60歳以降に働く人の年金額が有利に
(作成日:2021年12月)
令和4年4月から、在職老齢年金が変わります。定年以降も働く方が多くなり、賃金と年金の合計額に応じて年金がカットされる制度が見直されることになりました。また、65歳以降も働く老齢厚生年金受給者について、働きながら納めた保険料が早期に年金額に反映される制度が始まります。今回は、60歳以降に働く人の年金額についてみてみましょう。
増える高齢労働者
60歳以降の労働者が増えています。厚生労働省「労働統計要覧」によると、令和2年における60歳から64歳までの雇用者は458万人、65歳以上の雇用者は620万人となっています。
【雇用者の推移】
平成28年 | 平成29年 | 平成30年 | 令和元年 | 令和2年 | |
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60歳〜64歳 | 437万人 | 440万人 | 446万人 | 456万人 | 458万人 |
65歳以上 | 501万人 | 531万人 | 576万人 | 611万人 | 620万人 |
在職老齢年金とは
老齢厚生年金をもらいながら働くと、賃金と年金の合計額に応じて全部または一部の年金支給が停止される仕組みを在職老齢年金といいます。現行法では、60歳〜64歳の方は賃金と年金の合計額が28万円を超えると年金額が減額され、65歳以上の方は47万円を超えると年金額が減額されます。なお、賃金には1年間の賞与を1か月あたりに換算した金額が含まれます。
賃金 | 毎月の賃金(標準報酬月額)+ 1年間の賞与(標準賞与額)を12で割った額 |
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年金 | 年金額(年額)を12で割った額 |
例えば、老齢厚生年金額が108万円(月額9万円)である65歳未満の方が賃金28万円(1か月あたりの賞与を含む)で働いた場合、老齢厚生年金が月額で4.5万円支給停止となります。
年金カットの基準を緩和
健康寿命が延び、これまで以上に長い期間、多様な形で働くようになると見込まれています。長期化する高齢期の経済基盤の充実を図る必要があることから、上記の仕組みが見直され、働いても不利になりにくい仕組みに変更されます。令和4年4月から、60歳〜64歳が対象となる在職老齢年金について、年金の支給が停止される基準が現行の28万円から47万円に緩和されることになりました。65歳以上の方については現行の基準が47万円となっており、来年4月以降も変更はされません。
新設された在職定時改定
高齢期に働く場合、70歳になるまでは厚生年金に加入して保険料を負担しなければなりません。年金をもらいながら保険料を納めるという形です。しかし、負担した保険料はすぐには年金額に反映されません。現行法では、退職等により厚生年金被保険者の資格を喪失するまでは、老齢厚生年金の額は改定されないのです。
令和4年4月、この仕組みも見直されます。65歳以上で働く老齢厚生年金受給者について、年金額が毎年10月に改定されることになりました。それまでに納めた保険料が毎年、速やかに年金額に反映される制度となります。在職定時改定といわれ、これも年金を受給しながら働く方の経済基盤の充実を図るものです。
その他、高齢者が自身の就労状況等に合わせて年金受給を開始できるよう、60歳から70歳までの間で選択可能となっている年金受給開始時期の上限が75歳に引き上げられます。
長寿社会となりました。ライフプラン上、高齢期における就労と年金の理解は欠かせません。ある程度時間が取れる年末年始に、ご家族も交えて定年以降の生活を考えてみてはいかがでしょうか。
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