アナリストの忙中閑話【第131回】

アナリストの忙中閑話

(2022年4月21日)

【第131回】ドンバスの戦い開始、フランス大統領選決選投票動向、オミクロン株の感染波は中国を除き収束へ、GW映画特集

金融経済調査部 金融財政アナリスト 末澤 豪謙

ドンバスの戦い開始、ウクライナ戦争は第2段階へ

ウクライナのゼレンスキー大統領は18日のビデオ演説で、ロシア軍がウクライナ東部ドンバス地方の制圧に向けた戦いを開始したと明らかにした。

また、ウクライナ大統領府のイエルマーク長官も18日、ロシアの攻勢が強化された明確な兆候があることを踏まえ、ドンバス地方で「戦争の第2段階」が始まったとの認識を示した。

米国防総省のカービー報道官は18日、「ドンバス地方と南部、特にマリウポリ市内とその周辺で引き続き、空爆と砲撃の集中が見られる」とした。

また、国防総省高官によると、ロシア軍がウクライナ東部で、より大規模であからさまな攻撃の下地を整えているとした。11の大隊戦術群が最近、ウクライナ国内に入ったとし、ウクライナに展開しているロシア軍はこれで76大隊戦術群となり、すべて南部と東部にいるとのことだ。

「陸の回廊」構築に向け、ウクライナ東部や南部でのロシア軍の攻撃が激化

ロシア軍が2月24日に、ウクライナへの全面侵攻を開始してから、まもなく2か月になる。

第一撃は、主に短距離弾道ミサイル、中距離弾道ミサイル、巡航ミサイル、空対地ミサイルによるウクライナ軍のレーダーサイト、地対空ミサイルシステム、主要基地への攻撃で始まったが、その後、武力衝突が続いているドンバス地方に加え、ベラルーシから首都キーウ(キエフ)方面へ、ロシア西部から第2の都市ハルキウ(ハリコフ)方面へ、クリミア半島から北上と、3方面から地上軍の侵攻が始まった。

但し、キーウまで、一時数キロまで迫っていたロシア軍は4月に入り、北部戦線から撤退。米国防総省の分析では6日までに、全部隊がベラルーシ領かロシア領に戻り、部隊の再編制を行っった模様だ。その後、前述のドンバスの戦いに動員された可能性がある。

現在では、ロシア軍は、ハルキウの東からロシア国境線沿いにクリミア半島の北まで展開し、「陸の回廊」の構築に努めているとみられる。

その障害となっているのが、アゾフ海に面した港湾都市マリウポリだ。ロシア侵攻前の人口は40万人超だったが、現在では廃墟と化している。

2014年のクリミア危機の際にも、ロシア軍が全面支援する親ロシア武装勢力とウクライナ軍の攻防の最前線となった。

5月9日に第2次大戦のソ連による対ナチス・ドイツ戦勝記念日を控え、ロシア側は「戦果」を誇示するためにも、マリウポリの陥落を目指しているとみられる。

マリウポリに残るウクライナの部隊は、元は民兵組織で現在はウクライナ内務省管轄の国家親衛隊に属するアゾフ大隊のほか、ウクライナ海兵隊など数千人程度とみられる。

ウクライナ部隊が陣取るアゾフスタル製鉄所は核攻撃にも耐えられるとされ、地上と地下に複雑な多層構造を持ち、2014年以降には防空壕も多数設置されている。

空爆や砲撃を逃れた民間人も1千人程度退避しているとされ、人道的な危機の懸念も高まっている。

ロシア軍は足元では、重爆撃機等から「バンカー・バスター」と言われる地中貫通爆弾等を投下、攻撃を強化している模様だ。

ロシア軍の攻勢は、ドンバス地方以外でも、ウクライナ東部や南部主体に強まっている。ロシア国防省は、19日には1,260の標的をミサイルなどで攻撃、20日には1,053か所を攻撃したと発表した。

ウクライナ戦争は長期化が必至の状況

本コラム2月17日号では「仮に、今回、ロシアによるウクライナ軍事侵攻があると仮定した場合、焦点となる『Xデー』は、北京オリンピックが閉幕し、ロシア軍とベラルーシ軍の共同演習が終了する2月20日の直後から、遅くとも3月上中旬までとなる可能性が高い」とした。

また、「ロシア軍によるウクライナ侵攻が現実化した場合、正面戦力で劣るウクライナ軍はゲリラ戦的な抵抗を続けることで、春を待ち、『ラスプティッツァ(雪解け)』による泥濘で、ロシア機甲師団の動きが止まる前に、ロシア軍の撤退を促す戦術にならざるを得ないだろう」とした。

加えて、「都市部でのゲリラ戦等では、ウクライナ軍が欧米から供与された『FGM-148ジャベリン』など対戦車ミサイルで戦車や装甲車を、『FIM-92 スティンガー』など地対空ミサイルでヘリコプターや低空飛行の航空機等を迎撃する戦術はロシア軍の脅威となりそうだ。しかも、首都キエフが陥落せず、抵抗が続く限り、NATO諸国等からの支援は続くことになり、継続戦闘能力も維持されることになる」と記述した。

