アナリストの忙中閑話【第118回】

(2021年3月25日)
【第118回】緊急事態宣言解除、伊仏は3度目のロックダウン、ドイツも延長、米国は映画館再開、V’対V”の攻防、さようなら、エヴァ
金融経済調査部 金融財政アナリスト 末澤 豪謙
3月21日、1都3県で緊急事態宣言が解除、桜は既に満開
昨年春に続き、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の緊急事態宣言が1月7日に発令され、その後2度にわたり延長されていた東京、埼玉、千葉、神奈川の1都3県で、3月21日(日)をもって、宣言が解除された。
気象庁は22日、東京都心で桜(ソメイヨシノ)が満開を迎えたと発表した。本来なら花見酒と行きたいところだが、今年はそうもいかない。
世界でのCOVID-19の新規感染者のピークは1月初旬だが、既に反転増加
世界でのCOVID-19の新規感染者のピークはわが国同様、1月初旬だが、欧州やブラジル等では既に、感染者の減少傾向が止まり、反転増加に転じている。
WHO(世界保健機関)の統計でも、週次の新規感染者数は1月4日をピークに6週連続で減少していたが、2月15日をボトムに今度は4週連続で増加に転じている。
メルケル首相は「B.1.1.7」の侵入により、症例数が指数関数的に増加していると指摘
感染拡大が深刻なのは欧州だ。
ドイツのアンゲラ・メルケル首相は3月23日の記者会見で、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大防止のため、昨年11月以来実施しているロックダウン(都市封鎖)の期限を従来の3月28日から4月18日まで延長すると発表した。
22日午後から、各州政府と協議していたが、一部の州の首相が厳格なロックダウンに反対、決着は23日未明にずれ込んだ。
メルケル首相は会見で、英国由来で、特に感染力の強い「Virusvariante B.1.1.7」の侵入により、症例数が指数関数的に増加していると指摘した。「Virusvariante」はドイツ語で変異ウイルスを意味する。
「私たちは第3の波にいます。状況は深刻です」(独政府HP)と首相は述べ、「イースター(復活祭の休息)期間中の聖木曜日と復活祭の土曜日は、広範な接触制限のある休息日でなければなりません。『私たちは家にとどまる』という原則は、イースターの5日間に適用されます」と強調した。
しかし、イースター期間中の厳格なロックダウンは、1日後の24日には撤回された。急な実施を巡り混乱が生じたため。メルケル首相は国民への謝罪に追い込まれた。なお、延長は維持。
ドイツでは感染第2波が長期化、ロックダウンは5ヶ月近くに
ドイツでは多数のICU等を保有するなど、充実した医療体制等を背景に、欧州を2020年春に襲った「感染第1波」では、周辺諸国に比較し、感染者も死者も低く抑えられ、「優等生」と評された。
但し、2020年秋の「感染第2波」では、経済への悪影響への懸念や気の緩みから、感染防止策が不十分となり、感染者と死者が急増、2021年明け後は、一旦、減少に転じたものの、3月に入り、英国由来の変異株の感染が拡大し、再度、感染者が急増している。ロックダウンも緩やかながら、既に5ヶ月近くに及んでいる。
ドイツでは9月に連邦議会の総選挙が予定されている。メルケル首相は出馬せず政界を引退するが、COVID対策の躓きで、政権与党には逆風が吹き、緑の党が台風の目になる勢いだ。
イタリア、フランス等、多くの欧州大陸諸国で、感染者が再拡大、リバウンドには、バリアント(変異株)の感染拡大が影響
感染者の急増でロックダウンを再開したのは、イタリアやフランスなど、他の欧州大陸諸国も同様だ。
イタリアでは、感染者の増加を受けて、15日から、3度目のロックダウンに入った。フランスも20日から、3度目のロックダウンに入った。
イタリアやフランス、ブラジル等、多くの国での感染者の再拡大、リバウンドには、バリアント(変異株)の感染拡大が影響している。イタリアでは足元、英国由来のバリアント「B.1.1.7」の感染が急拡大している。フランスでも、現時点で「B.1.1.7」が感染者全体の75%を占めている。
WHOのテドロス事務局長も、リバウンドの背景として、変異株、公衆衛生措置の緩和、人々の慣れを指摘している。
