アナリストの忙中閑話【第134回】

アナリストの忙中閑話

(2022年7月21日)

【第134回】COVID第7波本格化、BA.5とケンタウロス、参院選とジェンダーギャップ、脇役が光る注目作品

金融経済調査部 金融財政アナリスト 末澤 豪謙

WHOによると、COVID-19の新規感染者数は6週連続増加、WHOの6つの地域区分のうち3地域で増加、新規死者数は4週連続増加、オミクロン第2波=COVID第7波本格化

オミクロン亜系統株BA.5等による新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の第7波が本格化したようだ。

WHO(世界保健機関)によると、新型コロナウイルス感染症の週次(7月11日から17日)の新規感染者数は前週比プラス約10万人と、6週連続の増加となった。1週間の確認症例数は約642万人。

WHOの6つの地域区分のうち、南北アメリカ、西太平洋、南東アジアの3地域で増加、欧州、アフリカの2地域で減少。東地中海は横ばい。

一方、週次の新規死者数は4週連続で増加。1週間の死者数は1万1,257人。5月30日から6月20日の週は、2020年3月16-22日の週以来の1万人割れが続いていたが、再度、1万人超えとなった。

なお、COVID-19関連の超過死亡数は、報告死亡者数の3倍程度に上るとみられている(WHO等)。

南半球に冬が、北半球に夏が到来、行動規制も緩和された中、オミクロン株の亜系統株「BA.2.12.1」「BA.4」「BA.5」の感染拡大により、オミクロン第2波であるCOVID第7波が本格化している。

但し、COVID-19第7波=オミクロン第2波の規模は、COVID感染波で最大となった昨冬の第6波、いわゆるオミクロン第1波と比較すると、世界的には、小規模なものにとどまるとみられる。

米ワシントン大学のIHME(保健指標評価研究所)では、オミクロン第1波に対し、オミクロン第2波の新規感染者数(実際の推定感染者数)は、一日当たり最大数で4分の1程度と試算されている(7月18日付け試算)。

但し、IHMEは本年1月の第6波のピーク時には一日当たり約6,500万人の感染者が発生していたと試算しており、WHOがとりまとめた確認症例のピーク、約400万人の16倍以上に上る。

オミクロン第2波の確認症例が第1波の4分の1程度に収まるかは、不透明だ。

特に、我が国のように、相対的に自然感染率の低い国では、既に新規感染者数が過去最多を更新しているが、相当規模の大きい感染波が発生する可能性は否定できない。

オミクロン株による感染波の特徴は、西太平洋地域に分類される東アジアや東南アジアでの感染拡大、韓国に続き、台湾で感染爆発

なお、オミクロン株による感染第6波では、南東アジア以外の5つの地域(WHO区分)で、週次の新規感染者数が最多を更新した。特に、オミクロン株による感染波の特徴は、WHOの地域区分で西太平洋地域に分類される東アジアや東南アジアでの感染拡大だ。

韓国の週次の新規感染者は2月28日から3月6日の週以降、4月11日から17日の週まで、7週連続で世界最多となった。韓国での感染爆発の背景には、3月9日の大統領選の影響も指摘されるが、世界全体でオミクロン株による感染第6波が長期化した背景には、北半球の冬から春にかけた季節要因に加え、規制緩和、亜系統株BA.2への置き換わり等が挙げられる。

その後、中国で新規感染者が急増。上海や北京など大都市部で事実上のロックダウンが導入された。

また、4月以降、台湾でも感染爆発が発生。新規感染者数は5月10日に初めて5万人を超え、1週間平均の感染者はピーク時には8万人を超えた。足元では2万人台に減少。

アジアでの感染爆発はパンデミック当初、感染者数ゼロが続いていたベトナムでも同様で、現時点での累積感染者数(確認症例)は、①米国、②インド、③ブラジル、④フランス、⑤ドイツ、⑥英国、⑦イタリア、⑧韓国、⑨ロシア、⑩トルコ、⑪スペイン、⑫ベトナムと、8位と12位に東アジアの諸国が入っている。

世界的的に増加傾向、オミクロン亜系統株への置き換わりが背景、米国ではBA.5が77.9%と主流に、BA.4との合計では90.7%

直近1週間で新規感染者数の多い国・地域は、米国、フランス、イタリア、ドイツ、日本の順となった(WHO)。米国が11週連続で世界最多となった。

米国で緩やかな増加傾向にあることに加え、欧州や我が国などアジアでの拡大が目立つ。また、南半球に冬が到来したことから、ブラジルなども増加。

感染拡大の背景には、オミクロン亜系統株である「BA.2.12.1」や「BA.4」「BA.5」への置き換わりがある。

米CDCによると、7月10日-7月16日の週の比率は、BA.5が77.9%、BA.4が12.8%、BA.2.12.1が8.6%、BA.2が0.6%、BA.1.1.529及びBA.1.1が0.0%と、元々のオミクロン株であるB.1.1.529及び一時主流となったBA.1.1が駆逐され、その後主流となったBA.2も1%未満に減少、新しい亜系統株であるBA.2.12.1も主流の地位を追われ、BA.5に置き換わった。南アフリカ由来のBA.4及びBA.5の合計では90.7%と、9割超に。

欧州12か国の調査でも、BA.4及びBA.5が82.8%と大半に

欧州でも、BA.4とBA.5の感染が急拡大している。ECDC(欧州疾病予防管理センター)によると、6月20日から7月3日の週(2022年第25週及び26週)において、十分なシークエンス量を持つ12か国の調査では、BA.4及びBA.5が82.8%(12か国で確認)、BA.2が15.4%(11か国)、BA.2+L452Xが7.2%(3か国)、BA.1が0.2%(5か国)、B.1.617.2が0.1%(2か国)となった。

