アナリストの忙中閑話【第116回】

アナリストの忙中閑話

(2021年1月21日)

【第116回】バイデン氏が第46代米大統領に就任、2度目の弾劾訴追と緊急事態宣言、バリアントに警戒、日本アニメの将来性

金融経済調査部 金融財政アナリスト 末澤 豪謙

ジョー・バイデン氏が第46代米大統領に就任、トランプ氏は就任式を欠席

米東部時間1月20日正午(日本時間21日午前2時)、ジョー・バイデン氏(Joseph R. Biden, Jr.)が宣誓し、第46代米大統領に就任した。78歳での就任は歴代最高齢。

バイデン氏は就任演説で、「米国を一つにまとめ、全ての国民を団結させることに全霊を捧げる」とし、「私は全ての米国人のための大統領になる。私を支持しなかった人々のためにも、支持してくれた人々と同じように懸命に闘うと誓う。」と、国民に団結を呼びかけた。また、「同盟を修復し、世界に再び関与する」と、国際協調路線への転換を表明した。

一方、前大統領の出席が慣例となっている連邦議事堂前での就任式に、ドナルド・トランプ氏は出席せず、ワシントンDC近郊のアンドルーズ空軍基地で支持者を前に小規模の退任式典を開催した後、フロリダ州の別宅に向かった。

大統領就任式に前大統領が欠席したのは第17代のアンドリュー・ジョンソン氏以来152年ぶり。同氏は初めて弾劾訴追された大統領であり、ポピュリストの面でもトランプ氏と共通点が多い。

なお、マイク・ペンス氏(前副大統領)は大統領就任式に出席した。

バイデン大統領は20日夕刻、ホワイトハウスに入り、執務を開始、早速、パリ協定への復帰や連邦政府内でのマスク着用義務化等の大統領令に署名した。

上下両院合同会議は1月7日未明に選挙人団の投票結果を認証、不誠実な選挙人は出現せず

就任に先立ち、1月6日に開催された米上下両院合同会議は、トランプ支持者による議事堂乱入事件で中断後、翌1月7日午前3時39分(現地時間)、2020年12月14日に選挙人団が次期正副大統領に投票した結果を認証している。

上院議長を兼ねるマイク・ペンス副大統領が報告した選挙結果は、大統領選がジョー・バイデン氏306票、ドナルド・トランプ(Donald J. Trump)氏232票となり、副大統領選がカマラ・ハリス(Kamala Harris)氏306票、マイク・ペンス(Michael R. Pence)232票と、何れも、2020年11月3日に実施された一般投票の結果通りとなった。

2016年の大統領選時は、一般投票結果がトランプ氏306票、ヒラリー・クリントン氏232票だったのに対し、選挙人団による正式な投票結果は、大統領選がトランプ氏304票、クリントン氏227票で、副大統領選がペンス氏305票、ティム・ケイン氏227票となり、いわゆる「不誠実な選挙人」が、大統領選では7人、副大統領選では6人出現した。

今回は両党とも、選挙人の人選やその後の締め付けを強化したことなどで、「不誠実な選挙人」は出現しなかったが、背景には、民主党と共和党の党派対立の深刻化も大きかったと言える。

バイデン氏が勝利したアリゾナ州及びペンシルベニア州の選挙人団の投票結果に一部の共和党議員が異議を唱え、採決に付されたが、反対多数で否決

選挙結果を不正として未だ敗北宣言を行わず、党派対立を煽り続けているトランプ大統領は、上下両院合同会議の中断を招くことになったトランプ支持者による連邦議事堂乱入事件を引き起こすことになったが、もう一点、歴史的な投票を引き起こしている。なお、乱入事件では5人の死者が発生。

それは、大接戦の末、バイデン氏が勝利したアリゾナ州及びペンシルベニア州の選挙人団の投票結果に一部の共和党議員が異議を唱え、上院、下院で別個に採決に付されたことだ。

異議は否決されたが、重複を除き、上院議員8人、下院議員139人、計147人の共和党議員が、明確にバイデン氏の勝利への異議を表明

アリゾナ州の異議への採決結果は、下院が賛成121(全て共和)、反対303(民主220、共和83)、棄権7(民主2、共和5)で、上院が賛成6(全て共和)、反対93(民主48、共和45)。

ペンシルベニア州への異議への採決結果は、下院が賛成138(全て共和)、反対282(民主218、共和64)、棄権11(民主4、共和7)で、上院が賛成7(全て共和)、反対92(民主48、共和44)。

