アナリストの忙中閑話【第139回】

アナリストの忙中閑話

(2022年12月22日)

【第139回】2023年の干支は「癸卯」、中国がゼロコロナ政策放棄、日銀がYCC政策修正、人気映画等

金融経済調査部 金融財政アナリスト 末澤 豪謙

2023年(令和5年)の干支は「癸卯(みずのと・う、キ・ボウ)」

2023年(令和5年)の干支は「癸卯(みずのと・う、キ・ボウ)」。

「癸卯」は、「干支」の組み合わせの第40番目で、陰陽五行では、十干の「癸」は「水」の「弟(陰)」、十二支の「卯」は「木」の「陰」で、「相生(そうせい、そうじょう)」、「水生木(すいしょうもく)」として、「水」が「木」を生じさせる関係にある。

「癸」は、十干の最後の干で、「癸」の古代文字は、「矛」ないし「矢尻」が四方に突き出たような形をしている。水が四方より流入する形の象形との説もある。季節は晩冬を表し、草木も枯れて、測量に便利であることから、物事を「揆(はか)る」、「測る」に通ずる。

また、「図る」、「計る」と物事の筋道を立てると言う意味があり、「均」に繋がる。首癸=首揆は、宰相の位を表す。

万時、筋道を立てて処理すれば、国家を繁栄に導くことができるという意味を表すが、方針が曖昧だと、混乱し、「一揆」が起きることもある。方角は北(北北東)を指す。

草木の内部にはらまれた種子が次第に形づくられ、長さを測ることができる状態を表しているとされる。

一方、「卯」は、十二支の第4番目で季節は旧暦の2月(概ね新暦の3月)、動物では「兎」に配されている。方角は東、時刻は午前5時から7時を表す。

「卯」は、「冒(ぼう)」に同じく、「茆(かや)」や「芽(かや)」の意味。芽や葉が茂るということなり、「茂」に通じる。字形は、「門」を開いた形を表すとされる。

植物にたとえると、草木が新たに生じて地面を蔽うようになった状態を表すとされる。

2023年の「癸卯」には、勢力伸長も、筋道を誤ると動乱が起きる可能性、政権の安定化には「揆一」が重要

(干支的に解説すると)2016年の「丙申(ひのえ・さる)」に勢力を拡大した経済や政治権力等が、2017年の「丁酉(ひのと・とり)」には、一段と勢いを増すが、2018年の「戊戌(つちのえ・いぬ)」には、その極致に達し、2019年の「己亥(つちのと・い)」にはピークアウト。2020年の「庚子(かのえ・ね)」には、新たな変化、潮流が生じ、2021年の「辛丑(かのと・うし)」には、新勢力が表舞台に立つが、周囲の抵抗も大きく、伸び切れない。2022年の「壬寅(みずのえ・とら)」には、新たな勢力がようやく伸長。但し、2023年の「癸卯(みずのと・う)」の年には、指導力が問われ、内紛が生じる可能性を意味することになる。

2023年には、勢力伸長も、筋道を誤ると動乱が起きる可能性、政権の安定化には「揆一(きいつ)」が重要と言えそうだ。岸田首相にとっては、防衛問題や少子化対策、気候変動問題等で国論をまとめるなど、指導力を発揮することが重要か。

前回の「癸卯」は1963年、国内は高度成長の真っ只中、米国ではケネディ大統領暗殺、東西冷戦深刻化

前回60年前の「癸卯」である1963年(昭和38年)は、翌年の1964年に東京オリンピックを控え、戦後の高度成長期の真っ只中だった。

1963年に発表された経済白書では、「先進国への道」へのタイトルが掲げられ、新しい環境の下での発展、先進国への道に向け、国際的地位の向上と開放体制への移行の必要性が説かれている。

但し、世界的には、米国では、ケネディ大統領が暗殺されるなど、政情が不安定化。前年1962年10-11月のキューバ危機では第3次世界大戦一歩手前となった戦後の米ソ対立は継続。代理戦争でもあるベトナム戦争が1964年から1965年に向け本格化することになった。

戦後の「卯年」は、世界的には多極化が進展、金融市場が緊迫化、東日本大震災等大きな災害も多数発生

また、その前の「卯年」である1951年(昭和26年)には、現在のEU(欧州連合)の前身である欧州石炭鉄鋼共同体(ECSC)が設立され、サンフランシスコ講和会議で、我が国が国際社会に復帰、日米安全保障条約が調印されるなど、日独等敗戦国を含めた戦後の国際関係の枠組みが固まった局面である。