前2週では、BA.4及びBA.5は72.1%だったが、82.8%と一段と上昇した。

2種の亜系統株の比率が高い国は、フィンランド(100%)、ポルトガル(96.7%)、アイルランド(89.3%)、ドイツ(86.6%)、デンマーク(85.2%)、スウェーデン(83.8%)、ベルギー(81.7%)、オーストリア(78.6%)、フランス(75.5%)、イタリア(74.6%)など、欧州全域に広がっている。

世界的にはBA.2が3月主流に、BA.2.12.1比率上昇後、7月にはBA.5が53.59%と、主流に

世界全体では3月段階でBA.2が主流となっていたが、BA.5への置き換わりが急速に進み、欧州での感染拡大を受けて、既に、BA.5が主流に置き換わった。

WHOによると、7月4日から10日の週(2022年第27週)に、世界全体でBA.5が53.59%、BA.4が10.57%、BA.2.12.1が4.51%、BA.2が2.61%となった。

BA.5の感染力は従来株の7倍から21倍程度か、ブレークスルー感染力も強く、感染動向を注視する必要

ちなみに、WHO等によると、従来株と比較し、アルファ株(B.1.1.7)の感染力は既存株の最大1.7倍とされ、デルタ株(B.1.617.2)はアルファ株の1.4〜1.6倍の感染力を持つことから、デルタ株の感染力は従来株の約2倍となる。なお、米CDCは、デルタ株の感染力は従来株の約3倍との見方も発表している。

一方、オミクロン株の感染力はデルタ株の約2〜4倍とみられる。厚生労働省は約2.8倍としている。なお、オミクロン株のブレークスルー感染力はデルタ株の10倍との見方もある。

BA.2 の感染力はBA.1の1.3倍(WHO)であり、従来株と比較すると、6倍から15倍程度に上る。

BA.2.12.1は、BA.2よりも感染力が強いとみられる。米CDCのワレンスキー所長は4月26日の会見で、予備的な証拠はBA.2.12.1がBA.2よりも約25パーセント伝染性が高いことを示していると述べた。一方で、ワレンスキー氏は、BA.2.12.1の感染拡大に見合った割合で入院が上向きになっている兆候はまだみられないと言及。これは、以前の感染やワクチン接種が原因である可能性があるとした。

BA.2.12.1の感染力は、従来株と比較すると、7倍から20倍程度に上ることになる。もはや、同じ、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)とは言えないほどの感染力だ。

なお、B.2.12.1とBA.4及びBA.5の感染力は同程度とみられていたが、BA.5はより感染力が強いとみられる。

BA.2に対し、感染力はB.2.12.1が1.25倍程度(米CDC)、BA.4及びBA.5が1.2倍程度(佐藤佳・東京大教授らのチーム)と、推定されている。一方、英保健当局(UKHSA)の分析では、BA.5はBA.2よりも35.1%速く感染するのに対し、BA.4は約19.1%速く感染するとしている。UKHSA の分析に基づけば、BA.5の感染力は、従来株と比較すると、7倍から21倍程度となる。

WHOのテドロス事務局長も20日の会見で、「オミクロン変異株には多くの亜系統があるが、特にBA.5は、これまでに検出された中で最も感染力の高い変異株である」と述べている。

また、ワクチンや自然感染で得られた抗体をすり抜けるブレークスルー感染力に関しても、BA.5がBA.2.12.1を上回っている可能性が高い。

BA.4及びBA.5は何れもデルタ株同様、「L452R」変異を持つ。また、BA.4及びBA.5が持つ「F486V」変異は中和抗体の結合に影響を与える可能性が示唆されており、IHMEによると、BA.4およびBA.5は、「エスケープ・バリアント」、つまり、「逃避変異株」であり、ワクチン接種や他の変異株の自然感染も、BA.4及びBA.5に対しては免疫力が低くなるとしている。

なお、BA.4及びBA.5の重症化率は現時点では、WHOや米CDCは、不明ないしBA.2等に対し強まったとの証拠は得られていないとしているが、前述の佐藤佳教授らがヒトの肺の細胞を使って実験をしたところ、BA.5は、BA.2と比べてウイルスが18.3倍増えていたとのことである。

オミクロン株の特徴である上気道ではなく、BA.4及びBA.5が肺で増殖することになると、重症化率が高まる可能性があり、注意が必要だ。背景には、デルタ株同様、「L452R」変異を持つことが影響している可能性がある。

デルタ株及びオミクロン株では、「ファクターX」は確認されず、今冬の中国での感染爆発に警戒要

3月から4月にかけては、日本人と遺伝的特徴が近い韓国が、確認症例ベースで世界最多となり、足元では、台湾や北朝鮮でも感染爆発が起きていることを勘案すると、「ファクターX」の正体は、マスク・手洗い・非接触の挨拶等、生活習慣等の違いに過ぎない可能性が高そうだ。

オミクロン株(B.1.1.529)の感染力は凄まじいことから、今後は、パンデミック以来、ゼロ・コロナ政策を続けてきた中国の動向が最大の焦点となろう。

その中国だが、3月以降、上海や北京などいくつかの都市で、ロックダウンが実施された。感染者の減少ペースは鈍かったものの、ようやく収束傾向となり、6月1日には上海市で概ね規制が解除された。

その後、BA.5が陝西省西安市で初めて検出された。首都北京、上海、マカオ等でも確認され、マカオでは現在、事実上、ロックダウンが実施されている。

中国共産党は今秋に第20回全国代表大会を控えており、異例の3期目を目指す習近平総書記(中央委員会主席のポストを復活させ就く可能性も)は、ゼロ・コロナ政策をそれまで維持する方針とみられる。

但し、上海で実施されたようなロックダウンが各地で実施されることになると、社会経済活動への負担は大きく、ウクライナ戦争と相俟って、世界経済の下押し圧力となりそうだ。一方、規制緩和時には、中国で最後の感染爆発が起きる可能性も。米ワシントン大IHMEはそのタイミングを今冬とみているようだ。

IHMEによると、人口に対するオミクロン株の自然感染率は米国の76%に対し、中国では約2%で、ワクチン接種の効果を勘案すると、米国では人口の73%が免疫を持っているが、中国では32%に過ぎない(4月14日時点)。結果、極めて大きな感染爆発が起きる可能性があるとしている。また、ワクチン接種率の低い80歳以上の高齢者へ感染するリスクに対し懸念を示している。COVID-19パンデミックとの最後の攻防は中国で起きる可能性が高そうだ。

新しい亜系統株である「BA.2.75 ケンタウロス」の感染が急拡大、BA.5の3倍の感染力?

