アナリストの忙中閑話【第130回】

アナリストの忙中閑話

(2022年3月17日)

【第130回】露軍ウクライナ全面侵攻から3週間、前回の壬寅にはキューバ危機、米国で夏時間恒久化か?歴史は繰り返す、多方面の備え必要に、春の注目映画特集

金融経済調査部 金融財政アナリスト 末澤 豪謙

ロシア軍が2月24日に、ウクライナへの全面侵攻を開始してから3週間が経過

ロシア軍が2月24日に、ウクライナへの全面侵攻を開始してから3週間が経過した。

ロシアのプーチン大統領は24日、ウクライナ東部ドンバス地方(ドネツク州及びルガンスク州)での特殊軍事作戦の決行を発表したが、進攻作戦は、ドンバス地方にとどまらず、ウクライナ全土の軍事施設や主要都市への全面攻撃となった。

ミサイル攻撃の後、ベラルーシから首都キエフ方面へ、ロシア西部から第2の都市ハリコフ方面へ、クリミア半島から北上と、3方面から地上軍が侵攻

プーチン氏の24日のビデオ映像は、背広やネクタイの柄等が北京冬季オリンピック閉幕翌日の21日に開催された国家安全保障会議でのライブ演説と同じのため、同日の録画との観測が強いが、発表直後に攻撃がスタートした。

第一撃は、主に短距離弾道ミサイル、中距離弾道ミサイル、巡航ミサイル、空対地ミサイルによるウクライナ軍のレーダーサイト、地対空ミサイルシステム、主要基地への攻撃で始まったが、その後、武力衝突が続いているドンバス地方に加え、ベラルーシから首都キエフ方面へ、ロシア西部から第2の都市ハリコフ方面へ、クリミア半島から北上と、3方面から地上軍の侵攻が始まった。

ウクライナのゼレンスキー大統領は22日の予備役の召集に加え、24日には総動員令に署名

一方、ウクライナのゼレンスキー大統領は2月22日の予備役の召集に加え、24日には、総動員令に署名した。全土の兵士と予備役を招集。期間は90日間。ウクライナの予備役は90万人に上る。また、18歳から60歳までの男性は出国が禁止された。

ウクライナとロシアは、徴兵制度があり、ウクライナは20歳以上の男性が対象で期間1年半(海軍のみ2年)、ロシアは18歳から27歳の男性が対象で期間1年だ。

開戦初期には、首都キエフは2日で陥落との見方も流れたが、ウクライナ側の抵抗に加え、ロシア軍の兵站等の問題もあり、依然、キエフやハリコフ等の重要都市はウクライナ政府の管理下にある。

本コラム2月17日号では「仮に、今回、ロシアによるウクライナ軍事侵攻があると仮定した場合、焦点となる『Xデー』は、北京オリンピックが閉幕し、ロシア軍とベラルーシ軍の共同演習が終了する2月20日の直後から、遅くとも3月上中旬までとなる可能性が高い」と記述したが不幸にも予想通りとなってしまった。

オリンピックは「平和の祭典」だが、過去は休戦期間中に国際紛争が度々勃発

2月号でも記述したが、オリンピックは「平和の祭典」とされるが、過去もオリンピック休戦は度々、破られた経緯にある。

2008年の北京夏季大会(8月8日開会式、24日閉会式、競技開始6日)中の8月7日には、南オセチア紛争が発生している。当時、プーチン首相は北京の開会式に出席していた。

2014年のソチ冬季大会(2月7日開会式、23日閉会式、競技開始6日)直後の23日頃から、ウクライナ東部で紛争が発生、クリミア危機が発生している。

2008年同様、プーチン氏は、今回は大統領として、2月4日夜に開催された北京オリンピックの開会式に出席した。習近平国家主席との会談では、ウクライナに関するプーチン氏の決意が伝えられたとの報道もあるが、果たして歴史は繰り返されることになった。

ウクライナ侵攻作戦は、2021年12月に、米紙ワシントン・ポストが米情報機関の機密情報等を基に報道した通りの展開に

米紙ワシントン・ポストは2021年12月3日、米情報機関の機密情報等を基に、ロシアが2022年初めにもウクライナ侵攻を計画していると報じた。計画には装甲部隊など100個大隊、17万5,000人の要員を動員、多正面作戦になる見通しだとし、ロシア軍がウクライナ北部、北東部、南東部、クリミア半島の4カ所に集結していると伝えていた。

年明け後に示された米政府の予測も、侵攻のタイミング以外はほぼその通りの展開となっている。

サリバン米大統領補佐官(国家安全保障担当)は2月11日、ロシアはウクライナ侵攻に十分な兵力を集結させたとし、侵攻はいつ開始されてもおかしくはないとの見方を示した。おそらく空爆やミサイル攻撃で始まるとの見解を示し、首都キエフへの奇襲もあり得るとした。

米国のCIA(中央情報局)やDIA(国防情報局)、NSA(国家安全保障局)等、諜報部門の質の高さが証明された形だが、さすがに、事前に米国が情報開示した計画のまま、ロシアが軍事作戦を決行したことには驚かされた。

携行式の対戦車ミサイルや対空ミサイル、また、ドローン等はロシア機甲部隊の大きな脅威に

一方、2月17日号では、「ロシア軍によるウクライナ侵攻が現実化した場合、正面戦力で劣るウクライナ軍はゲリラ戦的な抵抗を続けることで、春を待ち、『ラスプティッツァ(雪解け)』による泥濘で、ロシア機甲師団の動きが止まる前に、ロシア軍の撤退を促す戦術にならざるを得ないだろう」とした。

