今月のコラム
【第11回】2015年度の介護報酬改定に伴う医療機関への影響
(2015年5月11日)
提供:朝日税理士法人
2015年度の介護報酬改定は、全体の改定率がマイナス2.27%と、介護事業を営む医療機関にとって大変厳しい内容となりました(図1)。
この内訳をみると、収支状況などを反映した報酬の適正化がマイナス4.48%と大幅に引き下げられ、当面の減収は避けられない内容となっています。
その一方、住み慣れた地域で自分らしい生活が送られるよう医療機関にいる高齢者の在宅復帰を促進するとともに、在宅訪問看護の従事者の増員を図ろうとする部分は増額の改訂が行われています。通所介護や訪問介護では新設項目もあり、プラス0.56%の改定となっています。これは中重度者や認知症高齢者への対応強化の基本方針に沿ったもので、今回の改定で基本報酬が増加した数少ないサービスです。
今回の改定の目玉は介護職員の処遇の改善で、これはプラス1.65%の改定となっています。この項目では、新たに最上位ランクが設けられ、1人当たり平均で月額1万2000円相当の賃金アップになるよう、加算率の引き上げが行われました。ただし、この改定により、介護職員の処遇改善が求められていますが、賃金アップだけでは収支が悪化する可能性があるため、人員配置の見直しや所得拡大促進税制などの優遇措置(図2)の活用も検討し、改定のマイナス幅を最小限に食い止める収益改善策の策定が課題となります。
以上のように高齢者の「在宅復帰へ」という流れの中で行われた今回の改定では、事業者に対して収益構造の改善が求められています。この改定に伴い、資金繰り対策や増収策など様々な検討が必要となります。そこで、この改定を一つの機会ととらえ、綿密なシミュレーションにより収益性を検討し、今後の安定した収益構造を再構築することが大切です。
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