なお、IHMEは、将来、デルタ株並の重症化率とオミクロン株並の感染力のある変異株(バリアント)が発生した場合に備え、抗ウイルス薬の普及を呼び掛けている。

WHOはインドで新しい亜系統株である「BA.2.75」が検出され、「Omicron subvariants under monitoring」として、監視しているとのことだが、20日のレポートでは、5月以降最も早く、感染が拡がってる亜系統株であり、BA.2と比較して9つの変異を持ち、15か国で確認されているとしている。

なお、神戸市は12日、「BA.2.75」が市内で確認されたと発表。検疫を除いて全国で初めての確認。6月24日、市内の40代の女性がせきや発熱の症状があったため医療機関を受診したところ、感染が確認された。

7月19日には、大阪府も「BA.2.75」系統の感染者2人を確認したと発表。2人は7月中旬に陽性が判明。何れも市中感染とみられる。

BA.2.75は、Twitter上で「ケンタウロス:Centaurus」のニックネームがつけられ、一部メディアでもそう呼ばれている(WHO等は無関係)。ケンタウロスはギリシャ神話に登場する半人半獣の種族の名前で、馬の首から上が人間の上半身に置き換わったような姿をしており、星座名としても使われている。

命名の背景は、WHOが変異株の名前につけているギリシャ文字が枯渇した場合、次に星座名を採用する可能性を明らかにしていることに加え、その変異の多さにあると考えられる。

米アーカンソー州立大学のNYITCOMの研究によると、インドにおける、これまでのBA.2.75の拡散速度はBA.5の3.24倍と、感染力が強い可能性が指摘されている。

前述の佐藤佳教授のチームも最近、発表した査読前論文で、「BA.2スパイクと比較して、BA.2.12.1およびBA.4/5はそれぞれスパイクタンパク質に2つおよび4つの変異を有する。一方、BA.2.75スパイクの大部分は9つの置換がある。BA.2.75スパイクの変異数がBA.4/5スパイクの変異数よりも大きいという事実は、BA.2.75スパイクがBA.2およびBA.4/5よりも治療用モノクローナル抗体に対する感受性を有意に低下させる可能性を提起する」と指摘、BA.5よりもBA.2.75の方が、免疫逃避等の効果から、感染力が強い可能性を指摘している。

我が国でもBA.5の感染が拡大、東京都では7月5日-11日の週、BA.5の比率が74.5%に、BA.2.75も初めて2例確認

世界的にはBA.1から、途中、BA.1.1を経て、BA.2の比率が上昇、足元ではBA.4及びBA.5に主流が置き換わっている。

なお、我が国では米国同様、早い段階でBA.1.1が主流になったことで、BA.2への置き換わりが遅れたとみられるが、既に、BA.2.12.1やBA.5の市中感染が始まり、拡大している。

東京都は5月24日、都内で初めて、オミクロン株の亜系統であるBA.5系統1例、BA.2.12.1系統1例が確認されたと発表。

東京都によると、7月21日時点で、都内で確認したBA.5の感染例は累計714人、BA.2.12.1は51人、BA.4は33人となった。BA.2.75も初めて2例確認された。大半の感染例に渡航歴はなく、市中感染とみられる。何れも疑い例。7月5日-7月11日の週では、BA.5の比率が74.5%と大半となった。BA.2が22.9%、BA.2.12.1が1.4%、BA.4が1.1%。

我が国もオミクロン第2波で感染急拡大、新規感染者過去最多更新

全国の新規感染者数は2月5日に10万4,169人(NHK)と、10万人を突破し、過去最多更新後、ピークアウトしたが、7月20日には15万2,536人と、過去最多を更新した。累計では約1,063万人。

一方、死者数は、2月22日には322人を記録、過去最多の水準に増加したが、その後、減少。但し、5月13日には、累計死者数が3万人を突破した。7月20日時点では3万1,702人。

政府は3月21日の期限をもって、18都道府県に適用していた「まん延防止等重点措置」を全面解除した。その後、全国の新規感染者は、一旦、増加に転じた後、減少傾向に転じた格好になっている。

GWでの人流増加の影響から5月上中旬には新規感染者がやや増加したが、急増には至らなかった。

但し、足元では、経済活動の再開や季節要因(後述)、ワクチン接種からの時間経過による抗体価の低下に加え、世界同様、BA.5等のオミクロン第2波により反転、第7波が本格化している。

東京都によると、7月20日の新規感染者は2万0,401人となった。2万人台は2月5日以来。

感染が拡大しているのは全国も同様だ。7月20日には15万2,536人と、過去最多を更新。

東京都よりも先に、全国の新規感染者が過去最多を更新したことからも、感染が地方部にも拡がっていることがわかる。

人流や人口密度等を勘案すると、地方部でも感染者が増加している背景には、過去の自然感染率が低いことや、BA.5に特徴的なブレークスルー感染力の強さが影響している可能性も想定される。

ワクチン接種後も、オミクロン株、特にBA.5への感染は免れることは出来ないが、重症化を防ぐ効果は期待できるため、高齢者や基礎疾患を持つ人を重点的に、ブースター接種を進める必要があろう。

