アナリストの忙中閑話【第132回】

アナリストの忙中閑話

(2022年5月19日)

【第132回】ウクライナ反転攻勢、新型レーザー兵器、北欧2カ国がNATO加盟申請、今夏は猛暑・大雨に警戒、北朝鮮と台湾で感染爆発、備えあれば憂いなし?

金融経済調査部 金融財政アナリスト 末澤 豪謙

かつての日常が戻りつつあるが、国際情勢や金融市場は混乱続く

毎年この時期は、朝の出社時、やや若返った気分になる。苦手なスギ花粉等の飛散も収まり、梅雨入り前の初夏の雰囲気が気分を高揚させる面もあるが、生徒・児童に出会う機会が増える影響が大きい。

東京駅丸の内側地下の大空間は、毎年5月頃と11月頃の修学旅行シーズンには、JR新幹線等利用時の集合場所になっており、何百人もの生徒・児童の浮き浮きした顔がみられる。

ところが、2020年初に発生した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックの影響で、2020年と2021年は修学旅行等が激減、今年は、2019年以前の光景が蘇ってきた。

ようやく、かつての日常が戻りつつとも言えるが、国際情勢や金融市場を見渡すと、新たなリスクが拡がっているようだ。

5月18日のニューヨーク米株式市場でダウ工業株30種平均は4営業日ぶりに反落し、前日比1,164ドル(3.6%)下落の3万1,490ドルと年初来安値を更新、下げ幅は今年最大となった。

ディスカウントストア大手ターゲットの減益決算などを受け、インフレによる個人消費の減退や企業収益への懸念が強まった。

インフレの背景には、後述するウクライナ戦争やパンデミックによる供給制約、中国のゼロ・コロナ政策への懸念、気候変動問題等が挙げられる。

ウクライナがハルキウ州やドンバスで反転攻勢、ロシア軍が2月の侵攻開始後に投入した地上戦力の3分の1を失った可能性

まずは、ウクライナ戦争だが、2月24日に始まったロシア軍の全面侵攻から、まもなく3か月となるが、戦況に変化が出ているようだ。

英国防総省は15日、ロシアのウクライナ侵攻に関する戦況報告で、ロシア軍が2月の侵攻開始後に投入した地上戦力の3分の1を失った可能性が大きいとする分析を明らかにした。東部ドンバス地方でのロシア軍の攻勢は「勢いを失い、予定よりも大幅に遅れている」と指摘。

NATOのストルテンベルグ事務総長も15日、記者団に対し、ロシア軍が「首都キーウ制圧に失敗、ハルキウ周辺から撤退し、ドンバス地方での大規模攻勢は失速した」と指摘。「ウクライナはこの戦争に勝ち得る」と述べた。

当初劣勢にあったウクライナ軍は足元、欧米諸国から供与を受けた最新兵器、特に、榴弾砲による長距離砲撃で、ロシア軍の部隊を多数撃破、大きな戦果を挙げているようだ。

結果、ハルキウ州では、ロシア軍は国境付近まで徐々に押し戻されており、隣のキーウ州同様、近い将来、全面撤退に追い込まれる可能性が出てきた。

尤も、ロシア軍はウクライナ侵攻の補給拠点ともなっているロシア・ベルゴロド州の州都ベルゴロドが榴弾砲等の射程内に入るのは避けたい模様で、米シンクタンク「戦争研究所(ISW)」によると同市に近い国境地域は支配を維持する布陣を敷いているようだ。

また、ロシアが現在、最優先で取り組んでいるとみられるドンバス地方(ルハンシク州及びドネツク州)の制圧作戦においても、ドネツ川渡河などで集結した部隊へのウクライナ軍の攻撃により、補充部隊や兵站等が寸断され、進攻が停滞していると報じられている。

背景には、情報戦と精密攻撃にたけた米国等からの支援がありそうだ。

具体的に、欧米は偵察衛星及び偵察機により、ウクライナ側にロシア軍の配置を連絡、ウクライナ軍は偵察ドローンを飛ばし、位置を正確に把握、欧米から供与された榴弾砲による、数十キロ離れた所から誘導砲弾による精密砲撃を実施、ロシア軍部隊に大きな損害を与えているとみられる。

偵察機に関しては、NATO軍がウクライナ西部リビウ周辺の同国領空内で戦闘機の護衛をつけて、早期警戒管制機を飛ばしていると、英情報筋が明らかにしている(16日付け時事通信)。

ウクライナ領空内での行動は同国の了解の下で行われているとのことであり、NATO諸国がポーランドに展開しているパトリオット地対空ミサイルの対航空機射程(約70km)内で行動しているものとみられる。

ウクライナ戦争の第2段階は、榴弾砲や戦車による地上戦が主体に、欧米諸国が供与した最新兵器が大きな効果

ラスプテッィツア(雪解け)の影響で泥濘(ぬかるみ)と化しているウクライナ北部と異なり、ウクライナ戦争の「第2段階」で主戦場となっている東部や温暖な南部は乾燥した平地が拡がることから、榴弾砲や戦車による地上戦が主体となるとみられる。

4月以降、欧米諸国が榴弾砲等重火器の供与を本格化させているのもそうした事情が背景にある。

公式発表分だけで、米国が「M777」155mm榴弾砲:90門(牽引車及び砲弾含む)を供与済で、同榴弾砲をオーストラリアは6門、カナダは4門を供与しており、「M777」は計100門となる。

ドイツが「PzH2000」155mm自走榴弾砲7両、別途、オランダから5両供与する予定で、「PzH2000」は計12両となる。何れも、ドイツ国内でウクライナ兵を訓練後引き渡す予定。

フランスは「カエサル」155mm自走榴弾砲を台数不明(10-12両?)なるも供与済。フランス国営テレビ(F2)は17日、既に、10両程度が実戦投入されていると伝えている。

他に英国も今後、榴弾砲等を供与する予定。なお、英国防省によると、英国は「チャレンジャー2」戦車をポーランドに提供済。ポーランドは240両の「T-72」戦車をウクライナに供与したとみられ、英国製戦車や米国製戦車「M1A1エイブラムス」等で補充しているようだ。

米国防省によると、15日にオースティン国防長官がウクライナのレズニコフ国防相と会談した際、米国がウクライナに供給した90門の「M777」榴弾砲のうち、既に、74門が実戦投入されており、長距離の間接射撃能力を提供していると語ったとのこと。