キーウ近郊など、北部戦線での展開は、ほぼ予想通りとなったが、ウクライナ戦争は長期化が必至の状況だ。

ブチャなどでのロシア軍の戦争犯罪が明らかとなったことで、ウクライナ側の姿勢は硬化、ゼレンスキー大統領は16日、同国メディアの取材に対し、マリウポリの部隊が壊滅させられれば、すべての交渉を打ち切る方針を表明している。。

一方、ロシア軍は自らが占領した地域で、住民を選別、ロシア国内への強制移住や、新市長の任命、住民登録等ロシア化を進めており、撤退する気はなさそうだ。

イタリアのドラギ首相が17日に、ロシアのプーチン大統領と電話会談した際、プーチン氏はウクライナとの停戦を拒否したと伝えられている。

黒海艦隊旗艦のミサイル巡洋艦「モスクワ」がウクライナ軍の攻撃により沈没か

ロシア国防省は14日、黒海艦隊旗艦のミサイル巡洋艦「モスクワ」が沈没したと明らかにした。タス通信などが伝えた。国防省は「火災で船体が損傷し、港にえい航される途中だったが、船は安定性を失い、海が荒れる中で、沈没した」と発表した。

一方、ウクライナの当局者は先に、同艦がウクライナ軍の対艦巡航ミサイル「ネプチューン」2発の攻撃を受けたと述べており、ウクライナ側の攻撃で大破し、沈没した可能性がある。

米国防総省高官は15日、「モスクワ」に対し、「ネプチューン」2発が沈没前に命中していたことを確認したと明らかにした。

ロシア軍の旗艦が戦時に沈没したのは、1905年の日露戦争の日本海海戦の際に日本の連合艦隊が帝政ロシアのバルチック艦隊旗艦「クニャージ・スヴォーロフ」を撃沈した時以来。

ミサイル巡洋艦「Moskva:モスクワ」は1982年竣工、1983年に「Slava:スラヴァ」の艦名で運用が開始された。その後、改修され2000年に現在の艦名に改名され、黒海艦隊旗艦として再就役した経緯にある。

満載排水量は約1万2,000トンで、主な攻撃兵装はP-1000バルカン対艦ミサイル16基。

米国防総省関係者によると、巡洋艦が修理などでクリミアのセバストポリ軍港に向かうため、東に移動していた際、爆発が発生したとのこと。それはウクライナのオデーサの南約60海里(約110km)だった。

一方、ウクライナは、南東海岸沖のロシア海軍に対する抑止力として、2013年に「ネプチューン」地対艦ミサイルの開発を開始。「ネプチューン」は、ウクライナも生産に携わったロシアの空対艦巡航ミサイル「KH-35」に基づいている模様だ。トラックに搭載されたランチャーから発射されるミサイルの射程は約320キロ。

黒海西部の制海権、ウクライナ西部の制空権、士気やドンバスへの総攻撃等への影響も

仮に今回の沈没がウクライナ軍の攻撃によるものとすると、開戦以来、最大の戦果とも言える。

また、ウクライナには英国から別の対艦ミサイルも供与されることになっており、現在、ロシアが海上封鎖を行っている黒海西部の制海権は微妙な状況になった。

今後、オデーサに、ロシア軍艦艇は容易に近づくことが出来なくなり、海兵隊等による上陸作戦のみならず、艦砲射撃等も困難になりそうだ。

また、「モスクワ」にはS300対空ミサイルが搭載されており、従来は、クリミアのセバストポリに配備したS400地対空ミサイルと合わせ、ロシア側が制空権を確保するべく対応してきたが、ウクライナ西部や黒海西部の対空防衛に穴が開く可能性がある。

加えて、ロシアの首都の艦名を持つミサイル巡洋艦が撃沈されたとなれば、士気への影響も否定できず、ドンバスへの総攻撃の態様等にも影響が出る可能性がありそうだ。ロシア軍がその後、キーウ等にミサイル攻撃を再開したのは、報復とみられる。

なお、「モスクワ」の艦名は1967年から1996年までは、ソ連海軍初のヘリコプター巡洋艦が冠していたが、暗礁との衝突や火災等に見舞われ、ソ連邦の崩壊もあって、大きな活躍なく退役した経緯にある。

米国のウクライナ支援には、初めて、長距離砲撃が可能な榴弾砲が含まれる

米国防総省のカービー報道官は18日、米軍がウクライナ軍に対し、長距離砲撃が可能な榴弾砲の使用訓練を数日以内に開始するとの見通しを明らかにした。

米国は13日、8億ドルに上る追加の軍事支援を発表、155ミリの榴弾砲18門を初めて提供することになった。

米国防総省によると、18門の155 mm榴弾砲と、40,000発の砲弾がウクライナに送付される。米国防総省のHPに掲載された写真からは、M777榴弾砲のように見えるが、M777の射程は通常のりゅう弾の場合は24km程度だが、誘導砲弾を使用すれば最大 40 kmまで伸びる。

