アナリストの忙中閑話【第111回】

アナリストの忙中閑話

(2020年8月27日)

【第111回】異常気象が常態化、米大統領選の行方と不安材料、3つの大戦がテーマの映画公開

金融経済調査部 金融財政アナリスト 末澤 豪謙

今夏は長梅雨の後、猛暑が再来、8月17日には浜松市で最高気温が観測史上第1位タイとなる41.1度を記録

前月号で特集したように、今年の夏、日本列島は「長梅雨」の影響で、7月の月平均気温は、沖縄・奄美で高くなったのを除くと、西日本ではかなり低く、東日本でも低くなった。

但し、梅雨明け後の7月下旬以降は、猛暑が再来。8月17日には浜松市で最高気温が観測史上第1位タイとなる41.1度を記録するなど、平年を上回る暑さが続いている。

8月以降は、ラニーニャ現象の発生確率が上昇していることもあり、9月に向けても残暑が厳しくなりそうだ。

気象庁の全国3か月予報、9-11月期の平均気温は全国的に高く、降水量は平年並か多い見込み

8月25日に気象庁が発表した「全国3か月予報(9月から11月までの天候見通し)」によると、向こう3か月の気温は、暖かい空気に覆われやすく、東・西日本と沖縄・奄美で高く、北日本で平年並か高い見込み。

向こう3か月の降水量は、東・西日本太平洋側と沖縄・奄美では、前線や南からの湿った空気の影響を受けやすく、平年並か多いと見込まれている。

平均気温は9月と10月は高く、11月は平年並

これを月別に見ると、平均気温は、9月は、北日本は平年比高い確率が50%、それ以外の地域は60%の高い確率で、全国的に高い見込み。

10月も、北海道及び東北は平年比高い確率が40%、それ以外の地域は50%の確率で、全国的に高い見込み。

一方、11月は全国的に平年並に気温が低下する見込みだ。

降水量は9月と10月は多く、11月は少なめ

降水量を月別に見ると、9月は北陸、近畿(日本海側)、中国、九州北部が平年並となっているのを除くと、全国的に多い見込み。

10月も北海道及び東北(日本海側)の平年並を除くと、全国的に多い見込み。

一方、11月は、北海道、東北(日本海側)及び東北(太平洋側)の平年並を除くと、全国的にやや少なめの見込みとなっている。

最高気温の高い記録や最低気温の高い記録の上位は大半が過去数年に集中

近年の猛暑は記録でも裏付けられている。

最高気温の高い記録を見ると、上位10位のうち、5回が2018年に、2回が2020年に記録されている。また、上位20位を見ると、20位タイを含め24記録中、7回が2018年に、4回が2020年に、3回が2019年に記録されており、過去数年は、猛暑が際立つ状況となっている。

なお、2019年は最高気温の高い記録上位10位には入っていないが、最低気温の高い記録の第1位と第2位を占め、第5位と第7位にも入るなど、夏場の最低気温が突出して高い年となっている。

本年7月の世界の平均気温は2016年に次いで、観測史上2番目に高く、北半球に限ると、過去最高

結果、2019年は年平均気温が、我が国では観測史上最高となった。

世界全体では2019年の世界の年平均気温(年平均気温偏差+0.43℃)は2016年(+0.45℃)に次いで過去2番目の高水準となったが、今年は過去最高を更新しそうな勢いだ。

米国立海洋大気庁(NOAA)によると、本年7月の世界の平均気温は2016年に次いで、観測史上2番目に高く、北半球に限ると、過去最高だったとのこと。

年初来、1-7月の世界の陸地と海面の気温は141年間の記録の中で、2016年に次いで2番目に高い14.85℃で、20世紀の平均気温を1.05℃上回った。2016年との差は僅か0.04℃。

また、北極海の氷は過去42年の記録の平均を23.1%下回り、最も小さくなった。そのサイズはベトナム並に縮小。

前述の通り、7月は気温が平年を下回っていた我が国など東アジアでも、8月は一気に気温が上昇、米国や欧州でも記録的な暑さとなっていることから、8月の平均気温は北半球のみならず、世界全体でも過去最高を更新する可能性が想定される。