ウクライナ側はハリコフ州やドンバスでの戦いにおいて、欧米が供与した榴弾砲の性能を極めて高く評価したとのことだ。

欧米が供与している155mm榴弾砲及び自走榴弾砲は、ロシア軍の榴弾砲よりも射程距離が長く、誘導砲弾も使用可能だ。今回、ウクライナに供与されたとみられる「M982エクスカリバー」砲弾はGPS誘導で最大40kmの射程を持つとされる。

偵察衛星、早期警戒機及びドローンによる正確な情報と長距離の精密砲撃が、ウクライナ軍の損害は少なく、ロシア軍に大きな損害を与えている可能性が高そうだ。

マリウポリ陥落、ロシア軍はハルキウ州東部からヘルソン州まで陸の回廊形成、新型レーザー兵器「ザディラ」投入

一方、ロシア側にも動きが。

ロシア国防省はウクライナ東部ドネツク州の要衝マリウポリのアゾフスターリ製鉄所から大勢の兵士などが新たに投降したと発表し、これまでに投降したのは959人に上ったとのこと。

アゾフスターリ製鉄所には、内務省管轄の国家親衛隊に属するアゾフ大隊やウクライナ軍海兵隊の兵士が立てこもり、3か月以上にわたって抵抗を続けてきたが、ウクライナのゼレンスキー大統領もマリウポリでの任務は終了したと表明しており、ロシアがマリウポリを事実上、完全掌握したとみられる。

これにより、ロシア軍はハルキウ州東部からヘルソン州までの「陸の回廊」を形成。ウクライナ側はアゾフ海へのアクセスは完全に閉ざされ、黒海へのアクセスもムィコラーイウ州とオデーサ州に限られることになった。但し、ロシアの黒海艦隊が旗艦「モスクワ」などは失ったものの、引き続き海上封鎖しており、穀物輸出等陸路に限られているのが現状だ。

ロシア軍は親ロシア派が実効支配するもモルドバ東部の沿ドニエストル地域まで支配を拡げ「陸の回廊」を延伸し、ウクライナを黒海からも完全に遮断する戦略目標を保持しているものとみられる。

また、ロシア軍はウクライナ軍が多用するドローンへの対抗策として、新型レーザー兵器「ザディラ」を投入したと発表。ロイター通信(18日付け)によると、ロシアのボリソフ副首相(軍事開発担当)が18日明らかにした。

ボリソフ氏は、 ロシアのプーチン大統領が2018年に発表した新型レーザー兵器「ペレスベット」よりも強力にドローンなどを破壊できる兵器を保有しているとし、17日に実施された試験で5キロ先にあるドローンが5秒以内に燃焼したと表明。

既に広範に配備済のペレスベットは地表から1,500キロ上空にある衛星の機能を停止させることができるとし、「ペレスベットで機能停止が可能だが、次世代のレーザー兵器では標的を燃焼させ、物理的に破壊できる」(同)と述べた。

こうした新兵器をウクライナに投入しているかとの質問に対し、「最初のプロトタイプがすでにウクライナで使われている」とし、兵器の名称は「ザディラ:Zadira」であると明らかにした。

ボリソフ氏は、ロシアの核兵器研究の中心地であるサロフから戻ったばかりだと語り、広い電磁帯域を使用する新世代のレーザー兵器は、最終的には従来の兵器に取って代わるだろうとし、「これはある種のエキゾチックなアイデアではない。それは現実だ」(同)と述べた。

「ザディラ」についてほとんど知られていないが、2017年に国内メディアがロシアの国営原子力会社ロスアトムが開発に協力したと報じており、原子力をエネルギー源に用いている可能性がある。

新型レーザー兵器投入の背景には、戦力強化に加え、戦闘の長期化でロシア軍のミサイルの在庫が減少していることや、欧米諸国の経済制裁で、半導体など精密誘導兵器の生産に必要な戦略商品の輸入が困難になっていることが挙げられる。

なお、ウクライナのゼレンスキー大統領は18日夜のビデオ演説で新型レーザー兵器について、第二次世界大戦での敗北を防ぐためにナチスドイツが発表したいわゆる「不思議な兵器」と揶揄しており、実戦での実効性は乏しいと判断しているようだ。

但し、ウクライナ戦争は戦況やステージが変化しつつあることは間違いないと言えそうだ。

フィンランドとスウェーデンがNATO加盟申請

ウクライナ戦争は欧州のエネルギー政策のみならず、安全保障政策にも大きな影響を与えている。

北欧のフィンランドとスウェーデンの両国は5月18日、同時に、NATO(北大西洋条約機構)への加盟を申請した。

ベルギーの首都ブリュッセルにあるNATO本部で両国の大使がストルテンベルグ事務総長と面会。ストルテンベルグ氏は加盟手続きを急ぐ考えを強調した。

米国のバイデン大統領は19日、フィンランドのニーニスト大統領とスウェーデンのアンデション首相をホワイトハウスに招き、NATO加盟問題を協議する。

フィンランドは5月15日、北大西洋条約機構(NATO)への加盟を申請する方針を決定。ニーニスト大統領とマリン首相は12日の会見で「フィンランドはただちに加盟申請しなければならない」とする共同声明を発表。政府は15日、加盟申請についての政府方針を正式決定。その後、17日に議会で採決が行われ、議員200人のうち、賛成188、反対8の圧倒的賛成でNATOへの加盟申請案を可決。

スウェーデンでも15日、与党の社会民主労働党が加盟支持を発表。16日には、アンデション首相が記者会見で、NATOに18日までに加盟申請すると正式に表明した。

17日には、アンデション首相とニーニスト大統領が共同記者会見を行い、18日、両国は同時に、NATOへの加盟を申請することを発表していた。

NATOは6月末にスペインのマドリードで首脳会議を予定、同会議で決定すれば、早ければ数か月以内に、加盟国が30カ国から32カ国に拡大する可能性も

NATOは6月29、30日にスペインのマドリードで首脳会議を予定しており、同会議で決定すれば、早ければ数か月以内に、加盟国が30カ国から32カ国に拡大する可能性がある。

北大西洋条約は、既存のすべての同盟国が同意する限り、他のヨーロッパ諸国が同盟に参加することが可能。メンバー候補者は、NATOの核となる価値観を共有し、ユーロ大西洋地域の安全保障に貢献する能力と意欲を持っている必要がある。

NATOの設立目的は集団的防衛、現加盟国は30カ国

NATOは1949年に設立され、その本質的な目的は、政治的および軍事的手段によって、全てのメンバーの自由と安全を守ることである。集団的防衛の原則は、NATOの創設文書である北大西洋条約の第5条に定められている。