また、10個のAN/TPQ-36対砲兵および2個のAN/MPQ-64センチネル空中監視レーダーシステム、100台の装甲ハンビー車両(累計数百台)、200台のM113装甲兵員輸送車、11機のMi-17ヘリコプターが含まれる。旧ソ連製のMi-17ヘリコプターは、今年初めにウクライナに送られた5機のMi-17ヘリコプターを増強。

追加のスイッチブレード・ドローン300機(累計700機以上)、ジャベリンミサイル500基(累計5,500基以上)、無人沿岸防御船、化学的、生物学的、放射線学的、核保護具、医療機器、防弾チョッキとヘルメット30,000セット(累計75,000セット)、光学機器とレーザー距離計2,000個以上、M18A1クレイモア地雷などもパッケージに含まれている。

なお、今回の支援には含まれていないが、1,400基を超えるスティンガー対空システム、14,000基を超える他の対装甲システム、7,000以上の小火器、50,000,000発以上の弾薬も供与済。

カービー報道官は、大統領の承認後、1週間程度で、ウクライナに届いているとのことであり、少なくとも一部は、既にウクライナに到着したとみられる。

EU加盟国も13日、ウクライナへの軍事支援を5億ユーロ、追加することで合意。今回の追加拠出で、計15億ユーロとなり、当初の3倍に膨らんだ。既に、大量に供与されている携行式の対戦車ミサイルや対空ミサイルに加え、加盟国が保有する旧ソ連製のT-72戦車やS300地対空ミサイルなどの供与資金にも充当される可能性がある。

米国はバイデン政権の発足以来、ウクライナに対して32億ドル以上の安全保障支援を約束しており、2月24日のロシアの侵攻開始以降分だけで約26億ドルに及ぶ。 別途、8億ドル分を追加するとの報道もあり、その場合、各40億ドル、34億ドルに上ることになる。

英国のウクライナ軍事支援の内容

英国は8日に、800基以上の「NLAW」対戦車ミサイル、「ジャベリン」対戦車システム、弾薬、「スターストリーク」携行式対空ミサイル、弾道ヘルメット、防弾チョッキ、暗視ゴーグルなどのウクライナ向け追加支援を発表。

英国防省によると、それ以前に、英国は4,000を超える「NLAW」と「ジャベリン」対戦車システム、「スターストリーク」防空システム等を供与しており、一段の追加となる。

また、ジョンソン首相は9日、ウクライナの首都キーウを訪問し、ゼレンスキー大統領と会談した際、ウクライナに対するさらなる軍事支援として、装甲車両120台や対艦ミサイルシステムなどを供与する方針を伝えている。

ロシア軍のドンバス総攻撃の可能性、北欧2カ国のNATO加盟問題、仏大統領選決戦投票等、今後数週間は、欧州の安全保障政策に重要な影響を与えることに

ドイツなど大陸諸国においても追加支援を求める声が高まっており、対戦車ミサイルなどの追加供与に加え、旧式の「レオパルト1」戦車等の供与が検討された模様だ。但し、ドイツ国防省は既に供与可能な兵器の在庫が払底したと発表。

西側諸国が19日に開催したビデオ会議後、ドイツのショルツ首相は、ウクライナが対戦車兵器や弾薬をドイツの兵器メーカーから購入できるよう、資金を提供すると述べた。

英国のジョンソン首相は、火砲の提供を表明。

米国のバイデン大統領も、ウクライナに榴弾砲を追加供与する考えを表明した。米メディア(CNN等)によると、13日発表分に加え、新たに8億ドルの軍事支援を検討している模様だ。

チェコは、戦闘で損傷したウクライナの戦車と装甲車を修理する方針を示した。

なお、米国防総省のカービー報道官は19日の会見では米国の仲介で、ウクライナが戦闘機を外国から受け取り、運用していると発表したが、20日になり、「部品」と訂正した。

尤も、ロシアとの関係で、兵器のウクライナへの供与を公表したくないNATO加盟国も多いとみられ、実態は不明だ。

これは、フランスも同様で、マクロン大統領はウクライナへの軍事支援を表明しているが、詳細は公表していない。今後の動向は、24日の大統領選決選投票の結果次第となりそうだ。

マクロン大統領の再選が決まれば、軍事支援の本格化が想定されるが、ルペン氏が勝利すれば、軍事支援は行われない、むしろ撤回される可能性が高そうだ。

ロシア軍のドンバス総攻撃の可能性、フィンランドとスウェーデンの北欧2カ国のNATO加盟問題、フランス大統領選決戦投票等、今後数週間は、欧州の安全保障政策に重要な影響を与えることになりそうだ。

フランス大統領選で決戦投票に進んだルペン氏は、NATOの軍事部門からの離脱を公約

NATOの軍事部門、統合軍事機構からの離脱を公約としているのが、フランス大統領選で現職のエマニュエル・マクロン氏との決選投票に進んだ極右「国民連合(RN)」のマリーヌ・ルペン党首だ。

ルペン氏は13日、自身が当選すればNATOとロシアの関係強化を支援すると述べた。ルペン氏は記者会見で、ロシアのウクライナ侵攻が終わればNATOとロシアは「戦略的和解」に至るべきだと述べた。

