アナリストの忙中閑話【第133回】

アナリストの忙中閑話

(2022年6月16日)

【第133回】インフレ長期化懸念で金融市場動揺、米FRBが27年半ぶりの大幅利上げ、オミクロン第2波スタート?『トップガン』に見るブロック経済化の兆し

金融経済調査部 金融財政アナリスト 末澤 豪謙

5月の米消費者物価指数の上昇率は+8.6%と、第2次オイルショック時の1981年12月以来の高水準、スタグフレーションへの警戒感が一気に強まる

年初からの金融市場の混乱が止まらない。

NY証券取引所で、米ダウ工業株30種平均は13日(月)、前週末比876ドル安の3万0,516ドルで引けた。前週の9日(木)は638ドルル安、10日(金)も880ドル安で終えており、3営業日連続で500ドル超下げたのは史上初。

株価の大幅安の背景は、10日発表の5月の米消費者物価指数の伸び率が市場予想を上回り、米連邦準備理事会(FRB)が金融引き締めを加速するとの観測が広がったことだ。

5月の米消費者物価指数(CPI)の前年同月比上昇率は+8.6%と、第2次オイルショック時の1981年12月の+8.9%以来の高水準に。5月の市場予想は+8.3%(ブルームバーグ)だった。

3月実績+8.5%、4月+8.3%で、米国のインフレはピークアウトしたとの一部市場関係者の見方を裏切り、年初来、水面下で燻っていた高インフレと景気低迷が共存するスタグフレーションへの警戒感が一気に強まったようだ。

足元、内外の債券市場や商品市場等でも乱高下が続いている。

米FOMCでは、0.75%の利上げ決定、27年7カ月ぶりの上げ幅、6月には量的引き締め(QE)も開始

米FRBは6月14日及び15日に開催した連邦公開市場委員会(FOMC)で、0.75%の利上げを決定、政策金利(FF金利)の誘導目標を0.75-1.00%から1.50-1.75%に引き上げた。利上げは3回連続で、0.75%の上げ幅は1994年11月以来、27年7カ月ぶり。3月の0.25%、5月の0.50%の利上げから一段と加速する形となった。

FRBは6月からは量的引き締め(QE)も開始。償還減により、国債やMBS(住宅ローン担保証券)の保有額の圧縮を開始しており、今春以降、本格的な金融引き締めに舵を切っている。

パウエル議長は次回7月のFOMCでも0.5%か0.75%の利上げを示唆している。9月、11月及び12月も利上げが継続することになると、年初はゼロ金利であった政策金利が、年末には一気に3%台まで上昇することになる。

FOMC参加者の2022年末の政策金利の見通し(中央値)は3.375%。つまり、3.25-3.50%となり、今後、4回のFOMCで計1.75%の利上げが実施される可能性がある。

米株式市場は15日は上昇。NYダウは前日比303ドル高と、6営業日ぶりに反発したが、先行き不透明感は拡がったままだ。

24年ぶりの円安、4月の実質実効為替レートは1971年8月以来、50年ぶりの円安、当時は1ドル360円台の固定相場制、8月には、いわゆる「ニクソン・ショック」が発生

最近は我が国でも、「対ドルでの円安が24年ぶりの135円台」や「4月の実質実効為替レートが、1971年8月以来、50年ぶりの円安」など、「数十年ぶり」の表現が増えている。

4月の実質実効為替レートは1971年8月以来、50年ぶりの円安となったが、1971年当時は1ドル360円台の固定相場制だった。但し、8月には、いわゆる「ニクソン・ショック」が発生。

1971年12月8月15日、米国が、それまでの固定比率(1オンス=35ドル)による米ドル紙幣と金の兌換を一時停止、戦後の通貨体制であるブレトン・ウッズ体制が崩壊した。8月28日には1ドル360円の固定相場制から一時的に変動相場制に移行。

その後、1971年12月にはスミソニアン体制へ移行し、1ドル360円から16.88%切り上げられ、1ドル308円となった。

今回のインフレは一時的・短期的要因が直接のきっかけだが、背景には構造的な要因が潜む

今回の世界的なインフレは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックによる供給制約と経済活動の再開による需要の急回復という、一時的・短期的な需給ミスマッチ要因が昨年春以降の物価上昇の直接のきっかけになっている。

加えて、本年2月24日のロシアのウクライナ侵攻による、エネルギー価格や食料品価格の上昇が火に油を注ぐ形となり、数十年ぶりのインフレ高進に繋がっている。

但し、背景には構造的要因も潜んでいる。

小麦等の価格上昇には、ウクライナ産の流通が激減したこともあるが、異常気象による干ばつでインドやパキスタンなどの小麦生産が減少、ウクライナ戦争と直接関係ない国でも、小麦需給がひっ迫、価格上昇に繋がっている。

地球温暖化が一因とみられる気候変動は、気象災害の増加をもたらしているが、気候変動対策は化石燃料から再生可能エネルギーへのシフトを促す過程等で、「グリーンフレーション:Greenflation」と呼ばれる物価上昇要因にもなっている。

5月の平均CO2濃度は産業革命前のレベルよりも50%以上上昇

尤も、2022年5月のCO2濃度が産業革命前より50%も上昇し、410万年から450万年前の完新世の気候最温暖期に匹敵していることを勘案すると、今後も気象災害の頻度は増し、対策が喫緊の課題となることは避けられないだろう。

