アナリストの忙中閑話【第135回】

アナリストの忙中閑話

(2022年8月25日)

【第135回】ウクライナ侵攻から半年、今冬のリスク、日本が5週連続で感染者世界最多、9月に向けた注目映画等

金融経済調査部 金融財政アナリスト 末澤 豪謙

2月24日に、ロシアがウクライナに侵攻して半年が経過、ウクライナ戦争は第3ステージも戦況は膠着

2月24日に、ロシアがウクライナに侵攻して以来、昨日(24日)で半年が経過した。

くしくも、8月24日はウクライナが1991年に旧ソ連(ソビエト社会主義共和国連邦)から独立して31回目の記念日と重なったが、首都キーウなどでは、ロシアからのミサイル攻撃等を警戒し、祝賀行事などのイベントは禁止された。

ウクライナのゼレンスキー大統領は24日、首都キーウの独立広場でスピーチをする動画を公開。「われわれの国のため、最後まで戦う」と、徹底抗戦を表明した。ロシアが占領している東部ドンバス地方やクリミア半島を奪い返すとし、「われわれにとって戦争の終わりはこれまで『平和』だったが、現在は『勝利』だ」と述べた。

ウクライナ戦争は、2月から3月にかけて首都キーウ方面を含めた北部、東部、南部へのロシア軍による全面侵攻が行われた第1ステージ、ラスプティツア(雪解け)の訪れを受けて4月初にロシア軍が北部から撤退、南部のロシア化と「ドンバスの戦い」が開始された第2ステージに次いで、7月以降、第3ステージに入ったと考えられる。

7月初までに、ロシア軍はウクライナ側の重要拠点であったセベロドネツクに加え、主要都市リシチャンスクを制圧し、東部ルハンシク州全域を完全掌握。現在は、ドンバス地方のうち、残るドネツク州の完全掌握を目指しているとみられる。ドネツク州のロシア軍の支配地域は現在、6割程度か。

一方、ウクライナ軍は、欧米から供与されたロケット砲や榴弾砲等を使い、特に、南部ヘルソン州で反転攻勢に打って出ていると伝えられている。

但し、戦況は膠着状態が続いている。

米シンクタンク、戦争研究所(ISW)の8月21日付けレポートによると、「ウクライナ東部でのロシアの攻撃作戦は、7 月末に獲得した限定的な勢いを使い果たした可能性が高く、最高潮に達しつつある。ロシア軍は小さな戦術的勝利を作戦上の成功に転換することが継続的に不可能であることを示してきた。この失敗は、戦場での予期せぬ変化を除き、今後数ヶ月でロシアが大規模な支配地の拡大を遂げるのを妨げる可能性が高い」とし、ロシア軍の東部での攻勢が弱まり、東部戦線は一段と膠着しつつある模様だ。

ロシア軍の進軍の遅れの背景には、ウクライナ軍が欧米から供与された高機動ロケット砲システム「HIMARS」や多連装ロケット砲システム「MLRS」を活用し、司令部や補給拠点等を集中的に攻撃し、ロシア軍の指揮系統や兵站等に大きな打撃を与えていることも挙げられる。

ウクライナ軍は南部で反転攻勢もドニエプル川を挟んで、両軍が対峙する期間が長期化する可能性

ウクライナ側の攻勢は、今月に入り、ロシアが2014年に一方的に併合したクリミアでも開始されている模様だが、奪還作戦等に移るには大きな距離がある。

まずは、クリミアとウクライナ本土を結ぶヘルソン州やザポリージャ州の奪還が前提となるが、両州の大半はドニエプル川の南岸に位置する。

ロシア軍の進攻を阻むためのウクライナ側の攻撃もあって、ドニエプル川にかかる多くの橋が通行不能になっており、機甲部隊による進軍は両軍とも困難だ。

また、ロシア軍はウクライナ軍の反転攻勢を受け、ドンバス地方に展開している戦力の一部をヘルソン州等に移動させていると伝えられている。

ウクライナ軍が、現在ロシア軍に占領されているヘルソン市等、ドニエプル川北岸の地域の奪還作戦を成功させる可能性はあるが、その後は、ドニエプル川を挟んで、両軍が対峙する期間が長期化する可能性が想定される。

米国はウクライナに対し、バイデン政権発足以来、135 億ドルの軍事支援、但し、重火器の供与には慎重

ウクライナ側には、米国主体に大量の武器・弾薬が共用されている。

但し、7月22日に4両の追加の高機動ロケット砲システム(HIMARS:ハイマース)を供与し、計16両とした以降、過去1カ月の支援は、ロケット砲弾や弾薬、短射程の対戦車ミサイル等が主体で、ウクライナ側が求める重火器の供与にはやや慎重な姿勢もみられる。

