対処方針で、緊急事態宣言の解除にあたっては、①感染の状況(疫学的状況)、②医療提供体制、③監視体制、が判断基準となることが明確化されたが、今後は一段とデータに基づく、わかりやすい説明を求めたい。

たとえば、欧米では、感染者数や感染予防対策等をグラフや図で示していることが多い。我が国でも地方自治体では、グラフが多用されているケースもあるが、厚生労働省等国のホームページでは文字や数字が多く、わかりにくい。

また、データの信頼性を担保する上でも、検査体制の拡充は不可欠だろう。

経済活動を本格的に再開するためには、自粛要請を解除するだけでは不十分であり、個人や企業が安心して、消費や投資活動を従前に戻すことが必要だ。そのためには、科学的データに基づく納得感のある説明が肝要だろう。

COVID-19の感染者は既に500万人を、死者は32万人を超えた、毎日の新規感染者も約10万人で高止まり

COVID-19の感染者は既に500万人を、死者は32万人を超えた(日本時間21日16時現在、ジョンズ・ホプキンス大学調べ)。毎日の新規感染者も約10万人で高止まりしており、収束の目途は依然見えない。

但し、地域的には変化がみられる。現在、感染の中心地は米国で感染者は155万人を、死者は9万人を超えているが、新規感染者は減少傾向に転じている。中国や韓国等の東アジアでは、一旦感染が収束、経済活動もほぼ再開された。我が国でも近い状況だ。

一方、ロシアやブラジル、インド等、新興国や発展途上国では感染が拡大、特に、これから冬に向かう南半球のブラジルでは急激に拡大、感染者は米国、ロシアに次ぐ3位に躍り出ている。

感染者の多い米国でも抗体保有者は10%未満とみられることから、欧米の感染者数の減少は、集団免疫の獲得によるものではなく、ロックダウン等ソーシャル・ディスタンスの効果と季節要因による可能性が高そうだ。

北半球では、一時的に感染は収束に向かう可能性

今後、北半球では一時的に感染は収束に向かう可能性がある。

ヒトに感染するコロナウイルスは現在、新型コロナウイルス(SARS-COV-2)も含め7種類が確認されているが、うち4種類は風邪コロナウイルスである。風邪全体の10-15%を占めるが、通常感染は冬に強まる。

2002年に確認されたSARS(重症急性呼吸器症候群)は2003年5月上旬(筆者集計では5月13日)に感染者から回復者を除いた現患者数が減少に転じ、7月5日に、WHOは終息宣言を出している。

現在も稀に発生しているMERS(中東呼吸器症候群)も冬から春に感染者が増えることが多い。

背景には、コロナウイルスもインフルエンザ同様、夏場には感染力が弱まることが挙げられる。

米国土安全保障省が新型コロナウイルスの半減期は高温・多湿・紫外線(UV)の影響で早まるという実験結果を公表

米国土安全保障省も新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の半減期は高温・多湿・紫外線(UV)の影響で早まるという実験結果を公表している。

同省の科学技術顧問を務めるウィリアム・ブライアン氏は4月23日、ホワイトハウスで記者団に対し、「太陽光には、物質の表面と空気中の両方に存在するウイルスを不活性化する作用があるとみられる」(24日付けAFP)と明らかにした。ブライアン氏は、「温度と湿度にも同様の作用が見られた。温度または湿度、あるいはその両方の上昇は、一般的にウイルスにとって好ましくない」と説明した。

ブライアン氏が示した実験結果をまとめたスライドによると、ウイルス量の半減期は、気温21〜24度、湿度20%の無孔質の表面で18時間だった。無孔質の表面には、ドアノブやステンレス製品の表面などが含まれる。しかし、湿度が80%に上昇すると、半減期は6時間に、湿度80%で気温を35度に上げると、半減期は1時間に短縮。これに太陽光が加わると、わずか2分にまで短縮した。

但し、感染力が弱まるのはあくまで、屋外のことであり、冷房の効いた屋内では、温度も湿度も春や秋と同じ環境となる。特に、換気が悪い中で密集した状態は、「三密」となり、そこに感染者がいれば感染リスクは一気に高まる。