何れも反対多数で、異議は否決された。但し、重複を除き、上院議員8人、下院議員139人、計147人の共和党議員が、明確に、バイデン氏の勝利への異議を表明したことになる。

米国内の分断の深刻さは、南北戦争以来か

連邦議会が選挙人団の投票結果に反対するのは今回が初めてではないが、これほどの人数の議員が反対するのは約150年ぶりとみられる。

米国内の分断の深刻さは、南北戦争(1861年4月12日-1865年5月9日)以来とも言える。

ジョー・バイデン新大統領にとって、分断された米国の修復と統一は容易ではない。

バイデン新大統領にとっては、「トリプルブルー」はバネに、就任後100日間に成果を出すことが重要

5日に決選投票が行われた米ジョージア州の二つの上院選(クラス2の定例選挙とクラス3の特別選挙)で民主党の2新人が共和党の2現職を破り、ホワイトハウスに加え、上下両院を民主党が多数派を占める「トリプルブルー」実現となったことをバネにして、2022年の中間選挙までに、どこまで、その公約を実現することが出来るかが極めて重要だろう。

特に、就任後100日間の「ハネムーン期間」に、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックの収束への道筋をつけ、米国のみならず、世界経済の回復に寄与できるか否かが鍵となりそうだ。

バイデン氏は14日、1.9兆ドル規模に上る新型コロナウイルス感染症に対する経済対策を発表

バイデン氏は14日、地元デラウェア州で演説し、総額1.9兆ドル規模に上る新型コロナウイルス感染症のパンデミックに対する経済対策を発表した。

なお、今回の対策は、COVID-19対策に的を絞ったバイデン氏の経済対策の第1弾で、クリーンエネルギープラン(気候変動対策)やインフラ投資等を含む広範な第2弾のプログラムは2月に発表される見通し。

現金給付1,400ドルを上乗せ、失業保険の追加給付を拡充、州・地方政府支援、公衆衛生対策等盛り込む

対策には、2020年12月27日に成立した「2021年統合歳出法」に規定された一人最大600ドルの現金給付に、今回1,400ドルを上乗せし、特定の所得水準を下回る人に計2,000ドルを送付する措置が盛り込まれた。予算規模は、NYTや民間シンクタンクの責任ある連邦予算委員会(CRFB)によると4,650億ドル(以下同じ)。

また、同法に盛り込まれた週300ドルの失業保険の追加給付は3月中旬に失効するが、緊急失業保険プログラムを週400ドルに増額し、9月末まで延長する。予算規模は最大3,500億ドル。

学校を安全に再開するために、1,700億ドルを投じる。うち、1,300億ドルを幼稚園から高校までの学校の再開に、残りはリモート授業など大学支援等に充てられる。

連邦の最低賃金を現在の7.25ドルから15ドルに引き上げる。

中小企業や州・地方政府・準州政府等のコミュニティーに4,400億ドルを支援する。うち、州・地方政府向け支援は3,500億ドル。

公衆衛生対策には1,600億ドルを投じる。ワクチン接種の支援に200億ドル。検査改善に500億ドル、その他機材・備品・緊急対応要員の配置等に400億ドルを充てる。また、有給休暇を拡充する。緊急休暇は9月まで継続。休暇手当や税額控除で支援。

育児税額控除を拡充する。最大1,200億ドル。

第5弾までのCOVID-19対策法の総額は、重複を除き、約3.4兆ドル、今回の対策を含めると、1年間で約5.3兆ドル規模に

既に、米国は、2020年3月以降、第5弾までのCOVID-19対策法を成立させている。その総額は、重複を除き、約3.4兆ドル。今回の対策を含めると、1年間で約5.3兆ドル規模に上る。

加えて、バイデン氏は、気候変動対策に4年で2兆ドル、インフラ整備に4年で7,000億ドル、育児・介護等に10年で7,750億ドルを投じ、メディケアの対象年齢を65歳から60歳に引き下げる等の公約を発表している。

これらは、長期的な政策となるため、一部は増税等で財源を賄うことが不可避だ。

オバマ政権発足時やトランプ政権発足時と比較すると、バイデン政権の議会の基盤は弱い

2020年11月3日の議会選では、民主党は下院で多数派を維持したが、獲得議席は2018年の中間選挙時よりも減少。上院はジョージア州の二つの決選投票を制し、民主50、共和50とし、上院議長を兼ねるカマラ・ハリス副大統領の一票で実質多数派を奪還したが、オバマ政権発足時やトランプ政権発足時と比較すると、バイデン政権の議会の基盤は弱い。