対ロ関係の改善は、ロシアと中国の接近防止にもつながると強調。過去にマクロン氏も同様の主張を行っていたと指摘し、「これはフランスと欧州の利益であり、米国もまた(中略)中ロ関係が緊密になるのを望まないだろう」(14日付けAFP)と述べた。

また、NATOの軍事部門からフランスを離脱させる意思も再度表明。集団的自衛権に関する第5条については堅持するとした。

フランスはドゴール政権下の1966年に米国と対立し、NATOの軍事部門から離脱。但し、NATOの理事会、政治委員会、経済委員会、防空警戒管制システムなどには残った。2009年、サルコジ大統領(当時)が復帰を正式表明し、4月の首脳会議で復帰した経緯にある。

24日の決戦投票に向けて、マクロン氏とルペン氏の支持率の差が拡大傾向、ドンバス戦争開始で、マクロン氏逃げ切り再選か

その大統領選の動向だが、24日の決戦投票に向けて、マクロン氏とルペン氏の支持率の差が拡大傾向にある。

世論調査会社ELABEの調査では第1回投票終了後の10日の支持率は52%対48%でマクロン氏が僅差で優勢だったが、13日には53.5%対46.5%に、19日には54.5%対45.5%に拡大した。

他の世論調査会社でも同様な傾向が出ており、ドンバスの戦いが影響した可能性がある。

平時であれば、ルペン氏が逆転勝利する可能性もあるが、週末にかけて、ウクライナ戦争、特に、ドンバス戦争のニュースが、世界中同様、フランス国内でも、テレビやネット等を占拠することになれば、マクロン氏が逃げ切るものと予想している。

20日のTV討論の結果もELABEの調査では、マクロン氏59%対ルペン氏39%で、マクロン氏が優勢だった。

大統領任期5年に変更後、初のコアビタシオン発生も、フランス政治の混乱は大統領選後も続く

但し、マクロン政権安泰という訳にはいかなそうだ。

前回2017年6月(11日、18日)の国民議会(下院)選挙では、マクロン氏が率いる結成間もない「共和国前進」が過半数を獲得した。

但し、前回は公職選挙法の改正で、地方の首長や議長らとの兼職が禁止され、共和党や社会党の現職が多数、引退。新人同士の選挙戦となったことが、マクロン人気の効果を増幅し、「共和国前進」の大勝の要因となったと考えられる。

2022年の国民議会選挙は6月12日に第1回投票、6月19日に決戦投票が実施される。

マクロン人気の低下もあって、間接選挙ながら、2017年及び2020年の上院(元老院)選挙では、共和国前進は敗退。上院では泡沫政党の位置付けにある。

6月の国民議会の総選挙後は、コアビタシオン(Cohabitation)、所属勢力の異なる大統領と首相が共存する状態となる可能性も想定される。

フランス大統領は、1962年に全国民による直接選挙制となった。任期は当初7年だったが、2002年から5年に変更された。過去、コアビタシオンの背景は、大統領(任期7年)と国民議会議員(任期5年)の任期のズレが主因だった。実際、2002年以降、コアビタシオンは生じていない。

今年は、大統領任期5年に変更後、初のコアビタシオンが発生する可能性があろう。

マクロン氏は、元々は社会党員で左派の出身だが、その新自由主義的な政策から、必ずしも、社会党や「不服従のフランス」など、左派政党との関係は良好とは言えない。

一方、前述の通り、マクロン氏はEU中心の外交政策等を掲げており、EUに懐疑的な極右政党等との関係は悪い。

結果、議会運営では、中道右派の共和党や環境政党などの支援を受けることにならざるを得ないとみられるが、支持率の低下が続くと、早い段階でレームダック化することも懸念される。有権者の支持を繋ぎ止めつつ、左派と右派の間で、綱渡りの政権運営に追い込まれる可能性も否定できない。

フランス政治の混乱は大統領選後も続くと考えた方がよさそうだ。

過去の歴史を振り返っても、全面戦争は、勝敗が明らかになるか、両国が消耗し厭戦気分が高まるか、世界の警察官が仲裁に入るかしないと、講和に至らないケースが多い

ロシアのウクライナ侵攻が当初、予想された限定的なものではなく、全面侵攻となり、ウクライナ国民の人道的被害やロシアの戦争犯罪が明らかとなるに連れ、世界の外交・軍事・経済等への影響も一段と拡大している。

一般論として、戦争も小規模な軍事衝突の段階では、停戦は容易で、外交関係の改善も可能だ。

但し、一旦、閾値を超えるレベルの水準に到達すれば、自国や自軍の被害、内政的な問題等から、止められなくなることが多い。現在、ウクライナで停戦交渉が中断しているのも同様な背景がある。