なお、IHMEは、BA.5の感染拡大に関して、やや楽観的な見通しを示している。

BA.5の感染が先に始まった南アフリカやポルトガルでは、感染開始からピークまで約4-6週間だったことから、その他の国でも、ほぼ同期間で収束すると予想している。次の感染波は10月以降、晩秋または冬に発生するとしている。

背景として、米国などでは自然感染により、免疫を獲得した国民が多いことを指摘している。但し、基礎疾患を持つ人などリスクの高い人には、ブースター接種に加え、ソーシャル・ディスタンスとマスクの着用を推奨している。

一方で、世界中での抗ウイルス薬へのアクセス強化と新しい変異株の監視が重要としている。特に、自宅での抗原検査の普及により、当局に報告されない症例が増加しており、パンデミックを監視し続け、特に新しい変異株の追跡が絶対的に重要であるとしている。

オミクロン第2波が既にスタート、但し、世界全体での山は低い可能性、中国リスクは残存、影響長期化も

世界的に、オミクロン株による感染第6波「オミクロン第1波」は収束したが、南半球に冬が、北半球に夏が到来したことで、季節的な感染波である感染第7波「オミクロン第2波」がスタートし、足元では本格化している。但し、中国など一部諸国以外では、相当程度の集団免疫が確保されたことで、世界全体での山は第6波に比べると低いものとなりそうだ。

ちなみに、100年前にスペイン風邪(H1N1インフルエンザウイルス)のパンデミックが発生した際には、どの国でも夏には感染が、一旦収束していた。今回は2020年の夏や2021年の夏にも、感染が拡大している。背景には、エアコンの普及で、夏場に密となりやすい環境が形成されていることが考えられる。

問題は今冬だろう。中国が党大会終了で、習近平氏が「党の核心」ないし「領袖」としての続投が決まった後、ゼロ・コロナ政策を放棄した際には、中国で感染爆発が起きる可能性がある。留意が必要か。

対COVID-19戦争は「エンドゲーム:終局」に、「ラスト・グレート・ウォー:最後の大戦」も山を越すも、COVID-19は「収束」しても、「終息」せず

WHOのテドロス事務局長がパンデミック(世界的な大流行)を宣言したのは2020年3月11日。それから、2年以上が経過したが、対COVID-19戦争は現在、「エンドゲーム:終局」にあると認識している。

筆者は、オミクロン株による感染波を、「ラスト・グレート・ウォー:最後の大戦」と定義しているが、何れにせよ、世界的な感染のピークは過ぎたと考えられる。

なお、韓国や台湾の事例等を鑑みると、自然感染者の少ない我が国では、BA.5やBA.2.75等の亜系統株によるオミクロン第2波が相当大きな高さとなる可能性には留意する必要があろう。

然るに、COVID-19は「収束」しても、「終息」せず、季節性コロナウイルス、言わば「季節性戦争:シーズナル・ウォー」への移行や他のバリアント(変異株)によるパンデミックの可能性は続くことになりそうだ。実体経済や金融市場への影響も、完全に収束とはいかず、ウイズ・コロナ状態が続くことになろう。

7月10日に投開票が実施された第26回参院選挙では、自民が大勝、単独で改選過半数の63議席を獲得

7月10日に投開票が実施された第26回参院選挙では、自民が大勝、単独で改選過半数の63議席を獲得、公明も前回を1議席下回る13議席を確保、与党が勝利した。自民、公明、維新、国民新党のいわゆる「改憲勢力」で93議席を獲得、非改選の84議席と併せ、定数の3分の2の166議席を確保した。

自民党の獲得議席は63議席、うち選挙区45、比例18(前回57議席、選挙区38、比例19)、公明党は13議席、うち選挙区7、比例6(14議席、選挙区7、比例7)となり、自公で76議席(71議席)を確保した。

日本維新の会は12議席、うち選挙区4、比例8(10議席、選挙区5、比例5)、国民民主党は5議席、うち選挙区2、比例3(6議席、選挙区3、比例3)で、いわゆる改憲勢力の4党の議席は計93議席となった。

非改選の84議席を併せ合計177議席となり、改憲発議が可能な参院定数3分の2(166議席)を大幅に上回った。なお、無所属の上田清司氏(埼玉選挙区)と平山佐知子氏(静岡選挙区)を含めると合計179議席となる。

一方、立憲民主党は17議席、うち選挙区10、比例7(17議席、選挙区9、比例8)と、改選議席の23議席を下回った。共産党は4議席、うち選挙区1、比例3(7議席、選挙区3、比例4)、れいわ新選組は3議席、うち選挙区1、比例2(2議席、比例2)、社民党は1議席、うち比例1(1議席、比例1)、NHK党も1議席、うち比例1(1議席、比例1)を獲得した。参政党が今回初めて1議席、うち比例1を獲得した。

32の1人区は、自民の28勝(前回22勝)に対し、野党統一候補は4勝(10勝)となった。過去2回、全ての1人区で実現した野党共闘が今回は11選挙区にとどまった影響も大きかったとみられる。

投票率は52.05%と前回を3.25ポイント上回ったが、過去4番目の低さ

総務省によると第26回参院通常選挙投票率(選挙区)は全国平均で52.05%と前回2019年の48.80%を3.25ポイント上回ったが、過去4番目の低さとなった。投票率は41都道府県で2019年を上回った。

投票率上昇の背景として、物価高騰と経済対策に対する有権者の関心が高かったことに加え、今回は天気が全国的に曇りないし晴れが多く、「選挙日和」だったことも挙げられる。2019年には公示直後に熊本豪雨等が発生、投票日当日も、九州では大雨となった。また、前回は統一地方選と重なる亥年選挙で、選挙疲れも影響した可能性がある。