その後、戦後の「卯年」は、1975年には、ベトナム戦争終結、第1回主要先進国首脳会議(G6サミット)開催、1987年には、日米経済摩擦深刻化、ブラックマンデー、1999年にはユーロ導入、第2次運用部ショック、大手銀行への公的資金投入、日銀ゼロ金利政策導入、2011年には、東日本大震災が発生、1ドル:75円台と、対ドルでは史上最高の円高が進行するなど、第2次世界大戦を境に確立した超大国米国の存在感が徐々に希薄化し、欧州諸国や我が国、中国等新興国も含めた多極化の流れが進展する契機ともなっている。

また、幾度も金融市場が緊迫化、2011年の東日本大震災や1999年の台湾大地震、1951年のルース台風等、地震・噴火・台風等大きな災害も多数発生している。

第2次世界大戦の敗戦国であるわが国は、朝鮮戦争後、安全保障面では西側諸国のリーダーである米国の「核の傘」の下、戦前と異なり、軽武装を基本方針とし、米英等の戦勝国に、経済面で、「追いつけ、追い越せ」と高度成長を邁進することになった。

但し、高度成長は1970年以降の2度のオイルショック(石油危機)で安定成長軌道に変更を余儀なくされ、1980年代後半のバブル及び1990年代のバブル崩壊と金融危機後は、1995年の生産年齢人口のピークアウトに続き、2008年から2010年にかけた総人口のピークアウトにより、少子高齢化社会に完全に突入することになった。

2020年代は、米国と中国の二強時代への変化、米中の覇権争いの本格化を意味する?

前述の「庚子」の2020年の変化は、米国ではトランプ政権、国内では安倍政権の終焉を意味するようにも思われるが、よりグローバルに見れば、戦後の冷戦体制が1989年のベルリンの壁の崩壊、1991年のソビエト連邦の解体により終焉後、米国一強時代が続いたが、2020年代は、米国と中国の二強時代への変化、米中の覇権争いの本格化を意味しているようだ。

その際、地政学的には中国に隣接するわが国が、両国との間合いをどのようにとるかは、今後、数十年間のわが国の安全保障面、また経済面にも大きな課題となりそうだ。

2020年初に発生した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックが長期化、ウクライナ戦争の勃発も相俟って、世界的にインフレが高進したことで、諸外国で政権与党の支持率が低下。支持率低下は米国も例外ではなく、トランプ氏の後継となったバイデン大統領も同様だ。

バイデン氏にとっても、岸田氏にとっても、2022年は重要な年となった。我が国では7月10日には第26回参院通常選挙が実施され、自民党が改選過半数を確保。

米国では11月8日の中間選挙で、上院は民主党が1議席増と多数派を維持するも、下院は共和党が多数派を奪還。尤も、事前予想よりは民主党が善戦。但し、2023年はネジレ議会となり、レームダック化は避けられない。法案審議等が停滞、政府機関閉鎖や債務上限問題が再燃することも予想される。11月に80歳となったバイデン氏の再選戦略は不透明だ。

国内では安倍氏の後継となった菅政権は1年で退陣、岸田政権が2021年10月に誕生することになった。発足直後の衆院総選挙、2022年夏の参院通常選挙は2連勝し、長期化政権への道筋が出来たかに思われたが、その後は、旧統一教会問題や閣僚の不祥事、インフレ高進等で、内閣支持率は大きく低下、2023年の統一地方選でも後退するようであれば、岸田政権の与党内での求心力が一段と低下、菅前首相同様、2024年の自民党総裁選への出馬が困難になる可能性も否定できない。

2023年には、日米とも、政治が混乱する可能性に留意する必要がありそうだ。

COVID-19に関しては、北半球に冬が到来したこともあり、足元、世界的には第8波がスタートしている。感染力が一段と増したオミクロン株(B.1.1.529)の亜系統株が相次いで出現する中、自然感染率の低い東アジア、具体的には日本や中国では、第8波は過去最大規模の感染波となる可能性も否定できない。

但し、自然感染率の上昇、ワクチンのブースター接種と経口治療薬の普及により、今回の感染波が生命の安全にとって重要な最後の感染波となる可能性もある。岸田首相の求心力回復には、経済の正常化とともに、第8波を制御出来るか否かも重要となろう。

一方、地政学的リスク面での国際情勢は2023年、一段と緊迫化する可能性が高そうだ。

過去数年、米中の覇権争いが深刻化しているが、ネジレ議会となる米国では、バイデン氏は大統領権限の強い外交・安全保障、通商・貿易政策に注力せざるを得ない。内政面での対立が先鋭化している民主党と共和党が唯一、超党派で取り組める分野が、対中国、対ロシア問題だ。

米中の覇権争いも、2023年にはステージが変化する可能性

特に、対中国姿勢は、下院で多数派となった共和党がより強硬のため、軍事・経済面で締め付けが強化されることになろう。

中国では、2022年10月に開催された第20回中国共産党全国代表大会で、習近平総書記が異例の3期目に突入、いわゆる「チャイナ7」、中央政治局常務委員は全員、習近平氏の側近や元部下と、全員習派で占められることになり、独裁体制が事実上、固まることになった。