8月19日には、2021 年 8 月以来 19 回目の大統領ドローダウン(在庫放出)を発表しているが、16門の105 mm榴弾砲を除けば、偵察用のドローン(スキャンイーグル)や地雷防護車両、地雷除去システム、TOW対戦車ミサイル1,500発、ジャベリン対戦車ミサイル1,000発等、近接攻撃用の兵器が主体で、侵攻初期に供与した兵器の補充の色彩が強い。

バイデン大統領は24日、ウクライナに対する29億8,000万ドルの追加軍事支援を表明した。1回の支援額としては2月24日のロシアによる侵攻開始以降で最大規模となる。

大統領は、今回の支援で「ウクライナは防空システム、砲兵システムと弾薬、対無人航空機システム、レーダーを取得して、長期にわたって防衛を継続できるようになる」と述べた。

米国防総省によると、今回の支援には、6基のNASAMS中距離地対空ミサイルシステム(既供与分含め計8基に)、最大245,000発の155mm砲弾、最大65,000発の120 mm迫撃砲弾、最大24基の対砲兵レーダー、ピューマ無人航空機システム(UAS)、スキャンイーグル偵察用UASのサポート機器、バンパイア対UASシステム、レーザー誘導ミサイルシステム、トレーニング、メンテナンス及び維持のための資金が含まれる。

バンパイアは今回初の供与となるが、小型ミサイルを発射してドローンを撃ち落とす対UASシステム。

なお、今回の支援は大統領ドローダウンではなく、ウクライナ安全保障支援イニシアティブ(USAI)基金を活用して、業界から新たに調達するため、兵器が欧州に到着するまでにはやや時間がかかる模様だ。

米国はウクライナに対し、バイデン政権の発足以来、135 億ドルの軍事支援をコミットしており、2014 年以降では155 億ドル以上に上る。2月24日のロシアの侵攻以降では129億ドル。

ちなみにウクライナの国防予算は2020年度で約59億ドル。

英国もジョンソン首相が独立記念日に合わせ、ウクライナを訪問、ゼレンスキー大統領と会談し、5,400万ポンド(約87億円)の軍事支援を表明した。ドローン2,000機などが含まれる。

ドイツもショルツ首相が23日、ウクライナへの追加軍事支援として、最新鋭の防空システムやミサイルランチャーなどを供与すると明らかにした。5億ユーロ(約680億円)以上に上るが、実際の供与は大半が2023年となる見込み。

ロシアとドイツを海底パイプライン経由で結び、天然ガスを供給している「ノルドストリーム1」が8月31日から9月2日まで停止へ

他方、ロシアは、ウクライナへ軍事・経済支援を行っている西側諸国への揺さぶりも強めている。

ロシアとドイツを海底パイプライン経由で結び、天然ガスを供給している「ノルドストリーム1」が7月11日、稼働を停止した。停止は一時的なメンテナンスのためとされ、10日後の21日に稼働が再開したが、供給量は6月に削減された容量の40%のままだった。その後、7月27日からガス供給量は3,300万立方メートルに削減された。これは、容量の約20%に相当し、それまでの40%から半減。

ガスプロムは8月19日には、ノルドストリーム1による天然ガスの供給を8月31日から9月2日まで停止すると発表。定期メンテナンスのためだと説明しているが、過去の経緯を踏まえると、再開後の供給量が一段と削減される可能性もある。

ドイツは暖房需要が増加する今冬の前に、計画では9月までに75%、11月までに95%の備蓄を目指しているが、達成はより困難になったと言えそうだ。

「ノルドストリーム1」は、バルト海を通り、ロシアのヴィボルグからドイツのグライフスヴァルトまで直接、天然ガスを運ぶパイプライン。バルト海の海底に敷設された既存の「ノルドストリーム1」に加え、並行して敷設された「ノルドストリーム2」も2021年9月に完工しているが米国の反対等から稼働していない。総延長は各約1,224キロメートルで、輸送量は、各系列とも年間計550億立方メートル。「ノルドストリーム1」は2011年と2012年にそれぞれ稼働したツインパインラインで各275億立方メートルの輸送量。

ロシアがウクライナに侵攻して以来、欧州諸国は供給元を多様化しようとしているが、ドイツは従来、供給の約35%をロシアに依存しており、フランスはガスの17%をロシアから得ている。

