アナリストの忙中閑話【第148回】

アナリストの忙中閑話

(2023年9月21日)

【第148回】新型コロナとインフルエンザの同時流行、内閣改造と衆院解散、VIVANTと別班、注目映画続々公開

金融経済調査部 金融財政アナリスト 末澤 豪謙

東京都心で猛暑の記録を大幅更新、「猛暑日」22日、「真夏日」88日と、年間の過去最多を大幅更新

9月も下旬というのに、猛暑が続いている。

今夏は東京都心(千代田区)でも様々の記録を更新、最高気温が35度以上となる「猛暑日」は8月29日で、今年に入ってから22日目となり、2022年の16日を抜き、年間の過去最多を更新した。

一方、最高気温が30度以上となる「真夏日」の「連続記録」は台風13号の接近で気温が低下したことで、9月7日で途切れたが、それでも、7月6日から9月7日まで64日間と、記録を大幅更新した。これまでの最長は、2004年7月6日から8月14日の40日連続だった。

東京都心の「年間真夏日日数」はこれまで、2010年の71日間が最多だったが、今年は9月20日で88日目となり、最多記録を更新中だ。

今夏は局地的な豪雨の一方で、猛暑となり、強い台風も相次いで日本列島に接近しているが、今冬は記録的な暖冬に注意する必要がありそうだ。

今夏、平年比で気温が高いのは、西日本より東日本、東日本よりも北日本、こうした傾向は「ニューノーマル」に

今夏、平年比で気温が高いのは、西日本より東日本、東日本よりも北日本が顕著となっており、札幌市では、8月23日、最高気温が36.3度と、1876年の統計開始以来最高となった。より、暑いのが、フェーン現象の影響を強く受けている新潟県や山形県、秋田県などだ。

近年は、梅雨が無いと言われる北海道でも7月頃には長雨がみられ、その後は猛暑が頻発している。異常な高温となっている海面水温等を勘案すると、こうした傾向は「ニューノーマル:新常態」となりつつあると言えそうだ。

気象庁の3か月予報、全国的に平均気温は高く、特に10月が高い見込み

気象庁が9月19日に発表した3か月予報、「向こう3か月の天候の見通し、全国 (10月〜12月)」によると、向こう3か月の気温は、寒気の影響が弱いため、北日本では平年並か高く、東・西日本と沖縄・奄美では高い見込み。

なお、同じく19日発表の「冬の天候の見通し、全国 (12月〜2月)」でも、冬の気温は、寒気の南下が弱く、東・西日本と沖縄・奄美では高く、北日本では平年並か高い見込みとなっている。

冬の降雪量は、冬型の気圧配置が弱く、東・西日本日本海側では少なく、北日本日本海側では平年並か少ない見込み。

特に、10月の平均気温は、沖縄・奄美から北日本まで全て「高い見込み」となっていることから、今年は残暑が厳しく、長期化することが予想される。また、エルニーニョ現象と正のインド洋ダイポールモード現象の影響で今冬は記録的な暖冬となる可能性がある。

新型コロナウイルス感染症の感染動向、猛暑や夏休み終了の影響等で感染波が北上し再拡大、インフルエンザとの同時流行が今冬まで継続する可能性

猛暑は「密」となりやすい環境を通して、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大要因にもなっているようだ。

「お盆」の帰省や夏休み終了の影響等で8月下旬以降、再度、感染が拡大。また、猛暑の影響もあり、西日本から東日本・北日本に感染波の北上が続いていることが明らかになった。

また、インフルエンザの流行が2022年12月以降、鎮静化しないまま、今夏を迎えたが、9月に入り、流行が拡大、今冬に向けて、COVID-19とインフルエンザの同時感染が継続する可能性が高まってきた。

9月4日〜9月10日の1週間の平均患者数、COVID-19は20.19人で前週比0.98倍、インフルエンザは同4.48人と1.75倍

厚生労働省によると、9月4日〜10日の1週間で全国約5,000の定点医療機関から報告された新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の新規患者数は前週から1,545人減少し、9万9,744人となった。1つの医療機関当たりの平均患者数は20.19人で前週(20.50人)比0.98倍と、小幅減少。

一方、9月4日〜10日の1週間で全国約5,000の定点医療機関から報告されたインフルエンザの新規患者数は前週から9,473人増加し、2万2,111人となった。1つの医療機関当たりの平均患者数は4.48人で前週(2.56人)比1.75倍と、大幅増加。

厚労省は「新型コロナの5類移行後、緩やかな増加傾向が続いていて、前の週からは減少したもののほぼ横ばいだといえる。年齢別では20歳未満が増加している一方でそれ以外は減少していて、学校再開などの影響が続いているとみられる。引き続き、感染対策を徹底してほしい」(15日付けNHK)としている。