ウイルスには国境はなく、変異株は米国やわが国を含め、世界中で確認されていることから、今後、わが国でも、欧州のように、リバウンドが本格化する可能性は否定できない。
米国では、足元、新規感染者数は下げ止まりつつあるが、明確に反転増加に転じた訳ではない、背景にワクチン接種の影響も
こうした中、世界最大の感染者・死者を出している米国では、足元、新規感染者数は下げ止まりつつあるが、明確に反転増加に転じた訳ではない。
欧州でも、「B.1.1.7」の由来国とされる英国では、1月上旬をピークに減少、足元では横ばい圏にあり、増加に転ずる兆しはみられていない。
背景には、やはり、ワクチン接種率が関係している可能性がありそうだ。
3月23日現在の人口100人当たりワクチンの接種回数を比較すると、英国の45.21回、米国の38.34回に対し、イタリアは13.66回、ドイツは13.26回、フランスは12.96回と、英米と伊独仏では約3倍の開きがある(Our World in Data)。
ちなみに、米国のワクチン接種の実数はCDC(疾病管理予防センター)によると、3月24日現在、1億3,047万回で、うち1回接種が8,547万人、2回の完全接種が4,636万人に達している。
バリアントは増加継続、CDCは、バリアントを3種に分類
バリアント「B.1.1.7」には、基本的に既存のワクチンの効果が認められており、少なくとも、「B.1.1.7」の感染拡大防止には一定の効果が発揮されている可能性が高そうだ。
但し、バリアントの種類はどんどん増えている。特に「E484K」と呼ばれる逃避変異を持ったバリアントには既存のワクチンの効果が減殺する可能性も指摘されている。
なお、CDCは、バリアントを3種に分類している。「関心あるバリアント(VOI)」、「懸念すべきバリアント(VOC)」、「重大被害をもたらすバリアント(VOHC)」の3種だ。
現時点での分類は以下の通り(図表1)。
今後も、感染者の増加に伴い、変異の機会が増加することから、新たな変異をもったバリアントの出現も予想され、重大被害をもたらすとするVOHCが出現する可能性も否定できない。
図表1. バリアントの分類
関心あるバリアント(VOI) | 最初の検出 | E484K変異 |
---|---|---|
B.1.526 | 米NY(2020年11月) | 一部 |
B.1.525 | 米NY(2020年12月) | 〇 |
P.2 | ブラジル(2020年4月) |
懸念すべきバリアント(VOC) | ||
---|---|---|
B.1.1.7 | 英国 | 一部 |
P.1 | 日本/ブラジル | 〇 |
B.1.351 | 南アフリカ | 〇 |
B.1.427 | 米カリフォルニア | |
B.1.429 | 米カリフォルニア |
重大被害をもたらすバリアント(VOHC) | ||
---|---|---|
未確認 |
出所:CDC資料よりSMBC日興証券作成
なお、最近、米カリフォルニアで確認された、「B.1.427」及び「B.1.429」は、「懸念すべきバリアント(VOC)」に分類された。VOCは重要な変異株のうち、特に感染力が強い、重篤な症状を引き起こすなどの特徴がある場合に認定される。
なお、CDCによると、「B.1.1.7」も一部で「E484K」変異が確認されているとのことだが、「B.1.351」や「P.1」と比較すると、大部分の「B.1.1.7」に対し、ワクチンの効果は認められているようだ。
北半球に春到来、気温・湿度・UVの上昇で、本来、感染力は弱まるはずだが、バリアントには夏の感染拡大の事例も
既に、北半球は春に入り、我が国でも今年は、気温が急上昇している。
気温・湿度・UV(紫外線)の上昇で、本来、コロナウイルスやインフルエンザウイルスの感染力は弱まるはずだが、南アフリカ由来のバリアント「B.1.351」やブラジル由来の「P.1」は南半球の夏に感染が急拡大しており、既存株を大きく上回る感染力を持っている可能性がある。
対COVID戦争は「V対L」から「V’対V”」の攻防に変化
前月号でも述べたが、世界的に、対COVID戦争は、2020年のウイルス(VIRUS)とロックダウン(LOCKDOWN)の攻防、「V対L」の攻防が、今年は、ウイルスとワクチン(VACCINE)の攻防、「V対V’」の攻防に変化、今後は、ワクチンとバリアント(VARIANT)の攻防、「V’対V”」の本格的な攻防への変化が予想される。