特に、我が国の近海では、足元、海面水温が平年比2-3℃高くなっており、今後も高い気温が持続しそうな環境にある。

背景には、台風8号(バービー)まで、日本近海を勢力の強い台風が通過せず、水の循環が抑制されていた面もある。

一方、今後の台風シーズンでは、台風の勢力が衰えず、いわゆる「スーパータイフーン」、気象庁の基準では「猛烈な台風」のまま、接近・上陸する可能性も否定できず、注意が必要だ。

今年は例年より多数のハリケーンが発生する見込み

「タイフーン」は、東太平洋、メキシコ湾、大西洋では、「ハリケーン」に名称が変わる。

米国立ハリケーンセンター(NHC)によると、現在、メキシコ湾にはハリケーン「ローラ」が発生しており、26日、5段階の勢力で2番目に強力な「カテゴリー4」のメジャー・ハリケーンに発達した。

現地時間26日夜(日本時間27日)にも、ルイジアナ州ないしテキサス州に上陸する見込みだ。

NOAAによると、今年のシーズン、名前のついたトロピカル・ストームは19-25個、うちハリケーンが7-11個、メジャー・ハリケーンは3-6個と、例年よりも多数のハリケーンが発生する見込みだ。

米カリフォルニア州では、高温、乾燥下での落雷が原因となった山火事が拡大、同州全体の焼失面積は既に1年前の25倍に拡大

気温上昇は、米西海岸にも大きな影響をもたらしている。

米カリフォルニア州では、高温、乾燥下での落雷が原因となった山火事が拡大、住民に死者も発生している。

カリフォルニア州ナパ郡やサンタクララ郡などの火災は、焼失面積が50万へクタールに達し、過去最悪の規模に達している。

ニューサム知事によると、今年に入ってからの同州全体の焼失面積は既に1年前の25倍に拡大しているとのこと。

なお、ラニーニャ現象は米西海岸の乾燥をもたらしやすいとされる。

長江への流水量が急増、世界最大の水力発電ダムである三峡ダムの安全性に関心が集まることに

一方、前月号でも紹介したが、我が国の「長梅雨」と同様な要因で発生した中国東部から南部にかけての大雨は、長江(揚子江)への流水量を急増させ、世界最大の水力発電ダムである三峡ダムの安全性に対する関心を急速に高めることになっている。

気象庁によると、長江中・下流域では、2020年7月の降水量は過去23年間の平均の約1.8倍となり、1997年以降で7月としては最も多くなり、2020年6〜7月の2か月合計降水量も1997年以降で同時期としては最も多くなったとのことだ。

中国長江三峡集団は20日、湖北省の三峡ダムで同午前8時に今年5回目となる増水のピークが到達し、毎秒7万5千立方メートルの流入量を観測したと発表した。2003年にダムが完成して以来、最大の流入量となったとのこと。

こうした状況を受けて、三峡ダムでは、23日にも大規模な放流が実施されたが、下流域での洪水被害が拡大するおそれもある。

なお、三峡ダム上流の重慶では25日までは雨が降っていたが、その後、天候は回復している。

2020年上半期の自然災害による損失額は約680億ドルで、30年間の平均を僅かに下回った、保険カバー額は約270億ドルで、30年間の平均を上回った

ミュンヘン再保険によると、2020年上半期、1月から6月末までの自然災害による損失額は約680億ドルで、30年間の平均(インフレ調整後740億ドル)を僅かに下回っている。なお、保険カバー額は約270億ドルで、30年間の平均(インフレ調整後200億ドル)を上回った。

近年の大規模な自然災害は、予見が困難な地震(含む津波)を除くと、ハリケーン・台風・サイクロンと山火事が主因となっている。なお、本年前半は竜巻被害も米国主体に多く発生した。