減少は4週ぶり。25の府県で前週より増加。

都道府県別では多い順に、宮城県の32.47人、岩手県の29.87人、千葉県の27.45人、埼玉県の26.95人、石川県の25.65人などとなった。7月は沖縄県や九州地区が上位を占めていたが、8月以降は、宮城県や岩手県など、今夏、気温が上昇した北日本での感染拡大が目立つ。

6月26日から7月2日の週をピークに減少に転じていた沖縄県は4週連続で増加。

冬の感染波では北海道、夏の感染波では沖縄県に先行性、早期に「3密」が形成されることが背景か

我が国では過去の感染拡大時、第3波(2020年-2021年冬)、第6波(2021年-2022年冬)及び第8波(2022年-2023年)の冬の感染波では、北海道の感染状況に先行性がみられ、第5波(2021年夏)及び第7波(2022年夏)の夏の感染波では、沖縄県に先行性がみられた。

背景には、寒い冬には暖房の効いた室内に、暑い夏には冷房の効いた室内に、人々が集まることで、いわゆる「3密」(注)が形成し易くなるが、北海道や沖縄では、地理的位置から本州などに比べ、より早く冬や夏が訪れることで、早期に「3密」が形成されることが挙げられる。

(注)3密:①換気の悪い密閉空間、②多数が集まる密集場所、③間近で会話や発生をする密接場面。

シーズン終了まで、インフルエンザの流行が続いたのは、現在の集計方法となった1999年以降で初めて

インフルエンザの感染者も急増。10日までの1週間で1医療機関当たり4.48人となり、前週より急増。流行の目安とされる「1人」を超える状態が続き、COVID-19の感染と併せ、学級閉鎖が増加している。

インフルエンザは、全国で1医療機関当たり1人を超えると「流行期入り」の目安とされているが、2022年の12月25日までの1週間に「1.24人」となって以降、1人を上回る状態が続いている。

厚生労働省によると、シーズン終了まで、1人を上回る状態が続いたのは、現在の集計方法となった1999年以降で初めてのこと。

44の都度府県で前の週より増加、42の都道府県で「1人」を超えて流行しており、最多が沖縄(13.43人)で、注意報レベルとされる「10人」を超え、長崎県が8.80人、千葉県が8.58人、福岡県が7.56人、宮城県が7.34人と続く。

実は、インフルエンザに関しては、今シーズンの第1週が9月4日から10日の週だが、2022年が10月までほぼゼロの状態が続いていたのに対し、今シーズンの感染の立ち上がり状況は極めて急だ。

今年のインフルエンザの流行の背景は、①2020年から2022年まで大きな流行がなく免疫が低下、②COVID-19が5類に移行し、社会経済活動が正常化、③外国人の流入増加、特に、インフルエンザが流行している南半球からの流入、が挙げられる。

なお、欧米諸国では既に、昨シーズン(2022-2023)にインフルエンザの感染爆発が発生したため、北半球では例年同様、今夏は流行が沈静化、足元では我が国同様、感染者が増加に転じている。

なお、昨シーズンの流行は世界的に、「A型」(H1N1pdm09及びH3)が主流だった。

我が国では、COVID−19の感染及び感染防止策の長期化で、インフルエンザの流行が抑制され、抗体価が低下したことで、昨シーズン以上の感染が拡大する可能性がある。

現在、我が国含め世界中で、XBB系統の中でも感染力が強い「EG.5」(エリス)が主流に

なお、米CDCによると、COVID-19の感染状況に関し、直近の9月3日から9月16日の2週間では、「EG.5」、通称「エリス」のシェアが24.5%で第1位、第2位が「FL.1.5.1」の13.7%、第3位が「XBB.1.16」の10.2%となっている。

なお、「エリス」は冥王星に次ぐ大きさの準惑星の名前。一方、「FL.1.5.1」は「XBB.1.9.1」から派生した株で、通称は「フォルナックス」。

EG.5は2023年2月17日に初めてインドネシアで報告され、WHO(世界保健機関)により、7月19日に「監視対象の変異株:VUM」に、8月9日には「注目すべき変異株:VOI」に指定された。

「EG.5」は、「BA.2」系統の亜種である「XBB」系統のうち、「XBB.1.9.2」から派生した株。

WHOによると8月30日現在、57カ国で「EG.5」が確認されている。

東京都の分析でも、8月21日-27日の週は、「EG.5」が39.8%で第1位、「XBB.1.16」が19.4%で第2位と、「EG.5」が主流になっている。

「EG.5」は、オミクロン株の中でも、感染力が最強クラスでかつ免疫を逃れやすい(ステルス)といった特徴があるとされるが、現時点で重症化しやすいというデータの報告はない。

東京大学医科学研究所の佐藤佳氏らによる査読前論文によると、「EG.5」の亜種である「EG.5.1」は「XBB.1.5」より約20%強い感染力をもつことが示されている。

筆者の集計では、「XBB.1.5」の感染力は従来株の10〜30倍とみられることから、エリス(「EG.5.1」)の感染力は従来株の12〜36倍ということになる。

ピロラ(「BA.2.86」)のインパクトはオミクロン株出現時と同様?