共和党内に異論が多い気候変動対策や増税等の第2弾を後回しに、今回、COVID-19対策に的を絞った対策を打ち出したのも、そうした議会の情勢が背景にありそうだ。

なお、バイデン氏は、ワクチンの1億回の投与等を、政権発足後の100日プランに盛り込んでいる。

今後の展開は共和党の対応次第で、大きく二つのシナリオに、超党派での早期成立か財政調整制度活用か

今後の展開だが、共和党の対応次第で、大きく、二つのシナリオに分かれそうだ。

まず、昨年3月から4月の第1〜第4弾までのCOVID対策法のように、超党派の賛成が得られる場合は、審議の迅速化手続きを進めることで、追加対策法が2月中にも成立する可能性がある。

一方、上院共和党執行部、具体的にはミッチ・マコネル院内総務が反対に回った場合は、議事妨害を排除するためのクローチャー動議の可決(可決要件5分の3)のため、共和党から10人の賛成を得る必要がある。数人ならともかく、10人の造反はハードルが高い。

この場合は、財政調整制度を使い、上下両院で予算決議を単純過半数で可決した後、上下両院で本採決を単純過半数で可決することになる。

バイデン氏は、まずは、超党派での成立を促すことに、米国内でのCOVID-19の感染急拡大が早期成立にプラスに働く可能性も

但し、与野党の対立で、議事促進等は出来ず、一定の時間を要することになる。上院でのトランプ大統領の弾劾裁判のスケジュールが障害となる可能性もある。

また、第2弾の経済対策の法案審議にも悪影響が及ぶことになることから、バイデン氏は、まずは、超党派での成立を促すことになりそうだ。

この場合、対策の中身が修正され、規模が縮小する可能性もある。

一方、足元、米国内でのCOVID-19の感染が、昨年超党派で対策法を成立させた時点を上回るほど拡大・悪化していることは、早期成立にプラスに働く可能性もありそうだ。

米国におけるCOVID-19の感染者累計は2,400万人、死者は40万人を超え、新規感染者数及び死者数は足元、最多ペース

米CDC(疾病管理予防センター)によると、1月19日現在で、COVID-19の感染者累計は2,413万5,690人、死者の累計は40万0,306人と、何れも世界最多だ。

北半球が真冬の現在、欧州やわが国でも感染が急拡大しているが、米国でも感染が急拡大、足元の新規感染者数の7日移動平均は20万人程度、死者数は3,000人台と、何れも過去最多ペースとなっている。

ワクチン接種に遅れ、いくつかの州では医療体制崩壊の危機に

米国では2020年12月上旬から、ワクチンの接種を開始、1月19日段階で、既に3,599万本が配布され、1回目の接種を受けた人が1,652万人に上るが、当初の目標は、2020年12月末までに2,000万人に接種であり、接種ペースは半分にも満たない。

計画の遅れから、2回目接種を遅らせ、1回目の接種を優先する方針だが、超低温での輸送・保管等の問題もあり、欧州でも、ワクチン接種には遅れがみられる。

気温・湿度・UV(紫外線)の低下により、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の半減期が長期化、つまり感染力が増している。ワクチン接種のスピードアップと、カリフォルニア州等いくつかの州では既に崩壊の危機に瀕している医療体制の維持・拡充が喫緊の課題だ。

米下院は1月13日、トランプ大統領に対する2度目の弾劾決議案を賛成多数で可決、共和党からも10人が賛成票を投じた

米議会下院は1月13日、トランプ大統領に対する2度目の弾劾訴追決議案を採決、賛成232、反対197、棄権4の賛成多数で可決した。

党派別内訳は、民主党は賛成222、反対0、棄権0、共和党は賛成10、反対197、棄権4。共和党は2019年12月の前回の弾劾訴追採決では、賛成は0だったが、今回は10人が賛成に回った。

決議案は、トランプ大統領が、大統領選挙人の投票結果を認証する6日の上下両院合同会議開催に際し、支持者に対し、連邦議事堂に向かうように呼び掛けたことなど、合衆国憲法修正第14条第3項に規定する「米国に対する反乱と反逆」に及んだとして、「反乱の扇動(INCITEMENT OF INSURRECTION)」を条項に挙げ、弾劾訴追する内容となっている。