今後5年間は、台湾統一問題も重要な焦点となろう。台湾統一は習近平氏が今回異例の3期目を続投したことや今後、党主席等に就くことの条件ともなりうる。

10月16日に、習近平・中央委員会総書記が第19期中央委員会を代表して読み上げた中央委員会報告(政治報告)では、習総書記は、「最大の誠意をもって、最大の努力を尽くすことを堅持し、平和的統一という未来を成し遂げる。武力使用の放棄を決して確約するものではなく、一切の必要な措置を取る選択肢を保留する。国家統一と民族復興という歴史の車輪は勢いよく前進しており、祖国完全統一は必ずや実現しなければならないし、必ずや実現することができる」(人民日報)とした。

平和的統一を基本としつつも、武力使用を放棄せず、祖国完全統一は必ずや実現しなければならないし、必ずや実現することができるとしており、習氏が最高指導者として入った異例の3期目においては、最大のミッションとなると考えられる。5年後の党大会を見据え、台湾情勢の緊迫化が予想される。

11月に入り、中国ではゼロコロナ政策への反発から各地でデモが頻発。一部には1989年6月に発生した天安門事件以来との見方もある。

実はそのきっかけとなる事件が卯年の1987年の1月に発生している。中国各地で学生らによるデモが発生。自由化や民主化に寛容であった胡耀邦党総書記が解任された。天安門事件は胡耀邦氏が1989年4月に死去したことで、追悼と民主化を求めるデモが拡がったことが契機になっている。

中国政府は11月末からゼロコロナ政策を緩和、12月中旬には、一気にゼロコロナ政策を放棄、集団免疫策に転換することになった。

中国では、既に感染爆発が起きている。中国はゼロコロナ政策の影響で、世界でも最も自然感染率が低いとみられる。今後、一日当たり数百万人規模の新規感染者が発生し、死者数も相当規模に上る可能性が高そうだ。

ゼロコロナ政策大幅緩和で、中国では今後数か月間で30万人以上、2023年中に100万人以上の死者が発生するとの試算(IHME)

米ワシントン大学のIHME(保健指標評価研究所)は12月20日付けレポートで、中国政府がゼロコロナ政策を大幅に緩和したことで、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)により、今後数か月間で30万人以上の死者が発生、2023年中では、100万人以上の死者が発生するとの試算を発表した。

その要因として、IHMEは、中国では多くの人々がCOVID-19に自然感染もワクチン接種もしておらず、オミクロン株の感染が拡大した場合、重症者や死者が発生する可能性が高くなるとしている。

また、中国製のワクチンはモデルナ製やファイザー製と比較し、COVID-19に対する効果が低く、しかも、80歳以上の高齢層では、中国製ワクチンでさえも接種率が低い。ワクチン接種からの時間経過で抗体価が低下していることも、感染が拡大する要因。

かつ、現時点では、抗ウイルス薬へのアクセスが一部を除き困難であることを挙げている。

死者数の推計の根拠は、香港における感染拡大と死者数をモデルとしたとしている。

中国本土とワクチン接種等で似た環境にある香港では、これまでに、約240万人の感染者(確認症例)と約1万1千人の死者(報告死者数)が発生している(ジョンズホプキンス大学)。

大半の死者は2022年春のオミクロン第1波、世界的には感染第6波で発生している。香港では、3月には7日移動平均の新規感染者数が一時7万人近くになり、7日移動平均の新規死者数が一時300人近くに上った。香港の人口は約740万人(2021年)であり、人口当たり致死率は、0.15%となる。今春のBA.1による感染爆発時の死者数約7,000人に対する致死率でみると約0.1%となる。

IHMEは、人口14億人の中国で感染爆発が起きると、今後数か月間で30万人以上、2023年全体では100万人以上の死者が発生すると試算している。なお、今後状況が悪化した場合、いくつかの制限が従前に戻るとの前提でも予想は変わらないとしている。

同試算の結果が変わるためには、ゼロコロナ政策への復帰、モデルナやファイザー製のワクチン接種、抗ウイルス薬へのアクセスの大幅改善があるが、それらの政策が採用される可能性は低いとみられる。

これまで、ゼロコロナ政策放棄後の中国の死者数には様々な試算がなされており、IHMEの試算も驚くような数字ではない。

既に前週、香港大学の3教授が「medRxiv」に発表した予想によると、現状のまま全土で経済活動が再開されれば、100万人あたりの死者数は最大で684人に達する可能性があるとしている。人口14億人で計算すると、全土の死者数は約96万人となる。