一方、期日前投票者数は1,961万3,956人(前回1,706万2,771人)と過去最高を更新した。今回は公示日が沖縄「慰霊の日」への配慮などで一日前倒しとなり、通例よりも1日長くなったことも影響し、前回よりも14.95%増加、全有権者数の18.60%(16.01%)を占めた。

なお、2016年の参院選から選挙権年齢が「18歳以上」に引き下げられたが、10歳代の投票率は、2016年の46.78%に対し、2019年には32.28%に急落、20歳代(30.96%)と変わらない水準に低下した。

今回は、昨年10月の衆院総選挙同様、芸能人らが投票を呼び掛ける「VOICE PROJECT」も実施された。プロジェクトの効果も含め、若年層の投票率にどのように影響したかは、今後発表される年齢別投票率の結果等も見極める必要がありそうだ。

自民党の優勢は、岸田政権の高い内閣支持率、野党共闘の減少等から、事前に想定された結果

今回の参院選は、与党の圧勝となり、いわゆる改憲勢力も議席を伸ばした。

自民党の優勢は、岸田政権の高い内閣支持率、前々回及び前回は32ある1人区全てで野党共闘が実現したのに対し今回は11選挙区にとどまったことなどから、事前に想定された結果ではあった。投票率が伸び悩んだことも、与党には有利に働いた可能性がある。

物価高騰等に有権者の注目が集まり、投票率が大きく上昇することになれば、波乱の展開となる可能性もゼロではなかったが、7月8日に、安倍元首相が銃撃され死亡し、報道も事件一色となったこともあり、自民党には同情票等も集まった可能性がある。

なお、安倍元首相とは昨年12月にお会いする機会があったが、今回は突然の事態に驚愕するしかない。謹んでお悔やみ申し上げたい。

今回の自民党大勝は岸田政権の安定化に寄与、長期政権化のためには、二つの支持率、「内閣支持率」と「党内支持率」を高める必要、2024年前半までの解散総選挙の可能性も

今後の展開だが、今回の自民党大勝は岸田政権の安定化に大きく資することになりそうだ。

長期政権化のためには、二つの支持率、「内閣支持率」と「党内支持率」を高めることが必須だ。岸田首相の場合は、既に内閣支持率は安定推移しているため、党内支持率を高める必要がある。安倍元首相が「一強」化した背景は、3回の参院通常選挙、3回の衆院総選挙と計6連勝したことが最大の要因だ。

岸田首相は2021年の衆院総選挙に続き、2連勝となった。2025年の参院選までの「黄金の3年間」を謳歌するのではなく、安倍元首相のように、衆院の解散権を行使することになるのではないか。具体的には、来年5月19日から21日に広島で開催されるG7サミット後、2023年後半から2024年前半までに、衆院を解散、総選挙で勝利し、2024年9月の自民党総裁選での勝利を狙うものと予想している。

自民党役員人事と内閣改造で、より岸田色が強まるかが当面の焦点

岸田首相は8月1日、ニューヨークで開かれる核拡散防止条約(NPT)再検討会議に出席する予定で、政府・与党は8月初旬(3日頃)に臨時国会を召集すると見込まれる。会期は3日間で新たな正副議長を選ぶ方向。

その後、岸田首相は8月下旬から9月上旬にも内閣改造・党役員人事を行う意向と伝えられている。内閣改造では、今回の参院選に出馬しなかった金子農相、二之湯国家公安委員長の後任を選ぶことになるが、自民党役員人事と内閣改造で、より岸田色が強まるかが当面の焦点となりそうだ。

年末に向けては、「骨太の方針」の具体化が注目される。2023年度予算編成に加え、「資産所得倍増プラン」等、「新しい資本主義」の中身が重要となりそうだ。

一方、清和政策研究会(清和会)の新たな指導体制や「大宏池会」構想の具体化等、自民党内の派閥の動向も注目される。

女性の当選者数は35人、2016年及び2019年の28人を上回り、過去最多も、国際的には見劣り

今回の参院選で、女性の当選者数は35人となり、2016年及び2019年の28人を上回り、過去最多となった。

全当選者125人(改選124、非改選の補欠1)に対する比率は28.0%(前回22.6%)と、前回比5.4ポイント上昇したが、3割未満の水準。非改選を合わせた新勢力(248人)では女性議員は過去最多の64人となったが、比率は25.8%に過ぎない。

WEFがグローバル・ジェンダー・ギャップ・インデックス(GGGI)を公表、日本は116位と前回から4位上昇もG7中最下位変わらず

ダボス会議を主催していることで知られる世界経済フォーラム(WEF)は7月13日、世界146カ国(2021年は156カ国)の男女格差(ジェンダーギャップ)の小ささを指数化したグローバル・ジェンダー・ギャップ・インデックス(GGGI)を公表した。

「GGGI 2022」によると、ジェンダー平等は回復しておらず、危機が悪化するにつれ、女性の労働力面の結果は悪化しており、世界的なジェンダーの平等が後退するリスクはさらに高まっているとしている。

WEFは世界全体で男女格差(ジェンダーギャップ)が解消するのに必要な時間は約132年と試算した。2019年当時の136年の予想より4年短縮したが依然大きい。

我が国は、146カ国中116位(総合スコア0.650)と前回2021年の120位(156カ国中、総合スコア0.656)から順位を4位上げたが、指数自体は低下した。G7諸国の中での順位は引き続き最下位だった。

2019年は121位、2018年は110位、2017年は114位、2016年は111位、2015年は101位だった。

3分野で順位が上昇、学歴は初めて1位に、女性の経済面での社会進出度や政治的地位の低さが総合順位の低さの背景

GGGIは、経済、教育、健康、政治の4分野の計14の項目を指数化し順位を決定している。

我が国は、経済面での参加(Economic Participation and Opportunity)が121位(スコア0.564、前回117位、0.604)、学歴(Educational Attainment)が1位(1.000、前回92位、0.983)、健康(Health and Survival)が63位(0.973、前回65位、0.973)、政治参加(Political Empowerment)が139位(0.061、前回147位、0.061)と、学歴、健康、政治参加で順位が上がった一方、経済が下がった。引き続き、女性の経済面での社会進出度や政治的地位の低さが、低い総合順位の要因となっていることがわかる。