台風や山火事は、米国や日本等先進国での保険カバー額が大きいことから、保険会社の収益を圧迫し、再保険料の上昇を招く要因ともなっている。

台風シーズンが訪れるこれからの季節は、昨年や一昨年同様、自然災害に要注意

特に、今年の場合、ラニーニャ現象が足元、発生しそうな状況にあることから、米加州での山火事被害に加え、ハリケーンや台風等の大型化、強力化が懸念される。このことは、ミュンヘン再保険のレポートでも指摘されている。

台風シーズンが訪れるこれからの季節は、昨年や一昨年同様、自然災害には要注意と言えそうだ。

11月3日の大統領選では、再選を狙う共和党のトランプ・ペンス・コンビに、民主党のバイデン・ハリス・ペアが挑む構図が正式決定

11月3日の米大統領選を控え、8月17日から20日まで、民主党の全国大会が開催され、大統領候補にジョー・バイデン前副大統領(77)を正式に指名した。

副大統領候補には、バイデン氏が8月11日に起用を発表していたカマラ・ハリス上院議員(55)を正式に指名した。

一方、24日から27日まで開催されている共和党の全国大会では、大統領候補にドナルド・トランプ大統領(74)が、副大統領候補にマイク・ペンス副大統領(61)が再指名された。

これで、11月3日の本選では、再選を狙う共和党のトランプ・ペンス・コンビに、民主党のバイデン・ハリス・ペアが挑む構図が正式に決定した。

2016年の米大統領選の結果と民主党のクリントン氏の敗因

民主党の副大統領候補にハリス氏が指名されたことは筆者予想通りだが、バイデン氏の本選での当選確率上昇に寄与すると考えている。

2016年の米大統領選で、選挙人獲得数はトランプ氏306人に対し、クリントン氏232人と、トランプ氏が勝利したが、得票率は46.1%対48.2%、得票数は62,980千票対65,845千票で、何れもクリントン氏が上回った。

クリントン氏が選挙人数で敗退したのは、全ての州が総取り方式であるスイング・ステート、特に、フロリダ州とラストベルトの諸州で、僅差で敗退したのが主因である。

そして、スイング・ステートの敗因は、黒人層の投票率の低下、民主党リベラル派の投票率低下、ラストベルトの白人ブルーカラー層の支持離れが大きかった。

今回、副大統領候補に黒人(父がジャマイカ系移民、母がインド系移民)の女性で穏健リべラル派のカマラ・ハリス氏を起用したことや、バイデン氏の選対にリベラル左派で指名レースでバイデン氏と争ったバーニー・サンダース氏の選対メンバーを一部組み入れたこと、前回棄権した民主党支持層や無党派層の反省等を勘案すると、前の2つの問題は一定程度改善できると考えられる。

ラストベルトに関しても今回は民主党にやや分がありそうだ。バイデン氏はペンシルべニア出身の白人男性で、かねて「中流階級出身のジョー」を名乗り、ラストベルトの白人のブルーカラー層に親しみやすい経歴を持つ。

また、トランプ政権発足後も原油価格の下落等の影響もあり、ラストベルトの経済は復活せず、足元では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックの影響で、失業率は全米平均を上回る状況にある。

一方、フロリダ州における共和党の有力な支持層であるリタイア後に北東部から移住した白人の高齢層もトランプ氏のCOVID-19対策には不満を持つ向きが多い。

全体として、今回の大統領選は民主党が優勢に進めていると考えているが、懸念されるのは郵便投票の急増に伴い、選挙結果の確定が大幅に遅れ、混乱が起きる可能性だ。

郵便投票の増加は大統領選の混乱要因に

今回、米国では既に人口の8割程度で郵便投票が可能となっているが、米国の郵便システムの老朽化や人員不足等によって、11月3日までに投票用紙が到着するか否か、また、開票作業の遅れ等で、投票結果の判明が大幅に遅れる可能性や、投票結果に対して開票やり直し請求が出される可能性、訴訟に発展するおそれが指摘されている。

急遽、米議会下院では、郵政公社(USPS)向けの資金支援等を盛り込んだ法案を可決したが、かねて「郵便投票は不正の温床」と攻撃しているトランプ大統領は反対の姿勢を示している。