米海洋大気局(NOAA)によると、当時、海面は現在よりも5〜25メートル高く、気温は産業革命以前よりも平均で、華氏約7度、摂氏で約4度高く、大きな森が今日の北極圏のツンドラ地帯を占めていた。

より、中期的に重要な問題は、新冷戦の本格化によって、東西対立、ブロック経済化が再燃することだろう。

冷戦期と比較し、いわゆる東側諸国の絶対数は減少したものの、鄧小平氏の指導の下、1978年にスタートした改革開放政策で中国は一気に近代化が進み、現在では名目GDPで世界第3位、我が国の3倍で、米国の4分の3に達するなど、冷戦期と比較した経済的及び軍事的影響力は急拡大している。

ウクライナ戦争の長期化で、ロシアと中国の関係が深まる一方、今秋の中国共産党第20回全国代表大会後、2027年の第21回全国代表大会に向けて、中国が台湾統一への意欲を示した場合、戦前や冷戦期のようなブロック経済化が一気に進む可能性も否定できない。

習近平氏は6月15日に69歳に

習近平氏は6月15日が誕生日とされ、今週、69歳となったとみられる。断定できないのは中国政府が公式に発表していないからだが、各国の報道機関が伝え、首脳が祝電を送っているので確かとみられる。

68歳定年の慣例では、今秋に中央政治局常務委員会委員を卒業し、党の主要ポストからも引退することになるが、引き続き「党の核心」若しくは「領袖」として、最高指導者の地位にとどまる可能性が高い。

筆者は、毛沢東氏及び後継の華国鋒氏が就いていた中央委員会主席のポストを復活し、習近平氏が就く可能性もあると予想している。

2027年8月1日は、中国人民解放軍創設100年の節目にも当たる。米軍高官らから、台湾情勢の緊迫化が指摘されるのも、中国の政権の枠組み変化の可能性が底流にある。

さすがに、今冬、中国は、オミクロン亜系統株「BA.2.12.1」等による感染爆発(可能性、後述)への対応が優先されるとみられるが、中国における感染爆発も、供給制約の面から世界的にはインフレ高進要因になる。

今回のインフレが、黒田日銀総裁らが主張するように一時的・短期的なものか、東西冷戦の再燃・ブロック経済化や気候変動等に伴う構造的・長期的なものかを見極めることは、我が国のみならず、世界政治や経済、金融市場のトレンドを左右するファクターとして極めて重要と言えそうだ。

WHOによると、COVID-19の新規感染者数は3週ぶり増加、WHOの6つの地域区分のうち4地域で増加、新規死者数は11週ぶり増加、オミクロン第2波スタートか?

WHO(世界保健機関)によると、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の週次(6月6日から6月12日)の新規感染者数は前週比+14万人と、3週ぶりの増加となった。1週間の確認症例数は約338万人。

WHOの6つの地域区分のうち、欧州、南北アメリカ、南東アジア、東地中海の4地域で増加、西太平洋、アフリカの2地域で減少。

一方、週次の新規死者数は11週ぶりに増加。1週間の死者数は9,076人。速報ベースではあるが、前週は8,478人と、2020年3月16-22日の週以来の1万人割れとなった。

尤も、COVID-19関連の超過死亡数は、報告死亡者数の3倍程度に上るとみられている(WHO等)。

足元では、南半球に冬が到来、オミクロン株の亜系統株「BA.2.12.1」「BA.4」「BA.5」の感染拡大により、オミクロン第2波が生じ始めた可能性がある。

但し、オミクロン第2波の規模は、COVID感染波で最大となった昨冬の第6波、つまり、オミクロン第1波と比較すると、小規模なものにとどまるとみられる。

米ワシントン大学のIHME(保健指標評価研究所)では、オミクロン第1波に対し、オミクロン第2波の新規感染者数(テストされていない人を含む実際の推定感染者数)は、一日当たり最大数で7分の1程度と試算されている。

なお、オミクロン第1波の推定感染者数のピークは、1月上旬に世界中で一日当たり6,348万人(中央値)に達したと試算されている。

オミクロン株による感染波の特徴は、西太平洋地域に分類される東アジアや東南アジアでの感染拡大

なお、オミクロン株によるCOVID感染第6波では、南東アジア以外の5つの地域(WHO区分)で、週次の新規感染者数が最多を更新した。特に、オミクロン株による感染波の特徴は、WHOの地域区分で西太平洋地域に分類される東アジアや東南アジアでの感染拡大だ。

韓国の週次の新規感染者は2月28日から3月6日の週以降、4月11日から17日の週まで、7週連続で世界最多となった。

韓国での感染爆発の背景には、3月9日の大統領選の影響も指摘されるが、世界全体でオミクロン株による感染第6波が長期化した背景には、北半球の冬から春にかけた季節要因に加え、規制緩和、亜系統株BA.2への置き換わり等が挙げられる。

その後、中国で新規感染者が急増。上海や北京など大都市部で事実上のロックダウンを導入した。

また、4月以降、台湾でも新規感染者が急増している。新規感染者数は5月10日に初めて5万人を超え、足元でも1週間平均の感染者は6万人を超えている。

アジアでの感染爆発はパンデミック当初、感染者数ゼロが続いていたベトナムでも同様で、現時点での累積感染者数(確認症例)は、①米国、②インド、③ブラジル、④フランス、⑤ドイツ、⑥英国、⑦ロシア、⑧韓国、⑨イタリア、⑩トルコ、⑪スペイン、⑫ベトナムと、8位と12位に東アジアの諸国が入っている。

