FPの相続コラム「子々孫々へ遺す想い」
【第31回】

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(2016年10月20日)

【第31回】上場株式を保有すると相続税が減額??

FPの相続コラム「子々孫々へ遺す想い」では、毎月1回、相続に関連したお役立ち情報から最新の話題までをお伝えしております。第31回目のコラムは、上場株式の相続税評価に関するお話です。

2017年度税制改正大綱に向けた動き

2017年度税制改正大綱が公表される年末に向けて、各省庁から様々な要望が提出されています。相続税については、昨年改正された基礎控除額の引き下げ等、近年は増税の改正が続いているイメージですが、今回金融庁からは上場株式等の相続税評価について緩和する案が要望されています。

上場株式等の相続税評価方法に関する要望

金融庁が要望している見直し案は以下の3項目になります。
一つ目は、上場株式等の相続税評価額について、相続時から納付期限までの価格変動リスクを考慮することを要望しています。金融庁は昨年も上場株式等の価格変動リスクを考慮して、相続時の時価の70%で評価することを要望していましたが、結果的に見送りになりました。今回は時価の70%を90%に変更したうえであらためて要望しています。

二つ目は、相続発生後、通常想定される価格変動リスクの範囲を超えて価格が著しく下落した上場株式等については、評価の特例を設けることを要望しています。大震災やリーマンショックのような事象が原因で大幅な株価の下落に対応するためのものです。

三つ目は、金銭以外の相続財産で相続税を納める物納制度に関して、上場株式等の物納順位を、現在の第二順位から第一順位の資産(国債・地方債・不動産・船舶)と同等とすることを要望しています。

上場株式等の相続税評価の問題点

現行の上場株式等の評価方法は、①亡くなった日の最終価格、②亡くなった月の毎日の最終価格の月平均額、③亡くなった月の前月の毎日の最終価格の月平均額、④亡くなった月の前々月の毎日の最終価格の月平均額、これら①〜④の中で一番低い価格を相続税評価額として適用することができるようになっています。しかし、相続した上場株式等を譲渡したいと思っても、相続が発生した時から遺言の執行または遺産分割協議が調うまでの間は、通常譲渡することができません。その間に株価が下落して、譲渡価格が相続税評価額を下回り、納税者にとって不利な現象が起こってしまうといったことがあります。今回の要望では、その点を考慮して欲しいという趣旨の内容になっています。

財産の種類により相続税評価は異なります

上場株式等以外の財産の相続税評価についてみてみると、価格変動リスクがほとんどない預金については預入残高の100%が相続税評価額になりますが、価格変動リスクがある土地や建物などは通常の取引価格より低い評価額になる傾向にあります。

通常、土地は公示地価の80%程度の路線価※をもとに評価し、建物は建築費の50%〜70%程度の固定資産税評価額、ゴルフ会員権は市場取引価格(時価)の70%で評価されます。
価格変動リスクという観点からみた場合、不動産等の評価は優遇されているのに対して、上場株式等の評価は価格変動リスクが考慮されているとは言えないケースもあり、見直しする余地は十分にあるのではないかと思います。

いずれにしても年末に公表される2017年度税制改正大綱には注目したいところです。

  • 路線価のない土地を評価するときは、固定資産税評価額に国税庁が定める倍率を乗じます。

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