9月に入り、急速に関心が高まっているのが「BA.2.86」、通称「ピロラ」だ。「ピロラ」は小惑星の名前。

WHOは8月17日に、欧州疾病予防管理センター(ECDC)は、8月24日に、VUM(監視下の変異株)に指定。

「BA.2.86」は、その名称通り、2022年に主流となっていた「BA.2」系統の亜系統だが、過去に報告された「BA.2」系統から、スパイクたんぱく質で33ヵ所、スパイクたんぱく質以外の部分で12ヵ所と、ゲノム配列全体で計45ヵ所もの遺伝子が変異している。

米CDCは「BA.2.86」の遺伝的変異の数は、最初のオミクロン変異株の(BA.1)と、デルタ(B.1.617.2) などの以前の変異株の間で見られたものとほぼ同じ大きさとしており、ある面、オミクロン株の出現時と同様なインパクトを持っていると考えられる。

現時点で、重症化の報告はないが、免疫回避性が一段と高まっている可能性がある。

WHOや米CDC、欧州CDCは、「BA.2.86」について、ワクチン接種や過去の感染によって免疫を獲得していても感染する確率がこれまでの派生型よりも高い恐れがあるという認識を示している。

尤も、直近の研究結果では、「BA.2.86」の感染力と免疫回避力はそれほどでもないとみられている。

実際、モデルナとファイザーは9月6日、それぞれが開発中の改良ワクチンの試験で、感染力が強いとして警戒されている「BA.2.86」に対し強い免疫反応を示したと発表した。

「BA.2.86」は、2023年7月にイスラエルとデンマークから報告され、その亜系統である「BA.2.86.1」系統も報告されている。2023年9月14日までに前者は8カ国から32件、後者は13カ国から81件のゲノム解析結果がGISAIDに登録されている。

東京都は9月7日、8月24日に都内の医療機関でPCR検査を行った検体についてゲノム解析したところ、「BA.2.86」を確認したと発表している。感染した人は軽症とのこと。

実は、米国からからの登録のうち1件は、米国の主要空港で実施されている入国者に対するゲノムサーベイランスにて、日本からの渡航者から「BA.2.86」系統が検出(検体採取日:8月10日)しており、既に、我が国では「BA.2.86」の感染が一定程度拡大している可能性がある。

高リスクセクターへのワクチン接種とともに、変異株のモニタリングが重要

過去のパンデミックの歴史や海外でのCOVID-19の感染収束動向等を勘案すると、パンデミック収束のためには、自然感染率の上昇が必要な面もある。

これは、季節性インフルエンザも同様だ。

そういう意味では、COVID-19第9波の長期化は避けられないとも言えるが、高齢者、基礎疾患がある方など高リスクセクターには、重症化予防のためにも、9月20日に開始された「XBB.1.5」対応の「1価ワクチン」の接種が推奨されよう。

また、ピロラ(「BA.2.86」)の出現等を勘案すると、欧米同様、変異株のモニタリングには引き続き注意を払う必要がありそうだ。

ピロラのWHOの現在の分類はVUM(監視対象の変異株)だが、VOI(注意すべき変異株)やVOC(懸念される変異株)、最悪の場合、VOHC(重大被害をもたらす変異株)が、ピロラの亜系統株から生まれる可能性は否定できないだろう。

岸田首相は9月13日、内閣改造と自民党人事を断行、第2次岸田第2次改造内閣が発足

岸田首相は9月13日、内閣改造と自民党人事を断行した。皇居での閣僚認証式を経て、同日夕刻、第2次岸田第2次改造内閣が正式に発足した。

自民党は13日午前、党本部で臨時総務会を開催、新執行部人事を了承した。党役員は、麻生太郎副総裁(82)、茂木敏充幹事長(67)、萩生田光一政調会長(60)は続投となり、骨格を維持した。小渕優子組織運動本部長(49)を党4役の選挙対策委員長に起用し、森山裕選対委員長(78)は総務会長に横滑りし、高木毅国対委員長(67)も留任した。