また、「都市部でのゲリラ戦等では、ウクライナ軍が欧米から供与された『FGM-148ジャベリン』など対戦車ミサイルで戦車や装甲車を、『FIM-92 スティンガー』など地対空ミサイルでヘリコプターや低空飛行の航空機等を迎撃する戦術はロシア軍の脅威となりそうだ。しかも、首都キエフが陥落せず、抵抗が続く限り、NATO諸国等からの支援は続くことになり、継続戦闘能力も維持されることになる」と記述した。

侵攻後3週間の展開を見ると、携行式の対戦車ミサイルや対空ミサイル、また、ドローン等はロシア機甲部隊に対して大きな戦果を挙げているようだ。

米国のウクライナ支援に関しては、3月15日に成立した米2022年度統合歳出法にはウクライナ等への支援策として、136億ドルが計上された。

バイデン大統領は16日、ホワイトハウスで演説し、8億ドル規模の対ウクライナ追加軍事支援を発表した。

小型無人機100機や対戦車ミサイル「ジャベリン」2,000基、携行式対戦車砲「AT-4」6,000発、軽装甲兵器1,000発、「スティンガー」800基、小銃等7,000丁、弾薬2,000万発以上、防弾アーマー25,000セット、ヘルメット25,000個も含まれる。

既に供与済分を含めると、「ジャベリン」は計4,600基、「スティンガー」は計1,400基に上る。

但し、ウクライナのゼレンスキー大統領が同日、米議会でのオンライン演説で求めていた戦闘機の供与やウクライナ上空での飛行禁止区域設定などには言及しなかった。

一方、バイデン大統領は、より長距離の地対空ミサイルシステムの供与を検討していると述べている。想定されるのは、ウクライナ軍同様、ロシア製の装備を保有する東欧諸国から、地対空ミサイルシステムをウクライナに供与することだ。

具体的には、ウクライナの隣国スロバキアが保有する地対空ミサイルシステム「S300」などだ。「S300」はウクライナ軍も装備しており、キエフ上空などの防衛にあたっている。

バイデン政権は12日にも約2億ドルの軍事支援を発表しており、今回表明分を加えると、政権発足以降の対ウクライナ支援は計20億ドルに上る。

兵器は、欧州にある既存の米軍備蓄から、ポーランドやルーマニアなどの近隣諸国に空輸され、陸路でウクライナ西部に輸送される。ロシアの侵攻が始まってから1週間も経たないうちに、米国とNATOは、「ジャベリン」を含む17,000発以上の対戦車兵器をウクライナの司令官の手に供与済だ。

その中には、ドイツ、英国、スウェーデンが供与したものも含まれる。

ドイツが国防政策を大転換、ウクライナに兵器供与、SWIFTからのロシア主要銀の排除にも賛同

ドイツ政府は2月26日、1,000発の携行式対戦車ミサイルと500発のスティンガーミサイルをウクライナに緊急供与することを発表。携行式対戦車ミサイルは「ミラン」か。

また、従来、ドイツ製の兵器のウクライナ供与を認めていなかった方針も転換、エストニア及びオランダが求めていたドイツ製兵器のウクライナへの移送を認めた。

ドイツは、ウクライナ政府の要請に対し、軍用ヘルメット5,000個の供与にとどめていたが、方針を大きく転換したことになる。

また、ドイツは天然ガスパイプライン「ノルドストリーム2」の稼働停止に加え、国際銀行間の送金・決済システムのSWIFT(国際銀行間通信協会)からロシアの主要銀行を排除することでも欧米各国と合意した。

ドイツのショルツ首相は2月27日には、ロシアによるウクライナ侵攻を受けて急きょ開いたドイツ連邦議会(下院)の特別会議で演説し、ウクライナに軍事侵攻したロシアのプーチン大統領の脅威に対抗するため、ドイツ連邦軍の増強に今年1,000億ユーロ(約13兆円)を投じる方針を表明した。

ショルツ氏は、ロシアによるウクライナ侵攻で「世界は転換点にいる」とし、「自由と民主主義を守るには、国防に大きく投資する必要がある」と述べた。

2022年予算で特別に設定する1,000億ユーロの基金は、戦闘機や軍艦、兵の装備に投資し、連邦軍を強化する方針。米国からはF35戦闘機を最大35機調達する方針(14日付けDPA通信)。

また、ショルツ氏は「毎年、国内総生産(GDP)の2%以上を国防費として投じる」と宣言。北大西洋条約機構(NATO)加盟国の目標であるGDP比2%を超える投資を行い、国防費の抑制方針を大きく転換させる姿勢を示した。2021年のドイツ国防予算は469億3,000万ユーロで、GDP比約1.5%だった。

こうした方針を今後の政権にも継承させるため、ドイツ基本法などの改正も視野に入れているとのことであり、戦後のドイツの国防政策の大転換に繋がる決定だ。

一方、英国が1月段階でウクライナに2,000発供与済の対戦車ミサイルは、ウクライナ軍の映像等から慣性航法で使い捨て型の「NLAW(Next generation Light Anti-tank Weapon)」 とみられる。

なお、NLAWは英国とスウェーデンのSAAB社との共同開発だが、スウェーデンはNLAWに更新中の携行式で使い捨ての対戦車砲である「AT4」を5,000発、ウクライナに供与することを発表している。他に、戦闘食糧13万5,000食、ヘルメット5,000個、防弾ベスト5,000着など。スウェーデンが紛争当事国に兵器を供与するのは、1939年にフィンランドがソビエト連邦(当時)の侵攻を受けて以来、初めて。