「政治参加」項目では、「国会での女性比率」は133位(スコア0.107、前回140位)、「閣僚の女性比率」が120位(0.111、126位)、「女性の国家元首の年数比率」が78位(0.000、76位)と、女性国会議員と閣僚の比率が際立って低いのが特徴。

但し、我が国では少子高齢化が進む中、女性の活躍なくしては労働力不足から早晩、社会が回らなくなるのではないか。

COVID-19のパンデミックの影響で、2020年及び2021年の出生数(日本における日本人)は大きく減少。2021年は81.2万人となり、2022年は80万人割れとなる可能性が高まっている。

初期段階の女性活躍は一時的に合計特殊出生率の低下要因となる可能性があるが一段と進むと上昇要因に

一方、女性活躍は少子化を加速するとの意見も一部にあるが、筆者は別の味方をしている。

初期段階の女性活躍は、アジアの新興諸国等の事例を見ても、一時的に合計特殊出生率の低下要因となる可能性が高いが、女性活躍が一段と進むと、むしろ上昇要因に転じるとの見方だ。

女性の社会進出度、特に政治的地位は、合計特殊出生率にも影響を及ぼしているとの説がある。

女性の社会的・政治的地位と合計特殊出生率は「し」カーブを描く

合計特殊出生率を縦軸に、女性の社会進出度(政治的地位)を横軸にとって数字をプロットすると、ひらがなの「し」カーブに似た形状となるとの見方だ。「し」カーブは筆者オリジナル。

この場合、発展途上国等は左側に位置し、日本や韓国が真ん中、フランスや北欧諸国が右側に位置することとなる。

実際、WEFのグローバル・ジェンダー・ギャップ・インデックスと合計特殊出生率をインプットすると、特に政治指数との関係、つまり女性の社会的・政治的地位と合計特殊出生率は「し」カーブを描いているように見える。

出生率を引き上げるには、女性が普通に活躍できる環境を醸成することが肝要

我が国で出生率を引き上げるには、「し」カーブの底から右上側に移動し、女性が普通に活躍できる環境を醸成することが肝要とも言えそうだ。

政府には、老若男女、地方と都市部を問わず様々な国民から幅広く意見を求め、早急に出生率が希望出生率に近づくような実効性のある対策の策定を望みたい。岸田首相の「決断と実行」に期待したい。

映画観客動員ランキングで『キングダム2 遥かなる大地へ』が初登場第1位に

前週末(7月16日-17日)の映画の観客動員ランキングでは、『キングダム2 遥かなる大地へ』が初登場1位となった(興行通信社調べ、以下同じ)。「週刊ヤングジャンプ」に連載中の原泰久氏の人気漫画を実写化した2019年公開の大ヒット映画『キングダム』の続編。

2位には、同じく初登場の『ミニオンズ フィーバー』が入った。

3位は『トップガン マーヴェリック』が前週の2位からランクダウン。累計では動員587万人、興収92億円を突破。

4位は前週、初登場1位となった『ソー:ラブ&サンダー』が強豪に押されランクダウン。

5位は、『バズ・ライトイヤー』となった。

注目作品、大作など夏休み映画が続々公開

注目作品、大作に加え、子供向けの夏休み映画も多数公開され、映画館は大混雑となっている。

但し、他のイベントと違い、映画館では静かに大画面に対峙しているため、感染リスクは低いと言えそうだ。なお、さすがに、声出しの「応援上映」は休止中。

今後も7月から8月に向けて、ハリウッドの大作含め、続々と注目作品が公開される。

ゴーストブック おばけずかん

『ゴーストブック おばけずかん』
2022年7月22日全国東宝系にてロードショー
©2022「GHOSTBOOK おばけずかん」製作委員会

7月22日公開の『ゴーストブック おばけずかん』は『ALWAYS 三丁目の夕日』の山崎貴監督が、子どもたちに人気の童話シリーズ「おばけずかん」を実写映画化。

夜中に子供たちの枕元に現れて「願いを叶えたいか?」と耳元でささやく、白い布をかぶった謎のおばけ。どうしても叶えたい願いがあった一樹(城桧吏さん)たちは、おばけに導かれるまま、「おばけずかん」を探すことに。瑤子先生(新垣結衣さん)と一緒に、あやしい店主(神木隆之介さん)のいる迷路のような古本屋で図鑑を手に入れるが、古本屋から出た外の世界は、もう彼らの知っている世界ではなかった。

図鑑の秘密を知る図鑑坊(CV:釘宮理恵さん)の力を借り、おばけたちを相手に命がけの試練に挑むことになる子供たち。彼らはおばけを図鑑に封印することで願いを叶え、運命を変えることはできるのか。

7月29日公開の『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』は、1993年に幕を開け、命を吹きこまれた恐竜たちのリアルでスリリングな映像で、世界中に大興奮を巻き起こした『ジュラシック・パーク』シリーズの最終章。シリーズの生みの親・巨匠スティーヴン・スピルバーグ氏が製作総指揮を務め、監督には『ジュラシック・ワールド』のコリン・トレボロウ氏が復帰。主演は前作に続き、クリス・プラットさんとブライス・ダラス・ハワードさん。そして、ローラ・ダーンさん、ジェフ・ゴールドブラムさん、サム・ニールさんら3人の博士がカムバックし、過去作へのオマージュ溢れるシーンに登場する。