内閣改造でも自民党役員人事同様、骨格維持、留任6人、初入閣11人、再入閣2人、女性を積極登用

内閣改造では松野博一官房長官(60)、鈴木俊一財務相(70)、西村康稔経済産業相(60)、高市早苗経済安全保障担当相(62)、河野太郎デジタル相(60)ら主要閣僚の多くが留任となり、自民党役員人事同様、政権の骨格は維持された。

公明党が留任要望を出していた斉藤鉄夫国土交通相(71)も続投となった。留任は計6人。河野太郎氏は新たに「デジタル行財政改革」も担当する。

第2次改造内閣では積極的な女性登用が目立つ。外相に上川陽子元法相(70)、復興相に土屋品子氏(71)、地方創生担当相に自見英子氏(47)、こども政策担当相に加藤鮎子氏(44)を起用、高市氏の続投と併せ、過去最多に並ぶ女性5人が入閣。平成13年4月の第1次小泉内閣及び平成26年9月の第2次安倍改造内閣の各5人に並んだ。昨年8月の前回改造時の2人から大幅増となった。

初入閣は11人。総務相に鈴木淳司氏(65)、法相に小泉龍司氏(70)、文部科学相に盛山正仁氏(69)、厚生労働相に武見敬三氏(71)、農林水産相に宮下一郎氏(65)、環境相に伊藤信太郎氏(70)、防衛相に木原稔氏(54)、国家公安委員長に松村祥史氏(59)が起用され、女性閣僚の土屋復興相、自見地方創生担当相、加藤こども政策担当相も初入閣。

再入閣は2人。外相に就いた上川陽子氏に加え、経済再生担当相に新藤義孝元総務相(65)が入閣。

内閣支持率の浮揚と来年9月頃の自民党総裁選を意識した布陣

自民党の派閥別では、最大派閥の安倍派と第2派閥の麻生派の4人が最多で、第3派閥の茂木派が3人。岸田派、二階派及び無派閥が2人。岸田派は改造前から1人減。谷垣グループが1人。他に公明党1人。来年9月頃の自民党総裁選を見据えた派閥バランスの布陣となったと言えそうだ。

参院からは、武見厚労相、松村国家公安委員長、自見地方創生担当相の3人が入った。

岸田首相を含む閣僚の平均年齢は63.5歳で前回改造時の62.7歳から0.8歳上昇。

今回の布陣を見ると、女性登用が目立つ一方、女性を含め新入閣候補の推薦は基本的に各派閥に委ねたとみられる。主要閣僚は大半が留任となり、閣僚数も派閥バランスを配慮した結果になった。

足元の低い内閣支持率を意識、女性の積極登用を通じ、有権者に刷新感をアピールする一方、来年9月頃の総裁選を睨み、前回第2位につけた河野氏と第3位の高市氏を閣内で留任させつつ、各派閥のバランスを重視した布陣と言えそうだ。

岸田首相、「変化を力にする内閣」と命名、覚悟が問われる内閣

岸田首相は13日夜の記者会見で、「この内閣は、『変化を力にする内閣』です。明治維新、戦後復興など、我が国はこれまでも変化をチャンスとし、チャンスを力にしてきた、こうした歴史があります。大きな変化を前に、当時はとても実現不可能と思われた経済成長や豊かな社会づくりを実現した歴史が我々にはあります。変化を力として、閉塞感を打破し、所得であれ、暮らし・福祉であれ、外交関係であれ、明日は今日より良くなる、誰もがそう思える国づくりを一緒に行っていこうではありませんか」(首相官邸HP)述べ、第2次岸田第2次改造内閣を「変化を力にする内閣」と命名した。

我が国では、「禍を転じて福と為す」、「ピンチはチャンス」というフレーズをよく聞く。前者は中国の「戦国策」や「史記」蘇秦列伝に出てくる故事成語であり、後者は戦後、元軍人の大橋武夫氏らが、中国の故事をベースに多用し、一般化したと考えられる。

筆者も、二つの言葉に加え、「失敗は成功の母」や「死中に活を求む」などといった、いわゆる「逆転の発想」フレーズを使うことがあるが、合理的に考えれば、簡単なことではない。禍やピンチには要因があり、特定の問題、多くは構造的な問題を解決しないと、福やチャンスに変えられないケースが多い。

岸田首相の言う「変化」は必ずしも、禍やピンチを意味しないが、変化は「ビギナー」「パイオニア」「イノベーター」らには、チャンスとなろうが、既得権益を持つ成熟国家などにとっては、むしろ、過去のアドバンテージを奪われる要因になりかねない。