これまでに、ウクライナ政府の要請に応じて兵器を提供した国は、米国、カナダ、欧州諸国など、約20か国に上る。

経済力に勝る西側諸国は、対ロシア経済制裁に加え、今後も軍事・経済両面でのウクライナ支援を継続する方針だが、ロシアは反発

ロシアに比較し経済力に勝る西側諸国は、対ロシア経済制裁に加え、今後も軍事・経済両面でのウクライナ支援を継続する方針だ。

この枠組みには、我が国も含まれ、既に、1億ドルの緊急人道支援表明に加え、「防衛装備移転三原則」の運用指針を変更し、ウクライナへの防弾チョッキやヘルメットなどを既に供与済だ。

一方、こうした西側諸国のウクライナ支援や経済制裁に、ロシアは強く反発、我が国を含め「非友好国」に認定、対ロシア進出企業の資産接収の可能性も表明している。

また、ロシア軍は3月13日、ウクライナ西部リビウにある演習場に対してミサイル攻撃を実施。ウクライナ軍当局によると、30発以上のミサイルが発射され、35人が死亡、134人が負傷したとのこと。米国防総省によると、ロシア上空の長距離航空機からの巡航ミサイルによる攻撃とのこと。

攻撃を受けたのは「国際平和維持・安全保障センター」と呼ばれる演習場でロシア軍の侵攻が始まる前まで、米国などNATO加盟国の軍がウクライナ軍を訓練するのに使われていた。

リビウは西部の中核都市で、欧米からの支援物資の中継拠点となっている。攻撃はウクライナへの軍事支援強化への警告の意味があろう。

米メディアは13日、ロシアがウクライナ侵攻後、中国に軍事支援等を要請したと報道、ロシア財務相は中国の協力拡大に期待と表明

そうした観点で今後、注目されるのは、中国の動きだ。米メディアは13日、一斉に、ロシアがウクライナ侵攻後、中国に軍事支援等を要請したと報じている。

13日付けワシントンポストは、米政府当局者によると、ロシアは、ウクライナへの侵攻を開始後、中国に対し、軍事装備と経済援助を求めたと伝えている。

ロシアのシルアノフ財務相は13日、同国のウクライナ侵攻に対する米欧などの制裁で、ロシアが保有する金と外貨準備のうち全体の約6400億ドルの半分弱の約3,000億ドル相当が凍結されたと国営テレビに述べた。

同氏は米欧が中国に、対ロ貿易やロシアの人民元建て資産の使用を制限するよう圧力をかけているとの認識を示した。そのうえで中国とは「協力を維持するだけでなく、西側の市場が閉ざされたなか協力を拡大できる」(14日付け日本経済新聞)と強調した。

サリバン米大統領補佐官(国家安全保障担当)は13日、CNNテレビで、「中国がロシアにどの程度の物的、経済的支援を行っているか注視している」とし、「中国政府には、いかなる国であってもロシアの損失を穴埋めすることを許さず、米国は傍観しないと伝えている」と述べた。

サリバン氏は14日には、中国外交担当トップの楊潔篪共産党政治局員とローマで会談。米ホワイトハウスのサキ報道官によると、サリバン氏は楊氏に対し、ウクライナに侵攻するロシアを中国が支援した場合、「重大な結果が伴う」と警告したとのことだ。

キエフ総攻撃が始まり、中国がロシアを支援すれば、将来的に「天気晴朗なれど、台湾海峡波高し」に

中国がロシアの要請に沿って、今後、本格的な軍事・経済面での支援を開始すれば、欧米諸国から2次制裁の対象となることも想定される。特に、米国では対イラン制裁同様、2次制裁法案が議会に早期に提出され可決される可能性もある。

バイデン大統領は昨年のカブール陥落に加え、インフレ等で支持率が急低下したが、ロシアのウクライナ侵攻後は、インフレの一段の高進にも関わらず、支持率に持ち直しの動きが見られる。

11月8日の中間選挙を控え対ロシア及び対中国政策は一段と強硬となる可能性があり注意が必要か。

何れにせよ、中国の支援なくして、ロシアには長期間の継続作戦能力はないと考えられる。

停戦交渉の行方を含め、今来週の動向が注目される。

仮に、ロシアのキエフへの総攻撃が始まり、中国がロシアへの支援を実施することになれば、将来的には「天気晴朗なれど、台湾海峡波高し」になりかねない。

インフレ要因を除いても、ウクライナ危機は対岸の火事とは言えないだろう。

欧州と東アジアで感染者が増加、規制緩和に加え、BA.2亜系統株への置き換わりの影響も

WHO(世界保健機関)によると、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の週次(3月7日から3月13日)の新規感染者数は6週ぶりに増加に転じた。

直近の3月7日から3月13日の週では、WHOの6つの地域区分のうち、欧州と西太平洋で増加。我が国を含む西太平洋地域で過去最多を更新。感染第6波では、南東アジア以外の5つの地域で、週次の新規感染者数が最多を更新した。

一方、週次の新規死者数は4週連続で減少。

オミクロン株(B.1.1.529)による感染第6波の減少トレンドは一旦、止まったようだ。背景には、WHOの地域区分で西太平洋に属する東アジアの諸国で足元、感染が急拡大している国が多いことがある。具体的には韓国やベトナム、中国などだ。