過去の歴史を振り返っても、①勝敗が明らかになるか、②両国が消耗し厭戦気分が高まるか、③世界の警察官が仲裁に入るかしないと、全面戦争は講和に至らないケースが多い。

現在、世界に警察官は存在せず、国連は安保理常任理事国(P5)のロシアが当事者のため機能していない。

勝敗が明らかになる場合も、両国が大国である場合や、軍事同盟同士の戦いの場合は、第1次世界大戦や第2次世界大戦のように、決着には相当の時間を要している。

両国が消耗、戦費が枯渇すれば、停戦機運は高まるが、両国とも当面、継戦能力に問題ない

両国が消耗、端的に言えば、戦費が枯渇すれば、停戦機運は高まるが、両国とも時間がかかりそうだ。

経済制裁を受けているロシアも、パンデミック後の供給制約とウクライナ戦争が相まって、資源価格が急騰、輸出が継続している間は戦費の工面がつく可能性が高い。

ちなみに、1998年にロシア危機が発生したきっかけは、1997年のアジア危機を受けて、原油価格等が急落したことが背景にあった。

今回は、過去の戦争との関係では、第4次中東戦争と第1次オイルショックが起きた当時に近い状況になっている。

一方、ウクライナ側には西側諸国から多額の軍事・経済支援がもたらされており、自国を占領されたことで士気も高く、人口約4,200万人を抱え、18歳から60歳の男性に国民総動員令が発動されていることから継続戦闘能力は十分にあると考えられる。

前述の通り、米国は2月24日のロシアの侵攻開始以来、約26億ドルの軍事支援をウクライナに提供している。 バイデン政権発足後では約32億ドルに上る。加えて、8億ドル分が追加供与される見込みだ。

ウクライナの国防予算は約60億ドル(2020年)のため、米国だけで既に、年間国防予算の3分の2を支援することになる。

加えて、前述のように、EUなどからの軍事支援、我が国などからの経済支援もゼレンスキー政権が継続する限り、続くことが予想される。

ウクライナ戦争は、第2幕の方が、我が国の経済及び安全保障面への影響が拡大する可能性

上記3つの条件は何れも当面成立せず、東部及び南部戦線を主体とした、ウクライナ戦争の終結の目途は当面、立たないと言わざるを得ない。

むしろ、その間、対立の構図がジョージアやフィンランドまで、コーカサスからスカンジナビアまで、伸びる可能性も否定できない。

問題は、北欧諸国のNATO加盟を含め、国際的に孤立したロシアが、今後、中国との関係を軍事・経済両面で拡大した場合、欧米諸国との対立の枠組みが拡大するおそれがあることだ。

むしろ、ウクライナ戦争は、第2幕の方が、我が国の経済及び安全保障面への影響が拡大する可能性があり、注意が必要だろう。

WHOによると、COVID-19の週次の新規感染者数は4週連続で減少、収束に目途

WHO(世界保健機関)によると、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の週次(4月11日から17日)の新規感染者数は4週連続で減少した。

新規感染者は、WHOの6つの地域区分全てで減少。オミクロン株による感染波(世界全体及び日本では第6波)は、ようやく収束の目途がつきつつあると言えそうだ。

なお、オミクロン株による感染第6波では、南東アジア以外の5つの地域で、週次の新規感染者数が最多を更新した。

特に、今回、特徴的なのは、WHOの地域区分で西太平洋地域に分類される東アジアや東南アジアでの感染拡大だ。

韓国の新規感染者は6週連続で、世界最多、累計で世界第8位に浮上

韓国の週次の新規感染者は2月28日から3月6日の週以降、世界最多となっているが、4月11日から17日の週でも約97万人と、世界全体の約17%を占め、7週連続で世界最多となった。但し、4週連続で減少しており、既にオミクロン株による感染波はピークアウトしたとみられる。

ちなみに、4月11日から17日の週に新規感染者が多い国は順に、韓国、フランス、ドイツ、イタリア、日本。わが国は第5位だ。

韓国での感染爆発の背景には、3月9日の大統領選の影響も指摘されるが、世界全体でオミクロン株による感染第6波が長期化した背景には、北半球の冬から春にかけた季節要因に加え、規制緩和、亜系統株BA.2への置き換わり等が挙げられる。

アジアでの感染爆発はパンデミック当初、感染者数ゼロが続いていたベトナムでも同様で、現時点での累積感染者数(確認症例)は、①米国、②インド、③ブラジル、④フランス、⑤ドイツ、⑥英国、⑦ロシア、⑧韓国、⑨イタリア、⑩トルコ、⑪スペイン、⑫ベトナムと、8位と12位に東アジアの諸国が入っている。

我が国同様、韓国は2021年前半までは感染者が抑制されていたが、デルタ株で増加。オミクロン株では世界的に見ても、大きなレベルでの感染爆発が発生することになった。

デルタ株及びオミクロン株では、「ファクターX」は確認されず、ゼロ・コロナ政策の中国の動向が焦点に

パンデミック1年目の2020年には、インドを含むアジア全域で、感染者数が少なく、「ファクターX」の存在を指摘する声も上がったが、2021年春の第4波以降(世界的には2021年夏の第5波)に感染が拡大したデルタ株(B.1.617.2)では、アジア全域に感染が急拡大することになった。

特に、最初に感染者が確認されたインドでは、2021年夏の時点で、抗体検査等の結果から、インドの人口(約14億人)の大半、10億人超が感染と、実際の累積感染者数は米国を上回り、世界最大のエピセンター(感染の中心地)となったと考えられる。