実際、バブル崩壊後、世界では、旧ソ連邦の崩壊や中国の改革開放政策の結果、グローバル化が進展したが、我が国は人口減・少子高齢化といった人口動態の変化も災いし、低成長が継続、経済面等様々な国際指標の順位が後退している。

成熟国が「変化を力にする」ためには、大胆な構造改革が必要だが、必ずしも有権者や既得権益を持つ勢力が賛同するとは限らない。このことが成熟国の成長率の低下要因でもある。

「変化を力にする内閣」は、岸田首相の覚悟が問われる内閣とも言えそうだ。

衆院の早期解散の可能性は低いが、様々な可能性に備えた人事

10月30日には、衆議院議員の任期4年の折り返しを迎える。

G7広島サミット後の支持率上昇局面では、永田町に衆院の解散風が吹いたが、岸田首相自身は早期の解散・総選挙には消極的だったと伝えられている。

但し、来年9月には自民党総裁選が控えている。自民党第4派閥を率いる岸田首相にとって、総裁選での続投には、衆院総選挙での勝利が本来、極めて重要だ。

足元では総裁選後への衆院解散先送り説も浮上しているが、菅前首相の総裁選不出馬のケースを鑑みれば、内閣支持率の動向(上昇)次第では、年内解散に踏み切る選択肢を残しているとみるべきだろう。

尤も、改造後に発表された報道各社の世論調査では、内閣支持率はほぼ横ばいで、政権浮揚効果は不発だった。

今回の内閣改造は、女性の登用を除けば、国民の人気の高い政治家の新たな起用はなかった。

最近の各種世論調査を平均すると、次の総理にふさわしい自民党議員のトップ3は、石破茂氏、河野太郎氏、小泉進次郎氏の順だが、石破氏と小泉氏は今回入閣せず、留任となった河野氏はマイナンバー問題等で支持率が低下している。

また、副大臣と政務官人事で、女性登用がゼロとなり、むしろ、逆効果となった面もある。

加えて、11人の新入閣はスキャンダルの増加要因とも言える。

岸田首相は、13日の記者会見で、物価高対応や賃上げ継続等に向けた経済対策の柱立ての指示を月内に行う考えを強調しつつ、経済対策の財源を確保する補正予算の編成については、「経済対策の取りまとめを行った後、その内容を踏まえて、しかるべき時期に指示を行いたい」(首相官邸HP)とし、時期には言及しなかった。

会見では、記者から直接の質問がなかったこともあるが、衆院解散・総選挙には全く言及しておらず、少なくとも、今春の反省もあってか、自ら解散風を吹かす意図はないとみられる。

今回の内閣改造・自民党役員人事は、年内の衆院解散に向けた布陣というよりは、内閣支持率を睨みつつ、年内解散の可能性を残した上で、来年夏まで衆院解散の好機を待つ、場合によっては、解散無しで総裁選に挑む可能性にも備えた人事と言えそうだ。

但し、10月1日にはインボイス制度もスタートし、10月16日頃召集と見込まれる臨時国会では、マイナンバーカードに加え、物価高対策や旧統一教会問題、防衛力の抜本的強化のための増税問題等も審議されることになる。マイナンバーカードの総点検は11月下旬に完了予定だ。

また、年内には「こども未来戦略」が策定され、「年間で3兆円半ば」の財源問題も焦点になる。

11月にはAPEC首脳会議のための米国への外遊や12月には日本ASEAN特別首脳会議などの国際会議も予定されている。

2023年度補正予算や2024年度当初予算の編成等も勘案すると、政治日程にあまり余裕がないのも事実であり、内閣支持率も勘案すると、年内解散の可能性は低下したと言えそうだ。

年内解散がなければ、通常国会会期末の2024年6月の解散の可能性が高そうだ。2024年度当初予算成立直後の3月の可能性もゼロではないが、予算関連法案やその他の重要法案の成立を勘案すると会期末の可能性が高いと考えられる。

6月までに衆院解散がなければ、自民党総裁選後となろう。但し、この場合は、2021年同様、波乱の展開となる可能性も否定できない。

映画観客動員ランキングで『ミステリと言う勿れ』が初登場第1位

前週末(9月15日-17日)の映画の観客動員ランキングでは、前月号で特集した『ミステリと言う勿れ』が初登場で第1位に輝いた(興行通信社調べ、以下同じ)。公開初日に鑑賞したが当初の予想が覆されるどんでん返し作品。

第2位は、『映画プリキュアオールスターズF』。

第3位は前月号で特集した『ホーンテッドマンション』。前週の2位からランクダウン。ディズニーランドのホーンテッドマンションのテイストそのままに、ストーリーも興味深く、お薦めの作品。