トランプ氏は、政治家経験も軍人の経験もない初の大統領だが、在任中に2度、弾劾訴追を受けた大統領は過去おらず、新たな歴史を作った

大統領弾劾訴追は第45代のトランプ氏で3人目、残り二人は前述の第17代アンドリュー・ジョンソン氏(1868年)と第42代ビル・クリントン氏(1999年)。但し、ジョンンソン氏は党の指名得られず、再選不出馬。クリントン氏は2期目の訴追だった。

何れも無罪となったが、再選出馬したのはトランプ大統領が初。

トランプ氏は、政治家経験も軍人の経験もない初の大統領だが、在任中に2度、弾劾訴追を受けた大統領は過去おらず、新たな歴史を作ることになった。

なお、第1回目の弾劾は2019年12月18日に下院本会議で弾劾訴追採決が行われ、民主党の賛成多数で可決・弾劾訴追され、2020年1〜2月に上院で弾劾裁判が行われたが、2月5日に共和党の反対で否決された。

有罪判決には上院(定数100人)で出席議員の3分の2人の賛成が必要であり、今回も、上院での有罪判決のハードルは高い。

上院共和党トップのミッチ・マコネル院内総務が弾劾に賛成票を投じる可能性も

但し、上院共和党トップのミッチ・マコネル院内総務は、議事堂乱入事件に激怒し、弾劾に賛成する可能性も匂わせていると伝えられている(14日付けWP)。19日の上院での演説でも、乱入したトランプ氏の支持者らはトランプ氏によって挑発され、うそを吹き込まれていたと発言。

仮に、同氏が賛成票を投じることになれば、共和党議員の賛成ないし棄権が増え、3分の2の賛成で、有罪判決が下される可能性が高くなろう。

「核オプション」の行使で、米国の議会運営が歴史的な転換となる可能性も

副大統領に就任したハリス氏の辞任で、上院の構成は一時、民主党47、共和党50となったが、民主党のジョン・オソフ氏とラファエル・ウォーノック氏、ハリス氏の後任に指名されたカリフォルニア州の前州務長官のアレックス・パディラ氏が20日に宣誓就任したことで、上院の勢力は民主党50、共和党50となった。

マコネル氏の弾劾裁判に対する姿勢は、上院が建国以来の伝統的な全会一致原則に基づく超党派での政策決定に戻ることになるか、党派対立の激化で、いわゆる「核オプション」が行使されることになるかの試金石となりそうだ。

「核オプション」の行使、つまり、上院規則が改正され、クローチャー動議の可決要件が、大統領指名人事に続き、法案に関しても単純過半数に変更となれば、米国の議会運営は歴史的な転換となる。

弾劾裁判で有罪となり、上院の過半数の賛成で決議案を可決すれば、大統領選への出馬を阻むことが可能に

なお、トランプ氏が大統領退任後も弾劾裁判は可能とみられる。過去も閣僚では退任後、弾劾されたケースがある。仮に弾劾裁判で有罪となれば、上院の過半数の賛成で決議案を可決すれば、大統領選への出馬を阻むことが可能となる。

2度目の緊急事態宣言発令、対象は当初の1都3県が、1都2府8県に拡大

米大統領に対する2度目の弾劾訴追は史上初だが、我が国でも新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策で、政府は1月7日、昨年春に続き、2度目の緊急事態宣言を発令した。

新型インフルエンザ等特別措置法に基づくもので、東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県の1都3県が対象。

その後、13日には、大阪府、兵庫県、京都府、愛知県、岐阜県、福岡県、栃木県の2府5県が追加され、11都府県に拡大した。

なお、緊急事態宣言の期間は、2月7日まで。

1か月後の2月7日に宣言を終了できる可能性は現段階では低い

政府は、飲食店の午後8時までの営業時間短縮や、不要不急の外出の自粛、テレワークによる出勤者数の7割削減、それにイベントの人数制限などの措置の徹底を図ることにしているが、昨年春の1回目の緊急事態宣言後と比較すると、対象地域の人出は明らかに多いのが現実だ。

幅広い業種を対象にした昨年春と比較し、今回は時短要請等の対象が基本的に飲食店に限定されていることに加え、COVID-19感染拡大報道等への慣れや自粛疲れ等から、アナウンスメント効果も弱まっているのが背景にありそうだ。

菅首相は7日の会見で、「とにかく1か月で何としても感染拡大防止をしたい」とし、1か月後には必ず事態を改善させる決意を示したが、1か月後の2月7日に宣言を終了できる可能性は現段階では低いと言わざるを得ないだろう。