電子メールの普及等で慢性的な赤字体質にあるUSPSは現在、トランプ大統領により指名されたルイス・デジョイ長官の下、郵便ポストの撤去、配達サービスの縮小、仕分けセンターの閉鎖などコスト削減策を進めている。

デジョイ氏はトランプ氏の大口献金者でもあり、今回の改革が郵便投票の円滑な実施を困難にする可能性が指摘されていることから、米下院や州等では、法案の策定や訴訟により、改革を阻止する動きが出ている。

こうした中、デジョイ長官は18日、改革を11月3日の大統領選までは凍結すると発表したが、元々遅配が問題となっている中、郵便投票がかつてなく増加すると大きな混乱が生じる可能性は否定できない。

米大統領選の開票作業が混乱したのは、2000年のフロリダ州

米大統領選の開票作業が混乱したのは、2000年が記憶に新しい。

当時、共和党はジョージ・ブッシュ氏、民主党はアル・ゴア副大統領(当時)が出馬していたが、選挙人(538人)の過半数(270人)をどちらが制するかは、フロリダ州(選挙人:当時25人、現在29人)の結果次第となった。

そのフロリダ州では当時、パンチカード式の投票機が使われていたが、穴が完全に開いていないケースや、候補者と候補者の間にパンチされているケースでは、機械が投票結果を正確に読み取れない状況にあった。

投票結果が僅差となったことで、一部で機械での再集計がなされ、フロリダ州の州務長官がブッシュ291万2,790票、ゴア291万2,253票として、537票差でのブッシュ勝利を認定。

但し、手作業で再集計を実施すれば、無効票が有効となり、ゴア氏が逆転勝利する可能性があったことで、ゴア陣営が再集計を要求。最終的に、ブッシュ陣営が提訴した連邦最高裁で再集計が禁じられたことで、ブッシュ氏の勝利が確定した。

選挙人の獲得数は、ブッシュ氏271人に対し、ゴア氏は267人で、フロリダ州の結果が明暗を分けた。

当時も勝敗の確定は12月12日まで、大幅に遅れることとなったが、筆者が今回の大統領選でスイング・ステートと認める13州の多くで、郵便投票の増加等で投票結果の確定に時間を要することになれば、2000年当時以上の大混乱が生じかねない。

新型コロナウイルスは、気温・湿度・UV(紫外線)が上昇すると、半減期が短縮、感染力が弱まる

今年は冒頭で述べたように、長い残暑が終わり気温が低下する11月が、米大統領選に加え、COVID-19の感染拡大動向を見極める上でも重要な鍵となりそうだ。

米国土安全保障省などの研究によると、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は、気温・湿度・UV(紫外線)が上昇すると、半減期が短縮、感染力が弱まることが知られている。

これは、インフルエンザや4種の風邪コロナウイルス等も同様であり、2002年に発生したSARS(重症急性呼吸器症候群)も2003年5月上旬には患者数がピークアウトし、WHO(世界保健機関)は7月5日に終息宣言を出した。

現在でも散発的に感染が確認されているMERS(中東呼吸器症候群)も秋から春の発生が多く、9割近くの感染者が確認されているサウジアラビアは乾燥地域だ。

一方、米国や我が国においても、6月以降の夏場に感染が再拡大した要因は、経済活動の再開に加え、エアコンの効いた室内でのクラスター(感染者集団)の発生が大きかったと認識している。

但し、天候要因を勘案すれば、COVID-19の感染拡大は秋以降が焦点となりそうだ。

スペイン風邪も春及び秋から冬に流行、我が国の最初のピークは1918年11月

1918年に発生したスペイン風邪(H1N1インフルエンザウイルス)も春及び秋から冬に、流行が拡大しており、季節性が確認されている。

なお、我が国の流行は当時、米国から半年遅れて発生しているが、最初の感染のピークは1918年11月となっている。

現在世界第2位の感染者及び死者が発生しているブラジルでは、今年も2月中旬に、リオデジャネイロなど大規模なカーニバルが開催されたが、感染者が急拡大したのは5月以降、現地の晩秋に入ってからだ。