年中高温のシンガポールで最近、アウトブレイク(集団発生)が起きたのは外国人労働者が集団で居住する寮である。

秋以降の第2波や第3波に警戒、中期的には、季節性コロナウイルス感染症に転化するおそれも

我が国では一旦、夏場に感染が収束する可能性があるが、既に懸念されているのは、秋以降の第2波や第3波であり、中期的には、季節性コロナウイルス感染症に転化するおそれも否定できない。

SARSと違い、感染は南極を除く、地球上のほとんどの地域に拡大している。足元では、ロシアやインドなどの新興国、ブラジルや南アフリカ等の南半球でも感染者が拡大していることから、世界的には、北半球の夏場も感染の継続は必至の状況だ。

そうすると、注意が必要なのは今秋となる。

1918年にパンデミックが起きたスペイン風邪(H1N1ウイルス)の場合、感染の第1波は1918年春、第2波は1918年秋、第3波は1919年の春と、3つの波が発生、1919年夏に収束している。

今週はワクチン開発における治験での好結果も明らかとなっているが、健常者に広く接種するワクチンは副作用等の確認に慎重さが求められる。また、全人類77億人に必要な量産にも時間がかかる。

今秋から今冬に予想される第2波や第3波は、インフルエンザとの感染期にも重なることから一段の警戒が必要だろう。

抗体の持続期間も問題

また、ワクチンの接種が可能となっても、抗体(免疫)の持続期間は不透明だ。

一般に、致死性の高いウイルスほど感染力が低く、致死性の低いウイルスほど感染力が高いように、重篤化率の高いウイルスほど、抗体の持続期間が長く、重篤化率の低いウイルスほど、抗体の持続期間は短いことが多い。

「はしか(麻疹)」の抗体は持続期間が長く、一度感染して回復すれば生涯にわたる免疫(終生免疫)獲得が可能。また、HIVのように抗体とウイルスが併存するケースもある。

一方、インフルエンザの場合、ワクチンを接種して抗体ができるまでは2週間ほどかかり、一度できた抗体による免疫の持続期間は5〜6か月ほどで消滅する。結果、毎シーズン、インフルエンザウイルスのワクチン接種が必要であり、タイプ(株)によっても効き目が異なるため、ワクチンの中身もシーズン毎に変えている。

4種のコロナウイルスを含む普通の「風邪」の抗体の持続期間も5〜6か月とされている。

一方、COVID-19と同じコロナウイルスであるSARSの抗体の持続期間は約2年、より致死率の高いMERSの場合、約3年とみられる。

現時点では、不明だが、COVID-19のウイルス「SARS-CoV-2」の場合、MERSやSARSよりは明らかに致死率が低いことから、風邪のコロナウイルス並の5〜6か月から1年程度しか、抗体の持続期間がない可能性もありうる。この場合、毎シーズン前にワクチンの接種が必要となる。

ソーシャル・ディスタンスの継続とともに、監視機能の大幅拡充で、面から線に移行した隔離政策の検討も

一方で、インフルエンザと比較して、COVID-19の致死率は10〜100倍高く、入院期間も長い。

医療崩壊を防ぐためには、ソーシャル・ディスタンスは、抜群の抗ウイルス薬が開発されるまでは当面、続く可能性が高そうだ。

但し、新規感染者が幾分増えただけで、毎回、緊急事態宣言を発出して、外出や営業の自粛を要請していては、経済がもたないし、恒久的に全額補償していては、国や地方の財政がもたない。

今後は、PCR検査や抗原検査、また、抗体検査の大幅拡充により、面(地域)での感染隔離政策ではなく、線(濃厚接触)に絞った隔離政策に早期に移行することを検討する必要があろう。

そのためには、EUや米国の経済再開のガイドラインにあるように、適切な監視機能:感染者を迅速に検出して隔離する大規模な検査機能や、追跡システム(EU)の整備が喫緊の課題だ。

今秋までの数か月を医療体制や検査等監視体制の拡充等に充てる必要があるが、残された時間は短いと言えそうだ。

感染症のパンデミックと気候変動には関連

COVID-19の起源や感染拡大の責任については、WHO(世界保健機関)を含め、米中で非難合戦が繰り広げられているが、同様なパンデミックが今後も発生する可能性は高まっているのではないか。

感染症のパンデミックと気候変動との関連を指摘する声もある。

2019年の世界の年平均気温は2016年に次いで過去2番目の高水準に、2019年の日本年平均気温は過去最高となったが、21世紀に入り、北半球での気温上昇が著しくなっている。北半球には陸地の67%が、世界人口の9割以上が集中している。