第4位も前月号で特集した『グランツーリスモ』が初登場でランクイン。日本発のゲームに加え、NISMO(ニッサン・モータースポーツ)によるシムレーサーの活躍という実話がベースになっているため、ハリウッド映画なるも感情移入がし易い作品。車好きには見逃せない。日産車に加え、東京の風景も多用されている。

第5位も前月号で特集した『劇場版シティーハンター天使の涙(エンジェルダスト)』がランクイン。前週の初登場第1位からランクダウン。公開直後に鑑賞したが、本作が新シリーズに繋がる第1作との予感。

第6位から第10位も前月号及び前々月号で特集した作品がランクイン。

第6位の『名探偵ポアロ:ベネチアの亡霊』はミステリーとオカルト的雰囲気が上手くミックスした作品。舞台は第2次世界大戦直後のイタリアのベネチア。地盤沈下が進む前に是非とも行きたい街だが、最近はオーバーツーリズムが問題化している街でもある。

第7位の『こんにちは、母さん』は、ほのぼのとした作品。大泉洋さんが演じるサラリーマン管理職の悲哀に加え、母や娘との関係等、現代的な面も多く、我が事のように感じた作品。

なお、公開10週目で第9位の『君たちはどう生きるか』 の累計成績は動員546万人、興収81億6,000万円を突破。

同じく公開8週目で第10位の『キングダム 運命の炎』 の累計成績は動員370万人、興収52億9,800万円を記録。

暦の上では秋だが、猛暑が続く中、映画館は都会のオアシス?引き続き内外の注目映画が公開

暦の上では秋だが、猛暑が続く中、映画館は都会のオアシスと言えそうだ。

今後も内外の注目映画の公開が予定されている。

9月22日公開の『ジョン・ウィック:コンセクエンス』は、キアヌ・リーブスさん演じる伝説の殺し屋を主人公としたアクション映画『ジョン・ウィック』シリーズ第4弾。2019年公開の『ジョン・ウィック:パラベラム』の続編。

数々の伝説で裏社会を震撼させてきた最強の殺し屋ジョン・ウィック。組織の掟を破りながらも粛清の包囲網から生還した男が、パリ、ベルリン、ニューヨーク、そして大阪を舞台に遂に決着に始動する。ジョン・ウィックは、裏社会の頂点に立つ組織・主席連合から自由になるべく立ちあがる。主席連合のグラモン侯爵は、これまで聖域としてジョンを守ってきたニューヨークのコンチネンタルホテルを爆破し、ジョンの旧友でもある盲目の暗殺者ケインをジョンのもとへ差し向ける。ジョンは日本の友人シマヅに協力を求めるため、大阪のコンチネンタルホテルに現れる。

シマヅ役で真田広之さんが出演。前3作に続きチャド・スタエルスキ監督がメガホンをとった。

同じく、9月22日公開の『ミュータント・タートルズ:ミュータント・パニック!』は、ニューヨークを舞台にカメの忍者4人組の活躍を描いた「ミュータント・タートルズ」の長編アニメーション。子供のころより人間から隠れて暮らしてきたタートルズたち。「普通のティーンエイジャー」として彼らが住む大都市ニューヨークのみんなに愛され受け入れられたい。その願いを叶えるため、新たな友人エイプリルの助けを得つつ謎の犯罪組織との戦いに繰り出す。そんな彼らの前に現れたのはミュータント化した敵の大群だった。

『沈黙の艦隊』

『沈黙の艦隊』
2023年9月29日全国東宝系にてロードショー
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9月29日公開の『沈黙の艦隊』は、1988〜1996年に講談社の週刊「モーニング」に連載された、かわぐちかいじ氏のコミック「沈黙の艦隊」を、大沢たかおさんが主演のほかプロデューサーも務めて実写映画化。

日本の近海で、海上自衛隊の潜水艦が米原潜に衝突し沈没した。艦長の海江田四郎を含む全76名が死亡との報道に衝撃が走る。だが実は、乗員は無事生存していた。事故は、日米政府が極秘に建造した高性能原潜「シーバット」に彼らを乗務させるための偽装工作だったのだ。

米艦隊所属となったシーバット、その艦長に任命されたのが海自一の操艦を誇る海江田であった。ところが、海江田はシーバットに核ミサイルを積載し、突如反乱逃亡。海江田を国家元首とする独立戦闘国家「やまと」を全世界へ宣言した。やまとを核テロリストと認定し、太平洋艦隊を集結させて撃沈を図るアメリカ。アメリカより先にやまとを捕獲すべく追いかける、海自ディーゼル艦「たつなみ」。その艦長である深町は、過去の海難事故により海江田に並々ならぬ想いを抱いていた。