11月下旬に発表されたエアフィニティのモデルは、中国政府がゼロコロナ政策を突然終了した場合、中国で130万人から210万人が死亡すると予測している。

中国CDCによると、中国は今、この冬に予想される3回の感染波の第1波の渦中

中国CDC(疾病予防管理センター)の疫学首席専門家の呉尊友氏によると、中国は今、この冬に予想される3回の感染波の第1波の渦中にある。

北京で17日に講演した呉氏は、第1波が来年1月中旬まで続くと予想。第2波は1月21日の春節を控えた帰省ラッシュが引き金となって、1月下旬から2月半ばまで続くとし、人々が仕事に戻る2月末から3月中旬にかけて第3波が起きるとしている。

中国政府は、人口の90%以上がワクチン接種を完了しているとしている。アワー・ワールド・イン・データによると、12月13日現在で91.7%。2回接種が89.3%。但し、ブースター接種の比率はやや低く、3回目の接種を終えている80歳以上は50%に満たない(12月19日付けBBC)。

1万1千人以上の死者が発生している香港でブースター接種を受けている80歳以上は65.73%(12月18日現在、アワー・ワールド・イン・データ)だが、死者の大半は80歳以上だ。

2021年春にはインドでデルタ株の感染爆発が発生、WHOの試算では、インドではCOVID-19関連で500万人近い超過死亡発生

パンデミック1年目の2020年、アジア各国では、欧米諸国と比較し、感染者数や死者数が限定的で、背景に何等かの遺伝的特性等、いわゆる「ファクターX」を指摘する声が挙がった。

但し、2021年春にはインドでデルタ株の感染爆発が発生、WHOやIHME等の試算では、インドではCOVID-19関連で500万人近い超過死亡が発生、つまり、実際の累積感染者数も世界最多となったと推定されている。

なお、インドの死者の大半は、デルタ株の感染爆発で発生している。オミクロン株はデルタ株よりも重症化率は低いものの、BA.5やBQ.1.1の感染力はデルタ株よりも、10倍以上強いとみられる。

2020年の平均年齢(中央値)は、日本の48.6歳に対し、香港が45.6歳、中国は38.4歳、インドは28.7歳と、中国とインドでは10歳程度の開きがある(2020 CIA World Factbook)。

80歳以上の人口が多く、ワクチン接種率も低いことは、中国にとって、大きなリスクがあると言えそうだ。

日本の新規感染者数が足元、7週連続世界最多に、「ファクターX」の正体

2022年3月から4月にかけては、日本人と遺伝的特性が近い韓国が、確認症例ベースで世界最多となり、その後、台湾や北朝鮮に続き、我が国でも感染爆発が起きた。

7月18日から24日の週の新規感染者数(確認症例)は我が国が初めて世界最多となり、その後も10週連続で最多となった。

直近も7週連続で世界最多に。また、直近週では、死者数(報告死者数)でも6週連続で世界第2位となっている。

こうした経緯を勘案すると、「ファクターX」の正体は、マスク・手洗い・非接触の挨拶等、生活習慣の違いに過ぎない可能性が高い。変異株の感染力が強まったことでアジアにも感染が拡大したと考えられる。

中国がゼロコロナ政策実質放棄、新型コロナウイルスとの最後の攻防が中国で開始

オミクロン株(B.1.1.529)、特にBA.5やBQ.1.1等の亜系統株の感染力は凄まじいことから、今後は、パンデミック以来、ゼロコロナ政策を続けてきた中国の動向が最大の焦点となろう。

中国では、2022年3月以降、上海や北京などいくつかの都市で、ロックダウンが実施され、社会経済活動が大きく制限されることになった。その後、夏場は感染が抑制されていた。但し、11月以降、感染が再拡大。南部広東省の省都広州市で感染が拡大し、11月9日までに市内の3地区がロックダウンに入った。重慶市や北京市でも感染者が急増。新規感染者数も過去最多となった。

北京では、中国共産党第20回全国代表大会が10月22日に閉幕。異例の3期目続投となった習近平総書記は一旦、ゼロコロナ政策を堅持する方針を示したものの、各地でゼロコロナ政策に対する抗議デモが頻発したことで、11月末以降、規制を大幅緩和、12月中旬には、事実上放棄することになった。

中国政府の対コロナ政策を担当する孫春蘭副首相は11月30日、北京で国家衛生健康委員会および専門家らと会合を開き、「オミクロン株の病原性は比較的弱く、ワクチン接種も進み、新型コロナに対する政府の知見も蓄積されている。このため新型コロナとのわれわれの闘いは新たな段階にあり、新たな課題に向き合っている」(12月1日付ブルームバーグ)と語った。

会合後の発表文によると、孫氏はゼロコロナを意味する「動態清零」という言葉を使用せず、国家衛生健康委員会などの説明でも、「動態清零」に言及しない一方で、高齢者らにワクチン接種を促した。