今回の緊急事態宣言の解除の評価も、バリアントの感染拡大動向に負うところが大きくなりそうだ。
暫くは、世界、また、我が国の感染動向を注視する必要があろう。
米国から1年ぶりに映画に関する明るい話題届く
但し、米国で感染がやや沈静化したことで、久しぶりに映画の本場から、映画に関する明るい話題が届いた。
一つ目は映画館の再開だ。
米国では昨年春以来、COVID-19の感染拡大を受けて、ニューヨークやロサンゼルスでは映画館が休館となっていた。
ニューヨークでは3月5日、1年ぶりに映画館が再開された。但し、観客は25%かつ1スクリーンあたり50人以下に制限されている。なお、ブロードウェーミュージカルの通常公演の再開は6月になる見通し。
一方、ロサンゼルスでも映画館が15日、1年ぶりに営業を再開した。郡当局は感染予防対策として、1回の上映で収容人数を25%以下、または1スクリーンあたり最大100人までと上限を定めており、座席指定する際は他の観客と隣り合わせにならないよう間隔を空ける対策が取られている。
米国では映画興収は、ロサンゼルスが第1位、ニューヨークが第2位で、正常化への大きな一歩と言える。
第93回アカデミー賞のノミネーション発表
奇しくも、ロサンゼルスで映画館が再開された15日には、米映画芸術科学アカデミーによって、第93回アカデミー賞のノミネーション(候補)が発表された。
作品賞、主演男優賞、監督賞など最多10部門にノミネートされたのは、脚本家のハーマン・J・マンキーウィッツが1941年公開の『市民ケーン』を生み出すまでを描いた『Mank/マンク』。
次いで、6部門にノミネートされたのは、『ノマドランド』、『ファーザー』、『ミナリ』、『サウンド・オブ・メタル 〜聞こえるということ〜』、『Judas and the Black Messiah(原題)』、『シカゴ7裁判』。
『ノマドランド』(3月26日公開)は現代のノマド(遊牧民)として季節労働の現場を渡り歩く女性を描いた作品。監督のクロエ・ジャオ氏は中国系女性。同作品は、第78回ゴールデングローブ賞映画部門のドラマ部門作品賞を受賞。
韓国系米国人のリー・アイザック・チョン監督の『ミナリ』(公開中)は、米国に移住した韓国人一家を描いた作品。ゴールデングローブ賞では外国語映画賞を受賞。
昨年の『パラサイト 半地下の家族』に続き、アジア勢の受賞なるか。授賞式は4月25日に、開催される。
第44回日本アカデミー賞の授賞式開催
一方、第44回日本アカデミー賞の授賞式が3月19日、東京のグランドプリンスホテル新高輪で開催され、内田英治監督の『ミッドナイトスワン』が最優秀作品賞に輝いた。
最優秀主演男優賞は同作出演の草g剛さんが初めて受賞。
最優秀主演女優賞は『MOTHER マザー』(大森立嗣監督)で長澤まさみさんが、やはり初受賞。
『Fukushima 50』が、若松節朗監督の最優秀監督賞、渡辺謙さんの最優秀助演男優賞など最多6冠を制した。
また、1月時点で興行収入365億5,000万円と、日本の歴代最高興収記録を更新したアニメ映画『劇場版 鬼滅の刃 無限列車編』(外崎春雄監督)が最優秀アニメーション作品賞、話題賞作品部門、最優秀音楽賞の3冠を受賞した。
さようなら、全てのエヴァンゲリオン
前週末(3月20日-21日)の映画の観客動員ランキングでは、『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』(東宝/東映/カラー)が2週連続で第1位を獲得した(興行通信社調べ、以下同じ)。21日段階で、累計動員322万人、興収49億円を突破。
汎用ヒト型決戦兵器「エヴァンゲリオン」のパイロットとして謎の敵「使徒」に立ち向かう少年少女たちの戦いを描き、1990年代後半に社会現象を巻き起こした庵野秀明監督による伝説のSFアニメ「新世紀エヴァンゲリオン」の劇場版の新作。
2007年公開の『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』、2009年公開の『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』、2012年公開の『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』に続く、『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』シリーズ4部作の完結編となる。