NHKの世論調査では88%が2月7日までに宣言は解除できないと回答

実際、NHKの世論調査(1月9-11日調査)でも、宣言の期間の来月7日までに宣言が解除できると思うかとの質問に対し、「できると思う」が6%、「できないと思う」が88%、「わからない、無回答」が7%と、大半の国民は宣言の効果に懐疑的な見方をしている。

感染症の感染拡大防止・抑制方策は古来、集団免疫の確保を除けば、基本的に、感染者の「隔離」のみ

感染症の感染拡大防止・抑制方策は、古来、集団免疫の確保を除けば、基本的に、感染者の「隔離」しかない。

現在では、ワクチン接種により、人為的に集団免疫を確保する手段があるものの、欧米でのワクチン接種の遅れ等を勘案すると、医療従事者を優先とした2月下旬開始と見込まれるわが国でのワクチン接種も予定通り進まず、一般接種が夏以降となる可能性は否定できない。

「検疫」の語源は「40日間」

英語で「検疫」を意味する「quarantine」は、イタリア語の「quarantena(検疫)」から来ているが、語源は「40日間」を意味する「quaranta giorni」だ。

ペストが大流行した際、疫病がオリエントから来た船より広がることに気づいたベネチアは、船内に感染者がいないことを確認するため、潜伏期間とされる40日間、疑わしい船を港の外に停泊させたことに由来している。

「人流」が宣言前と大きな変化がなければ、夜の会食の制限だけでは、新規感染者の大幅減少は期待できないだろう。

気温・湿度・UVの低下は、インフルエンザウイルスやコロナウイルスの感染力を高める

特に、気温・湿度・UV(紫外線)の低下は、インフルエンザウイルスやコロナウイルスの半減期が長期化する、つまり、感染力を強めることが確認されている。

気になるのが「バリアント」の発生

加えて、気になるのが「バリアント」の発生だ。

厚生労働省は18日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の患者4人から、「VOC-202012/01」と命名されている英国で流行しているのと同じ型の変異種(バリアント、変異株)が4例確認されたと発表した。

うち、東京都在住の20代男性は英国からの帰国者だが、何れも静岡県在住の20代女性と40代女性、60代の男性は、英国での滞在歴や入国者との接触はなく、感染経路が不明。国内では17日までに計41人の変異種感染が明らかになっているが、何れも感染経路は特定できていた。

既に、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の変異種「VOC-202012/01」の市中感染が発生している可能性がある。「VOC-202012/01」は「B.1.1.7」系統の新型コロナウイルス。

「VOC-202012/01」の発生経緯等

英国では、2020年12月以降、ロンドンを含むイングランド南東部でCOVID-19の症例が急激に増加しており、疫学的およびウイルス学的調査を強化してきた。そして、イングランド南東部で増加しているCOVID-19症例の多くが、新しい単一の系統に属していることが確認された。

VOC-202012/01には、23箇所の変異があり、「スパイクタンパク」の変異等により、感染力が高まり、伝播のしやすさ(transmissibility)が最大70%程度増加すると推定されている。

現時点では重症化を示唆するデータは確認されていないが、感染力の強い変異種が流行することになると、感染者が一段と増加するおそれがある。

静岡県に隣接する神奈川県や往来の多い東京都では、12月以降、感染者が急増しているが、季節要因、クリスマスや年末・年始の会食や人流の増加要因に加え、変異種の市中感染が影響していた可能性があり、疫学調査の拡大が必要だろう。

米国のCDCは15日、10州で変異種が確認されたと発表

米国のCDC(疾病管理予防センター)は15日、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のより感染力の強い変異種である「B.1.1.7」が米国の10州で確認されたと発表している(VOC-202012/01と同じ変異種)。

CDCによると、2020年12月14日、英国は新型コロナウイルスの変異種、Variant of Concern(VOC)、系統B.1.1.7(VOC202012 / 01または20I / 501Y.V1とも呼ばれる)を報告した。

B.1.1 .7変異種は、2020年9月に出現したと推定され、すぐに英国で主要な変異種となった。B.1.1.7は、米国を含む30か国以上で検出されており、2021年1月13日の時点で、米国の10州で76件のB.1.1.7が検出されている。20日時点では、20州で144件に増加。