加盟国は現在、30カ国。ベルギー、カナダ、デンマーク、フランス、アイスランド、イタリア、ルクセンブルグ、オランダ、ノルウェー、ポルトガル、英国、米国の12の創設メンバーから始まり、ギリシャ、トルコ(1952)、ドイツ(1955)、スペイン(1982)、チェコ共和国、ハンガリー、ポーランド(1999)、ブルガリア、エストニア、ラトビア、リトアニア、ルーマニア、スロバキア、スロベニア(2004)、アルバニア、クロアチア(2009)、モンテネグロ(2017)、北マケドニア(2020)の18カ国が追加加盟。

NATOに最も影響力のある米国に加え、英国、ドイツ、一時軍事機構から脱退し復帰したフランスなど、主要国はフィンランドとスウェーデンの北欧2カ国のNATO加盟に前向きだ。

現在、NATOトップのストルテンベルグ事務総長は、かねて、スウェーデンとフィンランドが決断したのなら加盟は容易だろうとの見解を表明。両国は長年、NATOと共に働いてきており、軍の相互運用や軍に対する民主的な統制などの問題でNATOの基準に合致していると述べている。

ちなみに、ストルテンベルグ事務総長は、ノルウェー出身で、2000年に最年少の41歳でノルウェー首相に就任した元首相。事務総長退任後は、ノルウェー中銀の総裁に就任する予定だったが、現下の国際情勢を受け、事務総長の任期が継続しており、ノルウェー中銀の総裁就任は遅れる見通し。

同じく北欧のスウェーデンとフィンランドの加盟に残り任期をかけて、尽力するものとみられる。

ハードルはロシアとの関係が良好なトルコとハンガリーが反対する可能性、但し、条件闘争か

但し、ハードルがない訳ではない。具体的には、ロシアとの関係が良好なトルコとハンガリーが反対する可能性だ。

ハンガリーはEUにも加盟しており、最終的には、北欧2カ国のNATO加盟に賛成するとみられるが、トルコはエルドアン首相やチャブシオール外相が早速、2カ国による「テロ組織支援」を理由に、受け入れに難色を示している。

トルコのチャブシオール外相は14日のNATO外相会合前、記者団に「トルコ国民の大多数はテロ組織を支援している国の加盟に反対し、加盟阻止を求めている」(16日付け時事通信)と発言。2カ国が反政府武装組織、クルド労働者党(PKK)を支援していると主張し、加盟承認に慎重なトルコの立場を明確にした。

こうした状況を受けて、2カ国は14日、トルコと個別に3カ国会談を行い、説得を開始した。

トルコは現在、ロシア製のS400地対空ミサイルの導入や、人権活動家らの訴追等を巡ってNATOや欧米諸国と軋轢を生じており、EU加盟の見通しは立っていない。

ここで、2カ国の加盟阻止に動けば、EUのみならず、NATOからの離脱、トルコ南部にある米軍のインジルリク空軍基地に配備された核兵器の撤去問題等にも波及する可能性があることから、あくまで、条件闘争とみられるが、2カ国の加盟の遅れに繋がる可能性はある。

なお、正式加盟には、全加盟国による議定書署名後、各国内での批准手続きも必要で、通常は、半年から1年はかかるが、今回、2カ国や主要加盟国は数カ月間でのスピード加盟を目指している。

特に、対ロシア関係では、北大西洋条約第5条の集団防衛義務が適用されない手続き期間が重要であり、2カ国は英米等との安全保障に関する協力関係を強化する方針。

既に、英国は5月11日、スウェーデン、フィンランドの両国と安全保障協定に合意した。いずれかの国が攻撃を受けた場合、支援を行うという内容。ボリス・ジョンソン首相が両国を訪れ、合意文書に署名した。

但し、この協定は法的または自動的な安全保障に関するものではなく、要請があればイギリスが支援に向かうことを政治的に宣言するという位置づけであり、北大西洋条約第5条とは異なる。

ウクライナ同様、ロシアによるフィンランドへの軍事侵攻の可能性が高まることは否定できない

フィンランドとスウェーデンのNATO加盟の動きに、ロシアは猛反発しており、フィンランドへの電力供給を停止するなど、既に対抗措置に出ている。

フィンランドはロシアと国境を約1,300キロ接しており、首都ヘルシンキとロシア第二の都市サンクトペテルブルクとフィンランドの首都ヘルシンキは、フィンランド湾を挟んで、僅か380キロしか離れていない。

ロシアのペスコフ大統領報道官は、英スカイニュースとの会見で5月7日、NATOと対峙する同国の西方圏の安全保障の態勢をより高度な水準にせざるを得ないと強調した。

プーチン大統領もモスクワで16日に開催された「CSTO:集団安全保障条約機構」の首脳会議で、北欧2カ国の動きに関し、「フィンランドとスウェーデンによる拡大は、われわれにとって直接的な脅威ではない。しかし、両国の領土で軍事的なインフラが拡大する事態になれば、確実に、われわれは対応する」(17日付けNHK)と述べ、対抗措置を取る可能性を示した。

ウクライナ同様、ロシアによるフィンランドへの軍事侵攻の可能性が高まることは否定できず、今後の動向を注視する必要がありそうだ。

人口は少ないものの、フィンランドとスウェーデンは、歴史的に強固な軍隊を保有

なお、北欧4カ国のうち、フィンランドの人口は約551万人(2018年12月末時点)。スウェーデンは約1,044万人(2021年10月時点)。ノルウェーは約542万人(2021年)、デンマークは約581万人(2019年)と、何れも人口規模は近い。

このうち、NATOとEUの両方に加盟しているのはデンマークのみで、EUのみ加盟がスウェーデンとフィンランド、NATOのみ加盟がノルウェー。

フィンランドは、スウェーデンの一部となった後、ロシアへ割譲され、ロシア革命後の混乱期の1917年にロシアから独立するも、1939年と1945年の2度、ソ連との間で戦争が発生。1939年の冬戦争では領土の約1割を失うことになった。第2次世界大戦では枢軸国側に立ったが、ソ連軍に大きな損害を与え、ドイツ降伏前に、ロシアと講和条約を結んだため、占領や領土の割譲等は免れた経緯にある。

一方、スウェーデンは、スイスのように武装中立政策を採り、第一次世界大戦及び第2次世界大戦ともに参加せず、約200年にわたって中立を保ってきた。

前述のように、何れも人口は少ないものの、歴史的に強固な軍隊を保有している。フィンランドは徴兵制を維持。

スイス同様、国民皆兵制度を採っていたスウェーデンは2010年に徴兵制を廃止したが、ロシアのクリミア併合等を受けて、2018年に徴兵制を復活。現在では、イスラエルなどのように、18歳以上の男女と、女性も対象となっている。