引き続き庵野監督が企画・原作・脚本・総監督を務め、監督は鶴巻和哉氏、中山勝一氏、前田真宏氏の3氏が担当した。
なお、タイトルの最後についている「:||」は、反復終了を意味する演奏記号とみられ、1995年から1996年にTV放映された「新世紀エヴァンゲリオン」シリーズやその後の劇場版2作を含めた「エヴァンゲリオン」シリーズ全体の集大成で本作の最後に表れる文字通りの「終劇」を意味するものと考えられる。
本作は完結編だけあって、様々な面で、過去の作品とは異なっている。
4部作でありながら、本作だけが、「ヱヴァンゲリヲン」ではなく、「エヴァンゲリオン」とTVシリーズの表記に戻り、上映時間も『序』の98分、『破』の108分、『Q』の95分に対し、本作は155分と圧倒的に長い。
公開時期も、2年から3年置きに公開してきた3部と異なり、今回は『Q』の公開から8年以上経過している。
当初の公開予定日は2020年6月27日だったが、COVID-19のパンデミックにより、2021年1月に延期。さらに、前述の緊急事態宣言の発令に伴う再延期を経て、3月8日(月)と異例の月曜公開となった。
しかも、東京などでは21日まで、20時上映終了のため、最終回の上映開始が17時10分頃と、サラリーマンなどにとって平日の鑑賞は厳しい状況が続いていた。今週から21時終了に変更。
映像表現も前作までと比較し、CGを多用、最後の場面では一部実写となり、庵野氏の故郷、山口県宇部市が登場するなど、過去の作品とは趣も異なっている。
また、絵コンテを作成せず、代わりにモーションキャプチャーを利用し、実写の動きを参考にするなど、アングル・構図に従来以上の精力を注いでいるのも特徴。
オープニングも異色だ。東宝と東映、そして、庵野氏が社長を務める株式会社カラーのロゴが続く。最近のハリウッド映画では、複数の大手映画会社のロゴが続くのは珍しくないが、邦画で東宝と東映が同居するのはあまり見たことがない。
エンディング・クレジットもハリウッド映画並みに長いが、宇多田ヒカルさんの名曲が沁み入り、ずっと聞いていたい気分になる。
「ネタばれ」となるので、ストーリーの詳細は語れないが、過去の作品で生じた「もやもや」の大半を解消してくれる完結編にふさわしい素晴らしい出来の作品だ。
同シリーズは元々、謎の多い作品であるが、本作は総監督の庵野氏の半生の集大成でもあることが、8日の公開以来2度の作品鑑賞で、筆者なりに理解しかかっていた。
その思いが確認されたのが、NHKが3月22日に放送した「プロフェッショナル、仕事の流儀『庵野秀明スペシャル』」だ。
通常45分の番組が今回は75分に延長して放映された。
番組史上最長の4年、1214日にわたった密着取材の中で、庵野氏は少年時代の家庭環境等を含め、過去の半生を赤裸々にさらす。テレビシリーズ終了後、2度、自殺を考え、新劇場版の3作品制作後にはうつ病になったことも。
番組で見る限り、本作の制作過程は、極めて斬新なるも、職人技、伝統技能の領域にあり、ディズニーやピクサーの制作手法とは大きく異なる。
ちなみに、ディズニーの新作『ラーヤと龍の王国』(公開中)は、ほぼ全編、リモートワークで制作されたとのことだが、エヴァシリーズでは不可能だろう。
やはり、手塚治虫氏や、庵野氏が師と仰ぐ、宮崎駿氏の制作スタイルに近そうだ。
庵野氏は、筆者が20世紀の日本アニメ映画のナンバー1と評価している1984年公開の『風の谷のナウシカ』では、巨神兵がオウムの大群を攻撃するシーンを担当している。
庵野氏は1960年5月生まれの60歳。筆者の1つ年上だが、心は10代の少年のままなのかもしれない。ちなみに、肉も魚も食さず、野菜に加え、お菓子が主食に近いようだ。
庵野氏は番組の中で「作品至上主義。自分の命より作品の方が上。自分がこれで死んでもいいから作品をあげたい」と語る。
その庵野氏が、密着取材を初めて受けた理由について「商売しようと思って。謎に包まれたままだと置いていかれちゃう。謎に包まれたものを喜ぶ人が少なくなってきてる」と答えている。
2016年公開の『シン・ゴジラ』の大ヒットで、実写映画でも高い評価を受けた庵野監督だが、社長業は思いのほか大変なのかもしれない(株式会社カラーは2006年設立)。
