アナリストの忙中閑話【第125回】

(2021年10月21日)
【第125回】史上最短の決戦、若者の投票率は上昇するか、地震・噴火にラニーニャ、大作公開と制限緩和で映画館は活況
金融経済調査部 金融財政アナリスト 末澤 豪謙
第49回衆議院議員総選挙公示、31日の投開票に向けて選挙戦スタート、今回は「史上最短の決戦」
10月19日、第49回衆議院議員総選挙が公示され、31日の投開票に向けて12日間の選挙戦がスタートした。衆院総選挙は2017年10月以来4年ぶり。
第2次世界大戦時のノルマンディー上陸作戦の別称は「史上最大の作戦」だが、今回は「史上最短の決戦」と言えそうだ。
10月4日の岸田内閣発足から14日の解散までの期間は10日間で、現行憲法下で最短。過去、首相就任から解散までの期間が最も短かったのは1954年12月10日に就任し55年1月24日に解散した第1次鳩山一郎内閣の45日だ。今回は最短記録を大幅に更新した。
また、14日の解散から31日の投開票日までの期間は17日間でやはり、現行憲法下で最短だ。1983年の第1次中曽根内閣での20日間を抜いて超短期決戦となる。
戦前の旧憲法下では、大正時代までは解散から投票日まで2-3か月のケースが多く、昭和以降も1か月が標準で、今回の衆院解散総選挙は「史上最短の選挙戦」となる。
自民党総裁選で岸田氏が完勝、第100代内閣総理大臣に指名
時計の針をやや戻すと、9月29日午後に行われた自由民主党総裁選では、予想通り、第1回投票で過半数を得る候補者が現れず、岸田文雄前政調会長(64)と河野太郎規制改革担当相(58)が決選投票に進み、国会議員票で優勢な岸田氏が勝利し、第27代総裁に選出された。
但し、予想と異なったのは、第1回投票でも、僅か1票差ではあるが、岸田氏が河野氏を上回り、完全勝利となったことだ。
第1回投票で、岸田氏は国会議員票146票、党員算定票110票の合計256票でトップに、一方、河野氏は党員算定票では169票で1位となったが、国会議員票が86票にとどまり、合計255票と、2位に甘んじることとなった。
決選投票では岸田氏の国会議員票が一段と増加、国会議員票249票、都道府県票8票の計257票と、河野氏(131票、39票の計170票)に1.5倍の票差、国会議員票では1.9倍の票差をつけて勝利することになった。
岸田氏は10月4日、衆参両院の首班指名選挙で第100代内閣総理大臣に指名された。
岸田首相の勝敗ラインは与党で過半数(233議席)確保、野党5党は小選挙区の7割超で候補者一本化
衆院選では計465議席(小選挙区289、比例代表176)が争われる。公示前勢力は与党が自民276、公明29の305議席、野党は立民110議席、共産党12議席、日本維新の会11議席、国民民主党8議席などとなっている。
首相は勝敗ラインとして自公の与党で過半数(233議席)確保を掲げる。一方、野党サイドでは、立民が共産、国民、れいわ新選組、社民党と選挙協力を進め、210程度と、小選挙区289の7割超の選挙区で候補者を一本化。
安倍元首相の奇襲攻撃的な解散となった2014年、小池新党「希望の党」結成とその後の混乱下での「立憲民主党」の創設等、野党の選挙準備が整わない中での解散となった2017年の過去2回と異なり、今回は、「ガチンコ」勝負となる。
また、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)がパンデミック(世界的大流行)となって以来、初めての全国規模の国政選挙となり、新型コロナ対策が主な争点だ。
但し、足元では、新規感染者が減少していることもあり、党首討論などでの論戦のテーマは給付金等経済対策にシフトしつつある。
給付金に関する各党の公約比較等がテレビ各局で特集
新聞のみならず、パンデミック下、リモートワークが増え、昼間のワイドショーの視聴率が上がっていることもあってか、給付金に関する各党の公約比較等がテレビ各局で特集されている。
ちなみに自民党は政権公約で、「非正規雇用者・女性・子育て世帯・学生をはじめ、コロナでお困りの皆様への経済的支援を行います」と記述されているのみで、具体的な金額には言及していない。