プーチン大統領にとっては「埋没コスト:sunk cost」の処理が課題に

今後、欧米製最新兵器の一段の投入で、ウクライナ軍の反転攻勢は一層強まることが予想される。

プーチン大統領は、ロシア軍の損害拡大に加え、経済制裁、フィンランドやスウェーデンのNATO加盟申請等、軍事・経済・外交面における今回のウクライナ侵攻がもたらした「埋没コスト:sunk cost」の回収をあきらめるのか、当該分の処理のため、ウクライナ東部や南部、モルドバ、ジョージア等での親ロシア地域のロシア併合を進め、また、NATO東方拡大阻止のため、フィンランド等でも一段の戦線拡大に動くのか、今夏に向けては、極めて重要な岐路に差し掛かっていると言えそうだ。

今夏はラニーニャ現象の長期化と負のIODの発生で、猛暑と大雨に注意が必要

その今夏だが、猛暑と大雨に注意が必要だ。

気象庁は5月12日発表のエルニーニョ監視速報(No. 356)で、「ラニーニャ現象が続いている。夏にかけてラニーニャ現象が続く可能性が高い(70%)。その後、秋にかけてラニーニャ現象が続く可能性と平常の状態になる可能性は同程度である(50%)」とした。

4月号では、「夏は平常の状態になる可能性が高い(70%)」としていたが、ラニーニャ現象が長期化し、今夏まで続く可能性が高まった。

米気象予報センター(CPC)も、5月12日付けレポートで、8月から10月の北半球の夏の間、ラニーニャ現象が発生している確率を58%、北半球の秋から2022年初冬にかけては、61%とし、夏以降もラニーニャ現象が長期化する可能性を示した。

一方、オーストラリア気象局(BOM)によると、インド洋ダイポールモード現象(IOD)は現在中立状態だが、負のIODが今後、数か月の間に、南半球の晩秋または初冬(北半球の晩春または初夏)までに再度発生する可能性があるとしている。

なお、8月までに、BOMを含め欧米の主要気象機関が負のIODの発生を予想している

ラニーニャ現象は「猛暑・厳冬」を招きやすく、近年、負のIODが発生すると日本で大雨が頻発

エルニーニョ現象が「冷夏・暖冬」を招きやすいとされるのに対し、ラニーニャ現象は「猛暑・厳冬」と反対の特性がある。

但し、近年は地球温暖化の影響で、エルニーニョ現象が発生すると、冬は記録的な暖冬、夏は平年並の暑さとなることが多く、ラニーニャ現象が発生すると、夏は記録的な猛暑、冬は平年並の寒さとなることが多い。

ラニーニャ現象の長期化により、今夏は猛暑となる可能性が高まってきたと言えそうだ。

一方、正のIOD発生時は降水量が減少し、気温が高くなる傾向があるが、負のIODの影響は必ずしも明瞭ではない。但し、前々回、負のIODが発生した2020年の夏には各地で大雨が記録され、前回の2021年夏も季節外れの秋雨前線の停滞で降水量が多かった。

現在、IODは中立状態なるも、今夏までには再度、負(ネガティブ)のIODが発生する可能性が高く、今夏は大雨への警戒が必要か。

WHOによると、COVID-19の新規感染者数は8週ぶりに増加、WHOの6つの地域区分のうち、南北アメリカ、西太平洋、東地中海とアフリカで増加

WHOによると、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の週次(5月9日から15日)の新規感染者数は8週ぶりに増加に転じた。

WHOの6つの地域区分のうち、南北アメリカ、西太平洋、東地中海とアフリカで増加、2地域で減少。水準的には低いものの、規制緩和・社会経済活動の正常化に加え、オミクロン株の亜系統株「BA.2」や「BA.2.12.1」「BA.4」「BA.5」の感染拡大が影響した可能性が高そうだ。

オミクロン株による感染波の特徴は、WHOの地域区分で西太平洋地域に分類される東アジアや東南アジアでの感染拡大、足元、北朝鮮及び台湾で感染爆発

なお、オミクロン株による感染第6波では、南東アジア以外の5つの地域(WHO区分)で、週次の新規感染者数が最多を更新した。特に、今回のオミクロン株による感染波の特徴は、WHOの地域区分で西太平洋地域に分類される東アジアや東南アジアでの感染拡大だ。

韓国の週次の新規感染者は2月28日から3月6日の週以降、4月11日から17日の週まで、7週連続で世界最多となった。韓国での感染爆発の背景には、3月9日の大統領選の影響も指摘されるが、世界全体でオミクロン株による感染第6波が長期化した背景には、北半球の冬から春にかけた季節要因に加え、規制緩和、亜系統株BA.2への置き換わり等が挙げられる。

その後は、中国では新規感染者が急増。上海や北京など大都市部で事実上のロックダウンに踏み切っている。加えて、中国同様、ゼロ・コロナ政策を採用していた北朝鮮でも新型コロナウイルスの感染に伴うとみられる発熱者数が4月末から急増。

北朝鮮は、オミクロン株亜系統株「BA.2」の感染拡大を確認したと発表した。国営の朝鮮中央通信が12日伝えている。

19日付け朝鮮中央通信が伝えた国家緊急防疫司令部の発表によれば、5月17日18時から18日18時まで全国で26万2,270人余りの発熱者が新たに発生し、21万3,280人が完快し、1人が死亡。

4月末から5月18日18時までに発生した全国での発熱者総数は197万8,230人余りであり、そのうち123万8,000人余りが完快し、74万0,160人余りが治療を受けており、現在までの死亡者総数は63人とのこと。

北朝鮮の人口は約2,578万人(2020年、国連)のため、半月で、少なくとも、全人口の8%近くが感染した可能性がある。

北朝鮮はWHOが進める「COVAXファシリティ」によるワクチン供与や中国による供与を辞退し、ワクチン接種率はほぼゼロだ。また、過去の鎖国政策の影響で、自然感染もゼロに近いと考えられる。中国から治療薬等の支援を受け始めたと伝えられているが、感染力が従来株の6倍から15倍に上るとみられるオミクロン株「BA.2」により、感染爆発が止まらない可能性も十分想定される。