12月7日には感染対策をさらに適正化するとして、全ての感染者を病院や隔離施設に移す措置をやめ、無症状や軽症の人は自宅での隔離を認めると発表。自宅での隔離期間は原則7日間。また、高齢者施設や医療機関、学校などを除き、PCR検査から抗原検査に切り替えを進め、省や自治区などを越えて移動する際には陰性証明を求めないなどとした。中国の国家衛生健康委員会は14日から全国の無症状感染者数の発表を取りやめたが、既に、多くの都市ではPCR検査の減少から、有症状感染者の把握すら困難となっている。一方、発熱患者が病院に押しかけ、医療崩壊が起きつつある。

中国政府は厳格なゼロコロナ政策から、一気に、集団免疫政策に転換したと考えられる。

但し、北半球に冬が到来したこのタイミングでの規制撤廃は、「感染爆発」のリスクが大きい。冬には気温・湿度・UVが低下、新型コロナウイルスの半減期が長期化、乾燥により、エアロゾル感染のリスクも強まる。特に、大陸内部では冬場は気温が大きく低下し、より「密」になりやすい環境となる。

IHMEによると人口に対するオミクロン株の自然感染率は米国の約76%に対し、中国は約2%(4月14日時点)。極めて大きな感染爆発が起きる可能性があるとし、抗ウイルス薬が普及していないことから、ワクチン接種率の低い80歳以上の高齢者に多数の死者が発生するリスクに警鐘を鳴らしている。

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)と人類との最後の攻防が、遂に中国で始まったと言えそうだ。

卯跳ねる?

株式相場に関する格言では、「辰巳天井、午尻下がり、未辛抱、申酉騒ぐ、戌笑い、亥固まる、子は繁栄、丑つまずき、寅千里を走り、卯跳ねる」とされている。

「辰巳天井」に向けて、「卯跳ねる」ではないが、来年は、金融市場の変動率が一段と高まりそうな予感がする。

「卯跳ねる」とは、「兎がぴょんぴょん跳ねる」ことのたとえであり、株価も上伸の勢いがあることを意味すると考えられる。但し、変動率の大きい展開とも考えられ、必ずしも、年末に向けた株高を意味する訳ではないのかもしれない。

1950年から2021年までの「卯年」の株式パフォーマンス(日経平均年間騰落率)は平均(11.0%)を上回る+16.4%だ。辰年の+28.0%、子年の+22.5%、亥年の+17.3%に次ぐベスト4位に入るが、1951年の+62.9%の影響が大きく、東日本大震災が発生した前回2011年は▲17.3%と大幅下落している。

図表1. 十二支ごとの日経平均年間騰落率(1950〜2021年平均)

図表1.	十二支ごとの日経平均年間騰落率(1950〜2021年平均)

  • 出所:QUICK資料等よりSMBC日興証券作成

2023年はスタグフレーション懸念高まる、内外の金融政策に注目集まる

24年前の卯年の1999年、我が国では、1998年の金融危機、デフレ経済を受けて、年明けの1999年2月に、日銀が「ゼロ金利政策」を導入するとともに、1998年の参院選で生じた「ネジレ国会」解消のため、小渕恵三首相率いる自民党と小沢一郎氏が率いる自由党が連立、その後、公明党を加えた自自公連立政権が発足する等、金融危機後の経済停滞下で、金融緩和・財政出動とともに、政界の部分的な再編が行われた経緯にある。

衆院の定数是正(10増10減)を規定した改正公選法が2022年12月28日に公布される。次期衆院総選挙を見据え、2023年には新たな政界再編の動きが出てくるかにも注目される。

一方、我が国の経済停滞という状況は、24年の月日を経ても大きな変化はないが、世界的には、パンデミック後の供給制約、ウクライナ戦争・米中対立等によるブロック経済化の動きも相俟って、第2次オイルショック以来、約40年ぶりのインフレ高進により、過去の金融緩和局面とは打って変わって、欧米の中銀により利上げ加速・量的緩和縮小と、急激な金融引き締めが実施されている。

結果、2023年には、世界的な景気後退、特にインフレ下での景気後退、いわゆる「スタグフレーション」懸念が高まっている。

ちょうど、卯年の1999年初頭の日本の事例だと、度重なる財政出動は、「第2次運用部ショック」という形で、長期金利に上昇圧力を加えることとなり、それが、「ゼロ金利政策」を誘引することにもなった。

パンデミック下の金融緩和と財政出動でもたらされた過剰流動性は、1980年代の「日本バブル」、2000年前後の「ITバブル」、2000年代央の「サブプライムバブル」のように、今回も株式、不動産、金、仮想通貨(暗号資産)等のバブル的な価格高騰に一役買った可能性が高い。