冬の前にガスの備蓄を構築しようとするため、ドイツ政府は消費者に、より涼しいシャワーを浴び、より少ないエアコンを使用することによってエネルギーを節約するように促している。

ロシアからドイツへの天然ガスパイプラインは、「ノルドストリーム1」以外にも、ベラルーシからポーランド経由のルート「ヤマル・ヨーロッパ」と、ウクライナからスロバキア及びチェコ経由のルートもあるが、前者は5月に停止、後者も供給量が削減されている。

今夏や今冬の電力不足は我が国でも指摘されているが、緯度の高い欧州では、冬場の方が、エネルギー需要が大きい。ドイツでは家庭の暖房の半分近くが天然ガスで賄われている(7月11日付けZDF)とのことであり、今冬には、エネルギー危機が欧州で発生する可能性が否定できない状況だ。

今冬は、中国でオミクロン株、特に「BA.5」や「BA.2.75」の感染爆発が起きる可能性も想定される。物流の混乱等で、インフレが再度、高進する可能性にも留意する必要がありそうだ。

エネルギー価格の高騰はロシアの継戦能力維持にも繋がる、ウクライナ戦争の長期化必至か

ロシアは、いわゆる「エネルギー恐喝:energy blackmail」によって、欧州諸国を揺さぶり、ウクライナ向けの軍事・支援を躊躇させたり、ロシアに有利な状況で停戦に結びつけようとしているとみられる。

また、エネルギー価格の高騰はロシア側の輸出収入を拡大し、戦費を賄うことにも繋がっている。さすがに、欧米からの半導体の禁輸等で、精密誘導兵器の生産には支障を来していると考えられるが、通常の砲弾等の生産は自国で可能なため、ウクライナ同様、継続戦闘能力が維持されていることも、ウクライナ戦争が長期化する一因となっている。

食糧不足問題は来年に向けても続く可能性

ウクライナ戦争の長期化は必至の状況だが、エネルギーや食糧不足の問題が本格化するのは今冬だろう。

ウクライナでは、小麦の刈り取りが本格化しているが、陸路や水路を通じたポーランドないしルーマニア経由の輸送だけでは、今季の収穫分どころか昨年の収穫物の移送にも不十分だ。

国連とトルコの仲介による黒海経由の輸出も再開されたが規模は十分ではなく、戦闘が続くウクライナ東部や南部では、本年分の収穫が出来ない地域も多い。

記録的な猛暑や干ばつとなっている欧州以外でも、猛暑・干ばつ、大雨・洪水の影響で、穀物等が不作となっている地域もあり、食糧問題は来年に向けても続く可能性が高い。

ドイツでは6月に、天然ガスの調達に関する警戒レベルを「早期警報」から「警報」に引き上げ

一方で、冬場には前述のように、エネルギー需要も高まる。

ドイツでは6月23日に、天然ガスの調達に関する警戒レベルを「早期警報」から「警報」に引き上げ、発電における天然ガス消費の削減を開始した。警戒レベルは①早期警報、②警報、③緊急の3段階。

最高レベルの第3段階ではガスは配給制になる。

ドイツでは2021年に、天然ガスは電源構成の約15%を占めた。これを削減するため、運転予備力として停止中、または、2022、2023年に廃止予定だった褐炭・石炭ならびに石油火力発電所を、電力の安定供給確保のため一時的に稼働する予定。

また、政府は6月22日、供給を確保し貯蔵施設の貯蔵率を高めるため、ドイツ国内の全てのガスパイプライン事業者11社が共同設立した法人トレーディング・ハブ・ヨーロッパ(THE)に、天然ガス購入用資金としてドイツ復興金融公庫(KfW)を通じて150億ユーロの与信限度枠を提供すると発表した。

石炭火力発電所の再稼働はオーストリアも決定。オランダなど5か国は、石炭火力発電所の稼働期間延長を決定するなど、脱化石燃料を掲げる欧州のエネルギー政策も修正を迫られているのが実情だ。