米国では「B.1.1.7」が2021年初頭に急速な拡大を示し、3月には主要な変異種となる見通し

複数の証拠は、B.1.1.7が他の新型コロナウイルスの変異種よりも効率的に感染していることを示しているとし、CDCの流行モデルによると、2021年初頭に急速な拡大を示し、3月には主要な変異種となると予測されている。

新型コロナウイルスの感染の増加は、医療体制を脅かす可能性があるとともに、パンデミック対策に必要な集団免疫の割合を上昇させるとしている。

感染拡大防止策を講じることで、B.1.1.7の潜在的な影響を軽減し、ワクチン接種率を高めるための重要な時間を確保できるとし、予防接種、身体的距離、マスクの使用、手指衛生、隔離と検疫などの効果的な公衆衛生対策の継続的な遵守と組み合わされた強化されたゲノム監視は、新型コロナウイルスの拡散を制限するために不可欠としている。

南アフリカで最初に検出された「B.1.351」及びわが国の羽田空港で検出・識別された「P.1」にも注目、これらは感染力が強化

なお、CDCは、B.1.1.7変異種に加え、注目すべき変異種には、南アフリカで最初に検出されたB.1.351系統、及びわが国の羽田空港でブラジルからの4人の旅行者から検出・識別されたB.1.1.28系統(「P.1」に名前変更)を挙げている。

これらの変異種は、ウイルス侵入を促進するために宿主細胞のアンジオテンシン変換酵素2(ACE-2)受容体に結合するために不可欠なスパイクタンパク受容体結合ドメインを含む一連の遺伝子変異を持っており、データによると、伝達率を上昇させただけでなく、いくつかの診断キットの性能に影響を与える可能性が指摘されている。

英国発の「B.1.1.7」よりも、南アフリカ発の「B.1.351」やブラジル発の「P.1」に警戒要

実は、バリアント(変異種)に関しては、英国で確認された「B.1.1.7」よりも、南アフリカで確認された「B.1.351」及びブラジルで確認された「P.1」の方が脅威と考えられる。

というのは、南半球に位置する南アフリカやブラジルでは、北半球が真夏で当地が真冬である7月頃に新規感染者のピークをつけ、11月に向け減少していたが、当地が真夏となった12月に感染者が急増しているからだ。

特に、2種は年少者への感染力も強いとされ、ワクチンの効果にも懸念が示されている。

「P.1」の発生元とみられるブラジルのアマゾナス州では、昨年時点で大流行となり、州都マナウス(人口約206万人)では抗体保有者が住民の6割以上に達し、集団免疫が得られたとの見方もあった。但し、その後、変異種の感染が急拡大し、現在、再度、医療崩壊の危機に陥っている。

1月下旬に向けた新規感染者数や陽性率、重症者等の指標に注目

2020年12月以降、米国同様、我が国でも感染者が急増しているが、それまでに、B.1.1.7変異種「VOC-202012/01」の流行が拡大すると、一段の「感染爆発」が起きる可能性は否定できない。

既に各地で医療のひっ迫が伝えられているが、わが国は人口比でベッド数やCTの設置数は世界一だが、ICU病床数は欧米の数分の一に過ぎず、重症化率の高い高齢者の比率は断トツで世界一である。

年末・年始要因が剥落する一方で、7日発令の緊急事態宣言の効果が出始める1月下旬に向けた新規感染者数や陽性率、重症者等の指標に注目したい。

再度、新規感染者が増加に転じることになれば、2月7日までの宣言の延長に加え、一段の厳格化等が必要となろう。

仮に2月に入っても、感染に収束傾向が見られなければ、3月頃と見込まれる東京夏季オリンピック・パラリンピックの開催内容の決定(有観客で実施、無観客で実施、延期、中止)にも影響を及ぼす可能性が高そうだ。

バリアントが猛威を奮うことになれば、今春公開予定のハリウッドの大作映画は、昨年同様、公開延期となる可能性も

前月号でもお伝えしたように、COVID-19のパンデミックに伴いハリウッドの大作映画は2020年3月以降、軒並み公開延期となっており、昨年春以降に劇場公開された大作は、クリストファー・ノーラン監督の『TENET テネット』とDCの大作『ワンダーウーマン 1984』の2作のみ。

2020年4月公開予定が昨年秋に延期され、再度延期により、本年4月2日に全米公開予定している『007 ノー・タイム・トゥ・ダイ』も、前述のバリアント(変異株)の感染拡大で、秋への公開延期を検討していると、一部欧米メディアが報じている。