加えて、欧州でも感染拡大防止のための規制の撤廃・緩和に加え、BA.2亜系統株への置き換わり等で感染が下げ止まり、増加に転じたことが挙げられる。具体的には英国、フランス、ドイツ、イタリア、オランダなどだ。

過去の感染波と比較し、第6波は新規感染者の増加ペースよりも減少ペースが鈍い

過去の感染波、特に世界的に大きな感染波となった2020-2021年の冬の第3波(世界的には従来株、英国はアルファ株)、2021年春の第4波(世界的にはアルファ株、インドはデルタ株)、2021年夏の第5波(世界的にデルタ株)と比較すると、第6波は我が国を含め、収束のペースが緩やかとなっている。

背景にはオミクロン株の感染力は凄まじく、感染拡大初期は検査体制がひっ迫、無症候者や軽症者等、未確認の感染者が大量に存在していたが、ピークアウト後は、検査体制の改善により、陽性率が低下する形で、確認症例が高止まりしている可能性が挙げられる。

世界的にはオミクロン株の亜系統株である「BA.2」系統株の比率が上昇、特にアジアで増加、我が国でも市中感染が大都市部主体に多数確認、置き換わりに警戒要

より問題なのは、亜系統株への置き換わりだ。

オミクロン株(B.1.1.529)には、「BA.1」系統、「BA.2」系統、「BA.3」系統の3系統の株が現時点で確認されている。別途、「BA.1」系統で「R346K」変異を持つ「BA.1.1」を含めると4種の亜系統株が確認されている。世界的にBA.1が主流だったが、BA.1.1を経て、BA.2への置き換わりが進んでいる。

WHOの2月15日付け状況レポートによると、デンマークの事例では、BA.2系統株はBA.1系統株よりも、30%感染力が強いとの報告がなされている。今後、世界的に、BA.1系統株からBA.2系統株に置き換わることで、ピークアウト後の減少ペースが鈍化する可能性がある。

WHOによると、BA.2の割合は、2022年の第7週に35.80%に達した。既に、BA.1.1の36.49%を逆転し、主流になった可能性がある。2月22日の時点で、85カ国で確認され、18か国・地域がBA.2の優勢(> 50%)を報告しているとのことだ。BA.2が主流となっている国・地域は、バングラデシュ、ブルネイ、中国、デンマーク、グアム、インド、モンテネグロ、ネパール、パキスタン、フィリピンなど、アジア地域が多い。BA.2はアジア人に感染しやすい可能性もある。

米国同様、我が国もBA.1.1系統株が主流、BA.1.1はBA.1より感染力が強く、BA.2への置き換わりが緩やかとなる可能性

実際、韓国や香港等では過去の感染波とは比較にならない規模での感染爆発が起きている。

我が国でも既に、BA.2の市中感染が大都市部主体に多数報告されており、置き換わりが進みつつある。警戒が必要と言えそうだ。世界的にはBA.1系統株から、途中、BA.1.1系統株を経て、BA.2系統株の比率が上昇している。なお、日本国内では、米国同様、早い段階からBA.1.1系統株が主流になっていた可能性が指摘されている。

国立感染症研究所の分析によると、2022年第5週にゲノム解析が行われた2,867症例のうち、2,693件(93.9%)がBA.1.1で、BA.1が78件(2.7%)、BA.2が16件(0.6%)と、大半がBA.1.1となっている。

BA.1.1系統株はBA.1系統株よりも感染伝播性が高い可能性が指摘されている。WHOは、BA.1系統が主流である地域(デンマーク、フィリピン等)で起こったBA.2系統への急激な置き換わりと比較して、BA.1.1系統が主流である地域(日本、米国等)でのBA.2への置き換わりは緩やかである傾向が示唆されているとしている。東京都でも、3月1日-7日の週では、BA.2系統疑いの比率は18.2%。

置き換わりのペースは、デルタ株(B.1.617.2)からオミクロン株(B.1.1.529)への置き換わりと比較して緩やかだ。

我が国でも新規感染者数は10万人台と過去最多を更新後ピークアウト、一方で死者数が急増

置き換わりが緩やかな場合、米国では第7波が発生、我が国では第6波が長期化する可能性がある。

新規感染者数がピークアウトしても、重症者や死者は当面、増勢が続く。

オミクロン株の感染例では、重症化率はデルタ株等に比べ低いものの、感染者数の急増で、欧米諸国では医療ひっ迫が起きており、世界的にも、暫くは重症者数や死者数も高止まりが続くと想定される。

米国ではオミクロン株による新規感染者数は1月中旬にピークアウトしたが、入院者数や重症者数がその後急増。死者数もデルタ株による昨年夏の感染波を抜いて、第3波の昨冬以来の水準に増加した。

我が国でも、全国の新規感染者数は2月5日に、10万5,611人(NHKまとめ)と、10万人を突破し、過去最多を更新したが、その後、ピークアウトしたとみられる。

ワクチンのブースター接種と経口治療薬の投与等により、重症化と医療崩壊を避けつつ、社会経済活動を維持し、集団免疫を獲得するまで、もう暫く耐え忍ぶしかない

一方で、重症者数や死者数は高止まりが続いており、特に、死者数は、2月22日には322人を記録、過去最多の水準に増加している。

政府は3月21日で、18都道府県に適用している「まん延防止等重点措置」を全面解除する方針だが、第4波や第5波で医療崩壊が起きたことを教訓として、引き続き、医療体制や検査体制の強化を行い、ワクチンのブースター接種の前倒しを急ぐべきだろう。