ウクライナ戦争が経済や金融市場に与える影響は、今冬に向けて再度高まる可能性

但し、「ノルドストリーム1」の供給量が大幅に削減されたまま、最悪、停止された場合は、冬までに貯蔵率が計画を達成できない可能性が高くなる。

欧州干ばつ観測所(EDO)は23日、現在、欧州は少なくとも過去500年で最も深刻な干ばつに直面していると報告。

干ばつの影響で既に欧州では、水力発電や原子力発電等にも影響が出ている。

ウクライナ戦争が経済や金融市場に与える影響は、今冬に向けて再度高まる可能性に留意する必要がありそうだ。

映画観客動員ランキングで『ONE PIECE FILM RED』が3週連続1位に

前週末(8月20日-21日)の映画の観客動員ランキングでは、『ONE PIECE FILM RED』が3週連続で1位となった(興行通信社調べ、以下同じ)。2022年7月で連載開始25周年となった大ヒットコミック「ONE PIECE」の劇場版アニメ。長編劇場版通算15作目で、原作者の尾田栄一郎氏が総合プロデューサーを務める「FILMシリーズ」としては、2016年公開の「ONE PIECE FILM GOLD」以来4作目。

公開直後に鑑賞したが、過去の劇場版アニメと異なるのは、ミュージカル仕上げ的な作品であることだ。本作の主要キャラクターである歌手のウタ役は声を名塚佳織さん、歌唱をAdoさんが担当しているが、Adoさんの歌唱力には脱帽するしかない。

ONE PIECEファン以外にも観客層が拡がったことで、累計成績は、動員665万人、興収92億8,100万円となり、100億円突破も目前だ。8月27日(土)からは、第3弾入場者プレゼントとして「『ONE PIECE』コミックス巻4/4“UTA”」が全国300万部限定で配布される予定。

2位も前週と変わらず『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』。累計では動員334万人、興収49億8,800万円を記録。筆者の印象では、『ジュラシック・パーク』シリーズ6作品の中でも1993年公開の『ジュラシック・パーク』に並ぶ最高の出来。

3位は公開13週目となる『トップガン マーヴェリック』が前週の5位から浮上。累計では動員724万人、興収114億5,800万円を突破。洋画の興収100億円超えはパンデミック後初。

4位は『ミニオンズ フィーバー』、5位は『劇場版ポケットモンスター アドバンスジェネレーション 七夜の願い星 ジラーチ』、6位は『キングダム2 遥かなる大地へ』となった。

注目作品が続々公開

注目作品、大作に加え、子供向けの夏休み映画も多数公開され、映画館は盛況が続いている。但し、他のイベントと違い、映画館では静かに大画面に対峙しているため、COVID-19の感染リスクは低いと言えそうだ。

今後も8月から9月に向けて、続々と注目作品が公開される。

アキラとあきら

『アキラとあきら』
2022年8月26日全国東宝系にてロードショー
©2022「アキラとあきら」製作委員

8月26日公開の『アキラとあきら』は、池井戸潤氏の同名小説を、竹内涼真さんと横浜流星さんの主演で映画化。

父親の経営する町工場が倒産し、幼くして過酷な運命に翻弄されてきた山崎瑛(アキラ)。大企業の御曹司ながら次期社長の椅子を拒絶し、血縁のしがらみに抗い続ける階堂彬(あきら)。運命に導かれるかのごとく、日本有数のメガバンクに同期入社した二人は、お互いの信念の違いから反目し合いながらも、ライバルとしてしのぎを削っていたが、それぞれの前に「現実」という壁が立ちはだかる。

「アキラ」は自分の信念を貫いた結果、左遷され、「あきら」も目を背け続けていた階堂家の親族同士の骨肉の争いに巻き込まれていく。そして持ち上がった階堂グループの倒産の危機を前に、「アキラ」と「あきら」の運命は再び交差する 。

同じく26日公開の『異動辞令は音楽隊!』は、『ミッドナイトスワン』の内田英治監督が阿部寛さんを主演に迎えたヒューマンドラマ。警察音楽隊のフラッシュモブ演奏に着想を得た内田監督が、最前線の刑事から警察音楽隊に異動させられた男の奮闘をオリジナル脚本で描き出す。

犯罪撲滅に人生のすべてを捧げてきたベテラン刑事・成瀬司だが、違法すれすれの捜査や組織を乱す個人プレイ、上層部への反発や部下への高圧的なふるまいで、周囲から完全に浮いていた。上司が成瀬に命じた異動先は、まさかの警察音楽隊!しかも小学生の頃に町内会で和太鼓を演奏していたというだけで、ドラム奏者に任命される。

26日公開の『NOPE/ノープ』は、『ゲット・アウト』のジョーダン・ピール監督の長編第3作。広大な田舎町の空に突如現れた不気味な飛行物体をめぐり、謎の解明のため動画撮影を試みる兄妹がたどる運命を描く。

26日公開の『DC がんばれ!スーパーペット』は、スーパーパワーを得たペットたちが繰り広げる大冒険を描いた長編アニメーション。監督は『レゴバットマン ザ・ムービー』の脚本を手がけたジャレッド・スターン氏。