また、足元では台湾でも新規感染者が急増している。新規感染者数は5月10日に初めて5万人を超え、12日からは6万人を超えている。

感染者の減少が続いていた米国が再度増加、「BA.2」及び「BA.2.12.1」亜系統株への置き換わりが背景「BA.2.12.1」比率47.5%

直近1週間で新規感染者数の多い国・地域は、米国、ドイツ、台湾、オーストラリア、日本の順となった(ロイター)。なお、WHOによると、米国、中国、ドイツ、オーストラリア、日本の順。感染者の減少が続いていた米国が再度、増加に転じ、2週連続で世界最多となった。

背景には、「BA.2」亜系統株とともに、「BA.2.12.1」亜系統株への置き換わりがある。

米CDCも、「BA.2.12.1」の比率を公表し始めたのは4月からだが、5月8日-14日の週の比率は、BA.2が50.9%、BA.2.12.1が47.5%、BA.1.1が0.3%、B.1.1.529が1.2%と、元々のオミクロン株であるB.1.1.529が駆逐され、その後に主流となったBA.1.1も1%を切った一方、BA.2が主流となった。

他方、新しい亜系統株であるBA.2.12.1が約5割にまで拡大、置き換わりが進んでいる。

「BA.2.12.1」の感染力は従来株の7倍から20倍程度か、米国を含め、BA.2.12.1の動向は注視する必要

世界全体では3月の段階で、主流がBA.2に置き換わっているが、BA.2.12.1への置き換わりは、これからとみられる。既に、インドの首都デリーで、主流となっているとの報告があるが、現時点ではインド全体での感染拡大はみられていない。

ちなみに、WHO等によると、従来株と比較し、アルファ株(B.1.1.7)の感染力は既存株の最大1.7倍とされ、デルタ株(B.1.617.2)はアルファ株の1.4〜1.6倍の感染力を持つことから、デルタ株の感染力は従来株の約2倍となる。なお、米CDCは、デルタ株の感染力は従来株の約3倍との見方も発表している。

一方、オミクロン株の感染力はデルタ株の約2〜4倍とみられる。厚生労働省は約2.8倍としている。

BA.2 の感染力はBA.1の1.3倍(WHO)であり、従来株と比較すると、6倍から15倍程度に上ることになる。

BA.2.12.1は、BA.2よりも感染力が強いとみられる。BA.2.12.1が既に主流となっているニューヨーク州保健当局は4月13日、BA.2.12とBA.2.12.1の発生を確認し、2つの亜系統株は、BA.2よりも23%から27%感染力が強いとの見方を示している。

CDCのワレンスキー所長は4月26日の会見で、予備的な証拠はBA.2.12.1がBA.2よりも約25パーセント伝染性が高いことを示していると述べた。

一方で、ワレンスキー氏は、BA.2.12.1の感染拡大に見合った割合で入院が上向きになっている兆候はまだみられないと言及。これは、以前の感染やワクチン接種からのコミュニティでの大量の保護が原因である可能性があるとした。

BA2.12.1には、L452Q変異があり、L452R変異を持つ、デルタ株(B.1.617.2)同様、ウイルスがヒト細胞に感染する能力を高めている可能性がある。また、BA2.12.1は、S704L変異も持つ。

BA.2.12.1の感染力は、従来株と比較すると、7倍から20倍程度に上ることになる。もはや、同じ、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)とは言えないほどの感染力だ。

米国を含め、BA.2.12.1の動向は注視する必要がありそうだ。

WHOによると、2021年末までのパンデミックによる世界の超過死亡数は1,491万人、報告された死亡数542万人よりも、949万人多い結果に

2020年から2021年末の間、WHOによると、世界では約542万人、米国では約82万人が亡くなったことになっているが、実際の死者は確認死亡数を大きく上回った可能性が高い。

WHOは5月5日、「2020年1月から2021年12月までのCOVID-19に関連する世界的な超過死亡」と題する報告書を発表。その中で、パンデミックによる世界の超過死亡数が1,491万人に上ったとしている。COVID-19に直接起因すると世界的に報告された死亡数542万人よりも、949万人多い結果となった。

COVID-19パンデミックの直接・間接的な影響による死者数は、確認死亡数の約3倍(2.75倍)となる。

報告書は、一部の加盟国、具体的にはインド等から異論が出たことから、個別国に関する表現は慎重な言い回しとなっているが、世界人口の約50%を占める20か国で、2020年1月から2021年12月までの推定世界超過死亡率の80%以上を占めたとしている。

これらの国は、ブラジル、コロンビア、エジプト、ドイツ、インド、インドネシア、イラン、イタリア、メキシコ、ナイジェリア、パキスタン、ペルー、フィリピン、ポーランド、ロシア連邦、南アフリカ、英国、トルコ、ウクライナ、及びアメリカ合衆国の20カ国。

その中で、超過死亡の絶対数では、インドが最多で約474万人、ロシアの約107万人、インドネシア約103万人、米国の約93万人、ブラジルの約68万人と続く(何れの中央推計値)。

なお、過少死亡となった国も、中国、日本、オーストラリア、島嶼部の小国などでみられる。

尤も、我が国の場合、2020年は約3万人の過少死亡となったが、2021年は約1万人の超過死亡となり、2022年もオミクロン株の感染拡大で超過死亡が増えた可能性がある。

なお、ワシントン大のIHME(保健指標評価研究所)は現時点のCOVID-19関連の超過死亡は1,800万人超と、試算している。

デルタ株及びオミクロン株では、「ファクターX」は確認されず

パンデミック1年目の2020年には、インドを含むアジア全域で、感染者数が少なく、「ファクターX」の存在を指摘する声も上がったが、2021年春の第4波以降(世界的には2021年夏の第5波)に感染が拡大したデルタ株(B.1.617.2)では、アジア全域に感染が急拡大することになった。

特に、最初に感染者が確認されたインドでは2021年春のデルタ株の感染爆発が発生。2021年夏の時点で、抗体検査等の結果から、インドの人口(約14億人)の大半、10億人超が感染と、実際の累積感染者数は米国を上回り、世界最大のエピセンター(感染の中心地)となったと考えられる。

3月から4月にかけては、日本人と遺伝的特徴が近い韓国が、確認症例ベースで世界最多となり、足元では、北朝鮮や台湾でも感染爆発が起きていることを勘案すると、「ファクターX」の正体は、マスク・手洗い・非接触の挨拶等、生活習慣等の違いに過ぎない可能性が高そうだ。

オミクロン株(B.1.1.529)の感染力は凄まじいことから、今後は、パンデミック以来、ゼロ・コロナ政策を続けてきた中国の動向が最大の焦点となろう。

その中国だが、現在、上海などいくつかの都市で、ロックダウンが実施されている。感染者の減少ペースは鈍かったものの、ようやく収束傾向となってきた。

中国共産党は今秋に第20回全国代表大会を控えており、異例の3期目を目指す習近平総書記(中央委員会主席のポストを復活させ就く可能性も)は、ゼロ・コロナ政策をそれまで維持する方針とみられる。