但し、岸田首相は自民党総裁選で「政府方針により不利益をうける方やコロナでお困りの方に、十分な経済対策を数十兆円規模で実施する」とし、連立を組む公明党は「0歳から高校3年生までの全ての子どもたちに『未来応援給付』(一人あたり一律10万円相当の支援)を届けます」と衆院選の重点政策に掲げている。
2022年7月頃の参院選を控え、選挙後に編成される経済対策及び補正予算では、相当額の給付金が計上される可能性が高そうだ。
与野党の「ばらまき合戦」に対して、一石を投ずる論文が月刊誌に寄稿され、永田町や霞が関、経済界のみならず、お昼のワイドショーでも話題に
こうした与野党の「ばらまき合戦」に対して、一石を投ずる論文が月刊誌に寄稿され、永田町や霞が関、経済界や金融・証券界でも話題となり、お昼のワイドショーでも、コメンテーターなどから賛否を含め、喧々諤々の議論が行われている。
その論文とは、「文藝春秋」11月号に掲載された財務省の矢野康治事務次官が執筆した「財務次官、モノ申す、このままでは国家財政は破綻する」だ。
前書きでは「誰が総理になっても1,166兆円の借金からは逃げられない。コロナ対策は大事だが人気取りのバラマキが続けばこの国は沈む」と記載されている。なお、通常、この手の論文のタイトルや前書きは出版社が作成するため、本来のタイトルは不明だ。
但し、矢野氏の意気込みは、冒頭文の「最近のバラマキ合戦のような政策論を聞いていて、やむにやまれぬ大和魂か、もうじっと黙っているわけにはいかない、ここで言うべきことを言わねば卑怯でさえあると思います」、末尾の「今回は、『心あるモノ言う犬』の一人として、日本の財政に関する大きな懸念について私の率直な意見を述べさせていただきました。今後も謙虚にひたむきに、知性と理性を研ぎ澄ませて、財政再建に取り組んでいきたいと思っています」からも伝わってくる。
筆者は仕事柄、数十年にわたって、財務省や総務省など霞が関の役人とつきあいがあるが、通常、彼らの論文は誤謬を避けるためか、無味乾燥とした官製レポートに近く、部下が書いたものを推敲したようなものも垣間見られる。
そういう意味で、矢野氏の論文は異例・異色であり、これほどまで感情的な文章は見たことがない。
但し、書かれている内容は至極真っ当だ。何も大袈裟なことではなく、データとファクトに基づいた財務省が従来出しているレポートや、筆者も委員を務めている財政制度等審議会が年2回提出している建議にも近い。
有名芸能人が出演し、自身が選挙で投票する意思を示した「VOICE PROJECT 投票はあなたの声」と題された動画が16日、YouTube上で公開
一方、こちらもパンデミックが契機となったと思われるが、小栗旬さん、菅田将暉さん、二階堂ふみさん、橋本環奈さん、渡辺謙さんら有名芸能人が出演し、自身が選挙で投票する意思を示した「VOICE PROJECT 投票はあなたの声」と題された動画が16日、YouTube上で公開された。
他に登場するのは、秋元才加さん、安藤玉恵さん、石橋静河さん、Takaさん、滝藤賢一さん、仲野太賀 さん、前野朋哉さん、ローラさん。
冒頭、二階堂さんらが「これは広告でも政府の放送でもなく、僕たちが僕たちの意思で作った映像です」と発言。YouTubeの説明文でも「これは、いっさいの政党や企業に関わりのない、市民による自主制作プロジェクトです」と説明されており、特定の団体などは表記されておらず、発起人や協力者の個人名が掲載されている。
毎年、総務省や中央選挙管理委員会、地方の選挙管理委員会が投票を呼び掛けるCMやポスター等を作成しているが、多くの芸能人が個人名で投票を呼び掛けた事例は記憶にない。YouTube上で公開も現代のデジタル社会らしい風景だ。
我が国の衆院選及び参院選の投票率は低下傾向が続いている
我が国の衆院選及び参院選の投票率は低下傾向が続いている。
2014年の衆院総選挙は過去最低の52.66%、2017年の前回も53.68%と過去2番目の低投票率だった。
前回の第48回衆院総選挙も10月22日投開票と、今回同様10月選挙だったが、超大型の台風21号(ラン)の接近(23日に静岡県に上陸)もあり、事前予想よりも投票率が伸び悩むことになった。
参院選も前回2019年の通常選挙の投票率は48.80%と、過去2番目の低投票率だった(最低は1995年の44.52%)。