オミクロン・バリアントによる第6波に関しては、マスク・手洗い・3密回避という従来の感染予防対策に加え、ワクチンのブースター接種と経口治療薬の投与等により、重症化と医療崩壊を避けつつ、社会経済活動を維持し、集団免疫を獲得するまで、もう暫く、耐え忍ぶしかなさそうだ。

パンデミック宣言から2年経過、対COVID-19戦争は「エンドゲーム:終局」に、「ラスト・グレート・ウォー:最後の大戦」も山を越す、も、COVID-19は「収束」しても、「終息」せず

WHOのテドロス事務局長がパンデミック(世界的な大流行)を宣言したのは2020年3月11日。それから、丸2年が経過したが、対COVID-19戦争も「エンドゲーム:終局」にあると認識している。

筆者は、オミクロン株による感染第6波を、「ラスト・グレート・ウォー:最後の大戦」と定義しているが、何れにせよ、世界的な感染のピークは過ぎたと考えられる。

但し、COVID-19は「収束」しても、「終息」せず、季節性コロナウイルス、言わば「季節性戦争:シーズナル・ウォー」への移行や他のバリアント(変異株)によるパンデミックの可能性は続くことになろう。

実態経済や金融市場への影響も、完全に収束とはいかず、ウイズ・コロナ状態が続くことになりそうだ。

下院を通過し、バイデン大統領の署名を経て成立した場合、2023年3月以降、米国では現在の夏時間に一本化される見込み

3月15日には米議会上院で、米国民にとって重要な法案がほとんど議論なく突如、全会一致(ボイス・ボート)で可決された。

それは「夏時間(DST)を恒久的にするための法案」で、最終的な法案名は、「サンシャイン保護法:Sunshine Protection Act」となる見込みだ。法案のスポンサーは共和党のマルコ・ルビオ議員らで、超党派の議員から提出された。

同法案は「1966年統一時間法:Uniform Time Act of 1966」の第3項を廃止する内容で、現在の夏時間を「標準時間」として、恒久化する内容だ。但し、ハワイ州やアリゾナ州、サモアやプエルトリコなど、夏時間を採用していない地域では、現在の標準時間が継続される。

下院の民主党執行部は同法案に対して、やや慎重姿勢を見せているため、早期に議会を通過するかは不透明だが、同法案を下院も可決し、バイデン大統領の署名を経て成立した場合、2023年11月に発効すると見込まれる。実質的に、2023年3月以降、米国では現在の夏時間が標準時間となり、一本化されることになる。

米国における夏時間の正式名称は、「デイライト・セービング・タイム(daylight saving time、DST)」、夏時間は約8か月と標準時間の約4か月より長い

米国における夏時間の正式名称は、「デイライト・セービング・タイム(daylight saving time、DST)」。

米国では、「夏時間」は3月第2日曜日から11月第1日曜日まで、1年のうち、約8か月間採用されており、約4か月間の「標準時間」よりも、実は長い。2022年の場合、今週の3月13日(日曜日)から、11月6日(日曜日)までと、11月8日(火曜日)の中間選挙直前まで設定されている。

夏時間(DST)は、第一次世界大戦中の1918年3月19日に、初めて連邦政府により施行された。燃料の石炭を節約することを目的に導入されたが、わずか2年で廃止となった。その後、第二次世界大戦中に再び復活した。

夏時間の導入は、エネルギーの節約に加え、鉄道の普及も背景、睡眠不足やその他の健康上の問題が増加との指摘も

連邦議会は、1966年に統一時間法(Uniform Time Act of 1966)を可決。米国内でタイムゾーンやDLSを管轄するのは、アメリカ合衆国運輸省。法律の制定当時、発展しつつあった鉄道を全米に普及させるため、全米で時間を標準化する必要があったとされる。

1970年代の石油危機の間には、連邦議会は州に1974年1月から翌年4月までの間、年間を通じてDLSを実施するよう指示した経緯にある。

夏時間(DST)はその名の通り、夏の間、起床時間を早め、エネルギー使用量を節約することなどを意図して、スタートしたが、その効果にはかねて、疑問が投げかけられてきた。

むしろ、医療専門家は、年に2回、時間を切り替えることで、睡眠不足やその他の健康上の問題が増加していると指摘している。米国睡眠医学会は、1年中統一時間を支持している。

世論調査でも、高齢者主体に時間変更制度の廃止を支持する声が多数

2021年11月の世論調査(エコノミスト/YouGov)では、米国成人の63%が年2回の時計の変更を止めたいとし、継続したいとする16%を大きく上回った。なお、夏時間の恒久化への賛成48%に対し、標準時間の恒久化への賛成は29%にとどまった。

なお、時間変更制度の廃止への賛成は、民主党支持者が67%、無党派が63%、共和党支持者が67%と、党派別対立がみられない一方、年齢別に見ると、30歳未満の42%、30-44歳の58%、45-64歳の69%、65歳以上の77%と、高齢層の方が一本化への支持が高い結果となった。

医療専門家の主張のように、時間変更制度は健康への影響が大きいことを示唆しているようだ。

なお、米国では過去4年間で、少なくとも18の州が夏時間に恒久的に切り替える州法を可決したが、それを実現するには連邦法の改正が必要となっていた。

EUでも時間変更制度が早期に廃止される可能性

「夏時間(サマータイム)の廃止」、より正確に言えば、「時間変更制度の廃止」に関しては、EU(欧州連合)でも検討が進んでいる。米国で、「夏時間(DST)恒久化法」が成立すれば、EUでも時間変更制度が早期に廃止される可能性がありそうだ。