但し、上海で実施されているようなロックダウンが各地で実施されることになると、社会経済活動への負担は大きく、ウクライナ戦争と相俟って、世界経済の下押し圧力となりそうだ。

一方で規制緩和時には、中国で最後の感染爆発が起きる可能性がある。米ワシントン大のIHMEはそのタイミングを今冬とみているようだ。

IHMEによると、人口に対するオミクロン株の自然感染率は米国の76%に対し、中国では約2%で、ワクチン接種の効果を勘案すると、米国では人口の73%が免疫を持っているが、中国では32%に過ぎない。結果、極めて大きな感染爆発が起きる可能性があるとしている。また、ワクチン接種率の低い80歳以上の高齢者へ感染するリスクに対し懸念を示している。

COVID-19パンデミックとの最後の攻防は中国で起きる可能性が高そうだ。

なお、IHMEは、南アフリカで確認されたBA.4及びBA.5への警戒とともに、将来、デルタ株並の重症化率とオミクロン株並の感染力のある変異株(バリアント)が発生した場合に備え、抗ウイルス薬の普及を呼び掛けている。

世界的には、オミクロン株による感染第6波は収束へ、但し、中国リスクは残存、影響長期化も

世界的に、オミクロン株による感染第6波は収束しつつあるとみられる。次の季節的な感染波は、南半球が真冬で、北半球が真夏となる7月頃と見込まれるが、中国以外では、相当程度の集団免疫が確保されたことで、波は第6波に比べると小さいものとなりそうだ。

ちなみに、100年前にスペイン風邪(H1N1インフルエンザウイルス)のパンデミックが発生した際には、どの国でも夏には感染が、一旦収束していた。今回は2020年の夏や2021年の夏にも、感染が拡大している。背景には、エアコンの普及で、夏場に密となりやすい環境が形成されていることが考えられる。

問題は今冬だろう。中国が党大会終了で、習近平氏が「党の核心」としての続投が決まった後、ゼロ・コロナ政策を放棄した際には、中国で感染爆発が起きる可能性がある。

今冬には、台湾情勢も緊迫化している可能性がある。世界経済への影響は、ウクライナ戦争とインフレの影響と相まって、より長期化する可能性もあり、留意が必要だろう。

対COVID-19戦争は「エンドゲーム:終局」に、「ラスト・グレート・ウォー:最後の大戦」も山を越すも、COVID-19は「収束」しても、「終息」せず

WHOのテドロス事務局長がパンデミック(世界的な大流行)を宣言したのは2020年3月11日。それから、丸2年が経過したが、対COVID-19戦争は現在、「エンドゲーム:終局」にあると認識している。

筆者は、オミクロン株による感染波を、「ラスト・グレート・ウォー:最後の大戦」と定義しているが、何れにせよ、世界的な感染のピークは過ぎたと考えられる。

然るに、COVID-19は「収束」しても、「終息」せず、季節性コロナウイルス、言わば「季節性戦争:シーズナル・ウォー」への移行や他のバリアント(変異株)によるパンデミックの可能性は続くことになりそうだ。

実体経済や金融市場への影響も、完全に収束とはいかず、ウイズ・コロナ状態が続くことになろう。

映画観客動員ランキングで『シン・ウルトラマン』が初登場第1位に

前週末(5月14日-15日)の映画の観客動員ランキングでは、『シン・ウルトラマン』が初登場1位となった(興行通信社調べ、以下同じ)。空想特撮ヒーロー「ウルトラマン」を、『シン・ゴジラ』の庵野秀明氏と樋口真嗣氏のタッグで新たに映画化。庵野氏が企画・脚本、樋口氏が監督を務めた。

公開初日から3日間の累計では動員64万人、興収9億9300万円を突破し、今年公開の邦画実写映画ではNo.1のスタートに。2016年公開で興収82.5億円を記録した『シン・ゴジラ』との公開3日間対比でも、動員113.5%、興収117.2%と幸先の良いスタートとなった。

主人公の「ウルトラマンになる男」神永新二を斎藤工さんが演じ、長澤まさみさん、西島秀俊さんらが共演。

早速、前週末鑑賞してきたが、良い意味で、特撮テレビ番組『ウルトラマン』と『シン・ゴジラ』及び『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』(2021年公開)をミックスした映画。ウルトラマンファンに加え、ゴジラファン、エヴァファンは「映画館へGO」か。

2位には4週連続1位だった『名探偵コナン ハロウィンの花嫁』が入った。累計では動員541万人、興収75億円を突破。昨年公開の『名探偵コナン 緋色の弾丸』の累計興収まで、あと約1億円に迫っている。こちらも大人も楽しめる奥の深い作品に仕上がっており、前作越えは必定か。

3位には、『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』が続いた。累計では動員107万人、興収16億円を突破している。同作品も従来の『ドクター・ストレンジ』のイメージを変える新領域の作品。

ちなみに、現時点の2022年の全米及び世界興収ランキングは、何れも『THE BATMAN-ザ・バットマン-』が第1位で『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』が第2位につけている(BoxOfficeMojo調べ)。

『アベンジャーズ』シリーズは、2019年に公開され、当時、歴代世界最高興収を上げた『アベンジャーズ/エンドゲーム』で事実上終焉したが、7月8日公開予定の『ソー:ラブ&サンダー』等、関連作品は今後も大ヒットが続きそうな予感がする。

なお、現時点での世界歴代最高興収作品は2009年公開の『アバター』。2021年に中国で再上映されたことで、逆転した。『アバター』が28億4,739万ドルで、『アベンジャーズ/エンドゲーム』が27億9,750万ドル(BoxOfficeMojo調べ)。

『アバター』は続編の『アバター ウェイ・オブ・ウォーター』が本年12月に公開予定。

4位には、『映画クレヨンしんちゃん もののけニンジャ珍風伝』が入り、5位には『流浪の月』が初登場。

注目映画が続々公開

COVID-19の新規感染者の減少もあり、5月から6月に向けても、ハリウッドの大作含め、続々と注目映画が公開される。

5月20日公開の『大河への道』は、落語家・立川志の輔さんの創作落語「伊能忠敬物語 大河への道」を映画化。

千葉県香取市役所の総務課に勤める池本保治(中井貴一さん)は、市の観光振興策を検討する会議で意見を求められ、苦し紛れに大河ドラマ制作を提案。思いがけずそれが通り、郷土の偉人、伊能忠敬を主人公とする大河ドラマの企画が立ち上がってしまう。ところが企画を進めるうちに、日本地図を完成させたのは伊能忠敬ではなかった。彼は地図完成の3年前に亡くなっていた。という驚きの事実が明らかに。江戸と令和、2つの時代を舞台に明かされていく日本初の全国地図誕生秘話。そこには地図を完成させるため、伊能忠敬の弟子たちが命を懸けて取り組んだとんでもない隠密作戦があった。

ハケンアニメ!