米国と南半球で再び増加傾向、オミクロン亜系統株への置き換わりが背景、米国ではBA.2.12.1比率64.2%と主流に、BA.5及びBA.4も計21.6%に拡大

直近1週間で新規感染者数の多い国・地域は、米国、台湾、ドイツ、ブラジル、フランスの順となった(ロイター)。

WHO発表では、米国、中国、ドイツ、ブラジル、オーストラリアの順。

感染者の減少が続いていた米国が再度増加傾向に転じ、6週連続で世界最多となった。なお、南半球に冬が到来したことから、ブラジルやチリなども増加に転じている。

背景には、「BA.2.12.1」亜系統株等への置き換わりがある。

米CDCも「BA.2.12.1」の比率を公表し始めたのは4月からだが、6月5日-6月11日の週の比率は、BA.2.12.1が64.2%、BA.2が14.2%、BA.5が13.3%、BA.4が8.3%、BA.1.1.529及びBA.1.1が0.0%と、元々のオミクロン株であるB.1.1.529及び一時主流となったBA.1.1が駆逐され、その後主流となったBA.2も2割を切り、新しい亜系統株であるBA.2.12.1が64.2%と、主流に置き換わった。

南アフリカ由来のBA.4及びBA.5も拡大、両者合計では21.6%と、BA.2の14.2%を上回った。

「BA.2.12.1」の感染力は従来株の7倍から20倍程度か、米国を含め、動向に注視する必要

ちなみに、WHO等によると、従来株と比較し、アルファ株(B.1.1.7)の感染力は既存株の最大1.7倍とされ、デルタ株(B.1.617.2)はアルファ株の1.4〜1.6倍の感染力を持つことから、デルタ株の感染力は従来株の約2倍となる。なお、米CDCは、デルタ株の感染力は従来株の約3倍との見方も発表している。

一方、オミクロン株の感染力はデルタ株の約2〜4倍とみられる。厚生労働省は約2.8倍としている。

BA.2 の感染力はBA.1の1.3倍(WHO)であり、従来株と比較すると、6倍から15倍程度に上る。

BA.2.12.1は、BA.2よりも感染力が強いとみられる。

CDCのワレンスキー所長は4月26日の会見で、予備的な証拠はBA.2.12.1がBA.2よりも約25パーセント伝染性が高いことを示していると述べた。一方で、ワレンスキー氏は、BA.2.12.1の感染拡大に見合った割合で入院が上向きになっている兆候はまだみられないと言及。これは、以前の感染やワクチン接種が原因である可能性があるとした。

BA2.12.1には、L452Q変異があり、L452R変異を持つ、デルタ株(B.1.617.2)同様、ウイルスがヒト細胞に感染する能力を高めている可能性がある。また、BA2.12.1は、S704L変異も持つ。

BA.2.12.1の感染力は、従来株と比較すると、7倍から20倍程度に上ることになる。もはや、同じ、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)とは言えないほどの感染力だ。

なお、現時点では、B.2.12.1とBA.4及びBA.5の感染力は同程度とみられる。BA.2に対し、感染力はB.2.12.1が1.25倍程度(米CDC)、BA.4及びBA.5が1.2倍程度(佐藤佳・東京大教授らのチーム)と、推定されている。

ECDCによると、EU/EEA地域では、まもなく、BA.4およびBA.5が主流となり、感染者が増加へ、我が国でも、BA.2.12.1とBA.5の市中感染が確認

欧州CDC(ECDC)は6月13日、現時点では、ほとんどの欧州連合/欧州経済領域(EU / EEA)諸国で、BA.4およびBA.5の割合が低いが、ここ数週間で感染者が増加しているとしている。

ポルトガルでは5月に、BA.5が主要な変異株になり(5月30日時点で約87%)、BA.5の割合が増えると、COVID-19の症例が急増した経緯にある。

BA.4およびBA.5について報告された高い感染力は、これらの変異株がEU / EEA全体で優勢になり、おそらく今後数週間でCOVID-19の症例が増加することを示唆しているとしている。

我が国でも、「BA.2.12.1」と、南アフリカで感染が拡大している「BA.5」の市中感染が始まったようだ。

東京都は5月24日、都内で初めて、オミクロン株の亜系統である「BA.5系統」1例、「BA.2.12.1系統」1例が確認されたと発表した。

都によると、9日時点で、都内で確認したBA.2.12.1の感染例は累計12人、BA.5は同5人となった。大半の感染例に渡航歴はなく市中感染とみられる。

米国を含め、BA.2.12.1やBA.5及びBA.4等亜系統株の感染動向は注視する必要がありそうだ。

デルタ株及びオミクロン株では、「ファクターX」は確認されず、今冬の中国での感染爆発に警戒要か

3月から4月にかけては、日本人と遺伝的特徴が近い韓国が、確認症例ベースで世界最多となり、足元では、台湾や北朝鮮でも感染爆発が起きていることを勘案すると、「ファクターX」の正体は、マスク・手洗い・非接触の挨拶等、生活習慣等の違いに過ぎない可能性が高そうだ。