番組の冒頭のナレーションは、「密着を始めてまもなく、私達は悟った。この男に、安易に手を出すべきではなかったと」で始まり、最後に、恒例の「プロフェッショナルとは?」という質問に対し、庵野氏は「考えたことがない」「そもそも、この番組、その言葉が付いているのが僕、嫌いなんです。他のタイトルにしてほしかった」で終わる。
映画同様、庵野氏のドキュメンタリーは相当異色だ。
前週末の観客動員ランキング2位以下
前週末の観客動員ランキングに戻ると、第2位には前月号で特集した『奥様は、取り扱い注意』が初登場ランクイン。綾瀬はるかさんのアクションシーンは見もの。
第3位の『トムとジェリー』は、誕生から80周年を迎える人気アニメのキャラクターを実写映像と融合させた作品。
第4位は、人気アニメ「プリキュア」劇場版シリーズ29作目となる『映画 ヒーリングっど・プリキュア ゆめのまちでキュン!っとGoGo!大変身!!』
『ブレイブ -群青戦記-』
全国東宝系にてロードショー
©2021「ブレイブ -群青戦記-」製作委員会
©笠原真樹/集英社
第5位は、前月号で特集した『ブレイブ -群青戦記-』。同作には、松平元康(徳川家康)役で三浦春馬さんも出演、際立った存在感を発揮しているが、誠に残念としか言いようがない。
今春には話題作が続々公開
『騙し絵の牙』
3月26日(金)全国公開
©2021「騙し絵の牙」製作委員会
3月26日公開の『騙し絵の牙』は、「罪の声」などで知られる作家の塩田武士氏が大泉洋さんをイメージして主人公を「あてがき」した小説を、大泉洋さん主演で映画化した作品。
大手出版社「薫風社」に激震走る。かねてからの出版不況に加えて創業一族の社長が急逝、次期社長を巡って権力争いが勃発。専務・東松が進める大改革で、雑誌は次々と廃刊のピンチに。会社のお荷物雑誌「トリニティ」の変わり者編集長・速水も、無理難題を押し付けられて窮地に立たされる。が、この一見頼りない男、実は笑顔の裏にとんでもない「牙」を秘めていた。嘘、裏切り、リーク、告発。クセモノ揃いの上層部・作家・同僚たちの陰謀が渦巻く中、新人編集者・高野を巻き込んだ速水の生き残りを賭けた「大逆転」の奇策とは。
同じく26日公開の『モンスターハンター』は、2004年の第1作発売以降シリーズ累計6,500万本を売り上げたカプコンの大ヒットゲームシリーズ「モンスターハンター」をハリウッドで実写映画化。やはり、カプコンの人気ゲームを原作とした『バイオハザード』シリーズの主演ミラ・ジョボビッチさんとポール・W・Sアンダーソン監督の夫妻タッグ再来。日本からは山崎紘菜さんが参加。
作戦行動中に砂漠で消息を絶った偵察小隊。その探索に当たっていたアルテミス率いる特殊部隊は、突然、激しい砂嵐に飲み込まれてしまう。砂嵐が去った後、彼らの眼前に現れたのは、未知なる世界の光景とありえないサイズの超巨大モンスター。近代兵器が通用しないモンスターの猛攻に、小隊は全滅寸前にまで追い込まれる。絶体絶命の危機を救ったのは、見慣れぬ装備を身にまとい、巨大な剣を携えた一人の男。彼はモンスターを狩るために戦う者=モンスターハンターであった。
アルテミス達はなぜ、モンスターが跋扈する世界にやって来たのか?元の世界に戻る方法はあるのか?すべての真実を知るためには、次々襲来する巨大モンスター達を倒し、生き残るしかない。狩るのは人間か?モンスターか?究極のサバイバルがいま始まる。
『テスラ エジソンが恐れた天才』
ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次ロードショー
©Nikola Productions, Inc. 2020
同じく26日公開の『テスラ エジソンが恐れた天才』(原題: Tesla)は、イーサン・ホークさんが、孤高の発明家ニコラ・テスラを演じた伝記映画。電流戦争(カレント・ウォー)でエジソンに勝利しながらも、天才であるがゆえに孤独な人生を歩んだテスラの半生を描く。
本コラムでも特集した2020年公開の『エジソンズ・ゲーム』(原題:The Current War)と見比べてみるのも面白そうだ。
なお、24日、暗号資産ビットコインで電気自動車(EV)の購入が可能になった米新興自動車メーカーの社名の由来でもある。