全体の投票率が下落すると、無党派層の投票率が支持政党を持つ有権者よりも一段と低下、自民党や公明党、共産党など、組織政党に有利に働き、結果として、与党勝利に結びつくと考えられる。
実際、近年の低投票率下では、自民党が衆院選や参院選で大勝。一方、69.28%と高投票率となった2009年の総選挙では、自民党は大敗、民主党が大勝し、政権交代が起きている。
「心あるモノ言う犬」と小栗さんらのプロジェクトの声が有権者に届き、投票率の上昇に結びつくことになるか、特に若年層の投票率に注目
果たして、メディアに多く取り上げられている「心あるモノ言う犬」と小栗さんらのプロジェクトの声が、有権者に届き、投票率の上昇に結びつくことになるか注目される。
特に、常に低投票率が続いている若年層の投票率が、今回、上向くかも注目される。
18歳及び19歳には2016年の参院選から投票権が付与されたが、2016年の46.78%に対し、2017年の衆院選では40.49%、2019年の参院選では32.28%と、投票率は大幅低下している。
パンデミックで大きな影響を受けたのは若年層も同様だ。むしろ、学生生活や仕事、収入面などでは、年金生活者の多い高齢層以上に影響を受けた可能性もある。
「史上最短の決戦」も過去同様、投票率が勝敗の鍵を握ることに
パンデミック下で行われた2020年11月の米大統領選では、マイノリティーや若年層等、従来、投票率の低いセクターも投票所に足を運び、約100年ぶりの高投票率となった。
高投票率が新人のバイデン氏が現職のトランプ大統領を破る原動力となったと考えられる。
「史上最短の決戦」も過去同様、投票率が勝敗の鍵を握ることになりそうだ。
「日本沈没」と「ドクターX」が高視聴率でスタート
「VOICE PROJECT 投票はあなたの声」に登場する小栗旬さんは、TBS日曜劇場「日本沈没-希望のひと-」で、環境省の官僚・天海啓示役を演じている。
「日本沈没」と言えば、1973年に刊行された小松左京氏の小説が原作だが、今回のテレビドラマでは気候変動問題と関連させ、現代風にアレンジしている。
10日(日曜・午後9時)の初回の15.8%に続き、17日放送の第2話も世帯平均視聴率が15.7%(関東地区、ビデオリサーチ調べ)と、10月クールのドラマでは、米倉涼子さん主演、テレビ朝日の「ドクターX〜外科医・大門未知子〜」の19.0%(14日初回分)に次ぐ好発進となった。
両作品とも、10%台後半のスタートと、近年では稀な高視聴率スタートとなったが、人気俳優等を擁している他に、ドラマに現実感があることも背景にありそうだ。
「日本沈没-希望のひと-」の10日放送分では東京が震度5弱の揺れに見舞われるが、千葉県北西部を震源とする10月7日22時に発生した地震では東京都足立区で震度5強が観測された。23区での震度5強は、2011年3月11日に発生した東日本大震災(東北地方太平洋沖地震)以来。
一方、「ドクターX」では、設定で100年に1度のパンデミックが発生したことになっている。お馴染み「御意」の返事も飛沫感染防止のため無言の「御意ポーズ」に変化。考案者の蜂須賀隆太郎役の野村萬斎さんによると、古典の狂言『唐人相撲』にある、皇帝に対する服従感の強い礼を参考にしたとのことだ。
20日昼には、阿蘇山の中岳第一火口が噴火し、火砕流が火口より1,300メートルに達し、噴煙は火口縁上3,500メートルまで上昇、周辺では火山灰が降ることになった。
阿蘇山で爆発的噴火が起きたのは2016年10月以来。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックしかり、地震・火山の噴火しかり、現実とドラマの境目が融解しつつあるように思われる。
今冬はラニーニャ現象発生で平年比寒い冬となる可能性
一方、長かった残暑も前週末で終了、今週に入り、気温が一気に低下することになった。慌てて、長袖の上着をタンスの奥から取り出した方も多いのではないか。
地球温暖化等の影響で、近年は猛暑と暖冬が続いていたが、今年は平年比で、寒い冬となる可能性がある。
気象庁は10月11日に発表したエルニーニョ監視速報(No. 349)で、「エルニーニョ現象もラニーニャ現象も発生していない平常の状態と見られるが、ラニーニャ現象時の特徴に近づきつつある」、「今後、秋から冬にかけて平常の状態が続く可能性もある(40%)が、ラニーニャ現象が発生する可能性の方がより高い(60%)。」とした。