オミクロン株(B.1.1.529)、特に、BA.2.12.1等亜系統株の感染力は凄まじいことから、今後は、パンデミック以来、ゼロ・コロナ政策を続けてきた中国の動向が最大の焦点となろう。

その中国だが、3月以降、上海や北京などいくつかの都市で、ロックダウンが実施された。感染者の減少ペースは鈍かったものの、ようやく収束傾向となり、6月1日には上海市で概ね規制が解除された。北京では房山区と順義区で在宅勤務規則が解除されたほか、両地区と同市最大の朝陽区で大部分の公共交通機関が運行を再開した。

北京は上海と比較して新規感染者は少ないものの、首都のためか、規制は残存。その後、ナイトクラブでクラスターが発生。感染者が180人以上確認され、濃厚接触者は6,000人を超えた。上海でも、感染者が確認された区画では封鎖が継続されており、本格再開とは程遠い状況だ。

中国共産党は今秋に第20回全国代表大会を控えており、ゼロ・コロナ政策をそれまで維持する方針とみられる。但し、上海で実施されたようなロックダウンが各地で実施されることになると、社会経済活動への負担は大きく、ウクライナ戦争と相俟って世界経済の下押し圧力となりそうだ。

一方、規制緩和時には、中国で最後の感染爆発が起きる可能性がある。米ワシントン大のIHMEはそのタイミングを今冬とみているようだ。

IHMEによると、人口に対するオミクロン株の自然感染率は米国の76%に対し、中国では約2%で、ワクチン接種の効果を勘案すると、米国では人口の73%が免疫を持っているが、中国では32%に過ぎない(4月14日時点)。結果、極めて大きな感染爆発が起きる可能性があるとしている。また、ワクチン接種率の低い80歳以上の高齢者へ感染するリスクに対し懸念を示している。

COVID-19パンデミックとの最後の攻防は中国で起きる可能性が高そうだ。

なお、IHMEは、南アフリカで確認されたBA.4及びBA.5への警戒とともに、将来、デルタ株並の重症化率とオミクロン株並の感染力のある変異株(バリアント)が発生した場合に備え、抗ウイルス薬の普及を呼び掛けている。

感染が拡大し、自然免疫を獲得した国では、オミクロン亜系統株の影響は限定的か

なお、IHMEは、BA.2やその他のオミクロン亜系統株に関して、やや楽観的な見通しを示している。

米国では、BA.2亜系統株の報告症例が東部の多くの州で増加したが、東部は減少に転じ、その他の州で増加しているが、急激な増加はみられず、死亡数も増えていないとしている。

背景として、米国では自然感染により、免疫を獲得した国民が多いことを指摘している。一方で世界中での抗ウイルス薬へのアクセス強化と新しい変異株の監視が重要としている。

オミクロン株の感染第6波は収束へ、オミクロン第2波が既にスタートも山は低い可能性、中国リスクは残存、影響長期化も

世界的に、オミクロン株による感染第6波は収束しつつあるとみられる。

次の季節的な感染波は、南半球が冬に、北半球が夏となった今月から7月頃とみられる。前述のように、オミクロン第2波が既にスタートした可能性があるが、中国以外では、相当程度の集団免疫が確保されたことで、感染波の山は第6波に比べると低いものとなりそうだ。

ちなみに、100年前にスペイン風邪(H1N1インフルエンザウイルス)のパンデミックが発生した際には、どの国でも夏には感染が、一旦収束していた。今回は2020年の夏や2021年の夏にも、感染が拡大している。背景には、エアコンの普及で、夏場に密となりやすい環境が形成されていることが考えられる。

問題は今冬だろう。中国が党大会終了で、習近平氏が「党の核心」ないし「領袖」としての続投が決まった後、ゼロ・コロナ政策を放棄した際には、中国で感染爆発が起きる可能性がある。

今冬には、台湾情勢も緊迫化している可能性がある。世界経済への影響は、ウクライナ戦争とインフレの影響と相まって、より長期化する可能性もあり、留意が必要だろう。

対COVID-19戦争は「エンドゲーム:終局」に、「ラスト・グレート・ウォー:最後の大戦」も山を越すも、COVID-19は「収束」しても、「終息」せず

WHOのテドロス事務局長がパンデミック(世界的な大流行)を宣言したのは2020年3月11日。それから、丸2年が経過したが、対COVID-19戦争は現在、「エンドゲーム:終局」にあると認識している。

筆者は、オミクロン株による感染波を、「ラスト・グレート・ウォー:最後の大戦」と定義しているが、何れにせよ、世界的な感染のピークは過ぎたと考えられる。

然るに、COVID-19は「収束」しても、「終息」せず、季節性コロナウイルス、言わば「季節性戦争:シーズナル・ウォー」への移行や他のバリアント(変異株)によるパンデミックの可能性は続くことになりそうだ。

実体経済や金融市場への影響も、完全に収束とはいかず、ウイズ・コロナ状態が続くことになろう。

「サル痘」が「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態:PHEIC」に当たるかどうかを判断するため、23日に緊急会合を開催

WHOのテドロス事務局長は14日の記者会見で、天然痘に似た症状の感染症「サル痘」が「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態:PHEIC」に当たるかどうかを判断するため、23日に緊急会合を開催すると明らかにした。

テドロス氏は会見で「今年は、サル痘が長年検出されてきた7か国と新たに感染した32か国を含む、39か国から1,600を超える確認症例と約1,500のサル痘の疑い例がWHOに報告されました」と発表。