今後、利上げとともに過剰流動性が吸収される中、リスク資産市場も不安定化が予想されるが、卯年の1987年には米国株式市場で過去最大の株価の崩落「ブラックマンデー(暗黒の月曜日)が起きている。

ブラックマンデーは、1987年10月19日(月曜日)に、ニューヨーク市場で発生した株価の大暴落をさす。それは、1929年の10月24日の暗黒の木曜日(ブラックサーズデー)と、続く10月28日(暗黒の月曜日)の下げ率(12.8%)を大きく上回る、率にしてマイナス22.6%、価格で508ドル安(ダウ工業株30種平均)という前代未聞の大暴落であった。

一方、我が国では、日銀の黒田総裁の任期満了を2023年4月に控え、金融市場においても、今後、日銀の一挙手一投足に注目が集まることになりそうだ。

東西冷戦再燃とグローバル化の巻き戻しも

2023年には、国際的な環境変化も予想される。

21世紀に入り、ベルリンの壁崩壊や中国の改革開放政策等で、①安い労働力や商品の供給・生産が可能となり、②市場も急拡大、③軍縮で軍やNASAなどの技術者や技術が民間に移転し、ICT化進展したことで、低金利、高成長の原動力になり、グローバル化の下、新たなビジネスモデルが隆盛を極めることになった。

但し、COVID-19のパンデミックとロシアのウクライナ侵攻で環境は大きく変化し、中国の新体制も中長期的に懸念される。

このままでは、東西冷戦が再燃、大戦前や冷戦期のようなブロック経済化が進展、グローバル化の巻き戻しが起きることで、「ヒト、モノ、カネ」のコストが上昇、インフレ長期化の可能性も否定できない。

加えて、気候変動問題の深刻化が予想される。気象災害の多発に加え、2050年カーボンニュートラル達成が困難となることで、人為的なグリーンフレーションの勢いがどこかのタイミングで増すこともありうる。

今後は、ブロック経済化・軍拡、地球温暖化等でレジーム・チェンジが起きる可能性にも留意する必要がありそうだ。

映画観客動員ランキングで『THE FIRST SLAM DUNK』が3週連続1位に

前週末(12月17日-18日)の映画の観客動員ランキングでは、前月号で特集した、『THE FIRST SLAM DUNK』が3週連続1位となった(興行通信社調べ、以下同じ)。累計成績は動員281万人、興収41億8,900万円。公開直後に鑑賞したが、インターハイで、湘北高校バスケットボール部は山王工業高校と対決するが、試合経過とともに、メンバーの過去や様々な思いが投影される感動ストーリーに仕上がっている。

2位も前週同様、『すずめの戸締まり』。累計成績は動員693万9,000人、興収93億4,400万円と、興収100億円超えが視野に。

3位は前月号で特集した『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』が初登場でランクイン。映像美は歴代世界興収第1位の前作『アバター』(2009年公開)を上回る出来。特に、前作には無かった海中シーンが素晴らしい。

なお、ジェームズ・キャメロン監督は前作の『アバター』含め全5部作を予定しているシリーズについて、「すでに全て(脚本を)執筆して、計画済みです。3作目は撮影も終わっていて、ポストプロダクション中です。これまでにないまったく新しいユニバースになるでしょう」と12月10日にTOHOシネマズ日比谷で行われた映画のブルーカーペットイベントでシネマトゥデイに対して明かしている。『アバター3』は2024年12月公開予定。

4位も前月号で特集した『Dr.コトー診療所』が初登場ランクイン。主演の吉岡秀隆さんは「北の国から」の子役が本作では白髪頭の医師で、ストーリー的にもハラハラさせられるが、ロケ地の与那国島の景色がどこか安心感を与えてくれる。『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』同様、南の島に行きたくなる映画。

なお、他に前月号で特集した作品では、『ラーゲリより愛を込めて』が5位に、『月の満ち欠け』が7位に、『ブラックアダム』が10位にランクイン。何れも家族愛をテーマにした感動作品。特に、娘を持つ父親としては、『月の満ち欠け』で号泣必至。

9位にランクインした『ONE PIECE FILM RED』の累計興収は187.3億円と歴代興収ランキング9位に。サウンドトラックは年末の音楽賞を席巻か。

街中はクリスマス気分一色、邦画の注目作品が相次いで公開

既に、街中はクリスマス気分一色。行動制限が全面解除された今年の年末は、イルミネーションもきらびやかで、銀座などでは外国人観光客が闊歩と、ようやくコロナ禍前の景色に戻ってきた。

映画も既に公開された大作洋画に加え、クリスマス・年始に向けて邦画の注目作品が相次いで公開される。

ブラックナイトパレード

『ブラックナイトパレード』
2022年12月23日全国東宝系にてロードショー
©2022「ブラックナイトパレード」製作委員会 ©中村光/集英社

12月23日公開の『ブラックナイトパレード』は、中村光氏による漫画「ブラックナイトパレード」を、吉沢亮さん主演、『銀魂』シリーズの福田雄一監督のメガホンで実写映画化。