今回、気象庁も一気に、今冬に向けたラニーニャ現象の発生確率を高めた格好だ。
既に、欧米やオーストラリアの気象機関は、今秋から今冬のラニーニャ現象の発生確率を高めていたが、14日には米国の気象予報センター(CPC)が9月段階でのラニーニャ現象の発生を認定、来年2月までの継続確率を87%としている。
オーストラリア気象局(BOM)は11日レポートで11月までにラニーニャ現象が発生する可能性が高いとしている。
エルニーニョ現象が「冷夏・暖冬」を招きやすいとされるのに対し、ラニーニャ現象は「猛暑・厳冬」と反対の特性がある。但し、近年は地球温暖化の影響で、エルニーニョ現象が発生すると、冬は記録的な暖冬、夏は平年並の暑さとなることが多く、一方、ラニーニャ現象が発生すると、夏は記録的な猛暑、冬は平年並の寒さとなることが多かった。
5月19日から平年値更新、1991〜2020年の観測値が基準に、年平均気温は0.1〜0.5度上昇、降水量は10%程度増加
気象庁は5月19日、平年値を更新した。気象庁では、西暦年の1の位が1の年から続く30年間の平均値をもって平年値とし、10年ごとに更新、従来は、1981〜2010年の観測値による平年値を使用していたが、1991〜2020年の観測値による新しい平年値を作成。
新平年値は旧平年値と比べ、年平均気温は全国的に0.1〜0.5℃程度高くなり、降水量は季節によって多くの地点で10%程度多くなった。
結果、5月19日以降は、平年値が従来よりも、気温は高く、降水量も多くなることで、予報等の平年比の比較も、従来よりも、気温は高く、降水量は多くなる可能性に留意する必要がある。
結果、今後、平年並みの暑さは実際には猛暑を意味するものの、平年並みの寒さは暖冬を意味することになる。
ラニーニャ現象の発生で今冬は平年比寒い冬となる可能性がありそうだ。
4度目の緊急事態宣言の全面解除で、10月1日から東京都では、観客数上限や上映時間の制限撤廃
4度目の緊急事態宣言が9月30日に全面解除となったことで、東京都では、10月1日、観客数上限や上映時間の制限も解除された。
現時点では、飲食売店の営業時間制限やアルコール類の終日販売休止は継続しているが、来週25日以降は一段と緩和ないし全面解除となる可能性がある。
夜間の上映開始時間が遅くなったことで、サラリーマン等の観客も増え、映画館は賑わいを取り戻しつつある。
また、集客に寄与しているのが前月号でも特集した大作・注目作品の一斉公開だ。
前週末(10月16日-17日)の映画の観客動員ランキングでは、『燃えよ剣』が初登場1位を獲得した(興行通信社調べ、以下同じ)。司馬遼太郎氏による同名ベストセラー小説を実写化。新選組副長・土方歳三を岡田准一さんが演じた。
公開から2週連続で首位に立っていた『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』は2位にランクイン。累計では動員124万人、興収18億円を突破。
既に2回鑑賞したが、ダニエル・クレイグさんの卒業作品にふさわしい出来だ。
ちなみに、ジェームズ・ボンドが所属する(本作で復帰)英国のMI6(秘密情報部:SIS)の本部ビルは前作の『007/スペクター』で、ブロフェルドにより爆破されたため、MI5(保安局:SS)の本部ビルが映画に登場する。但し、あくまで映画の中の設定のため、MI6の本部ビルは現存する。
MI6本部ビル、2019年末澤豪謙撮影
『DUNE/デューン 砂の惑星』(ワーナー)は5位スタート。フランク・ハーバート氏によるSF小説を『メッセージ』『ブレードランナー2049』のドゥニ・ビルヌーブ監督が映画化。2部作の1作目だが雄大なスケールに目を奪われた。続編を早く観たい作品。
11月に向けても大作等、内外の注目作品が続々公開
感染第5波が世界的に落ち着きをみせていることもあり、11月に向けても、公開が延期されていた大作を含め、内外の注目作品が続々公開となる。
10月22日公開の『G.I.ジョー:漆黒のスネークアイズ』は、米国ハズブロ社のアクションフィギュアをもとに、戦闘のエキスパートチーム「G.I.ジョー」と悪の組織「コブラ」の戦いを描くアクション大作『G.I.ジョー』シリーズの3作目。