9月1日公開の『ブレット・トレイン』は、作家・伊坂幸太郎氏の「殺し屋シリーズ」第2作「マリアビートル」を、『デッドプール2』のデビッド・リーチ監督がブラッド・ピットさん主演で、日本を舞台に映画化。共演にサンドラ・ブロックさんや真田広之さんら。

いつも事件に巻き込まれてしまう世界一運の悪い殺し屋レディバグ。そんな彼が請けた新たなミッションは、東京発の超高速列車でブリーフケースを盗んで次の駅で降りるという簡単な仕事のはずだった。盗みは成功したものの、身に覚えのない9人の殺し屋たちに列車内で次々と命を狙われ、降りるタイミングを完全に見失ってしまう。列車はレディバグを乗せたまま、世界最大の犯罪組織のボス、ホワイト・デスが待ち受ける終着点・京都へ向かって加速していく。

百花

『百花』
2022年9月9日全国東宝系にてロードショー
©2022「百花」製作委員会

9月9日公開の『百花』は、菅田将暉さんと原田美枝子さんが親子役で主演。川村元気氏が2019年に発表した同名小説を、自ら長編初メガホンをとって映画化。

レコード会社に勤務する葛西泉と、ピアノ教室を営む母・百合子。ふたりは、過去のある「事件」をきっかけに、互いの心の溝を埋められないまま過ごしてきた。そんな中、突然、百合子が不可解な言葉を発するようになる。「半分の花火が見たい」それは、母が息子を忘れていく日々の始まりだった。

認知症と診断され、次第にピアノも弾けなくなっていく百合子。やがて、泉の妻・香織(長澤まさみ)の名前さえ分からなくなってしまう。皮肉なことに、百合子が記憶を失うたびに、泉は母との思い出を蘇らせていく。ある日、泉は百合子の部屋で一冊の「日記」を見つけてしまう。そこに綴られていたのは、泉が知らなかった母の「秘密」。あの「事件」の真相だった。

ヘルドッグス

『ヘルドッグス』
2022年9月16日全国公開
©2022 「ヘルドッグス」製作委員会

同じく16日公開の『ヘルドッグス』は、岡田准一さんが『関ヶ原』『燃えよ剣』に続き原田眞人監督と3度目のタッグを組んだクライムアクション。深町秋生氏の小説「ヘルドッグス 地獄の犬たち」を映画化。

復讐のみに生きてきた元警官・兼高昭吾は、その獰猛さゆえに警察に目をつけられ、関東最大のヤクザ組織へ潜入させられるハメに。任務は、組織の若きトップ・十朱が持つ「秘密ファイル」の奪取。警察の調査で相性が最も高い室岡(坂口健太郎)との接触を手始めに、着実に、かつ猛スピードで組織を上り詰めるが、その先には誰も予想できない結末が待っていた。

沈黙のパレード

『沈黙のパレード』
2022年9月16日全国東宝系にてロードショー
©2022 フジテレビジョン、アミューズ、文藝春秋、FNS27社

同じく16日公開の『沈黙のパレード』は、東野圭吾氏の「ガリレオ」シリーズ第9弾を原作に、福山雅治さん演じる天才物理学者・湯川学が難事件を鮮やかに解決していく姿を描く大ヒット作の劇場版第3作。

行方不明になっていた女子高生が数年後に遺体となって発見された。警視庁捜査一課の刑事・内海によると事件の容疑者は、湯川の大学時代の同期でもある刑事・草薙がかつて担当した少女殺害事件の容疑者で、無罪となった男だった。男は今回も黙秘を貫いて証拠不十分で釈放され、女子高生が住んでいた町に戻って来る。憎悪の空気が町全体を覆う中、夏祭りのパレード当日、さらなる事件が起こる。

キャストには内海役の柴咲コウさん、草薙役の北村一輝さんらが集結。『容疑者xの献身』『真夏の方程式』に続き、西谷弘氏が監督、福田靖氏が脚本を手がけた。

岸田首相は事前予想より前倒し、8月10日に自民党役員人事と内閣改造を断行、同日夕、第2次岸田改造内閣が発足

岸田首相は8月下旬から9月上旬と見込まれた事前予想より前倒しして、8月10日に自由民主党役員人事と内閣改造を断行。同日夕、第2次岸田改造内閣が発足した。

岸田首相は10日の会見で、「今回の内閣改造では、骨格を維持しながら、有事に対応する『政策断行内閣』として、山積する課題に対し、経験と実力を兼ね備えた閣僚を起用することといたしました」と表明。