10月6日公開『アナログ』は、ビートたけし氏の恋愛小説「アナログ」を二宮和也さん主演、波瑠さん共演で実写化したラブストーリー。

手作り模型や手描きのイラストにこだわるデザイナーの悟。携帯を持たない謎めいた女性、みゆき。喫茶店「ピアノ」で偶然出会い、連絡先を交換せずに「毎週木曜日に、同じ場所で会う」と約束する。二人で積み重ねるかけがえのない時間。悟はみゆきの素性を何も知らぬまま、プロポーズすることを決意。しかし当日、彼女は現れなかった。その翌週も、翌月も。なぜみゆきは突然姿を消したのか。彼女が隠していた過去、そして秘められた想いとは。ふたりだけの「特別な木曜日」は、再び訪れるのか。

10月13日公開の『オペレーション・フォーチュン』はガイ・リッチー監督とジェイソン・ステイサムさんの5度目のタッグ作。

英国諜報局MI6御用達の敏腕エージェント、オーソン・フォーチュンに下された新たなミッション。それは100億ドルで闇取引される「ハンドル」を追跡・回収すること。フォーチュンはMI6のコーディネーター・ネイサンや、クセ強の天才ハッカー・サラ、新米スナイパーのJJという即席チームを率いて行動を開始する。能天気ハリウッドスターのダニーを無理矢理任務に巻き込み、武器商人グレッグに大胆不敵に接近。次第に明らかになっていく巨大な陰謀を、フォーチュンたちは阻止できるのか。そして、「ハンドル」の正体とは。既に、旅客機の中で鑑賞したが、軽妙なスパイアクションに仕上がっていた。

『ゆとりですがなにか インターナショナル』

『ゆとりですがなにか インターナショナル』
2023年10月13日全国ロードショー
©(C)2023「ゆとりですがなにか」製作委員会

10月13日公開の『ゆとりですがなにか インターナショナル』は2016年に日本テレビ系列で放送された連続ドラマ「ゆとりですがなにか」を映画化。

野心がない、競争意識がない、協調性がない、「ゆとり世代」と、かつて勝手にそう名付けられた彼らも30代半ばを迎え、それぞれ人生の岐路に立たされていた。夫婦仲はイマイチ、家業の酒屋も契約打ち切り寸前の坂間正和、いまだに女性経験ゼロの小学校教師・山路一豊、事業に失敗し、中国から帰ってきたフリーター・道上まりぶ。

家族、仕事、仲間、ライバル、不倫疑惑、マッチングアプリ、エビチリ、二日酔い、彼らの前に立ちはだかる「人生の試練」。そして、「Z世代」「働き方改革」「コンプライアンス」「多様性」「グローバル化」、想像を超える新時代の波も押し寄せ、物語は予想外の展開へ。

10月20日公開『ザ・クリエイター/創造者』は、驚異のビジュアル・世界観で描かれるSFアクション超大作。『ローグ・ワン スター・ウォーズ・ストーリー』のギャレス・エドワーズ氏が原案・製作・監督・脚本を手がけた。

遠くない近未来、人を守るはずのAIが核を爆発させた。人類とAIの戦争が激化する世界で、元特殊部隊のジョシュアは人類を滅ぼす兵器を創り出した「クリエイター」の潜伏先を見つけ、暗殺に向かう。だがそこにいたのは、兵器と呼ばれたAIの少女「アルフィー」だった。そして彼は「ある理由」から、少女を守りぬくと誓う。やがてふたりが辿りつく、衝撃の真実とは。

『TENET テネット』のジョン・デヴィッド・ワシントンさんが主人公ジョシュアを演じ、渡辺謙さんらが共演。

『VIVANT』と『別班』

TBS系の日曜劇場『VIVANT(ヴィヴァン)』(日曜21:00)の最終回(第10話)が17日、79分スペシャルで放送され、平均世帯視聴率は19.6%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)となった。

NHK連続テレビ小説『らんまん』(月〜土曜8:00)第115話(9月8日)の19.2%を0.4ポイント上回り、現時点で今年の全ドラマ1位に浮上した。

若者中心にテレビ離れが進む中では驚異的な数字だが、主人公は日曜劇場『半沢直樹』の堺雅人さん、共演は同『下町ロケット』の阿部寛さん、同『陸王』の役所広司さんらで、それらの作品を手がけてきた福澤克雄氏の原作・演出による完全オリジナルストーリーとくれば想定内か。モンゴルでの2カ月半に及ぶ大規模ロケ以外、事前の番宣ではストーリーを一切明かさなかったことも、視聴者の様々の「考察」を呼ぶことになった。