現在は、日本人と遺伝的特徴が近い韓国が、確認症例ベースで世界最大となっていることを勘案すると、「ファクターX」の正体は、マスク・手洗い・非接触の挨拶等、生活習慣等の違いに過ぎない可能性が高そうだ。

オミクロン株(B.1.1.529)の感染力は凄まじいことから、今後は、パンデミック以来、ゼロ・コロナ政策を続けてきた中国の動向が最大の焦点となろう。

その中国だが、現在、上海などいくつかの都市で、ロックダウンが実施されているが、感染者の減少ペースは鈍い。

中国共産党は今秋に第20回全国代表大会を控えており、異例の3期目を目指す習近平総書記(中央委員会主席のポストを復活させ就く可能性も)は、ゼロ・コロナ政策をそれまで維持する方針とみられる。

但し、上海で実施されているようなロックダウンが各地で実施されることになると、社会経済活動への負担は大きく、ウクライナ戦争と相俟って、世界経済の下押し圧力となりそうだ。

一方で規制緩和時には、中国で最後の感染爆発が起きる可能性がある。

米ワシントン大のIHME(保健指標評価研究所)はそのタイミングを今冬とみているようだ。

IHMEによると、人口に対するオミクロン株の自然感染率は米国の76%に対し、中国では約2%で、ワクチン接種の効果を勘案すると、米国では人口の73%が免疫を持っているが、中国では32%に過ぎない。結果、極めて大きな感染爆発が起きる可能性があるとしている。

COVID-19パンデミックとの最後の攻防は中国で起きる可能性が高そうだ。

対COVID-19戦争は「エンドゲーム:終局」に、「ラスト・グレート・ウォー:最後の大戦」も山を越すも、COVID-19は「収束」しても、「終息」せず

WHOのテドロス事務局長がパンデミック(世界的な大流行)を宣言したのは2020年3月11日。

それから、丸2年が経過したが、対COVID-19戦争は現在、「エンドゲーム:終局」にあると認識している。

筆者は、オミクロン株による感染波を、「ラスト・グレート・ウォー:最後の大戦」と定義しているが、何れにせよ、世界的な感染のピークは過ぎたと考えられる。

然るに、COVID-19は「収束」しても、「終息」せず、季節性コロナウイルス、言わば「季節性戦争:シーズナル・ウォー」への移行や他のバリアント(変異株)によるパンデミックの可能性は続くことになりそうだ。

実態経済や金融市場への影響も、完全に収束とはいかず、ウイズ・コロナ状態が続くことになりそうだ。

『ドライブ・マイ・カー』が米アカデミー賞の国際長編映画賞受賞

足元、地方では、COVID-19の感染者が再度、増加している県もみられるが、東京都など大都市部では、2-3月の自然感染の拡大の影響で集団免疫効果が出始めたせいか、感染者が減少傾向に変化している。

なお、地方部での感染拡大は、自然感染による免疫保有率が大都市部と比較し低いことが背景として考えられる。

春休み映画やゴールデンウィーク(GW)向けの人気映画も多数公開されたことから、映画館は多数の親子連れなどで賑わっている。

こうした中、先月末、うれしいニュースが飛び込んできた。

米映画界、最高の栄誉とされる第94回アカデミー賞の各賞が3月27日(日本時間28日)発表され、濱口竜介監督の『ドライブ・マイ・カー』が国際長編映画賞を受賞した。2009年の滝田洋二郎監督の『おくりびと』以来の快挙となった。

他にノミネートされた作品賞、監督賞、脚色賞の受賞はならず、残念だが、他の主要映画賞も多数受賞しており、邦画のプレゼンスが大きく上がったことは確かだろう。

作品賞は「穴馬」的存在だった『コーダ あいのうた』が受賞。『ドライブ・マイ・カー』が「癒し系」だとすれば、本作品は「自身の努力と周囲の支援で逆境から立ち上がる」作品。当に今の時代背景に沿った内容で、鑑賞をお薦めしたい作品だ。

人気アニメが映画観客動員ランキングで初登場第1位に

前週末(4月16日-17日)の映画の観客動員ランキングでは、『名探偵コナン ハロウィンの花嫁』が初登場第1位を獲得した(興行通信社調べ、以下同じ)。

本シリーズの主人公「江戸川コナン」は3頭身の当に子供向けアニメだが、ストーリーは毎回奥深い。今回も国際テロリストと日本の公安警察の攻防が描かれ、内容は当に大人向け。

小さいお子さんが全て理解出来ているのか、やや気になるが、親御さんにとっては、大満足の映画だろう。これぞ、大ヒットの秘訣と思いつつ、小さいお子さんのいない我が家ではあるが、毎回、家族で楽しく鑑賞させて頂いている。

第2位は『ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密』、第3位は『SING/シング:ネクストステージ』、第4位は『映画ドラえもん のび太の宇宙小戦争 2021』、第5位は『余命10年』と、上位5作品中、3作品がアニメとなった。