『ハケンアニメ!』
2022年5月20日全国ロードショー
©2022 映画「ハケンアニメ!」製作委員会

同じく20日公開の『ハケンアニメ!』は、直木賞作家・辻村深月氏がアニメ業界で奮闘する人々の姿を描いた小説「ハケンアニメ!」を映画化。

連続アニメ『サウンドバック 奏の石』で夢の監督デビューが決定した斎藤瞳。だが、気合いが空回りして制作現場には早くも暗雲が。瞳を大抜擢してくれたはずのプロデューサー・行城理は、ビジネス最優先で瞳にとって最大のストレスメーカー。「なんで分かってくれないの!」だけど日本中に最高のアニメを届けたい。そんなワケで目下大奮闘中。

最大のライバルは『運命戦線リデルライト』。瞳も憧れる天才・王子千晴監督の復帰作だ。王子復活に懸けるのはその才能に惚れ抜いたプロデューサーの有科香屋子。瞳は一筋縄じゃいかないスタッフや声優たちも巻き込んで、熱い「想い」をぶつけ合いながら 「ハケン=覇権」 を争う戦いを繰り広げる。

新人監督・瞳を吉岡里帆さん、天才監督・王子を中村倫也さんが演じ、柄本佑さん、尾野真千子さんが共演。

20日公開の『鋼の錬金術師 完結編 復讐者スカー』は、荒川弘氏の大ヒット漫画を実写映画化した『鋼の錬金術師』の続編となる完結編2部作の前編。『最後の練成』の公開は6月24日。

主人公エドを演じる山田涼介さんら前作のキャストに加え、スカー役の新田真剣佑さん、大総統キング・ブラッドレイ役の舘ひろしさん、オリヴィエ・ミラ・アームストロング役の栗山千明さんが新たに参加。前作に続き、『ピンポン』の曽利文彦監督がメガホンをとった。

27日公開の『トップガン マーヴェリック』は、トム・クルーズさんの出世作1986年公開の『トップガン』の続編。米海軍のエリートパイロット養成学校「トップガン」に、伝説のパイロット、マーヴェリックが教官として帰ってきた。空の厳しさと美しさを誰よりも知る彼は、守ることの難しさと戦うことの厳しさを教えるが、訓練生たちはそんな彼の型破りな指導に戸惑い反発する。その中には、かつてマーヴェリックとの訓練飛行中に命を落とした相棒グースの息子ルースターの姿もあった。

クルーズさん主演の『オブリビオン』のジョセフ・コジンスキー監督がメガホンをとった。

28日公開の『犬王』は、南北朝〜室町期に活躍した実在の能楽師・犬王をモデルにした古川日出男氏の小説「平家物語 犬王の巻」を映像化した長編ミュージカルアニメ。

京の都・近江猿楽の比叡座の家に、1人の子どもが誕生した。その子どもこそが後に民衆を熱狂させる能楽師・犬王だったが、その姿はあまりに奇怪で、大人たちは犬王の全身を衣服で包み、顔には面を被せた。ある日、犬王は盲目の琵琶法師の少年・友魚(ともな)と出会う。世を生き抜くためのビジネスパートナーとして固い友情で結ばれた2人は、互いの才能を開花させてヒット曲を連発。舞台で観客を魅了するようになった犬王は、演じるたびに身体の一部を解き、唯一無二の美を獲得していく。

6月3日公開の『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島』は、1979年に放送されたテレビアニメ「機動戦士ガンダム」の第15話「ククルス・ドアンの島」を『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』の安彦良和監督が新たに映像化。

ジオン公国と地球連邦による一年戦争が繰り広げられていた宇宙世紀0079年。ジャブローでの防衛戦を耐えきった地球連邦軍は勢いのままにジオン地球進攻軍本拠地のオデッサを攻略すべく大反攻作戦に打って出た。アムロ達の乗るホワイトベースは作戦前の最後の補給を受ける為にベルファストへ向け航行。そんな中ホワイトベースにある任務が言い渡される。無人島、通称「帰らずの島」の残敵掃討任務。残置諜者の捜索に乗り出すアムロ達であったが、そこで見たのは、いるはずのない子供たちと一機のザクであった。戦闘の中でガンダムを失ったアムロは、ククルス・ドアンと名乗る男と出会う。島の秘密を暴き、アムロは再びガンダムを見つけて無事脱出できるのか。

同じく3日には東京夏季オリンピックの記録映画『東京2020オリンピック SIDE:A』が公開される。

コロナ禍、延期、様々な問題、そして迎えた1年遅れの開催。750日、5,000時間の膨大な記録が映し出していたものは、フィールド上、競技場の内外、至る所に満ち溢れていた情熱と苦悩。その全てを余すことなく後世に伝えるために、河瀨直美総監督が紡ぎ出す、「東京2020オリンピック」の2つの事実。『東京2020オリンピック SIDE:B』の公開は6月24日公開。

3日公開の『極主夫道 ザ・シネマ』は、おおのこうすけ氏の同名コミックを原作とする人気テレビドラマ「極主夫道」を映画化。

かつて「不死身の龍」と恐れられた伝説の極道・黒田龍は結婚をきっかけに足を洗い、現在は専業主夫として平穏な毎日を過ごしていた。そんなある日、街に凶悪な地上げ屋が現れ、ターゲットの保育園に執拗な嫌がらせを始める。龍は元舎弟の雅とともに保育園の用心棒を引き受けるが、地上げ屋の行動はエスカレート。主演の玉木宏さんをはじめ、川口春奈さん、志尊淳さんらドラマ版のメンバーが続投するほか、吉田鋼太郎さんらが新たに参加。『劇場版 おっさんずラブ LOVE or DEAD』の瑠東東一郎監督がドラマ版に続いてメガホンをとった。