但し、筆者が今回最も興味を持ったのは、いわゆる「別班」をテーマにしたことだ。福澤氏の過去の作品は池井戸潤氏原作が多いが今回はオリジナルストーリー。

その際、参考にしたと思われるのが、堺雅人さんらキャストやスタッフに事前に配られた「自衛隊の闇組織 秘密情報部隊『別班』の正体(講談社現代新書) 」(著者は石井暁氏)だ。

別班は「陸上幕僚監部運用支援・情報部別班」の略だ。筆者も、名前は聞いたことがあるが、政府が2013年の小野寺防衛大臣の国会答弁及び内閣の答弁書で、「これまで自衛隊に存在したことはなく、現在も存在していない」としていることから、仮に存在していたとしても冷戦期の遺物であり、現在では都市伝説のようなものと思っていた。

但し、今回改めて、現在も共同通信の編集委員を務める石井暁氏の著書を読んでみると、国会答弁の原因となる同氏が手がけた共同通信配信の2013年11月27日付けインターネット記事、地方紙では同28日付け記事の信ぴょう性が高まってきた。

同記事は、「陸上自衛隊の秘密情報部隊『陸上幕僚監部運用支援・情報部別班』(別班)が、冷戦時代から首相や防衛相(防衛庁長官)に知らせず、独断でロシア、中国、韓国、東欧などに拠点を設け、身分を偽装した自衛官に情報活動をさせてきたことが二十七日、分かった」としている。

続けて、「陸上幕僚長経験者、防衛省情報本部長経験者ら複数の関係者が共同通信の取材に証言した」とし、「自衛隊最高指揮官の首相や防衛相の指揮、監督を受けず、国会のチェックもなく武力組織である自衛隊が海外で活動するのは、文民統制(シビリアンコントロール)を逸脱する」としている。

この点について、石破茂元防衛相は15日、「TBS NEWS DIG」で別班について、「あるともないとも言えません」としつつ、合法的な諜報・防諜組織の必要性を強調している。石破氏は14日付けの週刊文春では『VIVANT』は知らないとしつつ、別班については、「存在はしています」「なきゃおかしい」とし、やはり、情報部隊の必要性を指摘している。

高視聴率を得たこともあり、福澤氏は続編の製作を示唆している。過去、別班の名前を知っている国民は、情報関係者か一部メディア、よほどの軍事オタクに限られていたとみられるが、『VIVANT』により、一般化したのは事実だろう。

防衛力の抜本的強化のための増税問題等が具体化されるとみられる1-2年後には、『VIVANT』の続編が放映されている可能性がある。

『VIVANT』の続編は現時点では2025年7-9月クールが有力視されており、前述のハリウッド映画に出演している真田広之さんや渡辺謙さんらの名前も新キャストとして、挙がっているようだ。

但し、『VIVANT』、つまり、『別班』の名前が有名になればなるほど、政治的には難しい問題も増えそうだ。

前述の石井氏の著書はアマゾンでは「政治」カテゴリーでベストセラー1位で1週間待ちだったが、近所の書店(有隣堂)では「VIVANTで話題沸騰!」のカバー付きで平積みされており、そこそこ売れている感じだった。

英国情報部、「MI6(軍事情報部第6課:Military Intelligence 6」、現在の名称は「SIS(秘密情報部:Secret Intelligence Service)」は、元英海軍情報部員のイアン・フレミング氏原作の「007」シリーズで世界的に有名だ。同氏もMI6に一時在籍。

SISのHPによると、設立は1909年10月だが、英政府がその存在を公式に認めたのは1994年に情報活動法(The Intelligence Services Act 1994)が成立した後であり、本部も現在のボクソールクロスに移転した。「C」として知られるSIS長官名が明らかになったのも1994年以降だ。

2024年9月に自民党総裁選を控え、衆院解散・総選挙のタイミングを探っている岸田政権にとっても、有権者の関心の高い問題だけに、慎重な対応が迫られそうだ。

まさに、「事実は小説より奇なり」か。

末澤 豪謙 プロフィール

末澤 豪謙

1984年大阪大学法学部卒、三井銀行入行、1986年より債券ディーラー、債券セールス等経験後、1998年さくら証券シニアストラテジスト。同投資戦略室長、大和証券SMBC金融市場調査部長、SMBC日興証券金融市場調査部長等を経て、2012年よりチーフ債券ストラテジスト。2013年より金融財政アナリスト。2010年には行政刷新会議事業仕分け第3弾「特別会計」民間評価者(事業仕分け人)を務めた。財政制度等審議会委員、国の債務管理の在り方懇談会委員、地方債調査研究委員会委員。趣味は、映画鑑賞、水泳、スキューバダイビング、アニソンカラオケ等。

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