我が国では伝統的にアニメ人気が高いが、米国でも、2022年の現時点の興収ランキングでは、第1位『THE BATMAN-ザ・バットマン-』、第2位『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』、第3位『アンチャーテッド』、第4位『ソニック・ザ・ムービー/ソニック VS ナックルズ』(日本公開8月19日)、第5位『SING/シング:ネクストステージ』と、コミックやゲーム由来の作品ばかりだ。

近年のアメコミ関連の実写映画やアニメの隆盛は、米国など海外が日本の漫画やアニメを見習って、深いストーリー展開等、大人から子供まで楽しめるエンターテイメントに仕上げていることが大きい。

韓国発の『イカゲーム』が大ヒットしたが、我が国のマンガにも、「カイジ」や「LIAR GAME」「嘘喰い」など、似たようなコンセプトの作品は多数存在する。

やはり、有望なコンテンツを外国人でも理解出来るような映画やアニメなどに仕上げ、海外に売り出すことの出来る製作力、プロモーション力が我が国の課題と言えそうだ。

GWに向けた注目映画が公開

劇場版ラジエーションハウス

『劇場版ラジエーションハウス』
2022年4月29日全国東宝系にてロードショー
©2022横幕智裕・モリタイシ/集英社・映画「ラジエーションハウス」製作委員会

4月29日公開の『劇場版ラジエーションハウス』は、横幕智裕氏原作、モリタイシ氏の同名コミックを窪田正孝さん主演で実写化したテレビドラマ「ラジエーションハウス」の劇場版。

甘春総合病院の放射線技師・五十嵐唯織は落ち込んでいた。大好きな甘春杏が、放射線科医としての腕を磨くため、ワシントン医大へ留学することが決まったからだ。「72時間を切ってしまいました」お別れまでのカウントダウンを胸に刻む唯織のことを、ラジエーションハウスのメンバーは元気付けようとするが、唯織への秘めた想いを抱える広瀬裕乃だけは、自らの進むべき道について悩んでいた。

そんな中、杏の父親・正一が危篤との連絡が入る。無医島だった離島に渡り小さな診療所で島民を診てきた正一だが、杏が父のもとに着いてほどなく「病気ではなく、人を見る医者になりなさい」との言葉を残し息を引き取る。生前、父が気に掛けていた患者のことが気になり、島に一日残ることにする杏。そこに大型台風、土砂崩れ、そして未知の感染症が襲いかかる。遠く離れた地で杏が孤軍奮闘していることを知った唯織は、大切な仲間を守るため、苦しむ島民を救うため、ある決心をする。8人の技師たちが選んだ未来とは。

同じく29日公開の『ホリック xxxHOLiC』は、創作集団「CLAMP」の大ヒットコミック「xxxHOLiC」をの蜷川実花監督が実写映画化。

人の心の闇に寄り憑く「アヤカシ」が視える孤独な高校生・四月一日(ワタヌキ)。その能力を消し去り普通の生活を送りたいと願う四月一日は、ある日、一羽の蝶に導かれ、不思議な「ミセ」にたどり着く。妖しく美しい「ミセ」の女主人・侑子(ユウコ)は、彼の願いを叶えるために、「いちばん大切なもの」を差し出すよう囁く。同級生の百目鬼(ドウメキ)やひまわりと日々を過ごし「大切なもの」を探す四月一日に、「アヤカシ」を操る女郎蜘蛛らの魔の手が伸びる。世界を闇に堕とそうとする彼らとの戦いに、侑子や仲間たちと共に挑んだ四月一日の運命は。

孤独な高校生・四月一日を神木隆之介さん、ミセの女主人・侑子を柴咲コウさんが演じる。

5月4日公開の『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』は、元天才外科医にしてアベンジャーズ最強の魔術師「ドクター・ストレンジ」の活躍を描くマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)の『ドクター・ストレンジ』シリーズ第2作。

ドクター・ストレンジが、ある禁断の呪文によって時空を歪ませてしまったことによって直面する、かつてない危機を描く。マルチバースの扉を開いたことで変わりつつある世界を元に戻すため、アベンジャーズ屈指の強大な力を誇るスカーレット・ウィッチに助けを求めるストレンジ。しかし、もはや彼らの力だけではどうすることもできない恐るべき脅威が人類に迫っていた。その脅威の存在は、ドクター・ストレンジと全く同じ姿をした、もう一人の自分だった。

ドクター・ストレンジを演じるベネディクト・カンバーバッチさんをはじめ、ストレンジの盟友ウォン役のベネディクト・ウォンさんら前作のキャストが再結集。『スパイダーマン』3部作(2002、04、07)を手掛けたサム・ライミ監督がメガホンをとった。

5月13日公開の『シン・ウルトラマン』は、空想特撮ヒーロー「ウルトラマン」を、『シン・ゴジラ』の庵野秀明氏と樋口真嗣氏のタッグで新たに映画化。庵野氏が企画・脚本、樋口氏が監督を務めた。