一方、同時期にカーニバルが実施されたイタリアのベネチアでは、3月以降、感染者が急拡大し、現在では沈静化しつつある。

2009年の新型インフルエンザの事例

なお、新興感染症は初めてのシーズンに関しては、流行に際し、やや季節性が弱まる可能性も想定される。これは、免疫ないしその痕跡を持っている人が皆無ないし極めて限られているため、感染力が高まることが背景にあると考えられる。

実際、2009年に発生した新型インフルエンザ(H1N1pdm09ウイルス)は、通常の季節性インフルエンザよりも早い時期に流行のピークが発生している。

米国における新型インフエンザの流行のピークは2009年の第42週頃、つまり10月の下旬となっている。通常の季節性インフルエンザの場合、第52週から翌年の8週頃、つまり、12月から2月にピークが発生しているのとは対照的だ。

但し、H1N1pdm09ウイルスは現在では季節性インフルエンザとなり、前シーズン(2019年-2020年)には、米国におけるインフルエンザ発生件数の約25%を占めた。

COVID-19の感染者は2,400万人超、死者は82万人超、新規感染者数は頭打ちに

日本時間8月27日14時現在の米ジョンズ・ホプキンズ大学の集計では、全世界の感染者は2,417万6,836人、死者は82万5,696人に達している。

但し、新規感染者数の増加ペースは8月に入り、頭打ちになりつつある。

感染者トップは米国で、582万人超、ブラジルが371万人超、インドが331万人超、ロシアが96万人超、南アフリカが61万人超、ペルーが60万人超、メキシコが57万人超、コロンビアが57万人超、スペインが41万人超、チリが40万人超。

一方、死者は、米国が17万9千人超、ブラジルが11万7千人超、メキシコが6万2千人超、インドが6万人超、英国が4万1千人超の順。

COVID-19の感染動向を見極めるには、北半球の秋以降の状況、我が国の場合は気温の低下が予想される11月以降の状況が重要

足元では、南北アメリカ大陸が感染の中心地となり、新興国・発展途上国での感染拡大が顕著になっている。

人類の全人口の90%以上は北半球に居住しているが、現在の感染者上位10か国のうち、ブラジル、南アフリカ、ペルー、チリの4か国は南半球に位置している。

COVID-19の感染動向を見極めるには、北半球の秋以降の状況、我が国の場合は気温の低下が予想される11月以降の状況が重要となりそうだ。

秋には延期となっていた多くの新作映画の大作や注目作品の公開が予定

ここからは、恒例の映画特集。秋には、延期となっていた新作の大作や注目作品の公開が多数予定されており、映画ファンにとっては待ち遠しい限りだ。

前週末(8月22日-23日)の観客動員ランキングでは、前月号で特集した『糸』が初登場第1位に、第2位にも、やはり前月号で特集した『映画ドラえもん のび太の新恐竜』が入った(興行通信社調べ)。

第3位は『劇場版「Fate/stay night [Heaven's Feel]III.spring song」』、第4位は『2分の1の魔法』、第5位は『今日から俺は!!劇場版』となった。

初登場で第4位となった『2分の1の魔法』はディズニー&ピクサー最新作。『モンスターズ・ユニバーシティ』のダン・スキャンロン監督がメガホンをとった。

魔法によって半分だけ復活した父親を完全に甦らせるためエルフの兄弟の冒険が始まる。かつては魔法に満ちていたが、科学技術の進歩にともない魔法が忘れ去られてしまった世界。家族思いで優しいが、何をやっても上手くいかず、自分に自信のない少年イアンには、隠れた魔法の才能があった。そんなイアンの願いは、自分が生まれる前に亡くなってしまった父親に一目会うこと。16歳の誕生日に、亡き父が母に託した魔法の杖とともに、「父を24時間だけよみがえらせる魔法」を書かれた手紙を手にしたイアンは、早速その魔法を試すが失敗。父を半分だけの姿で復活させてしまう。イアンは魔法オタクで陽気な兄のバーリーとともに、父を復活させる魔法を探す旅に出るが。。。