春休みに向けた注目映画が公開

3月に入り、春休み映画も多数公開されたことから、映画館は多数の親子連れなどで賑わっている。

映画ドラえもん のび太の宇宙小戦争 2021

『映画ドラえもん のび太の宇宙小戦争 2021』
2022年3月4日全国東宝系にてロードショー
©藤子プロ・小学館・テレビ朝日・シンエイ・ADK 2021

前週末(3月12日-13日)の映画の観客動員ランキングでは、『映画ドラえもん のび太の宇宙小戦争 2021』が2週連続のトップに輝いた(興行通信社調べ、以下同じ)。

藤子・F・不二雄氏原作の国民的テレビアニメ「ドラえもん」の劇場版。シリーズ通算41作目。1985年に公開された『映画ドラえもん のび太の宇宙小戦争』のリメイク作品で、小さな宇宙人パピと出会ったドラえもんたちが、彼とその故郷を守るために宇宙で大冒険を繰り広げる。

2位から5位には本コラムで特集した作品が入った。

第2位の『余命10年』は、小坂流加氏の同名恋愛小説を映画化。小松菜奈さんと坂口健太郎さんの共演で、『新聞記者』の藤井道人監督がメガホンをとった。

第3位の『THE BATMAN-ザ・バットマン-』は、マーベルと並ぶアメコミの2大レーベルであるDCのヒーロー映画『ザ・バットマン』の新シリーズ。若き日、バットマン2年目のブルース・ウェインを描いた作品。新たなバットマン役は、『TENET テネット』のロバート・パティンソンさんが演じる。

全米の週末興収ランキングでは2週連続トップで、2022年公開作品ではトップの興収を上げている。公開初日を含め、既に2回鑑賞したが、独特の雰囲気のある映画に仕上がっている。

第4位は『劇場版 呪術廻戦 0』。累計興収127億円を突破し、歴代興収ランキング21位に浮上と、予想通りの大ヒット。

第5位は『ウェディング・ハイ』。お笑い芸人バカリズムのオリジナル脚本による、結婚式を舞台に描いた群像コメディ。

KAPPEI カッペイ

『KAPPEI カッペイ』
2022年3月18日全国東宝系にてロードショー
©2022 映画『KAPPEI』製作委員会
©若杉公徳/白泉社(ヤングアニマルコミックス)

3月18日公開の『KAPPEI カッペイ』は、若杉公徳氏のギャグ漫画「KAPPEI」を、伊藤英明さん主演で実写映画化。

1999年7月に世界が滅亡するというノストラダムスの大予言を信じ、乱世の救世主となるべく、人里離れた地で、殺人拳・無戒殺風拳の修行に人生を捧げてきた男・勝平。だが、世界が滅亡する気配など一向に感じられないまま、師範から突如「解散」を命じられた終末の戦士たちは、それぞれ東京の地へと流れ着く。右も左もわからぬ大都会で、気弱な大学生・啓太を助けたことをきっかけに、天真爛漫な女子大生・山瀬ハルと出会い、人生で初めて「恋」を知る勝平。

そんな勝平の前に、かつてともに修行に明けくれた、守、正義、英雄ら最強の漢たちも現れて。勝平役を伊藤さんが、ヒロインのハル役を上白石萌歌さんが演じる。西畑大吾さん、大貫勇輔さん、山本耕史さん、小澤征悦さん、古田新太さんらが共演。

同じく、18日公開の『SING/シング:ネクストステージ』は、イルミネーション・エンターテインメントのミュージカル・コメディアニメ『SING シング』の続編。

コアラのバスター・ムーンが再建に成功した「ニュー・ムーン・シアター」は地元で人気となり、連日満席の活気にあふれていた。しかし、バスターには、世界的なエンタテインメントの中心地レッド・ショア・シティにあるクリスタル・タワー・シアターで新しいショーを披露するという、さらなる夢があった。そのためには、クリスタル・エンターテインメント社の冷酷な経営者ジミーのオーディションに通過しなければならない。どうすればジミーの気を引くことができるか考えたバスターと仲間たちは、伝説のロック歌手で、今は隠遁生活を送っているクレイ・キャロウェイを自分たちのショーに出演させることを思いつくが。

3月25日公開の『ナイトメア・アリー』は、『シェイプ・オブ・ウォーター』で、アカデミー賞作品賞ほか4部門を受賞したギレルモ・デル・トロ監督がメガホンをとったサスペンススリラー大作。第94回アカデミー賞では作品賞に加え撮影、美術、衣装デザインの計4部門にノミネートされた。

大恐慌時代のアメリカ、ショービジネスでの成功を夢見る青年スタンがたどり着いたのは、人間か獣か正体不明な生き物を出し物にする怪しげなカーニバルの一座だった。読心術の技を身につけた彼は、人を惹きつける才能と天性のカリスマ性を武器にトップの興行師となるが、その先には想像もつかない闇が待ち受けていた。

スタン役を『アメリカン・スナイパー』のブラッドリー・クーパーさんが務め、2度のアカデミー賞受賞歴をもつケイト・ブランシェットさんのほか、トニ・コレットさん、ウィレム・デフォーさん、ルーニー・マーラさんらが共演。

3月25日公開の『ベルファスト』は俳優・監督・舞台演出家としても活躍するケネス・ブラナーさんが、自身の幼少期の体験を投影して描いた自伝的作品。ブラナーさんの出身地である北アイルランドのベルファストを舞台に、激動の時代に翻弄されるベルファストの様子や、困難の中で大人になっていく少年の成長などを描いた。