また、米ソニー・ピクチャーズは、3月2日に全米公開を予定していたマーベル・コミック原作の『モービウス』を10月8日に延期すると発表している。

バリアントが猛威を奮うことになれば、今春公開予定のハリウッドの大作映画は、昨年同様、公開延期となる可能性も否定できない。

邦画は『鬼滅の刃』が歴代興収ランキング第1位に

前週末(1月16日-17日)の観客動員ランキングでは、『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』が首位に返り咲いた。公開後12週連続で第1位となった後、『銀魂 THE FINAL』が初登場1位を獲得したが、僅か1週で奪還(興行通信社調べ、以下同じ)。

累計では動員2,644万人、興収361億円を突破。歴代興収ランキングでは『千と千尋の神隠し』の316.8億円を抜いて第1位の記録を更新中。

第2位は『銀魂 THE FINAL』、第3位は『映画えんとつ町のブベル』と、トップ3をアニメが占めた。

第4位は『新解釈・三國志』、第5位は『劇場版ポケットモンスター ココ』、第6位は『約束のネバーランド』と、何れも、11月号ないし12月号で特集した作品が入った。

これらの作品の印象を簡単に記すと、『銀魂 THE FINAL』は、『アベンジャーズ』シリーズのように、エンド・ロールの後が長いので、明るくなるまで席を立たないように注意したい。

また、やはり、コロナ禍の中、観客も平常心ではいられないのか、観客数は少ない中、すすり泣く声や笑い声が聞こえてくるのが特徴的。

筆者は、現在公開中の作品で泣いたことはないが、『新解釈・三國志』には笑わされた。勿論、マスク着用で。

邦画は引き続き新作が公開

昨年春の緊急事態宣言下では、映画館も一時休館となり、再開後、前後左右の座席を空けていたが、今回は8時までの閉館を除けば、通常通りの営業で飲食等も提供されている。

結果、邦画は引き続き新作が公開される予定だ。

1月22日公開の『さんかく窓の外側は夜』は、漫画家ヤマシタトモコ氏の同名コミックを岡田将生さんと志尊淳さんのダブル主演で実写映画化。「霊が視える男」と「霊を祓える男」の二人が怪奇事件に挑む除霊ミステリー。

書店で働く三角康介は、幼い頃から幽霊が視える特異体質に悩まされていた。ある日、書店に除霊師・冷川理人が現れる。「僕といれば怖くなくなりますよ」の一声で、一緒に除霊の仕事をすることに。そんな中、刑事・半澤から1年前に起きた未解決殺人事件の捜査協力を持ちかけられる。ストーリーの鍵を握る謎の女子高生・非浦英莉可役で、「欅坂46」脱退後初の映画出演となる平手友梨奈さんが共演。

ヤクザと家族 The Family

『ヤクザと家族 The Family』
2021年1月29日(金) 全国公開
©2021『ヤクザと家族 The Family』製作委員会

29日公開の『ヤクザと家族 The Family』は、ヤクザという生き方を選んだ男の3つの時代にわたる物語。荒れた少年期に地元の親分から手を差し伸べられ、父子の契りを結んだ男・山本。ヤクザの世界でのし上がる彼は、やがて愛する自分の「家族」とも出会う。ところが、暴対法の施行はヤクザのあり方を一変させ、因縁の敵との戦いの中、生き方を貫いていくことは一方でかけがえのないものを失うことになっていく。

主人公・山本役に今回初のヤクザ役となる綾野剛さん、山本に「家族」という居場所を与えた柴咲組組長・柴咲を、ヤクザ役は43年ぶりとなる舘ひろしさんが初共演。日本アカデミー賞最優秀作品賞を受賞した『新聞記者』の藤井道人監督がメガホンをとった。

2月5日公開の『ザ・ファブル 殺さない殺し屋』は、南勝久氏の人気コミックを岡田准一さん主演で実写映画化した「ザ・ファブル」のシリーズ第2作。

どんな相手も6秒以内に仕留める、伝説の殺し屋「ファブル」。 ある日、ボスから「一年間、誰も殺すな。一般人として普通に生きろ」と命じられ、佐藤アキラという偽名で、相棒・ヨウコと共に一般人のフリをして暮らし始める。猫舌で変わり者のアキラは、今日もバイト先の社長と同僚のミサキと関わりながら「プロの普通」を極めるため奮闘中。一方、この街では、表向きは子供を守るNPO代表だが、裏では緻密な計画で若者を殺す最狂の男・宇津帆が暗躍。凄腕の殺し屋・鈴木と共に、かつて弟を殺した因縁の敵・ファブルへの復讐に燃えていた。木村文乃さん、佐藤浩市さんら前作からのキャストに加え、宇津帆役の堤真一さん、ヒナコ役の平手友梨奈さん、殺し屋・鈴木役の安藤政信さんが新たに参加。