「今年のこれまでのところ、以前に感染が確認された国から72人の死亡が報告されています。WHOはブラジルからのサル痘関連の死亡に関するニュース報告を検証しようとしていますが、新たに影響を受けた国からの死亡はこれまで報告されていません」と、死亡者は限定的としている。

また、「WHOはサル痘に対する集団予防接種を推奨していません。天然痘ワクチンはサル痘に対するある程度の防御を提供することが期待されていますが、臨床データは限られており、供給も限られています」とし、天然痘ワクチンの集団接種は推奨しないとした。

「新しい名前については、できるだけ早く発表します。サル痘の世界的な発生は明らかに珍しく、懸念されています。そのため、私は来週、国際保健規則に基づいて緊急委員会を招集し、この発生が国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態であるかどうかを評価することにしました」とした。

仮に、緊急委員会で、サル痘に関し、「PHEIC:public health emergency of international concern」を宣言することになれば、現行制度となってから、7回目となる。

直近の宣言は、2020年1月30日の新型コロナウイルス(2019-nCoV)による肺炎発生だ。2月11日に当該感染症はCOVID-19と命名され、同年3月11日、WHOはパンデミックを宣言した。

2009年4月の豚インフルエンザA(H1N1、新型インフルエンザ)に関する宣言以降、ほぼ2年に一度の頻度で「PHEIC」が宣言されている。

背景にグローバル化と気候変動が影響している可能性が想定され、今後も感染症のパンデミック等には注意が必要だろう。

岸田首相は「内閣感染症危機管理庁」と「日本版CDC」の創設を表明

なお、岸田首相は15日、通常国会の閉幕を受けて記者会見し、感染症対策の司令塔となる「内閣感染症危機管理庁」を新設するとともに、米疾病管理予防センター(CDC)をモデルとした、科学的知見の発信を担う専門家組織「日本版CDC」の創設も表明した。

日本版CDCは専門家組織の一元化が狙いで、国立感染症研究所と国立国際医療研究センターを統合し、研究と臨床の融合を図る。厚生労働省の関係部署を統合し「感染症対策部」も新設する。

欧米のCDC等を見習って、実効性・即応性の高い組織となるよう期待したい。

映画観客動員ランキングで『ドラゴンボール超 スーパーヒーロー』が初登場第1位に

前週末(6月11日-12日)の映画の観客動員ランキングでは、『ドラゴンボール超 スーパーヒーロー』が初登場1位となった(興行通信社調べ、以下同じ)。鳥山明氏による大ヒットコミックを原作に、2015年から放映されたTVアニメ「ドラゴンボール超(スーパー)」の映画化第2弾。

本作では、ピッコロが実質的に主役と言える活躍をするが、ピッコロは悟空の息子に加え、孫の指南役も務める。さすが、元は神と大魔王だけあってか、老けないピッコロの若々しさと気力に脱帽。見習いたいものだ。

2位には、2週連続で首位に立っていた『トップガン マーヴェリック』が入った。土日2日間で動員41万8,000人、興収6億6,900万円をあげるも、スーパーヒーローには敵わず2位に。累計では動員283万人、興収43億円を突破。

但し、主演のトム・クルーズさんの年齢は現在59歳。7月3日には60歳と還暦となる。筆者も現在還暦。撮影時は数歳若かったようだが、若々しさはピッコロ並みと、人間離れしている。実は、ピッコロ同様、宇宙人かも。

3位は、『シン・ウルトラマン』。前週比ワンランクダウン。累計では動員239万人、興収35億円を突破。

前月号でも特集したが、山本耕史さん演じる「メフィラス」がネットでもバズっており、配給元の東宝は全3種の「メフィラス構文」が記載されたポストカードを全国合計50万枚限定で配布中。

注目映画が続々公開

夏休みも近くなり、6月から7月に向けて、ハリウッドの大作含め、続々と注目映画が公開される。

6月17日公開の『峠 最後のサムライ』は幕末の動乱期を描いた司馬遼太郎の長編時代小説「峠」を映画化。『雨あがる』の小泉堯史監督がメガホンをとった。

徳川慶喜の大政奉還によって、260年余りにも及んだ江戸時代が終焉を迎えた。そんな動乱の時代に、越後長岡藩牧野家家臣・河井継之助は幕府側、官軍側のどちらにも属することなく、越後長岡藩の中立と独立を目指していた。藩の運命をかけた継之助の壮大な信念が、幕末の混沌とした日本を変えようとしていた。継之助を役所広司さん、妻おすがを松たか子さんが演じ、田中泯さん、香川京子さん、佐々木蔵之介さん、仲代達矢さんら共演。

6月17日公開『バスカヴィル家の犬 シャーロック劇場版』は、アーサー・コナン・ドイルの名作探偵小説「シャーロック・ホームズ」シリーズを原案に、ディーン・フジオカさん演じる犯罪捜査コンサルタント・誉獅子雄と岩田剛典さん演じる精神科医・若宮潤一が数々の難事件に挑む姿を描いたテレビドラマ「シャーロック」の劇場版。原作シリーズの中でも人気の高い「バスカヴィル家の犬」をモチーフに、不気味な島で暮らす華麗な一族をめぐる事件を描く。監督は『容疑者Xの献身』の西谷弘氏。