モノクロ作品で、第94回アカデミー賞では作品賞、監督賞ほか計7部門にノミネートされた。

4月1日公開の『モービウス』は、マーベルコミックのキャラクター、モービウスを実写映画化。

天才的な頭脳を持つ医師マイケル・モービウス。彼は幼いころから、治療の術がない血液の難病を患っていた。これまで多くの命を救いながらも、己の病を治癒する方法だけを見出せずにいたモービウスは、自らの身体に実験的な治療を施す。それはコウモリの血清を投与するという、危険すぎる治療法だった。そのまま姿を消したモービウスは、2か月後、ロングアイランド沖に座礁したコンテナ船に突如現れる。病で痩せ細った姿から一変、顔には血色が戻り、隆起した筋肉が全身を覆っていた。さらに、超人的パワーとスピード、そして周囲の状況を瞬時に感知するバットレーダーや飛行能力を手にしたモービウスだが、同時に彼の中で、抑えきれない「血への渇望」が生まれる。やがて彼の身体に更なる変異が起こる。

血に飢えたバンパイアと人々の命を救う医師という2つの顔を持つ主人公マイケル・モービウスを、オスカー俳優のジャレッド・レトさんが演じる。

4月8日公開の『ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密』は『ハリー・ポッター』シリーズの前日譚で、魔法生物学者ニュート・スキャマンダーの冒険を描く『ファンタスティック・ビースト』シリーズの第3弾。

シャイでおっちょこちょいな魔法動物学者ニュートが、ダンブルドア先生や魔法使いの仲間たち、そしてなんとマグルと寄せ集めのデコボコチームを結成し、史上最悪の黒い魔法使いグリンデルバルドに立ち向かう。

原作者J・K・ローリング氏が引き続き自ら脚本を手がけ、『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』以降の全シリーズ作品を手がけるデビッド・イェーツ監督がメガホンをとった。

名探偵コナン ハロウィンの花嫁

『名探偵コナン ハロウィンの花嫁』
2022年4月15日全国東宝系にてロードショー
©2022 青山剛昌/名探偵コナン製作委員会

4月15日公開の『名探偵コナン ハロウィンの花嫁』は、青山剛昌氏原作の大ヒットシリーズ「名探偵コナン」の劇場版25作目。

ハロウィンシーズンで賑わう東京渋谷。渋谷ヒカリエでとある結婚式が執り行われていた。そこには、ウェディングドレスに身を包んだ警視庁・佐藤刑事の花嫁姿が。コナン達招待客が見守る中、突然乱入してきた暴漢が襲い掛かり、守ろうとした高木刑事の身に危機が。事態は収束し高木は無事だったが、佐藤の瞳には、3年前の連続爆破事件で、想いを寄せていた松田刑事が殉職してしまった際に見えた死神のイメージが、高木に重なって見えていた。

時を同じくして、その連続爆破事件の犯人が脱獄。果たしてこれは偶然なのか。公安警察の降谷零(安室透)が、同期である松田刑事を葬った因縁の相手を追い詰めるが、そこに現れた謎の仮装の人物に、首輪爆弾をつけられてしまう。首輪爆弾解除のために安室が潜伏している地下シェルターを訪れたコナンは、3年前に今は亡き警察学校時代の同期メンバー達と正体不明の仮装爆弾犯「プラーミャ」と渋谷で遭遇した事件の話を聞く。捜査を進めるコナン達を狙う不穏な影が。

前回、第3次世界大戦の危機が叫ばれたのは、ちょうど今年同様、「壬寅」の1962年10月に起きたキューバ危機、歴史は繰り返す

前述の『THE BATMAN-ザ・バットマン-』を鑑賞して、脳裏に蘇ったのは2020年公開の『TENET テネット』の映像だ。

『TENET テネット』は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック後、初のハリウッドの大作で、新たなバットマン役のロバート・パティンソンさんが重要な役回りで出演。監督は『ダークナイト』3部作を送り出したクリストファー・ノーラン氏だ。

バットマン繋がりの面もあるが、筆者が気になったのは、『TENET テネット』の冒頭シーンは、ウクライナの首都キエフにあるオペラハウスからスタートする点。

しかも、ストーリーは「現在から未来に進む『時間のルール』から脱出する」というミッションを課せられた主人公が、第3次世界大戦に伴う人類滅亡の危機に立ち向かう姿を描いた内容だ。

今回のウクライナ危機は、プーチン大統領らから、核兵器による威嚇がなされ、場合によっては、第3次世界大戦に繋がりかねない重大危機だ。しかも、第3次世界大戦は必然的に「核戦争」となり、映画のように、人類滅亡の危機と言える。

前回、第3次世界大戦の危機が叫ばれたのは、ちょうど今年同様、「壬寅」の1962年10月に起きたキューバ危機だ。

旧ソ連がキューバに核ミサイルを搬入、ミサイル基地の建設を開始したが、偵察機U2により、その計画を知った米国はキューバを海上封鎖。一方、ソ連は封鎖を解くため、艦隊を派遣。キューバは偵察機U2を撃墜。仮に米国がキューバを空爆したり、米ソの艦隊が交戦状態に陥れば「核戦争」と、一触即発の危機となった。

クレムリン(フルシチョフ首相)とホワイトハウス(ケネディ大統領)のせめぎあいの後、ソ連は米国がキューバに侵攻しないという条件の下、核ミサイルを撤去することを発表。米国が応じたことで、第3次世界大戦の危機は回避された。