「ジュラシック・ワールド」のあった島、イスラ・ヌブラルが火山の大噴火で壊滅、救出された恐竜たちは、世界中へと放たれてしまった。あれから4年、人類はいまだ恐竜との安全な共生の道を見出せずにいる。恐竜の保護活動を続けるオーウェンとクレアは、人里離れた山小屋で暮らしていた。そこで二人が守っているのは、14歳になったメイジー、ジュラシック・パーク創設に協力したロックウッドの亡き娘から作られたクローンの少女だ。ある日、オーウェンは子供を連れたブルーと再会する。ところが、何者かによって、ブルーの子供が誘拐される。オーウェンはブルーに「俺が取り戻してやる」と約束し、クレアと共に救出へ向かう。一方、サトラー博士は、世界各地から恐竜を集めて研究をしているバイオテクノロジー企業の巨人バイオシンをある目的から追っていた。そこへグラント博士も駆けつけ、マルコム博士に協力を求める。

ONE PIECE FILM RED

『ONE PIECE FILM RED』
2022年8月6日
©尾田栄一郎/2022「ワンピース」製作委員会

8月6日公開の『ONE PIECE FILM RED』は、2022年7月で連載開始25周年となる大ヒットコミック「ONE PIECE」の劇場版アニメ。長編劇場版通算15作目で、原作者の尾田栄一郎氏が総合プロデューサーを務める「FILMシリーズ」としては、2016年公開の「ONE PIECE FILM GOLD」以来4作目。

素性を隠したまま発信される歌声が「別次元」と評され、世界でもっとも愛される歌手ウタが、初めて公の前に姿を現すライブが開催されることになった。そのことに色めき立つ海賊たちと、目を光らせる海軍。

ルフィ率いる麦わらの一味は、何も知らずに、ただ彼女の歌声を楽しみに会場にやってきた。世界中から集まったファンが会場を埋め尽くし、いよいよ待望の歌声が響き渡ろうとしている。しかし、ウタが「シャンクスの娘」であるという事実が明らかになったことから、事態は大きく動き出していく。

ウタ役は声を名塚佳織さん、歌唱をAdoさんが担当。『コードギアス』シリーズの谷口悟朗監督がメガホンをとった。

8月11日公開の『TANG タング』はベルリン国際映画祭で「映画化したい一冊」に選ばれたイギリスの小説「ロボット・イン・ザ・ガーデン」を二宮和也さん主演で映画化。

妻に捨てられたダメ男と、記憶をなくした不良品ロボットという、「迷子同士」の運命の出会いが、驚きと感動に満ちた壮大な冒険へと発展していく物語。ある理由から、自分の夢も妻との未来も諦めてしまった春日井健。そんな彼の家の庭に、記憶を失ったロボットのタングが迷い込んでくる。時代遅れな旧式のタングを捨てようとする健だったが、タングが失った記憶には、世界を変えるほどの秘密が隠されていた。健の妻を満島ひかりさん、健とタングを監視する謎の男を小手伸也さん、中国在住のロボット歴史学者を奈緒さんが演じる。

8月19日公開の『ソニック・ザ・ムービー ソニック vs ナックルズ』は、セガの人気ゲーム「ソニック」シリーズをハリウッドで実写映画化した「ソニック・ザ・ムービー」のシリーズ第2作。原作ゲームから人気キャラクターのナックルズやテイルズが初登場する。

平穏な生活が戻ったグリーンヒルズで夜ごと勝手に街を守り続けているソニックの願いはただ1つ、「本当のヒーローになりたい!」。そんな折、再び世界に暗雲が立ち込める。ドクター・ロボトニックが銀河系で最も危険な戦士ナックルズを引き連れて帰ってきたのだった。彼らは、史上最強の破壊力を持つ武器「マスターエメラルド」のありかを探しており、なぜか執ように狙われるソニックだったが、自慢のスピードパワーをもってしてもナックルズにはまるで歯が立たない。間一髪のところで味方のテイルスに救出されたソニックは、悪の手に落ちる前にマスターエメラルドを探す旅に出ることを決意する。

8月19日公開の『バイオレンスアクション』は小学館「やわらかスピリッツ」連載の浅井蓮次氏と沢田新氏による人気コミックを橋本環奈さん主演で実写映画化。

ピンク髪のショートボブでゆるふわな雰囲気を漂わせる菊野ケイは、昼は日商簿記検定2級合格を目指して専門学校に通いながら、夜はアルバイトをするという日々を送っている。そのバイトとは指名制の殺し屋で、ケイはそこで指名ナンバーワンの実力を持つ凄腕の殺し屋だった。ある時、学校帰りのバスでビジネスマン風の青年テラノと出会ったケイは、胸が高鳴りながらも、そのままいつも通りバイト先へ。この日の依頼は、巨大なヤクザ組織を仕切る3代目組長から、ある人物を殺してほしいというものだった。そのターゲットとは抗争の渦中にいるヤクザの会計士の男で、その男こそ昼間のバスで出会ったテラノだった。

ハウ

『ハウ』
2022年8月19日
©2022「ハウ」製作委員会

8月19日公開の『ハウ』は、『のぼうの城』の犬童一心監督がメガホンをとり、人と保護犬の絆を描いたドラマ。犬との絆を育む主人公を、田中圭さんが演じた。原作・脚本は、『ナミヤ雑貨店の奇蹟』『余命1ヶ月の花嫁』などの脚本家の斉藤ひろし氏。

市役所職員の赤西民夫は、上司からの勧めにより飼い主に捨てられて保護犬になってしまった真っ白な大型犬を飼うことになる。民夫は人懐っこいこの犬をハウと名付け、民夫とハウは次第に絆を深めていく。そんなある日、突然ハウが姿を消す。必死にハウを捜す民夫だったが、ハウは遠く離れた青森の地にいた。偶然のアクシデントが重なり、そこまで青森まで運ばれてしまったハウは、大好きな民夫の声を追い求め、青森から民夫の待つ横浜まで798キロの道のりを目指す。