日本の闇の組織から、ある男の命を救ったスネークアイズは、秘密忍者組織「嵐影」への入門を許可される。600年の間、日本の平和を守り続けた「嵐影」は、悪の抜け忍集団と国際テロ組織「コブラ」連合軍による攻撃にさらされ、危機に瀕していた。スネークアイズは嵐影の「3つの試練」を乗り越え、真の忍者となり、迫りくる“忍者大戦”から、世界を守る事が出来るのか。
日本が主な舞台となり、浅草、岸和田城、姫路城など、ハリウッド映画史上最大規模ともいわれる日本ロケを敢行。『るろうに剣心』シリーズのアクションも手がけた谷垣健治氏がアクション監督、セカンドユニット監督として参加、平岳大さん、安部春香さん、石田えりさんら日本人俳優も出演。
10月22日公開の『ロン 僕のポンコツ・ボット』はハートフル長編アニメーション作品。
最新式ロボット型デバイス「Bボット」。それは、スマホよりハイテクなデジタル機能に加えて、持ち主にピッタリな友達まで見つけてくれる夢のようなデバイス。そんな「Bボット」で誰もが仲間と繋がる世界で、友達のいない少年バーニーの元に届いたのはオンライン接続もできないポンコツボットのロンだった。 出会うはずのなかった1人と1体が本当の「友情」を探すハートウォーミング・アドベンチャーが今、始まる。
『CUBE』
2021年10月22日公開
©2021「CUBE」製作委員会
10月21日公開の『CUBE 一度入ったら、最後』は謎の立方体に閉じ込められた男女6人の脱出劇を描き、世界的ヒットを記録したビンチェンゾ・ナタリ監督の密室スリラー『CUBE』を菅田将暉さん、杏さん、岡田将生さん、田代輝さん、斎藤工さん、吉田鋼太郎さんのキャストによる日本版リメイク作品。
目が覚めるとそこは謎の立方体=CUBEの中だった。そこに突然閉じ込められた男女6人。エンジニアの後藤(29)、団体職員の甲斐(37)、フリーターの越智(31)、中学生の千陽(13)、整備士の井手(41)、会社役員の安東(61)。彼らには何の接点もつながりもない。理由もわからないまま、脱出を試みる彼らを、熱感知式レーザー、ワイヤースライサーや火炎噴射など、殺人的なトラップが次々と襲う。仕掛けられた暗号を解明しなくては、そこから抜け出すことは絶対にできない。
10月29日公開の『そして、バトンは渡された』は、第16回本屋大賞を受賞した瀬尾まいこ氏の同名ベストセラー小説を、永野芽郁さん、田中圭さん、石原さとみさんの共演で映画化。
血の繋がらない親に育てられ、4回も苗字が変わった森宮優子は、わけあって料理上手な義理の父親、森宮さんと2人暮らし。今は卒業式に向けピアノを猛特訓中。将来のこと、恋のこと、友達のこと、うまくいかないことばかり。一方、梨花は、何度も夫を替えながら自由奔放に生きている魔性の女。泣き虫な娘のみぃたんに目いっぱい愛情を注いで暮らしているようだったが、ある日突然、愛娘を残して姿を消してしまった。そして、優子の元に届いた一通の手紙をきっかけに、まったく別々の物語が引き寄せられるように交差していく。2つの家族がつながり、やがて紐解かれる「命をかけた嘘と秘密」。
『老後の資金がありません!』
2021年10月30日公開
©2021映画「老後の資金がありません!」製作委員会
10月30日公開の『老後の資金がありません!』は垣谷美雨氏の同名ベストセラー小説を天海祐希さん主演で映画化。
後藤篤子は、家計に無頓着な旦那・章とフリーター娘のまゆみ、大学生の勇人を息子に持つ、節約がモットーのごく普通な主婦。夫の給料と自身がパートで稼いだお金をやり繰りし、憧れのブランドバッグも我慢して、コツコツ老後の資金を貯めてきた。篤子には病気の舅と、高級ケアマンションで暮らす姑の芳乃がいた。月々のケアマンションの費用だけでも痛手だったのに、舅が亡くなり、章の妹・志津子と葬式代を誰がいくらを出すかで揉め、結局400万円近くも支払うことに。さらに、パートの契約が更新されず、篤子はクビを言い渡されてしまう。
11月5日公開の『エターナルズ』は、「アベンジャーズ」に次ぐマーベル・スタジオの新たなヒーローチーム「エターナルズ」の活躍を『ノマドランド』でアカデミー賞を受賞したクロエ・ジャオ監督が描くアクション大作。