既に鑑賞したが、2Dでも3Dのような立体感のある映像に加え、魔法と家族愛を描いたストーリーは大人も十分楽しめる作品に仕上がっていた。

8月下旬から9月に公開される新作の注目作品

以下では、8月下旬から9月にかけて公開される新作の注目作品を特集。

青くて痛くて脆い

『青くて痛くて脆い』
2020年8月28日全国東宝系にてロードショー
©2020映画「青くて痛くて脆い」製作委員会

8月28日公開の『青くて痛くて脆い』は、本コラムでも取り上げた実写とアニメで映画化された『君の膵臓をたべたい』の住野よる氏の同名青春サスペンス小説を吉沢亮さんと杉咲花さん主演で映画化。

人付き合いが苦手で、常に人と距離をとろうとする大学生・田端楓(吉沢亮)と空気の読めない発言ばかりで周囲から浮きまくっている秋好寿乃(杉咲花)。ひとりぼっち同士の2人は磁石のように惹かれ合い秘密結社サークル「モアイ」を作る。モアイは「世界を変える」という大それた目標を掲げボランティアやフリースクールなどの慈善活動をしていた。

周りからは理想論と馬鹿にされながらも、モアイは楓と秋好にとっての「大切な居場所」となっていた。しかし、秋好は「この世界」から、いなくなってしまった。秋好の存在亡き後、モアイは社会人とのコネ作りや企業への媚売りを目的とした意識高い系の就活サークルに成り下がってしまう。変わり果てた世界。取り残されてしまった楓の怒り、憎しみ、すべての歪んだ感情が暴走していく。アイツらをぶっ潰す。秋好を奪ったモアイをぶっ壊す。どんな手を使ってでも。楓は、秋好が叶えたかった夢を取り戻すために親友や後輩と手を組み「モアイ奪還計画」を企む。青春最後の革命が、いま始まる。

世界大戦をテーマとした大作が3本公開

9月11日公開の『ミッドウェイ』は、第2次世界大戦(太平洋戦争)のターニングポイントとなったミッドウェイ海戦を描いた戦争ドラマ。監督は『インデペンデンス・デイ』のローランド・エメリッヒ氏。

1941年12月7日、日本軍は戦争の早期終結を狙う連合艦隊司令官山本五十六の命により、真珠湾のアメリカ艦隊に攻撃を仕掛ける。大打撃を受けたアメリカ海軍はチェスター・ニミッツを新たな太平洋艦隊司令長官に任命。日米の攻防が激化する中、本土攻撃の脅威に焦る日本軍は、大戦力を投入した次なる戦いを計画する。真珠湾の反省から情報戦に注力するアメリカ軍は、その目的地をハワイ諸島北西のミッドウェイ島と分析し、全戦力を集中した逆襲に勝負をかける。そしてついに、空中・海上・海中のすべてが戦場となる3日間の壮絶な戦いが幕を開ける。

日本連合艦隊司令長官山本五十六海軍大将を豊川悦司さんが、第一航空艦隊司令長官南雲忠一中将を國村隼さんが、第二航空戦隊司令官山口多聞少将を浅野忠信さんが演じる。

本作品の特徴は史実、時系列に忠実なところと、暗号解読等情報戦に焦点を当てているところだ。これらは、現在の米中覇権争いや新型コロナ感染症対策にも通じるものがある。

9月18日公開の『TENET テネット』は、『ダークナイト』3部作や『インセプション』『インターステラー』の鬼才クリストファー・ノーラン監督によるオリジナル脚本のアクションサスペンス超大作。

主人公のミッションは、人類がずっと信じ続けてきた「現在から未来に進む」という時間のルールから脱出すること。時間に隠された衝撃の秘密を解き明かし、第三次世界大戦による人類滅亡の危機に立ち向かう姿を描く。

ミッションのキーワードは「TENET」。「その言葉の使い方次第で、未来が決まる」。突然、巨大な任務に巻き込まれた名もなき男は、任務を遂行する事が出来るのか?