瀬戸内海の離島。日本有数の資産家が、莫大な遺産を遺して謎の変死を遂げる。資産家は死の直前、美しき娘の誘拐未遂事件の犯人捜索を若宮に依頼していた。真相を探るため、ある閉ざされた島に降り立つ獅子雄と若宮。二人を待ち受けていたのは、異様な佇まいの洋館と、犬の遠吠え。容疑者は、奇妙で華麗な一族の面々と、うそを重ねる怪しき関係者たち。やがて島に伝わる呪いが囁かれると、新たな事件が連鎖し、一人、また一人消えてゆく。底なし沼のような罠におちいる若宮。謎解きを後悔する獅子雄。これは開けてはいけない「パンドラの箱」だったのか。その屋敷に、足を踏み入れてはいけない 。

同じく6月17日公開の『映画 妖怪シェアハウス−白馬の王子様じゃないん怪−』は、2020年と2022年に放映され、主人公の澪が妖怪たちと一緒に生活するなかで成長する姿を描いた異色のホラーコメディ「妖怪シェアハウス」シリーズのその後を描く劇場版。

主演をドラマ同様『魔女の宅急便』の小芝風花さんが務め、松本まりかさん、毎熊克哉さんらが続投。『ソロモンの偽証』の望月歩さんが天才数学者・AITO役で新たに加わる。

6月24日公開『ザ・ロストシティ』は、サンドラ・ブロックさんが主演とプロデュースを手がけ、チャニング・テイタムさん、ダニエル・ラドクリフさん、ブラッド・ピットさんら豪華キャストが集結したアクションアドベンチャー。

新作のロマンティックな冒険小説を完成させ、宣伝ツアーに駆り出された小説家ロレッタは、謎の億万長者フェアファックスに突然、南の島に連れ去られてしまう。彼はロレッタの小説から、彼女が伝説の古代都市「ロストシティ」の場所を知っていると確信したのだった。

6月24日公開『ベイビー・ブローカー』は、『万引き家族』の是枝裕和監督が、『パラサイト 半地下の家族』のソン・ガンホさんを主演に初めて手がけた韓国映画。子どもを育てられない人が匿名で赤ちゃんを置いていく「赤ちゃんポスト(ベイビー・ボックス)」を介して出会った人々が織り成す物語を、オリジナル脚本で描く。

2022年第75回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品され、主演のソン・ガンホさんが韓国人俳優初の男優賞を受賞。人間の内面を豊かに描いた作品に贈られるエキュメニカル審査員賞も受賞。

6月24日公開『鋼の錬金術師 完結編 最後の錬成』は、荒川弘氏の大ヒット漫画を山田涼介さん主演で実写映画化した『鋼の錬金術師』の続編となる完結編2部作の後編。

国家中枢には、国民の魂と引き換えに完全な存在になろうと企てる最大の敵ホムンクルスたちの生みの親「お父様」が潜んでいた。エドとアルの兄弟と、軍の暗部に立ち向かうマスタングたち、そして賢者の石を求めるシンからの来訪者は、共闘し、この陰謀を阻止できるのか。そして全ての鍵を握るエドとアルの父親の正体とは。彼が語る「約束の日」とは一体何なのか。残された時間はあとわずか。求め続けた身体と引き換えに兄弟が出した最後の答えとは?

東京2020オリンピック SIDE:A/SIDE:B

『東京2020オリンピック SIDE:A/SIDE:B』
2022年6月全国東宝系にてロードショー
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6月24日公開『東京2020オリンピック SIDE:B』は、2021年に開催された東京2020オリンピックの公式ドキュメンタリー映画2部作の後編。新型コロナウイルス感染症の世界的パンデミックにより、近代オリンピック史上初の開催延期となった東京2020オリンピック競技会は、当初より1年遅れた2021年7月23日、いまだ収まらないコロナ禍、史上初の無観客開催、関係者の相次ぐ辞任など、さまざまな問題や課題を抱え、賛否が渦巻くなかで開幕。17日間でオリンピック史上最多となる33競技339種目が行われた。

表舞台に立つアスリートを中心とした「SIDE:A」に対する本作は、大会関係者や一般市民、ボランティア、医療従事者などの非アスリートの人々にスポットを当てた。大会がスタートしてもなお、さまざまな課題に直面し、休むことのないバックステージの様子を映し出し、困難なミッションに取り組む人々の姿を描いていく。「SIDE:A」同様、河瀬直美氏が総監督を務めた。

7月1日公開の『バズ・ライトイヤー』は、ピクサー・アニメーション・スタジオの代表作「トイ・ストーリー」シリーズに登場した「バズ」のルーツが明らかにされる長編アニメーション。

有能なスペース・レンジャーのバズは、自分の力を過信したために、1200人もの乗組員と共に危険な惑星に不時着してしまう。地球に帰還するため、バズは猫型の友だちロボットのソックスと共に不可能なミッションに挑む。その行く手には、ずっと孤独だったバズの人生を変える個性豊かな仲間たちと、思いもよらぬ「敵」が待ち受けていた。

7月1日公開『エルヴィス』は「史上最も売れたソロアーティスト」「キング・オブ・ロックンロール」として知られ、人気絶頂で謎の死を遂げたスーパースター、「エルヴィス・プレスリー」の人生を『華麗なるギャツビー』のバズ・ラーマン監督のメガホンで映画化。

彼が禁断の音楽「ロック」を生んだライブの日から世界は一変した。センセーショナルすぎるパフォーマンスから若者に熱狂的に愛された一方で、中傷の的になり警察の監視下に置かれる。型破りに逆境を打ち破る伝説と、裏側の危ない実話。世界一売れたスターの裏には強欲マネージャーがいた。彼を殺したのは誰なのか?