新内閣を「政策断行内閣」と命名するととともに、その重点政策として、①防衛力の抜本強化、②経済安全保障政策、③新しい資本主義の実現を通じた経済再生、④コロナ対策の新たなフェーズへの移行と対応の強化、⑤こども政策・少子化対策の強化の5つを挙げた。

内閣改造・党役員人事の前倒しの背景には、内閣支持率低下への対応と、人事において岸田カラーを出しやすくするための奇襲攻撃的な側面もあったと考えられる。

今回の人事の政権浮揚効果は不発に終わった模様

但し、支持率低下の一因となっていた旧統一教会(世界平和統一家庭連合)問題は払拭されるどころか、その後も閣僚や党役員との新たな関係が次々に発覚。

また、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染者はお盆休み後も特に地方部で拡大が続き、全国の新規感染者数は8月19日には26万0,957人(NHK調べ)と初めて、26万人台を記録。

東京五輪をめぐる受託収賄問題も東京地検が容疑者を逮捕するに至り、今回の人事の政権浮揚効果は不発に終わった模様だ。

内閣支持率は、改造後上昇するどころか低下しているものが増加

実際、内閣支持率の動向を見ると、改造後上昇するどころか低下しているものが多く、足元増えている。

共同通信が第2次岸田改造内閣発足直後の8月10・11日に実施した世論調査では、支持率は54.1%と、昨年10月の政権発足以来最低となった7月30・31日調査から3.1ポイントの微増となった。不支持率は28.2%と前回比1.3ポイント低下。

日本経済新聞が10・11日に実施した世論調査では、支持率は57%と、7月調査から1ポイント低下。不支持率は35%と前回比3ポイント上昇。

読売新聞が10・11日に実施した世論調査では、支持率は51%と、8月5-7日調査から6ポイント低下。不支持率は34%と前回比2ポイント上昇。

一方、毎日新聞と社会調査研究センターが8月20・21日に実施した世論調査では、支持率は前回7月調査から16ポイント低下し、内閣発足以降最低の36%を記録した。不支持率は54%と前回から17ポイント上昇。

同じく20・21日に実施した産経新聞社とFNNの合同世論調査でも、支持率は前回7月調査から8.1ポイント低下し、54.3%となり、不支持率は9.4ポイント上昇し、40.3%となった。

同じく、ANNが20・21日に実施した世論調査でも、支持率は43.7%と前回調査から9.9ポイント低下し、不支持率は32.7%と10ポイント上昇。

内閣改造直後よりも10日後の調査の方が、支持率の低下幅が拡大する結果となった。

COVID-19第7波は世界全体では収束過程だが我が国は韓国や台湾の事例同様、長期化する可能性

現時点では、不支持率が支持率を上回ったのは毎日新聞調査のみだが、6月の支持率低下要因となった物価上昇は、10月にかけて多くの生活必需品等の値上げが予定されており、世論調査でも有権者の不満の多い物価高対策が再度問題化する可能性がある(後述)。

また、COVID-19の感染状況に関しても、予断を許さない状況が当面続きそうだ。

10日の会見で、岸田首相は「コロナ対策については、現在、第7波の荒波の中から、少しずつ感染者数が減少に転ずる地域が出てきています」と述べており、官邸は第7波の8月初のピークアウトを想定していたことが窺われる。

実際、世界全体では、第7波は7月下旬にピークを打ち、収束過程に入っていると思われるが、自然感染率の低い我が国は、韓国や台湾の事例同様、第7波が長期化する可能性がある。

岸田首相がCOVID-19に感染、モデルナのブースター接種から5・6日後に感染か

岸田首相は8月12日に4回目のワクチンのブースター接種済だが、8月21日に行ったPCR検査の結果、新型コロナウイルス陽性であると診断されたことが明らかとなっている。

岸田首相のリモートによる22日の会見では、「20日から咳や微熱といった症状」を生じていたとのことであり、感染は岸田氏が夏休み取得中の17日ないし18日頃とみられる。茨城県潮来保健所の調査では、現在、東京都で主流となっている「BA.5」の平均潜伏期間は2.4日で、「BA.1」の2.9日、「デルタ株」の3.7日より短いとのことだ。

東京都によると、8月2-8日の「BA.5」比率は94.4%。

岸田首相が接種したワクチンは筆者同様、2回目までのイニシャル接種はファイザー製、3回目と4回目のブースター接種はモデルナ製だ。

通常、イニシャル接種の場合は、抗体価が十分に上がる「完全接種」までには、2回目接種から2週間を要す(米CDC基準等)。

一方、ブースター接種の場合、その基準は明確ではないが、ファイザー製が1週間程度で抗体価が十分に上昇するのに対し、モデルナ製は2週間程度を要することから、岸田首相の場合、抗体価の上昇が十分ではなかったのかもしれない。