21世紀に世界経済の成長を牽引したのは、中国やインド等の新興国だが、開発が進めば、森林伐採等が進む。過去、人類がほとんど踏み入れたことがない原始林等には未知のウイルスも潜んでいる。

前述の通り、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は、ヒトに感染するコロナウイルスでは7番目に確認されたものだが、他にも自然宿主である動物間で感染するコロナウイルスが知られている。開発により、人間がそうした動物に直に接触したり、中間宿主となる家畜経由でヒトに感染する可能性は高まっていると言える。

しかも、グローバル化、国際観光の拡大の結果、パンデミックのスピードはかつてとは比べものにならないほど速くなっている。

地球温暖化等に伴う砂漠化等は、シリア等で地政学的リスクの拡大要因ともなったが、奥地の開発や自然環境の変化に伴う移動により、野生動物と人間の接触機会が増えることは、パンデミックの拡大要因にもなりうる。注意が必要だろう。

新たな生活様式(ライフスタイル)の課題

政府は、感染の長期化を見据えて、新たな生活様式(ライフスタイル)を提案している。

具体的には感染防止の3つの基本として、①身体的距離の確保(できるだけ2m、最低1m)、②マスクの着用、③手洗いを挙げ、感染が流行している地域からの移動や感染が流行している地域への移動は控え、食事は対面ではなく横並びで、テレワークやオンライン会議が奨励されている。

但し、この状況が続くことになれば、観光、旅客運送、小売、外食や娯楽、冠婚葬祭等の産業にとっては大打撃となる。たとえば、横並びで会食は成り立つのであろうか。

また、日本政府観光局によると本年4月の訪日外国人旅行者(訪日外客)は、推計で2,900人にとどまり、1か月間の旅行者数としては、統計を取り始めた1964年以降、過去最少となった。前年同月比では▲99.9%と、ほぼ皆減に近い。

1964年は東京オリンピックが開催された年で、1万人を下回るのは初めて。政府は2回目の東京オリンピックが開催される予定だった2020年に4,000万人(2019年実績は3,188万人)の目標を掲げているが、1,000万人も難しい状況だ。1-4月累計は394万人だが、1月と2月分で375万人を占める。

現在は我が国を含め、世界中で入国制限や行動制限措置を採っており、感染収束まで回復は見込みづらい状況だ。

国際航空旅客の急減で、既にオーストラリアのヴァージン・オーストラリアに続き、19日にはタイ国際航空も事実上、経営破たんしている。欧米の航空会社も大幅の人員削減と政府の支援でどうにか踏みとどまっている会社が多い。

IATA(国際航空運送協会)は国際線の旅客需要が2019年の水準に回復するのは2024年になるとの見通しを示している。

2021年に延期された東京オリンピック・パラリンピックも開催に向けては、新たなスタイルを探ることになりそうだ。

日本の良き伝統である「ノミニュケーション」も危機に瀕している。筆者もオンライン飲み会を最近多用しているが、0.5秒程度の会話のタイムラグと飲食のタイミングを図るのが難しい。自分の顔を見ながらでは思い切り酔えず、ストレスがたまるのも難だ。

大都市部では「痛勤」による時間と体力の節減を歓迎する声も聞かれるが、物理的距離をとることが、社会的のみならず、心理的距離を拡大させないような工夫が必要となりそうだ。

新作映画の公開も製作も延期に、当面は名作映画の鑑賞が主体に

COVID-19の感染拡大を受けて、前月号でも紹介したが、内外の新作映画は大半が公開延期となっている。

緊急事態宣言が一部で解除された15日以降、地方では映画館も再開しているが、前週末の動員ランキング上位は3月公開映画と『天気の子』や『君の名は。』、『シン・ゴジラ』等昨年までの公開済作品が主体となっている(興行通信社調べ)。

新作の一部は、アマゾン・プライムやNetflix等でのネット配信を始めた作品もあるが、内外の大手映画会社は当面、感染の収束が見込まれる夏まで公開を延期する方針のようだ。但し、感染が再拡大すれば、再度延期となる可能性もある。

国内的には、ファンの移動等を勘案すると、東京都で映画館が再開するまでは大作や人気作品の公開は見送られる可能性が高そうだ。再開時も座席を前後左右、空けることになれば、キャパシティの問題から上映本数も限られることになろう。