ファーストラヴ

『ファーストラヴ』
2021年2月11日(木・祝)ロードショー
©『ファーストラヴ』製作委員会

2月11日公開の『ファーストラヴ』は直木賞を受賞した島本理生氏の同名サスペンス小説を北川景さん子主演、堤幸彦監督で映画化。

川沿いを血まみれで歩く女子大生が逮捕された。殺されたのは彼女の父親。「動機はそちらで見つけてください。」容疑者・聖山環菜の挑発的な言葉が世間を騒がせていた。事件を取材する公認心理師・真壁由紀は、夫・我聞の弟で弁護士の庵野迦葉とともに彼女の本当の動機を探るため、面会を重ねる。二転三転する供述に翻弄され、真実が歪められる中で、由紀は環菜にどこか過去の自分と似た「何か」を感じ始めていた。そして自分の過去を知る迦葉の存在と、環菜の過去に振れたことをきっかけに、由紀は心の奥底に隠したはずの「ある記憶」と向き合うことになるのだが。

災い転じて福となす

COVID-19の感染拡大から、忘年会及び新年会は全て、オンライン飲み会にシフト、趣味の旅行も自粛で、このところ、映像配信サービスにお世話になる機会が増えている。

米テレビ映画では、かつて視聴をとん挫した『ウォーキング・デッド』を再鑑賞したが、気が滅入るので、『エクスパンス-巨獣めざめる-』に変更。但し、長過ぎて終わりそうにない。

代わりに、自称漫画アニメ・アナリストとして、『鬼滅の刃』では、流行に後れをとったので、創刊以来購読を続けている「週刊少年ジャンプ」で掲載中の『呪術廻戦』や連載がまもなく完結する『進撃の巨人』等を現在、視聴中。

漫画とアニメでは、こうも雰囲気が変わるのかと思ったのが、『呪術廻戦』。女性人気が高いとのことだが、鮮明な映像に加え、軽快な音楽の影響も大きそうだ。

それにしても、最近のヒット漫画は、やたら、「鬼」や「霊」「怪物」「お化け」「魔法使い」等、オカルト系が多い。筆者も嫌いではないが、元気が出るものや好奇心をくすぐられる作品も好きだ。

かつて、最高発行部数653万部を誇った「週刊少年ジャンプ」のキーワードは「友情」「努力」「勝利」だが、最近のヒット漫画はこのカテゴリーに必ずしもあてはまらないものも多い。

時代の閉そく感を反映しているのかもしれないが、一方で、個性や多様性が発現した結果かもしれない。

元々、我が国の漫画はアメコミに比べ、ストーリーが複雑で大人でも楽しめるものが多いが、現在では一段と進化したと前向きに捉えたい。証左として、今年、還暦を迎える筆者が言うのだから間違いない!?

まあ、米連邦議事堂への乱入事件のように、他人に迷惑をかけない程度で、個性を発揮することは、少子高齢化が進む我が国が国際競争力を確保する面でも必要だろう。

『鬼滅の刃』の大ヒットのように、コロナ禍は、映像配信サービスを活用した日本アニメの将来性を一気に高めたとも言える。

「災い転じて福となす」ではないが、好機を生かし、政府の本格的な支援も必要だろう。

ちなみに筆者のお薦めは『ONE PIECE』と『キングダム』。

末澤 豪謙 プロフィール

末澤 豪謙

1984年大阪大学法学部卒、三井銀行入行、1986年より債券ディーラー、債券セールス等経験後、1998年さくら証券シニアストラテジスト。大和証券SMBC金融市場調査部長、SMBC日興証券金融市場調査部長等を経て、2012年よりチーフ債券ストラテジスト。2013年より金融財政アナリスト。2010年には行政刷新会議事業仕分け第3弾「特別会計」民間評価者(事業仕分け人)を務めた。日経債券アナリストランキング、14年連続10位内ランクイン。日経財政アナリストランキング2位(2004年〜2006年)。財政制度等審議会委員、国の債務管理の在り方懇談会委員、地方債調査研究委員会委員。趣味は、映画鑑賞、水泳、スキューバダイビング、アニソンカラオケ等。

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