但し、より重要なのは、「エスケープ・バリアント:逃避変異株」と呼ばれる「BA.5」の場合、ワクチン接種による感染予防効果は十分ではないということだろう。尤も、重症化予防には大きな効果があることから、ワクチンのブースター接種は特に高齢者や基礎疾患を持つ方には極めて有効と考えられる。

欧米でも、COVID-19の指導者への感染は、英国のジョンソン首相を始め、米国のトランプ元大統領やバイデン大統領など枚挙に暇がない。

岸田首相の感染が問題ではなく、問題は4回のワクチン接種済の岸田首相でも「BA.5」には感染したということだ。

自然感染率の低い我が国では、お盆の期間の人口移動等を勘案すると、第7波の収束に時間を要する可能性

人流や人口密度等を勘案すると、第7波では東京都よりも地方部でも感染者が増加している背景に、過去の自然感染率が低いことや、BA.5に特徴的なブレークスルー感染力の強さが影響している可能性が想定される。

COVID-19の自然感染による抗体保有率は、インドや英国ではほぼ100%であるのに対し、米国は57.7%(2022年2月時点、米CDC)だ。

一方、我が国は東京都が5.65%、大阪府5.32%、愛知県3.09%、福岡県2.71%、宮城県1.49%(2022年2-3月時点、厚生労働省)と、極めて低い。

尤も、感染しても、N抗体がほとんど出来ない人や、時間経過により、抗体価は減少することから、実際は、もう少し高いとみられるが、我が国の自然感染率が、欧米よりも、大幅に低く、東京や大阪のような都市部よりも地方部で一段と低いことは確かと考えられる。

当初、集団免疫の達成には、6割の感染が必要との見方もあったが、感染が7割、8割、9割、ほぼ100%に到達しても、逃避変異株の登場でパンデミックは収束しなかった。ここまでの、諸外国の状況を勘案すると、集団免疫獲得には4-5回の自然感染ないしワクチン接種が必要かもしれない。

お盆の期間の国内での人口移動を勘案すると、我が国の第7波の収束には時間を要する可能性を覚悟する必要がありそうだ。

岸田首相は、防衛力の抜本強化を最優先課題に掲げたが、防衛省は概算要求で、防衛力抜本強化の7分野を挙げる模様、継戦能力が重要

岸田首相は、防衛力の抜本強化を最優先課題に掲げたが、防衛省は概算要求で、防衛力抜本強化の7分野を挙げる模様だ(NHK等)。

具体的には、①スタンド・オフ防衛能力、②総合ミサイル防空能力、③無人アセット防衛能力、④領域横断作戦能力、⑤指揮統制・情報関連機能、⑥機動展開能力、⑦持続性・強じん性だ。

この中、従来の防衛力強化策において視点が欠けていたのが、F持続性・強じん性、つまり、「継続戦闘能力、継戦能力」だ。

演習ならともかく、実戦はいつ始まり、いつ終了するかはわからない。しかも、専守防衛の我が国の場合、第1撃に耐えることが極めて重要だ。高価な戦闘機や艦船、ミサイル等をいくら揃えようとも第1撃で撃破されたのでは話にならない。

同様に、対COVID戦争も2020年春の第1波で終わるはずがなかった。一部には、日本人には「ファクターX」が備わっていることから心配いらないといった「神風」を期待する風潮もあったが、足元では、我が国が世界最大の感染国となっている。

WHOによると、我が国の新規感染者数は5週連続で世界最多、新規死者数も2週連続で世界2位

WHO(世界保健機関)によると、我が国の新規感染者数は8月15-21日の週まで、5週連続で世界最多となり、新規死者数も2週連続で世界2位となっている。

直近の週で新規感染者の多い国は、日本、韓国、米国、ドイツ、ロシアの順。新規死者数の多い国は、米国、日本、ブラジル、イタリア、オーストラリアの順。

岸田首相が24日に見直しを表明した感染者の「全数把握」の問題も、クリニックや病院が日常業務で行うシステム処理されたデータを一日の締め時に、保健所経由厚生労働省に自動送信するようなネットワークをパンデミック後2年間で構築しておけば、現在のような問題は生じなかったはずだ。