6月10日公開『はい、泳げません』はノンフィクション作家・高橋秀実氏の著書「はい、泳げません」を映画化。『舟を編む』の脚本を担当した渡辺謙作氏が監督・脚本を手がけ、水泳教室を舞台に「泳げない男」と「泳ぐことしかできない女」の希望と再生を描く。大学で哲学を教えている小鳥遊雄司は水に顔をつけることが怖く、泳ぐことができない。これまで頭でっかちな言い訳ばかりして水を避け続けてきたが、ひょんなことから水泳教室に通うことに。プールを訪れた彼に強引に入会を勧めたのが、陸よりも水中の方が生きやすいという風変わりな水泳コーチ・薄原静香だった。静香が教える賑やかな主婦たちの中にぎこちなく混ざった雄司は、水への恐怖で大騒ぎしながらもレッスンを続けるが。長谷川博己さんと綾瀬はるかさんが映画初共演。

ドラゴンボール超 スーパーヒーロー

『ドラゴンボール超 スーパーヒーロー』
2022年6月11日公開
©バード・スタジオ/集英社
©「2022 ドラゴンボール超」製作委員会

6月11日公開『ドラゴンボール超 スーパーヒーロー』は、鳥山明氏の大ヒット漫画「ドラゴンボール」を原作とする劇場版アニメ。2015-18年に放送されたテレビシリーズ「ドラゴンボール超(スーパー)」の映画化第2弾。

かつて悟空により壊滅した悪の組織「レッドリボン軍」。だがその遺志は生きていた。復活した彼らは、新たな人造人間「ガンマ1号&ガンマ2号」を誕生させ、復讐へと動き始める。不穏な動きをいち早く察知したピッコロはレッドリボン軍基地へと潜入するが、そこでまさかの「最凶兵器」の存在を知るのだった。パンをさらわれ基地へとおびき出された悟飯も参戦し、かつてない超絶バトルが始まる。果たして死闘の行方は。そして地球の運命は。

6月17日公開の『峠 最後のサムライ』は幕末の動乱期を描いた司馬遼太郎の長編時代小説「峠」を映画化。『雨あがる』の小泉堯史監督がメガホンをとった。

徳川慶喜の大政奉還によって、260年余りにも及んだ江戸時代が終焉を迎えた。そんな動乱の時代に、越後長岡藩牧野家家臣・河井継之助は幕府側、官軍側のどちらにも属することなく、越後長岡藩の中立と独立を目指していた。藩の運命をかけた継之助の壮大な信念が、幕末の混沌とした日本を変えようとしていた。継之助を役所広司さん、妻おすがを松たか子さんが演じ、田中泯さん、香川京子さん、佐々木蔵之介さん、仲代達矢さんら共演。

バスカヴィル家の犬 シャーロック劇場版

『バスカヴィル家の犬 シャーロック劇場版』
2022年6月17日全国東宝系にてロードショー
©2022「バスカヴィル家の犬 シャーロック劇場版」製作委員会

6月17日公開『バスカヴィル家の犬 シャーロック劇場版』は、アーサー・コナン・ドイルの名作探偵小説「シャーロック・ホームズ」シリーズを原案に、ディーン・フジオカさん演じる犯罪捜査コンサルタント・誉獅子雄と岩田剛典さん演じる精神科医・若宮潤一が数々の難事件に挑む姿を描いたテレビドラマ「シャーロック」の劇場版。原作シリーズの中でも人気の高い「バスカヴィル家の犬」をモチーフに、不気味な島で暮らす華麗な一族をめぐる事件を描く。監督は『容疑者Xの献身』の西谷弘氏。

瀬戸内海の離島。日本有数の資産家が、莫大な遺産を遺して謎の変死を遂げる。

資産家は死の直前、美しき娘の誘拐未遂事件の犯人捜索を若宮に依頼していた。真相を探るため、ある閉ざされた島に降り立つ獅子雄と若宮。二人を待ち受けていたのは、異様な佇まいの洋館と、犬の遠吠え。容疑者は、奇妙で華麗な一族の面々と、うそを重ねる怪しき関係者たち。やがて島に伝わる呪いが囁かれると、新たな事件が連鎖し、一人、また一人消えてゆく。底なし沼のような罠におちいる若宮。謎解きを後悔する獅子雄。これは開けてはいけない「パンドラの箱」だったのか。その屋敷に、足を踏み入れてはいけない。

備えあれば憂いなし、私の好きな言葉です?

前週末の観客動員ランキングで初登場第1位となった『シン・ウルトラマン』だが、「ウルトラマン」と違って「シン・ウルトラマン」には「カラータイマー」がついておらず、「シュワッチ」を含め掛け声もなく、基本的に無口・無音だ。なお、両腕を十字にクロスした独特なポーズからのスペシウム光線は発する。

一方、口数が多いのが、山本耕史さん演ずる「特命全権大使 メフィラス」(ウルトラマンではメフィラス星人)。

ネタばれになるので詳しくは語れないが、メフィラスは多くの格言を語る。筆者が最も印象に残ったのが、「備えあれば憂いなし、私の好きな言葉です」だ。

外星人に言われなくとも、筆者もかねて好きな言葉だが、最近の内外情勢はいくら備えても備えきれない状態だ。

COVID-19パンデミックに加え、ウクライナ戦争、米中対立、北朝鮮の核・ミサイル問題、気候変動等、暇なく危機が続いている。加えて、我が国では、巨大地震にスーパー台風、大雨・洪水・高潮等、自然災害のリスクにも備える必要がある。

一方で、2021年、我が国の人口は過去最大の64万人減少、出生数も統計開始以来最少の81万人程度(日本における日本人)にとどまったとみられ、少子高齢化の進展で潜在成長率は低下が続いている。

外星人にだまされないように、コストとリスクやベネフィット(便益)の分析をしっかり行い、選択と集中の下、ワイズスペンディング(賢い支出)を行わないと、備えることに手一杯で、実際にリスクが顕在化した際、対応するバッファーがなくなっていないように注意したいものである。

末澤 豪謙 プロフィール

末澤 豪謙

1984年大阪大学法学部卒、三井銀行入行、1986年より債券ディーラー、債券セールス等経験後、1998年さくら証券シニアストラテジスト。大和証券SMBC金融市場調査部長、SMBC日興証券金融市場調査部長等を経て、2012年よりチーフ債券ストラテジスト。2013年より金融財政アナリスト。2010年には行政刷新会議事業仕分け第3弾「特別会計」民間評価者(事業仕分け人)を務めた。日経債券アナリストランキング、14年連続10位内ランクイン。日経財政アナリストランキング2位(2004年〜2006年)。財政制度等審議会委員、国の債務管理の在り方懇談会委員、地方債調査研究委員会委員。趣味は、映画鑑賞、水泳、スキューバダイビング、アニソンカラオケ等。

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