受験失敗・就活失敗・彼女無し、コンビニ・ポーソン練間北口店で3年間アルバイトをしている冴えない男・日野三春。世間がクリスマスムード一色で盛り上がる中、突如、黒いサンタ服を着た男に「内定だ!今日から正社員!よろしく頼む!」と、無理やり連れ去られてしまう。目覚めるとそこは、なんと北極。そして三春が働くことになった会社は「サンタクロースハウス」。

世界中から届く子供たちの手紙、山積みのプレゼント、そして黒いサンタ服を着た大勢のブラックサンタたち。この会社にはある秘密があった。クリスマス滅亡を目論む怪しい影。三春たちはクリスマスの夜に、世界中の子どもたちへ幸せを届けることができるのか?

主人公の三春を吉沢さんが演じ、サンタクロースハウスで働く三春の同僚で、天才的なハッキング能力を持つ北条志乃役を橋本環奈さん、チャラ男の田中皇帝役を中川大志さん、笑うことの無いイケメン料理長の古平鉄平役を渡邊圭祐さんが務める。

かがみの孤城

『かがみの孤城』
2022年12月23日
©2022「かがみの孤城」製作委員会

12月23日公開『かがみの孤城』は、直木賞作家・辻村深月氏の同名ベストセラー小説を、『河童のクゥと夏休み』の原恵一監督で劇場アニメ化。

学校での居場所をなくし部屋に閉じこもっていた中学生・こころ。ある日突然部屋の鏡が光り出し、吸い込まれるように中に入ると、そこにはおとぎ話に出てくるようなお城と見ず知らずの中学生6人が。さらに「オオカミさま」と呼ばれる狼のお面をかぶった女の子が現れ、「城に隠された鍵を見つければ、どんな願いでも叶えてやろう」と告げる。期限は約1年間。

戸惑いつつも鍵を探しながら共に過ごすうち、7人には一つの共通点があることがわかる。互いの抱える事情が少しずつ明らかになり、次第に心を通わせていくこころたち。そしてお城が7人にとって特別な居場所に変わり始めた頃、ある出来事が彼らを襲う。

イチケイのカラス

『イチケイのカラス』
2023年1月13日全国東宝系にてロードショー
©浅見理都/講談社
©2023 フジテレビジョン 東宝 研音 講談社 FNS27社

1月13日公開の『イチケイのカラス』は、講談社「モーニング」で連載された浅見理都氏の同名コミックを原作とするテレビドラマ「イチケイのカラス」の劇場版。

入間みちおが、東京地方裁判所第3支部第1刑事部(通称:イチケイ)を去って2年。岡山に異動したみちおが担当することになったのは、主婦が史上最年少防衛大臣・鵜城英二に包丁を突きつけたという傷害事件。事件の背景には、不審点だらけのイージス艦と貨物船の衝突事故があった。だがイージス艦の航海内容は全て国家機密で、みちおの伝家の宝刀「職権発動」が通用しない難敵。

一方、坂間千鶴は、裁判官の「他職経験制度」で弁護士に。配属先は奇しくもみちおの隣町。そこで出会った人権派弁護士・月本信吾とバディを組み、人々の悩みに寄り添う月本に次第に心惹かれていく。そんな中、町を支える地元大企業のある疑惑が浮かび上がる。2つの事件に隠された衝撃の真実。それは決して開けてはならないパンドラの箱だった。

みちお役の竹野内豊さん、坂間役の黒木華さんらに加え、斎藤工さん、向井理さんらが新たに参加。テレビ版に続き「コンフィデンスマンJP」シリーズの田中亮監督がメガホンをとった。

日銀がYCC政策修正、長期金利の変動幅を「±0.25%」から「±0.5%」に拡大

日本銀行は12月19-20日に開いた金融政策決定会合で、長短金利操作(イールドカーブ・コントロール:YCC)を修正した。従来、「±0.25%程度」としてきた長期金利の変動許容幅を「±0.5%」に拡大した。変動幅の拡大は2021年3月に「±0.20%」から「±0.25%」に引き上げて以来。

会合後の記者会見で黒田総裁は「金融緩和の効果をより円滑にするためのもので、利上げではない。金融引き締めではまったくない」と強調したが、海外金利の上昇を受けて、既に国内長期金利は0.25%近辺と変動幅の上限付近で推移していたことから、実質的には利上げに他ならない。

実際、21日の金融市場では日銀の決定を受けて、長期金利は新たな上限に近い0.480%まで上昇して引けた。2015年7月3日の0.480%以来、7年5カ月ぶりの高水準。