COVID-19のパンデミックにより、一時は青息吐息状態だった映画界が世界的に復活

COVID-19のパンデミックにより、一時は青息吐息状態だった映画界が世界的に復活している。

前述の『トップガン マーヴェリック』の全米における興行収入は約6億2,209万ドルと既に、歴代10位に浮上している(7月20日時点、Box Office Mojo調べ)。世界興収は約12億4,269万ドルと歴代20位に浮上。

我が国では来週末(29日)に公開される『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』(原題:Jurassic World: Dominion)も、既に世界興収は9億ドルに達しており、2022年2本目の10億ドル突破作品となる可能性も十分だ。

筆者お薦めの『ソー:ラブ&サンダー』の世界興収は約5.1億ドル。

邦画でも、7月15日公開の『キングダム2 遥かなる大地へ』は前週末4日間の興収が13.8億円と、前作『キングダム』(最終興収57.3億円)対比で168.8%のロケットスタートとなっている。

「脇役」の演技に注目、かつての日常を取り戻すために

これらの作品に共通しているのは「脇役」が異彩を放っている点。

『トップガン マーヴェリック』はトム・クルーズさんの出演シーンが圧倒的に多いが、前作『トップガン』でライバル役のアイスマンを演じたヴァル・キルマーさんの出演が緊張感と感動をもたらしている。

数十年の月日を経ても海軍大佐のままのマーヴェリックに対し、アイスマンは海軍大将に昇進しているが、喉頭癌で声を失い余命短い設定となっている。

実は、かつてハリウッドのトップスターだったヴァル・キルマーさんも喉頭癌を患い、その治療過程で発声機能に障害を持つことになった。そんな彼が絞り出す短い台詞は、AIによって再現されたと報じられている。

迫真の演技がその後の「ミッション・インポッシブル」的な作戦の成功への期待を高めることに。尤も「F-14トムキャット」の戦闘シーンだけは「あり得ない」と感じたが、そこは映画の世界か。

一方、『ソー:ラブ&サンダー』では、「スター・ロード/ピーター・クィル」役のクリス・プラットさんらの出演に加え、クリス・ヘムズワースさん演じる雷神ソーの元カノのジェーン役にナタリー・ポートマンさんが復帰。大敵「神殺しのゴア」役は元バットマンのクリスチャン・ベールさんが演じ、「ゼウス」役にはラッセル・クロウさんが起用されている。端役だが、「オーディンを演じる役者」にサム・ニールさん、「ロキを演じる役者」役にマット・デイモンさんが、「ソーを演じる役者」役にクリス・ヘムズワースさんの実兄のルーク・ヘムズワースさんも出演。

実は、クリス・プラットさんやサム・ニールさんは『ジュラシック・ワールド』シリーズの主要な登場人物でもあり、米国では、『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』の公開日6月10日に対し、『ソー:ラブ&サンダー』の公開日は7月8日と近接。「ユニバーサル」と「ディズニー」、配給会社は異なるが、相乗効果を期待しての設定かもしれない。

邦画でも、『キングダム2 遥かなる大地へ』では、登場人物が漫画にそっくりな点が驚く。

筆者は「週刊ヤングジャンプ」を創刊号以来購読しているが、前作からの出演では、主人公・信を演ずる山崎賢人さんや、えい政役の吉沢亮さん、河了貂役の橋本環奈さんらも原作に似ているが、王騎役の大沢たかおさん、昌文君役の高嶋政宏さん、特に、肆氏役の加藤雅也さんはそっくりだ。

『キングダム2』では、大将軍ヒョウ公役の豊川悦司さんや澤圭役の濱津隆之さん、沛浪役の真壁刀義さんらも雰囲気が似ている。羌カイ役の清野菜名さんもアクションシーンが素晴らしい。

2023年公開の『キングダム 3』に繋がるキャストでは、秦国の実権を握る丞相呂不韋役の佐藤浩市さん、呂氏四柱の一人で天才軍師の昌平君役の玉木宏さん、同じく呂氏四柱の一人で軍事を司る蒙武役の平山祐介さんらの演技が楽しみだ。

COVID-19のパンデミックでは、ソーシャル・ディスタンス等の行動規制が、孤独を生み、人心を蝕み、ロシアによるウクライナ侵攻等の遠因になったとの見方もある。

映画の中では、パンデミック以前の「かつての日常」のままだ。人は一人では生きていけない。脇役の活躍は社会の構図そのままだろう。映画鑑賞はスポーツなどとともに、ストレス解消にも効果的か。

何れにせよ、ワクチン接種と治療薬の普及、自然感染も含めた集団免疫獲得により、早期のパンデミック収束を期待するしかない。

ちなみに、筆者は先月、COVID-19のIgG抗体検査を医療機関(自費)で実施してみた。やや意外だったが、過去の感染歴はネガティブ(陰性)だった。

自然感染歴がなければ、ワクチン接種で人工的に、液性免疫と細胞性免疫を高めるしかない。早速、来週、4回目の接種に臨む予定だ。

末澤 豪謙 プロフィール

末澤 豪謙

1984年大阪大学法学部卒、三井銀行入行、1986年より債券ディーラー、債券セールス等経験後、1998年さくら証券シニアストラテジスト。同投資戦略室長、大和証券SMBC金融市場調査部長、SMBC日興証券金融市場調査部長等を経て、2012年よりチーフ債券ストラテジスト。2013年より金融財政アナリスト。2010年には行政刷新会議事業仕分け第3弾「特別会計」民間評価者(事業仕分け人)を務めた。財政制度等審議会委員、国の債務管理の在り方懇談会委員、地方債調査研究委員会委員。趣味は、映画鑑賞、水泳、スキューバダイビング、アニソンカラオケ等。

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