『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』などに出演したオースティン・バトラーさんがエルビス・プレスリー役に抜てきされ、マネージャーのトム・パーカーを名優トム・ハンクスさんが演じる。

7月8日公開の『ソー:ラブ&サンダー』は、クリス・ヘムズワースさん演じる雷神ソーの活躍を描いた、マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)の「マイティ・ソー」シリーズ第4作。『アベンジャーズ エンドゲーム」』後の世界を舞台に、「神殺し」の異名を持つ悪役ゴアとの戦いを描く。

サノスとの激闘の後、ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーの面々とともに宇宙へ旅立ったソー。これまでの道のりで多くの大切な人々を失った彼は、いつしか戦いを避けるようになり、自分とは何者かを見つめ直す日々を送っていた。そんなソーの前に、神々のせん滅をもくろむ最悪の敵、神殺しのゴアが出現。ソーやアスガルドの新たな王となったヴァルキリーは、ゴアを相手に苦戦を強いられる。そこへソーの「元カノ」ジェーンが、ソーのコスチュームを身にまとい、選ばれた者しか振るうことができないムジョルニアを手に取り現れる。ジェーンに対していまだ未練を抱いていたソーは、浮き立つ気持ちを抑えながら、新たな「マイティ・ソー」となったジェーンとタッグを組み、ゴアに立ち向かうことになる。

前作『マイティ・ソー バトルロイヤル』から引き続きタイカ・ワイティティ監督がメガホンをとり、ヴァルキリー役のテッサ・トンプソンさんらが続投。ジェーン役のナタリー・ポートマンさんが、シリーズ第2作『マイティ・ソー ダーク・ワールド』以来、およそ9年ぶりに本格的にMCU作品に復帰した。

7月15日公開の『ミニオンズ フィーバー』は、ミニオンを主役に描く長編劇場アニメ「ミニオンズ」の第2弾。最強最悪のボスに仕えることを生きがいとするミニオンたちが、なぜ怪盗グルーをボスに選んだのか、そしてグルーはどのようにして月を盗むほどの大悪党になったのか、その謎が明らかにされる。

時は1970年代。ミニオンたちは、ミニボスとして崇拝する11歳の少年グルーのもと、日々悪事を働いていた。ある日、少年グルーが何者かに連れ去られてしまう。ミニボス救出のために奔走するケビン・スチュアート・ボブはある事件をきっかけにカンフー・マスターと出会い、弟子入りを志願する。それは、幾重もの試練が待ち受ける、険しき道の始まりだった。

キングダム2 遥かなる大地へ

『キングダム2 遥かなる大地へ』
2022年7月15日全国東宝系にてロードショー
©原泰久/集英社
©2022映画「キングダム」製作委員会

7月15日公開『キングダム2 遥かなる大地へ』は「週刊ヤングジャンプ」に連載中の原泰久氏の人気漫画を実写化した2019年公開の大ヒット映画『キングダム』の続編。

時は紀元前。春秋戦国時代、中華・西方の国「秦」。戦災孤児として育った信は、王弟のクーデターにより玉座を追われた若き王・嬴政(えいせい)に出会う。天下の大将軍になると一緒に誓いながらも死別した幼馴染の漂とうり二つの国王に力を貸し、河了貂や山の王・楊端和と共に王宮内部に侵入する。信は立ちはだかる強敵を打ち破り、みごと内乱を鎮圧。玉座を奪還することに成功した。しかし、これは途方もなき戦いの始まりに過ぎなかった。

半年後、王宮に突如知らせが届く。隣国「魏」が国境を越え侵攻を開始した。秦国は国王嬴政の号令の下、魏討伐のため決戦の地・蛇甘平原(だかんへいげん)に軍を起こす。歩兵として戦に向かうことになった信は、その道中、同郷の尾平と尾到と再会。戦績もない信は、尾兄弟に加え、残り者の頼りない伍長・澤圭と、子どものような風貌に哀しい目をした羌瘣と名乗る人物と最弱の伍(五人組)を組むことになってしまう。魏の総大将は、かつての秦の六大将軍に並ぶと噂される軍略に優れた戦の天才・呉慶将軍。かたや秦の総大将は戦と酒に明け暮れる猪突猛進の豪将・麃公将軍。信たちが戦場に着く頃には、有利とされる丘を魏軍に占拠され、すでに半数以上の歩兵が戦死している隊もあるなど戦況は最悪。完全に後れを取った秦軍だったが、信が配属された隊を指揮する縛虎申は、無謀ともいえる突撃命令を下す。

信役の山崎賢人さん、嬴政役の吉沢亮さん、河了貂役の橋本環奈さんら前作のメンバーに加え、羌瘣役で清野菜名さんが新たに参加。前作に続き佐藤信介監督がメガホンをとった。

7月15日公開の『キャメラを止めるな!』は、低予算ながらブームを巻き起こした2017年製作の日本映画『カメラを止めるな!』を、『アーティスト』でアカデミー賞を受賞したミシェル・アザナビシウス監督がメガホンをとり、フランスでリメイク。

日本で大ヒットした映画『ONE CUT OF THE DEAD』がフランスでリメイクされることになり、30分間生放送のワンカット撮影を依頼された監督。撮影現場には監督志望だが未熟な彼の娘、熱中すると現実との区別がつかなくなる妻、話が通じない日本人プロデューサーが加わり、大混乱に。それでも、監督はカメラを回すが。

『トップガン』続編の公開と、各国での興収状況は、新たな冷戦の兆しを象徴?