欧米でも、最近、感染者が自宅で抗原検査を行い、当局に申告しないことで、実際の感染者数との乖離が大きくなっているという指摘はあるが、韓国や台湾のように現在感染者の多い国で、医療機関側から全数報告をやめるべきだという要望が出ているという報道に少なくとも筆者は接したことがない。

ちなみに、韓国は3月から4月まで7週連続で世界最大の感染国となったが、人口は約5,200万人、週次平均感染者(1日当たり)はピーク時約40万人に上った。累計感染者数約2,260万人、累計死者数約2.6万人。

対して、我が国の人口は約1億2,600万人、現在の週次平均感染者は約23万人、累計感染者数約1,780万人、累計死者数約3.8万人。我が国の人口規模は韓国の2.4倍だ。

仮に、今回のCOVID-19が、より強毒性で感染力を持つウイルス、特に生物兵器だったらどうするのか。

太平洋戦争における旧日本軍の敗戦要因として、純軍事的には情報収集・分析能力や継戦能力の欠如及び軽視が指摘されているが、「喉元過ぎれば」といった点に関しては、パンデミック後のこの2年半、大きな変化はみられなかったようだ。

物価高対策も秋から冬が正念場に、ラニーニャ現象継続で今冬は寒い冬に?

物価高対策も秋から冬が正念場となりそうだ。

元々、我が国の企業は値上げに極めて慎重なため、過去の原材料費等の値上がり分は段階的に小売価格に転嫁する方針のところが大半だ。

一方、今夏、世界的な猛暑の要因ともなったラニーニャ現象は今冬まで続く可能性が高まっている。

エルニーニョ現象が「冷夏・暖冬」をもたらすのに対し、ラニーニャ現象は「猛暑・厳冬」をもたらすとされる。

尤も、地球温暖化の影響で、近年は、ラニーニャ現象発生時は「記録的猛暑・平年並の冬」となることが多いが、冬がそれなりに寒ければ暖房需要は増すことになる。

特に、緯度の高い欧州など大陸諸国等では、ウクライナ戦争の勃発も相俟って、天然ガス価格等の高騰が継続することが予想される。

過去の価格転嫁分にエネルギー価格の上昇が加われば、一段の物価上昇に繋がりかねない。

今冬には、中国でCOVID-19の感染爆発が起きる可能性も想定され、その場合、物流の混乱も物価上昇要因になりかねない。

岸田首相は田中元首相同様、「決断と実行」を自民党の公約に掲げ、本年7月の参院選を戦った

岸田首相は「決断と実行」を自民党の「参院選公約2022」のタイトルに掲げ、本年7月10日投票の第26回参議院議員通常選挙を戦った。

「決断と実行」は、田中角栄氏が福田赳夫氏と争った自民党総裁選及び1972年の第33回衆議院議員総選挙で、スローガンとして戦ったのと同じ言葉だ。

筆者も小学校の卒業文集に「決断と実行」の文字を書いた記憶がある。田中角栄氏の具体的な公約は当時理解できていなかったが、「今太閤」や「コンピューター付きブルドーザー」と呼ばれた田中氏の人気・勢いだけは肌感覚で覚えている。

岸田首相の「決断と実行」が今後の支持率と、長期政権化の鍵に

前述の通り、2月24日のロシアのウクライナ侵攻から半年が経過したが、ウクライナ戦争の終わりは見えない。

一方、10月頃と想定される第20回中国共産党全国代表大会の後には、台湾海峡が一段と「波高し」となる可能性も否定できない。

また、9月5日には、英国の新首相が決まり、9月25日にはイタリアで総選挙が、11月8日には、米国で中間選挙が予定されている。

既に大きく変化した国際情勢や地政学的リスクだが、今秋から来年に向けて一段と変化する可能性も想定される。

岸田首相の「決断と実行」が今後の支持率と、長期政権化の鍵にもなりそうだ。

末澤 豪謙 プロフィール

末澤 豪謙

1984年大阪大学法学部卒、三井銀行入行、1986年より債券ディーラー、債券セールス等経験後、1998年さくら証券シニアストラテジスト。同投資戦略室長、大和証券SMBC金融市場調査部長、SMBC日興証券金融市場調査部長等を経て、2012年よりチーフ債券ストラテジスト。2013年より金融財政アナリスト。2010年には行政刷新会議事業仕分け第3弾「特別会計」民間評価者(事業仕分け人)を務めた。財政制度等審議会委員、国の債務管理の在り方懇談会委員、地方債調査研究委員会委員。趣味は、映画鑑賞、水泳、スキューバダイビング、アニソンカラオケ等。

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