20世紀の名作映画、洋画ベスト80

こうした状況下、今月号も前月に続き、新作ではなく、ネット配信等されている公開済の映画の中から、筆者お奨めの作品を紹介したい。

前月号では、過去5年間に公開された映画から選定したが、今回は20世紀に公開された洋画からご紹介する(洋画は海外での公開日ベース)。年代順のベスト80。

『モダン・タイムス』(1936年、日本公開1938年)、『風と共に去りぬ』(1939年、日本公開1952年)、『市民ケーン』(1941年、日本公開1966年)、『カサブランカ』(1942年公開、日本公開1946年)、『素晴らしき哉、人生! 』(1946年、日本公開1954年)、『雨に唄えば』(1952年)、『ローマの休日』(1953年)、『戦場にかける橋』(1957年)、『ベン・ハー』(1959年)、『荒野の七人』(1960年)、『ウエスト・サイド物語』(1961年)、『アラビアのロレンス』(1962年)、『史上最大の作戦』(1962年)、『大脱走』(1963年)、『007 ロシアより愛をこめて』(1963年)、『博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか』(1964年)、『マイ・フェア・レディ』(1964年)、『サウンド・オブ・ミュージック』(1965年)、『男と女』(1966年)、『卒業』(1967年)、『2001年宇宙の旅』(1968年)、『猿の惑星』(1968年)、『明日に向って撃て! 』(1969年)、『時計じかけのオレンジ』(1971年)、『屋根の上のバイオリン弾き』(1971年)、『ゴッドファーザー』(1972年)、『スティング』(1973年)、『エクソシスト』(1973年)、『ジョーズ』(1975年)、『カッコーの巣の上で』(1975年)、『タクシー・ドライバー』(1976年)、『ロッキー』(1976年)、『未知との遭遇』(1977年)、『スター・ウォーズ』(1977年)、『サタデー・ナイト・フィーバー』(1977年)、『ゾンビ』(1978年)、『地獄の黙示録』(1979年)、『エイリアン』(1979年)、『クレイマー、クレイマー』(1979年)、『シャイニング』(1980年)、『レイダース/失われたアーク《聖櫃》』(1981年)、『E.T.』(1982年)、『ブレード・ランナー』(1982年)、『愛と青春の旅立ち』(1982年)、『ゴーストバスターズ』(1984年)、『ターミネーター』(1984年)、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(1985年)、『プラトーン』(1986年)、『スタンド・バイ・ミー』(1986年)、『プレデター』(1987年)、『ラストエンペラー』(1987年)、『アンタッチャブル』(1987年)、『レインマン』(1988年)、『ダイ・ハード』(1988年)、『ニュー・シネマ・パラダイス』(1988年)、『ゴースト/ニューヨークの幻』(1990年)、『ホーム・アローン』(1990年)、『シザーハンズ』(1990年)、『グッドフェローズ』(1990年)、『羊たちの沈黙』(1991年)、『許されざる者』(1992年)、『シンドラーのリスト』(1993年)、『ジュラシック・パーク』(1993年)、『ショーシャンクの空に』(1994年)、『フォレスト・ガンプ/一期一会』(1994年)、『レオン』(1994年)、『アポロ13』(1995年)、『セブン』(1995年)、『インデペンデンス・デイ』(1996年)、『ミッション:インポッシブル』(1996年)、『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』(1997年)、『タイタニック』(1997年)、『メン・イン・ブラック』(1997年)、『ディープ・インパクト』(1998年)、『プライベート・ライアン』(1998年)、『アルマゲドン』(1998年)、『グリーンマイル』(1999年)、『シックス・センス』(1999年)、『マトリックス』(1999年)、『グラディエーター』(2000年)。

尤も、筆者も映画館でロードショーを見たのは、上記では『エクソシスト』や『ジョーズ』以降で、それ以前の映画は淀川長治さん解説の「日曜洋画劇場」等、テレビでの視聴だ。当時は映画の放送が昼間もゴールデンタイムも深夜も多かった。