初登場後、2週連続観客動員ランキングでトップに立った後、2位となった『トップガン マーヴェリック』は、既に、国内興収が43億円突破と、大ヒット。2020年のパンデミック後の洋画最高興収となる可能性が高くなっている。

世界興収も6月15日現在で7億6,309万ドル(Box Office Mojo調べ)と、2022年公開映画では、『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』の9億3,250万ドル、『THE BATMAN-ザ・バットマン-』の7億7,035万ドルに次いで第3位。まもなく、第2位に浮上しそうだ。

但し、米国内での興収比率は、『ドクター・ストレンジ』の42.9%、『THE BATMAN』の47.9%に対し、『トップガン マーヴェリック』の53.6%が断然高い。

背景には、前作の『トップガン』が1986年公開で、新興国での公開が少なく、なじみが薄かったことに加え、中国での公開が中止されたことが影響していると考えられる。

ちなみに、「マーヴェリック」の意味は、トム・クルーズさん演じる海軍パイロットのピート・ミッチェルのコールサイン。「マーヴェリック」は19世紀のテキサスの大地主サミュエル・マーヴェリック氏にちなむ。同氏が牛への焼印を拒否したことで、『焼印の押されていない仔牛』を意味し、転じて『群れから離れた者』『孤独を好む者』『一匹狼』を表すようになった。

本作品は当初は2019年7月の予定だったが、2020年6月に延期となり、パンデミックの影響で幾度か延期され、2022年5月27日に日米公開と、3年近く延期されることになった。

2019年時点の予告編では、前作のマーヴェリックのフライトジャケットに描かれていた台湾の旗(青天白日満地紅旗)と日本の国旗(日章旗)が削除されていたが、本年5月の公開時点では何れも復活していた。

背景として、中国のテンセント・ピクチャーズが米中対立等を背景に製作から撤退すると同時に出資も引き揚げたことが挙げられる。

なお、映画上の敵国は「ならず者国家:rogue nation」となっているが、登場する戦闘機からは、イラン(F-14)やロシア(Su-57)など中国の友好国が想起されることも影響した可能性がある。

21世紀に入り、ハリウッドは中国の資本を受け入れ、中国での公開も多数行われているが、パンデミックと米中対立の深刻化で先行きは怪しくなってきた。

前作『トップガン』の公開は1986年。ベルリンの壁が崩壊したのは1989年で、ソ連の解体は1988年から1991年にかけてで、レーガン政権下、「スター・ウォーズ計画」に代表される米ソの軍拡競争の真最中に公開された経緯にある。

ちなみに、「スター・ウォーズ計画」はSF映画『スター・ウォーズ』シリーズから採られたが、同作品も冷戦下の1977年に初公開され当時非公開だった影響で、最新作でも中国等旧東側諸国での興収は『アベンジャーズ』シリーズ等と比較し不芳な状況が続いている。

『トップガン マーヴェリック』の公開と、各国での興収状況は、新たな冷戦の兆しを象徴しているのかもしれない。

足元の国際情勢は、「バック・トゥ・ザ・コールド・ウォー・エラ(冷戦期)」のような状態に

『トップガン』が公開された1986年の前年の1985年には、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』が公開されている。

それから、40年近く経過したが、足元の国際情勢は、「バック・トゥ・ザ・コールド・ウォー・エラ(冷戦期)」、冷戦期に戻ったかのような状態だ。

来年に向けてはブロック経済化の動きに慎重に身構える必要がありそうだ。

1989年のベルリンの壁の崩壊やソ連邦の解体(1988年から1991年)、中国の改革開放政策(1978年以降)によって、世界マーケットが拡大、グローバル化が進展し、低賃金・低コストでの商品の生産と流通が可能となったことで、第2次オイルショック後の過去30年間、世界経済は低インフレと高成長が実現できたと言える。加えるとIT化の影響もあろう。

しかし、戦前や冷戦期のようなブロック経済に戻ってしまうと、世界的にはインフレの水準が30年前の水準に戻る可能性も否定できないだろう。

その実現可能性は中国共産党の新指導部の動向が鍵を握ることになりそうだ。

末澤 豪謙 プロフィール

末澤 豪謙

1984年大阪大学法学部卒、三井銀行入行、1986年より債券ディーラー、債券セールス等経験後、1998年さくら証券シニアストラテジスト。大和証券SMBC金融市場調査部長、SMBC日興証券金融市場調査部長等を経て、2012年よりチーフ債券ストラテジスト。2013年より金融財政アナリスト。2010年には行政刷新会議事業仕分け第3弾「特別会計」民間評価者(事業仕分け人)を務めた。日経債券アナリストランキング、14年連続10位内ランクイン。日経財政アナリストランキング2位(2004年〜2006年)。財政制度等審議会委員、国の債務管理の在り方懇談会委員、地方債調査研究委員会委員。趣味は、映画鑑賞、水泳、スキューバダイビング、アニソンカラオケ等。

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