なお、密約として、当時、トルコに配備されていた米軍の核弾頭を搭載したジュピターMRBM(準単距離弾道ミサイル)を撤去し、引き換えにキューバから核弾頭を搭載したR-12(SS-4サンダル)IRBM(中距離弾道ミサイル)が撤去された。

キューバ危機の経験が、その後の米ソの中距離核戦力全廃条約(INF)の調印(1987年12月、発効1988年6月)に繋がった面もある。

但し、INF条約はトランプ政権下で破棄され、2019年8月に失効した。

背景には、ロシアの巡航ミサイルの開発問題もあるが、INFに加盟していない中国の核戦力の急拡大もあった。

ウクライナ危機では、「歴史は繰り返す」状況となったが、読めないのは、新たな「変数」とも言える中国の動きだ。

米中の覇権争いにとって、2022年は分岐点となる可能性

米中の覇権争いにとって、2022年は分岐点となる可能性がある。

米国は11月8日には中間選挙が予定されているが、中国では秋に、第20回中国共産党全国代表大会が予定されている。

中国共産党は2021年11月11日、第19期中央委員会第6回全体会議で、「中国共産党の百年奮闘の重大な成果と歴史的経験に関する中共中央の決議」、いわゆる「歴史決議」を採択し閉幕した。

歴史決議の採択は、1981年6月27日から29日まで開催された第11期6中全会において、鄧小平氏が主導し取りまとめられた「建国以来の党の若干の歴史問題に関する決議」の採択以来。1回目は建国の父、毛沢東氏が主導し、1945年に党の歩みと誤りを総括して幹部に反省を迫り、党内で絶対的権力を確立した「若干の歴史問題に関する決議」で、今回が3回目だ。

2022年秋の党大会時には、習近平氏の年齢は69歳となり、68歳定年内規からは、党中央政治局常務委員を退任することになるが、これまでの経緯や今回の全会での歴史決議採択等を勘案すれば、習氏が「党の核心」として留任するのはほぼ確実で、中央委員会総書記に引き続き就任する可能性とともに、かつて、毛沢東氏が就き、現在は廃止されている中央委員会主席に就任する可能性もありそうだ。

2022年は、中国の体制が大きく変革する年となり、世界の台風の目となる可能性がある。台湾問題等を含め、米中の覇権争いも、2022年にはステージが変化する可能性があり、ウクライナ情勢ともども注意が必要だろう。

16日夜、福島県沖でM7.4の地震、震度6強の揺れを観測、「天災は忘れた頃にやってくる」

16日の夜11時36分頃のことだが、本コラムの執筆が終わり、ベッドに入っていたところ、大きな揺れに襲われた。

慌てて、NHKをつけたら、緊急地震速報が2度流れ、その後は東京の自宅マンションでも10-20分程度、揺れが続いた。

長周期地震動によるこうした揺れは、今から11年前の2011年3月11日に発生した東日本大震災(東北地方太平洋沖地震)に近いものだった。

気象庁によると、震源は福島県沖、宮城県登米市、福島県南相馬市、相馬市などで震度6強の揺れを観測。震源の深さは57キロ、地震の規模(マグニチュード)は7.4とのこと。

なお、当該地震の2分前に、やはり福島県沖で発生した地震の規模はM6.1だった。

最大30センチの津波に加え、東北新幹線が脱線、東京を含む関東や東北で大規模な停電が発生するなど、広範囲に影響が及んだ。

当に、「天災は忘れた頃にやってくる」のであった。

米国ではゼロ金利解除、「備えあれば憂いなし」と言うが、パンデミックに地政学的リスク、自然災害、インフレと米金融引き締め等、他方面への備えが必要に

地震から、数時間後には、米国のFOMC(連邦公開市場委員会)で、パンデミックを受け2020年3月から2年間続けたゼロ金利政策を解除し、2018年12月以来約3年ぶりの利上げが決まった。政策金利は0-0.25%から0.25-0.50%に0.25%引き上げられ、2022年中に今回を含めて0.25%ずつ計7回引き上げる想定も示された。

FRB(連邦準備制度)のパウエル議長は早ければ5月にも、国債等保有残高の縮小、量的引き締め(QT)も開始すると表明。

金融引き締めへの急転換はインフレの高進が背景にある。

パンデミックがそろそろ収束するかと思いきや、インフレ、ウクライナ危機に米利上げ、我が国では地震への警戒も必要だ。今夏は猛暑が予想され、大雨・洪水やスーパー台風への備えも必要に。

「備えあれば憂いなし」と言うが、パンデミックに地政学的リスク、自然災害、インフレに米金融引き締め等、これほど他方面への備えが必要になったのは筆者の60年の人生でも記憶にない。

21世紀は、「異常」が「日常」になると心得て、前もって備える必要があるのかもしれない。

末澤 豪謙 プロフィール

末澤 豪謙

1984年大阪大学法学部卒、三井銀行入行、1986年より債券ディーラー、債券セールス等経験後、1998年さくら証券シニアストラテジスト。大和証券SMBC金融市場調査部長、SMBC日興証券金融市場調査部長等を経て、2012年よりチーフ債券ストラテジスト。2013年より金融財政アナリスト。2010年には行政刷新会議事業仕分け第3弾「特別会計」民間評価者(事業仕分け人)を務めた。日経債券アナリストランキング、14年連続10位内ランクイン。日経財政アナリストランキング2位(2004年〜2006年)。財政制度等審議会委員、国の債務管理の在り方懇談会委員、地方債調査研究委員会委員。趣味は、映画鑑賞、水泳、スキューバダイビング、アニソンカラオケ等。

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