1884年、移民としてニューヨークへきて、憧れのエジソンのもとで働き始めたテスラだが、直流か交流かで対立し訣別する。独立したテスラは、実業家ウェスティングハウスと手を組み、シカゴ万国博覧会でエジソンを叩きのめす。時代の寵児となったテスラは、大財閥JPモルガンの娘アンと交流し、モルガンから莫大な資金を得て、「無線」の実現に挑戦する。だが、研究一筋の繊細な心が、実業界や社交界と不協和音を立て始める。
『名探偵コナン 緋色の弾丸』
全国東宝系にて近日公開
©2020 青山剛昌/名探偵コナン製作委員会
4月16日公開の『名探偵コナン 緋色の弾丸』は、当初の公開予定日は2020年4月17日で、ちょうど1年遅れの公開となる。
青山剛昌氏の人気コミックをアニメ化した大ヒットシリーズ「名探偵コナン」の劇場版24作目。
4年に一度の世界最大のスポーツの祭典「WSG:ワールド・スポーツ・ゲームス」の記念すべき東京開催を迎えようとしている日本。その開会式に合わせて、日本の技術を総結集した最高時速1,000キロを誇る世界初の「真空超伝導リニア」が開通することが発表された。世界中から注目を集める中、パーティ会場で企業のトップが相次いで拉致される事件が発生。そして、その裏には事件を監視する赤井秀一と、彼の指令を待つFBIの姿があった。
FBI捜査官・赤井秀一が、シリーズ20作目『純黒の悪夢(ナイトメア)』以来となる劇場版に登場。さらに、赤井の弟でプロ棋士の羽田秀吉、女子高生探偵の妹・世良真純、3人の母親で「領域外の妹」と名乗る謎の女性メアリーも登場、「赤井ファミリー」が集結する。ちなみに、赤井秀一の声を演じるのは池田秀一さん。言わずと知れたことだが、「赤い彗星」ことシャア・アズナブル役で有名な声優だ。
3月11日には、1.9兆ドル規模の「2021年米国救済計画法」が成立、米国のCOVID対策は総額6兆ドル規模に
3月11日には、1.9兆ドル規模の「2021年米国救済計画法: American Rescue Plan Act of 2021」が成立した。
これで、米国におけるCOVID対策の総額は1年で6兆ドル規模、重複を除いても5.4兆ドル規模に達した。
加えて、3月22日付けの米紙、ニューヨーク・タイムズ(NYT)とワシントン・ポスト(WP)は、何れも、バイデン政権が3兆ドル規模の第2弾の経済対策を準備していると報じている。
両紙の記事の内容は若干異なるが、バイデン氏が大統領選の公約に掲げた「Build Back Better(より良い再建)」を具体化するもので、「Build Back Better Recovery Plan」と命名されている。
NYTによると、それらの対策の総額は4兆ドルに近づき、税額控除の延長等を含めると、数千億ドルが上乗せされる可能性があるとしている。
第2弾の対策では、財源として、増税等も検討されると見込まれるが、既に、2021会計年度の米政府債務残高(パブリック・デット)の対GDP比は第2次世界大戦後のトルーマン政権下の1946年度に記録した106%を超える見通しとなっている。
国内でも、2020年度は未曾有・空前絶後の財政出動が実施された。
「なんでもあり」の世界的風潮が「セカンド・インパクト」を引き起こすことにならないか心配
COVID-19パンデミックは、1918-1920年のスペイン風邪(H1N1インフルエンザウイルス)パンデミック以来の規模で、2020年の世界の成長率も、1929年に始まった大恐慌(Great Depression)以来のマイナス幅となった可能性がある。
最近は、映画と現実が混同するような事態が続いており、大規模な金融緩和や多額の財政出動もやむを得ない面はある。
但し、「なんでもあり」の世界的風潮が、将来的に、重大な副反応、言わば「セカンド・インパクト」を引き起こすことにならないか、老婆心、もとい老爺心ながら、やや心配ではある。
末澤 豪謙 プロフィール
1984年大阪大学法学部卒、三井銀行入行、1986年より債券ディーラー、債券セールス等経験後、1998年さくら証券シニアストラテジスト。同投資戦略室長、大和証券SMBC金融市場調査部長、SMBC日興証券金融市場調査部長等を経て、2012年よりチーフ債券ストラテジスト。2013年より金融財政アナリスト。2010年には行政刷新会議事業仕分け第3弾「特別会計」民間評価者(事業仕分け人)を務めた。財政制度等審議会委員、国の債務管理の在り方懇談会委員、地方債調査研究委員会委員。趣味は、映画鑑賞、水泳、スキューバダイビング、アニソンカラオケ等。