「禍威獣(カイジュウ)」と呼ばれる謎の巨大生物が次々と現れ、その存在が日常になった日本。通常兵器が通じない禍威獣に対応するため、政府はスペシャリストを集めて「禍威獣特設対策室専従班」=通称「禍特対(カトクタイ)」を設立。班長の田村君男、作戦立案担当官の神永新二ら禍特対のメンバーが日々任務にあたっていた。そんなある時、大気圏外から銀色の巨人が突如出現。巨人対策のため禍特対には新たに分析官の浅見弘子が配属され、神永とバディを組むことになる。主人公・神永新二を斎藤工さん、その相棒となる浅見弘子を長澤まさみさんが演じ、西島秀俊さん、有岡大貴さん(Hey! Say! JUMP)、早見あかりさん、田中哲司さんらが共演。

5月13日公開の『バブル』は、テレビアニメ『進撃の巨人』の荒木哲郎監督とWIT STUDIOが再タッグを組み、重力が壊れた東京で出会う少年少女の物語を描いたオリジナル長編アニメーション。

世界に降り注いだ泡(バブル)で、重力が壊れた東京。ライフラインが断たれた東京は家族を失った一部の若者たちの住処となり、ビルからビルに駆け回るパルクールのチームバトルの戦場となっていた。ある日、危険なプレイスタイルで注目を集めていたエースのヒビキは無軌道なプレイで重力が歪む海へ落下してしまった。そこに突如現れた、不思議な力を持つ少女ウタがヒビキの命を救った。そして、2人にだけ特別な音が聞こえた。なぜ、ウタはヒビキの前に現れたのか。2人の運命は、世界を変える驚愕の真実へとつながる。

COVID-19)パンデミックに、ようやく収束の目途が見えてきたが、新たな危機が顕在化

今から100年前の1918年に発生したスペイン風邪(H1N1インフルエンザウイルス)のパンデミック以来の規模となった新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックに、ようやく収束の目途が見えてきた。

但し、既に新たな危機が顕在化している。

供給制約や温暖化対策等に伴うエネルギー価格や食料価格の上昇に、ウクライナ危機が加わり、2度のオイルショック以来となるスタグフレーション懸念も高まりつつある。

IMF(国際通貨基金)は19日に発表した最新の世界経済見通しで、2022年の世界の経済成長率の見通しを、1月予想より0.8ポイント低い3.6%へと下方修正。

20日の東京外国為替市場では日米金利差拡大から、一時、20年ぶりの円安水準となる1ドル:129円台前半まで円安が進行。

米FRB(連邦準備制度)は3月に利上げを開始したが、2022年中に0.25%ずつ計7回引き上げる想定を示し、パウエル議長は早ければ5月にも、国債等保有残高の縮小、量的引き締め(QT)も開始すると表明しており、米長期金利が3%に近づいている。一方で、日銀は0.25%以上に長期金利が上昇しないよう、指し値オペを継続的に実施しており、日米金融政策のコントラストが鮮明になっていることが背景にある。

我が国では「アンチエイジング」が重要

一方、潜在成長率の違いも影響している可能性がある。円はほとんどの通貨に対し下落しており、「ドル高」ではなく、「円安」だ。

実質実効為替レートは本年2月時点で、1972年2月以来、50年ぶりの円安水準にある。

総務省が4月15日に発表した2021年10月1日現在の推計人口によると、在日外国人を含む総人口は前年比64万4千人(0.51%)減少の1億2,550万2千人と、11年連続で減少した。

減少幅は、比較可能な1950年以降で最大となった。減少幅は5年連続で拡大。パンデミックの影響もあり、外国人も9年ぶりに減少、人口減の加速が鮮明となった。

1980年代後半のバブルの時代、我が国では「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と言われた頃、米国はベトナム戦争の傷や企業の多国籍化等の影響で国力が落ちていた。

当時はNTT一社の時価総額がNY証券取引所上場銘柄全体の時価総額に近づいていた。現在は東京証券取引所プライム市場の時価総額約690兆円に対し、アップル(約352兆円)とマイクロソフト(約276兆円)だけで、9割超の水準を占める(4月20日時点)など、完全に逆転されている。

変化の背景は「新陳代謝」の差だろう。「高齢化」「成長力」の差とも言える。

わが国においては、少子化対策、産業振興策等に加え、投資立国、観光立国、エンタメ立国といった成熟国としての政策が重要だろう。筆者は、それらを総称して「アンチエイジング」策と名付けている。

末澤 豪謙 プロフィール

末澤 豪謙

1984年大阪大学法学部卒、三井銀行入行、1986年より債券ディーラー、債券セールス等経験後、1998年さくら証券シニアストラテジスト。大和証券SMBC金融市場調査部長、SMBC日興証券金融市場調査部長等を経て、2012年よりチーフ債券ストラテジスト。2013年より金融財政アナリスト。2010年には行政刷新会議事業仕分け第3弾「特別会計」民間評価者(事業仕分け人)を務めた。日経債券アナリストランキング、14年連続10位内ランクイン。日経財政アナリストランキング2位(2004年〜2006年)。財政制度等審議会委員、国の債務管理の在り方懇談会委員、地方債調査研究委員会委員。趣味は、映画鑑賞、水泳、スキューバダイビング、アニソンカラオケ等。

このページの関連情報