遙かな昔から地球に存在し、7,000年もの間、人類を見守ってきた10人の守護者エターナルズ。『アベンジャーズ/エンドゲーム』のその後、人類滅亡の脅威が迫るとき、彼らはついに姿を現す。しかし彼らに残された時間は7日間だった。タイムリミットが迫る中、彼らは離れ離れになった仲間たちと再び結集し、人類を守ることができるのか?そして、彼らを待ち受ける「衝撃の事実」とは。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染者急減の背景と第6波の動向
10月20日の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の新たな感染者は東京都が41人(東京都調べ)、全国では391人(NHK調べ)だった。東京都では10月9日以降、100人割れが続き、全国でも10月7日以降は、1,000人を割る状況が続いている。
東京都の新規感染者は8月13日には5,773人、全国でも8月20日には2万5,868人まで増加しており、8月下旬以降の減少ペースは著しい。
急速な減少の背景には、①医療崩壊報道等のアナウンスメント効果、②8月中旬以降の天候不順等の季節天候要因(①及び②の要因による不織布マスクの着用率上昇等含む)、③ワクチン接種率上昇、④ハイリスク行動をとるセクターでの自然感染の急増の4つがあると筆者は考えている。
④の要因は、感染力の強いインド由来のデルタ株(B.1.617.2)により、7月から8月にかけて、確認症例を大きく上回る新規感染者が、夜間の飲酒等ハイリスクな行動をとっていたセクターで発生、そのようなセクターでは、ワクチン接種率の向上と相俟って、一時的に集団免疫に近い状況が生じた可能性があると推定している。
ワクチン接種率の低いインドでも、4月から5月の感染爆発後、6月以降は新規感染者の急減現象が起きている。
但し、先行して、ワクチン接種が進み、社会経済活動が再開された諸外国、具体的には、ワクチン接種率の高い順で、シンガポール、カナダ、英国、イスラエル等では、一旦、新規感染者数が急減後、暫くしてから急増している。
背景には、社会経済活動が再開され、マスク着用率の低下等感染予防策が縮小したことに加え、ワクチン接種からの時間経過に伴う抗体価の低下によるブレイクスルー感染が影響したと考えらえる。
欧米諸国より数カ月、ワクチン接種が遅れた我が国では、今後、冬に向けて、抗体価の低下によるブレイクスルー感染の拡大が予想され、今冬は第6波への警戒が必要と考えられる。
優先接種が実施された医療従事者や高齢者では既に接種後、半年を経過した人もおり、特に、高齢者は元々、ワクチン接種による抗体価の上昇が限定的なため、ブレイクスルー感染が早期に発生しやすい。
接種により、重症化は抑制されるものの、未接種者等に感染すると重症化するケースもあり、新規感染者が増加すると、重症者や死者が増加すると考えられる。
また、100年前のスペイン風邪(H1N1インフルエンザウイルス)のパンデミック時には、冬にかけて、2度の大きな感染波が生じた経緯にある。
実際、従来株の感染では、昨年の第3波が最大となったように、冬には気温・湿度・UV(紫外線)の低下に伴い、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の半減期が長期化、エアロゾル感染も拡大しやすくなる。
岸田新政権には、第6波に備え、臨時医療施設等医療体制の充実や、検査の無料化・拡充、治療薬の活用、特に経口治療薬の導入で重症化を抑制し、第4波や第5波のような医療崩壊を防ぐ対策を求めたい。
末澤 豪謙 プロフィール
1984年大阪大学法学部卒、三井銀行入行、1986年より債券ディーラー、債券セールス等経験後、1998年さくら証券シニアストラテジスト。同投資戦略室長、大和証券SMBC金融市場調査部長、SMBC日興証券金融市場調査部長等を経て、2012年よりチーフ債券ストラテジスト。2013年より金融財政アナリスト。2010年には行政刷新会議事業仕分け第3弾「特別会計」民間評価者(事業仕分け人)を務めた。財政制度等審議会委員、国の債務管理の在り方懇談会委員、地方債調査研究委員会委員。趣味は、映画鑑賞、水泳、スキューバダイビング、アニソンカラオケ等。