今月のコラム
【第4回】医業を継続したら相続税が免除される!?
(2014年10月10日)
提供:朝日税理士法人
先日、長年にわたり医療法人の理事長を務めていた高齢の先生と次のようなやり取りがありました。
- 先生:「今、私に相続が発生したらどのくらい相続税がかかるのだろうか?これまで医療法人の財務体質を強くすることばかり考えてきたから、個人財産はなく相続税はそれほど心配していないのだが。」
- 税理士:「先生の医療法人には、持分があります。先生は医療法人の出資者なので、この出資額に応じた持分の払戻しや財産の分配を受ける権利があります。実は、この権利(持分)に相続税がかかるのです。」
現在、社団医療法人のうち85%程度が出資持分のある医療法人です。この出資持分は、財産的価値があるので相続税の課税対象となります。実際、持分のある医療法人のなかでも長年にわたり地域に根ざした活動を行ってきた優良な医療法人の先生ほど相続税の負担に悩みを抱えることが多いでしょう。
このような問題から地域医療を守るため、第五次医療法改正により平成19年以後は持分のある医療法人の新規設立はできなくなりました。また、平成26年10月1日より施行されている「地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律」では、持分のある医療法人から持分なしの医療法人への移行促進策の措置が掲げられています。
ここで注目すべきは、平成26年度税制改正との組み合わせで、医療法人の出資持分に係る相続税が猶予・免除される可能性があるということです。
主な要件は、@平成26年10月1日(〜)平成29年9月30日までの3年以内に厚生労働大臣の認定を受け、A認定後3年以内に持分なし医療法人へ移行するということ等です。医業を継続したいが、出資持分の相続税負担問題に悩んでいる先生には今後の選択肢のひとつになると思われます。
ただし、次の点に注意が必要です。まず、持分なし医療法人へ移行することは、財産的価値のある出資持分を放棄するということです。つぎに、相続税が免除されても医療法人側で思わぬ贈与税の課税問題が生じることがあります。
無条件で相続税が猶予・免除されるわけではないため、これらの課税対策や持分なし医療法人の適否などについて、慎重な判断が必要となるでしょう。
原則、本コラムは毎月(月1回)更新します