現在よりも娯楽が少ない中、筆者にとっては、洋画が大事な趣味で、父や弟が好きなプロ野球が延長にならないよう、早く決着がつくよう応援(?)していた記憶がある。

テレビで見た洋画のうち、今なお鮮明な記憶が残っているのが『カサブランカ』(1942年公開、日本公開1946年)だ。ストーリーはよく覚えていないが、リック(ハンフリー・ボガート)が恋人イルザ・ラント(イングリッド・バーグマン)と酒場「カフェ・アメリカン」で偶然の再会を果たす時に流れる『アズ・タイム・ゴーズ・バイ』の切ないピアノの音色が今なお蘇えってくる。上記80作品はサントラが名曲で選んだものも多い。

ローマの休日

『ローマの休日』1954年 日本公開

また、欧州への憧れが芽生えたのが『ローマの休日』だ。ふとした縁で、グレゴリー・ペックさん演ずる新聞記者がオードリー・ヘプバーンさん演じる王女をローマ観光に連れ出すというストーリー。手を口に入れると、偽りの心がある者は手が抜けなくなるという「真実の口」には、筆者も今から30年ほど前に実際に手を入れてみたが、本日もパソコンのキーボードをたたけているということは正直者の証か?

それにしても、映画にも出てくるトレビの泉やスペイン階段等がつい最近まで無人となっていた光景は映画以上の衝撃だ。

一方、ハリウッドの隆盛を感じたのが、『ベン・ハー』や『風と共に去りぬ』。

チャールストン・ヘストンさん主演の『ベン・ハー』では巨大な戦車競技場がローマのチルコ・マッシモで再現されていた。ローマ時代に戦車競技が実際に行われた広大な競技場の跡地だ。当時はCGの技術はなく、俳優やスタントが実際に戦車競走を行っている。邦画では到底真似出来ない力技だろう。

風と共に去りぬ

『風と共に去りぬ』1952年 日本公開

一方、『風と共に去りぬ』(1939年、日本公開1952年)を初めて見たのは1975年10月の「水曜ロードショー」と記憶しているが、実は製作後36年も経ってからだ。米国は太平洋戦争前にこの大作を「カラー映画」で仕上げていたのだ。当時の彼我の国力の差は明らかであったと言えそうだ。

『風と共に去りぬ』の大作度は記録にも表れている。映画の世界興収第1位は、2019年に公開された『アベンジャーズ/エンドゲーム』の27億9,780万ドルだが、インフレ調整後の米国内での最高興収は現在でも『風と共に去りぬ』が第1位をキープしている(Box Office Mojo調べ)。

海外旅行は遠い存在に、新しいライフスタイルを楽しもう

今から40〜50年前、筆者がテレビで洋画を視聴していた時、海外旅行はある意味、夢物語に近かった。特に、ディズニーランドは憧れの的で、ようやく、1984年の卒業旅行で、アナハイムのディズニーランドとオーランドのディズニーワールドを訪問した際は、念願が叶ったと大喜びした記憶がある。

実は現在も、海外旅行は当時に近い、それ以上に困難な状況になっている。

現在の若者は、筆者の青春時代同様、洋画をテレビやネットの画面で見て、将来の海外旅行に夢膨らますのだろうか?それとも、むしろ感染リスクもなく安上がりとして、『レディ・プレイヤー1』(2018年公開)の世界のように、VRゴーグル等でバーチャルの海外旅行を楽しんで良しとするのであろうか。

これも、新しいライフスタイルか。世知辛い世の中ではあるが、世界中での感染収束までは、受け入れざるを得ない。何れにせよ時間は経過する。人生は有限だ。新しいライフスタイルを楽しめるよう、生活改善に努めるしかなさそうだ。

「最も強い者が生き残るのではなく、最も賢い者が生き延びるのでもない。唯一生き残ることが出来るのは、変化できる者である」。ダーウィンの言葉か否かは定かではないが、変化への対応は心身の健康維持にも重要だろう。

末澤 豪謙 プロフィール

末澤 豪謙

1984年大阪大学法学部卒、三井銀行入行、1986年より債券ディーラー、債券セールス等経験後、1998年さくら証券シニアストラテジスト。同投資戦略室長、大和証券SMBC金融市場調査部長、SMBC日興証券金融市場調査部長等を経て、2012年よりチーフ債券ストラテジスト。2013年より金融財政アナリスト。2010年には行政刷新会議事業仕分け第3弾「特別会計」民間評価者(事業仕分け人)を務めた。財政制度等審議会委員、国の債務管理の在り方懇談会委員、地方債調査研究委員会委員。趣味は、映画鑑賞、水泳、スキューバダイビング、アニソンカラオケ等。

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