為替相場は20日以降大幅な円高となり、株式市場は20日の大幅安に加え、21日も続落となった。

筆者も含め、市場の大方は日銀の金融政策修正は黒田総裁の任期中はないと予想していたことから、20日の決定はサプライズとなった。敢えて言い訳するなら、これまで、黒田総裁や日銀幹部は「変動幅の拡大は実質的には利上げであり、金融緩和の効果を阻害する」との趣旨の発言を続けていたことから政策変更はないと予想するのも無理はないだろう。

但し、現実には、金融政策の修正はどこかのタイミングでは必至であり、最近は大幅な円安や市場機能の低下等副作用も顕著になっていた。

新発10年国債の取引不成立日は2019年はゼロ、2020年は1回、2021年は4回だったが、2022年は6月に1回、9月に2回、10月に6回、11月に4回、12月に4回と、既に計17回発生している(12月21日現在)。

日銀の長期国債の指値オペの影響等で、2022年9月末の利付国債残高1,066兆円に対する日銀保有分の割合は50.3%と初めて5割を突破するなど、このまま同政策を継続すると一段と市場機能の低下が危惧される状況にあった。

日銀の政策修正と中国のゼロコロナ政策の放棄、2023年にはその判断の是非が問われることに

実は今回の日銀の政策変更を見て、似ていると感じたのが、前述の中国のゼロコロナ政策の放棄だ。

導入当初は両者ともその政策の成果を世界中に誇っていたが、最近ではその弊害が内外から指摘されている点も似ている。成功体験が政策変更を遅らせた面もありそうだ。

今回の政策変更に、事前のアナウンスメントや事後の明確な説明がない点も似ている。説明内容が180度転換している点も同様だ。

異例の3期目続投となった習近平総書記は10月の党大会でゼロコロナ政策の成果を強調し、同政策の堅持を表明したことから、筆者はゼロコロナ政策の修正は、日銀同様、春以降と予想していた。然るに、こちらは一気に政策放棄とも言える制限の全面解除(入国規制除く)に踏み切ることになった。

中国の場合も、3年近い行動制限に対する国民の不満に加え、経済の停滞、失業率の上昇等、ゼロコロナ政策の副作用が拡大していた。経済正常化にはいずれ制限緩和が不可欠のため、抗議活動が全国規模に拡がる前に先手を打ったと考えられる。

但し、100年前の「スペイン風邪」のように、呼吸器系の感染症は冬に感染が拡大する。しかも、抗体価の低下で米国でインフルエンザの感染爆発が今冬起きているように、自然感染率が一部の島しょ国を除いて、世界最低とみられる中国における感染爆発は規模も莫大なものになると予想される。

物価上昇率が第2次オイルショック以来40年ぶりの水準に高進する中、大幅利上げの前に欧米の中央銀行当局者が事前に丁寧な説明を行っているのは、政策変更による混乱を避けるためでもある。

かつて、永田町では「解散と公定歩合についてはウソを言っても良い」と言われた。今日でも解散は同様だが、金融政策の変更に関しては、近年では欧米の中銀は事前にアナウンスして市場に織り込ませるのが主流となっている。

今回の日銀の政策修正は事前のアナウンスメントは無かったものの、今後の政策変更のスムージング効果が得られる可能性もある。むしろ、欧米中銀と異なり、無制限オペの実施から、事前のアナウンスメントは無理だったとも考えられる。

一方で、市場に疑心暗鬼をもたらし、金融市場の変動幅を将来的に拡大させる効果をもたらすかもしれない。

冒頭、2023年は「揆一(きいつ)」が重要であり、筋道を誤れば「一揆」など混乱が起きる可能性を記した。

日銀の金融政策(YCC)と中国のゼロコロナ政策、何れにせよ、2023年には今回の変更のタイミングも含め、政策の是非が問われることになりそうだ。

年末のご挨拶

最後に、1年間、「アナリストの忙中閑話」にお付き合い頂き誠にありがとうございました。来年もよろしくお願い申し上げます。

それでは、健康にご留意しつつ、良いお年をお迎えください。

末澤 豪謙 プロフィール

末澤 豪謙

1984年大阪大学法学部卒、三井銀行入行、1986年より債券ディーラー、債券セールス等経験後、1998年さくら証券シニアストラテジスト。同投資戦略室長、大和証券SMBC金融市場調査部長、SMBC日興証券金融市場調査部長等を経て、2012年よりチーフ債券ストラテジスト。2013年より金融財政アナリスト。2010年には行政刷新会議事業仕分け第3弾「特別会計」民間評価者(事業仕分け人)を務めた。財政制度等審議会委員、国の債務管理の在り方懇談会委員、地方債調査研究委員会委員。趣味は、映画鑑賞、水泳、スキューバダイビング、アニソンカラオケ等。

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