主演は名優デンゼル・ワシントンさんの息子で、スパイク・リー監督がアカデミー脚色賞を受賞した『ブラック・クランズマン』で映画初主演を務めたジョン・デビッド・ワシントンさん。

9月25日公開の『キングスマン:ファースト・エージェント』は、本コラムでも特集を組んだ『キングスマン』と『キングスマン ゴールデン・サークル』に続くシリーズ3作目で、「キングスマン」の誕生秘話を描く。レイフ・ファインズさんとハリス・ディキンソンさんが新たなコンビを組んだ。

舞台は第1次世界大戦勃発の危機が迫る、ヨーロッパ。イギリス、ドイツ、ロシアと、大国間での陰謀が渦巻き不穏な空気が漂うなか、オックスフォード公(ファインズ)に連れられコンラッド(ディキンソン)が訪れたのは、高級紳士服テーラー「キングスマン」だった。世界の危機を前に、世界最強のスパイ組織が立ち上がる。

実は、『キングスマン:ファースト・エージェント』は第1次世界大戦を、『ミッドウェイ』は第2次世界大戦を、『TENET テネット』は第3次世界大戦をテーマにしたものだ。

8月15日は、我が国では終戦記念日(終戦の日)とされている。今から75年前の1945年8月15日正午、昭和天皇はラジオを通じ、日本の降伏を国民に伝えた。

満州事変から太平洋戦争までの15年に及んだ戦争による、我が国の戦没者は310万人余、その内訳は、軍人軍属230万人、沖縄住民をふくむ在外邦人30万人、内地での戦災死者50万人とされている(厚生省)。

想像したくはないが、仮に第3次世界大戦が勃発すれば、映画のように、人類滅亡の危機に瀕することになる。

1月23日、BASの終末時計が20秒進められ、ミッドナイト:人類滅亡まで残り100秒と過去最短に

実は、米核問題専門誌BAS(Bulletin of the Atomic Scientists)が発表しているいわゆる「終末時計(Doomsday Clock)」が本年1月23日、2年ぶりに20秒進められ、ミッドナイト:人類滅亡まで残り100秒となった。

2018年版と2019年版では、23時58分と「世界破滅2分前」と、東西冷戦下の1953年に、ソ連の独裁的指導者ヨシフ・スターリンが亡くなり、米ソの核ミサイルの照準が双方に向いた時以来の過去最短水準に並んでいたが、今年に入り、20秒進められ、単独過去最短となった。

BASは終末時計が進んだ背景として、人類は2つの脅威「核兵器」と「気候変動」に直面しているが、世界の指導者がそうした状況を容認していることを挙げている。

11月3日に予定されている米国の大統領選にはかつてない注目が集まることに

その後に発生した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックを受けて、世界全体の2020年のGDP成長率は、リーマンショック時を下回り、世界恐慌時以来の大幅なマイナス成長となる見通しだ。

過去最大規模の財政出動や金融緩和によって、足元の株価等は持ち直し、米国株等には過去最高値を更新するものも出てきているが、実体経済の本格回復には、ワクチンや特効薬の開発・量産が不可欠と考えられる。

世界恐慌は、ブロック経済化等を招き、第2次世界大戦の遠因ともなったが、今回もそうした道を進むか否かは、世界の指導者の姿勢に負うところも大きい。

そういう意味でも、11月3日に予定されている米国の大統領選にはかつてない注目が集まることになりそうだ。

末澤 豪謙 プロフィール

末澤 豪謙

1984年大阪大学法学部卒、三井銀行入行、1986年より債券ディーラー、債券セールス等経験後、1998年さくら証券シニアストラテジスト。同投資戦略室長、大和証券SMBC金融市場調査部長、SMBC日興証券金融市場調査部長等を経て、2012年よりチーフ債券ストラテジスト。2013年より金融財政アナリスト。2010年には行政刷新会議事業仕分け第3弾「特別会計」民間評価者(事業仕分け人)を務めた。財政制度等審議会委員、国の債務管理の在り方懇談会委員、地方債調査研究委員会委員。趣味は、映画鑑賞、水泳、スキューバダイビング、アニソンカラオケ等。

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