FPの相続コラム「子々孫々へ遺す想い」
【第23回】

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(2016年2月25日)

【第23回】賃貸住宅と相続対策

FPの相続コラム「子々孫々へ遺す想い」では、毎月1回、相続に関連したお役立ち情報から最新の話題までをお伝えしております。第23回目のコラムは、賃貸住宅と相続に関するお話です。

相続対策を目的とした賃貸住宅の新築件数は増加傾向

2016年1月に国土交通省が公表した「建築着工統計調査」によると、2011年以降の賃貸住宅の新築件数は毎年増加傾向で、2015年の賃貸住宅の新築件数は、2011年の新築件数285,832戸の約32%増しの378,718戸となっています。この背景には2015年1月からの相続税の大幅な改正が多分に影響していることと思われます。相続税が改正されたことから生命保険の非課税枠や生前贈与を効果的に活用した相続税対策が脚光を浴びていますが、広い敷地や遊休地を所有されている方の中には土地の相続税評価額を引き下げる目的で賃貸住宅の新築をご検討されている方が多いということです。

新築賃貸住宅の傾向

最近の傾向としては、首都圏を中心として、自宅を「賃貸併用住宅」に建て替える方が増えているようです。「賃貸併用住宅」とは、自宅の建物の一部を賃貸住宅にしたもので、一定の要件を満たせば賃貸部分も含めて自己の居住用建物と同様に低金利の住宅ローンで購入ができ、家賃を住宅ローンの支払いにあてることもできます。最近では新聞広告でも大手ハウスメーカーの賃貸併用住宅を見かける機会が増えてきました。

土地の相続税評価額を軽減できる小規模宅地等の特例

自宅を相続する場合、自宅敷地の相続税評価額を減額することができる「小規模宅地等の特例」を適用すれば、最大330uまでの敷地の相続税評価額を80%減額することができます。ただし、両親のどちらかが既に亡くなっていて、遺された親がその自宅に一人暮らしだった場合、自宅を引き継ぐ相続人である子(子の配偶者を含む)に持家があると小規模宅地等の特例を適用できません。このようなケースで、もし、自宅の遊休地部分にアパートを建てたり、賃貸併用住宅に建て替えた場合は、貸家部分に応ずる土地については貸家建付地の評価(通常、更地の相続税評価額から20%前後を評価減)を適用できるだけでなく、さらに小規模宅地等の特例を適用することで最大200uまでの敷地の相続税評価額を50%減額することができます。

賃貸併用住宅の相続税評価の軽減例

具体的な事例で評価減のイメージを掴んでいただきたいと思います。『お父さまに先立たれたお母さまは賃貸併用住宅を新築し一人暮らしだとします。賃貸併用住宅は総二階で一階がお母さまの自宅、二階は貸家、建物の固定資産税評価額は2,000万円、敷地100坪の更地評価額は6,000万円とします。このケースで、もし、自宅が賃貸併用住宅ではなく100%お母さまの居住用で、相続人であるお子さまに持家がある場合の自宅の相続税評価額は、8,000万円(建物2,000万円+土地6,000万円)ということになります。一方で建物半分が貸家である賃貸併用住宅の相続税評価額は、約▲2,100万円軽減され、約5,900万円(建物1,700万円、土地4,200万円)になります。(※当該土地の貸家建付地部分の評価は更地評価額の80%と仮定して評価)』

リスクおよび留意点について

上記の試算通りにいけば賃貸住宅を取得することは相続税対策としては効果的ですが、冒頭で申し上げました通り、近年は相続税対策と相まって賃貸住宅の新築ラッシュとなっています。一部のエリアでは賃貸住宅が飽和状態で想定通りの家賃が見込めなかったり、空室になってしまうなどリスクも増加傾向のようです。相続税対策を目的としてアパート建築等をご検討されている方は将来的な空室リスク等も含めてご検討されることをお勧めいたします。

ご留意事項

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