アナリストの忙中閑話【第136回】

アナリストの忙中閑話

(2022年9月15日)

【第136回】エリザベス女王逝去、ウクライナ軍反転攻勢、シネワールド米破産法11条申請、動画配信ビジネスもサバイバルゲーム、10月に向けた注目映画等

金融経済調査部 金融財政アナリスト 末澤 豪謙

英国のエリザベス2世女王が9月8日逝去、歴代最長の70年君臨、「国民に開かれた王室」を目指した

英国のエリザベス2世女王が9月8日、滞在先のスコットランドのバルモラル城で逝去された。96歳だった。

エリザベス女王は英国君主として歴代最長の70年の長きにわたり君臨、「国民に開かれた王室」を目指して英国民のみならず、英連邦諸国や世界中から敬愛を集めた。

国葬は9月19日にロンドンのウェストミンスター寺院で行われる。

王位継承権第1位の長男チャールズ皇太子がチャールズ3世として新国王に即位

女王死去を受け、王位継承権第1位の長男チャールズ皇太子(73)が「チャールズ3世」として新国王に即位した。

チャールズ国王は声明を発表。「私の最愛の母である女王陛下の死は、私と私の家族全員にとって最大の悲しみとなる瞬間です。私たちは、大切な君主であり、とても愛されていた母の死を深く悼んでいます」とし、「女王の喪失は、国、王国、英連邦、そして世界中の無数の人々によって深く感じられることでしょう。この喪に服し変化する時期に、私と家族は、女王が広く抱かれていた敬意と深い愛情を知ることで、慰められ、支えられていくでしょう」と続けた。

本年6月には在位70年を記念した「プラチナ・ジュビリー」が盛大に執り行われ、今月6日には、エリザベス女王は自らの足で立ち、リズ・トラス新首相を任命した際に笑顔で写真に納まっていた。

但し、通常、ロンドンにバッキンガム宮殿で行われる新首相の任命式がスコットランドのバルモラル城で行われたのは70年の在位中初めてとのことであり、健康不安も指摘されていた。

トラス首相は8日、官邸前で演説。女王の訃報に「私たちは皆、打ちのめされています」とし、女王の死は「英国と世界にとって大きな衝撃」だとし、女王を「現代の英国を築いた礎」だったと表現。「英国は彼女の統治下で成長し繁栄し、今日の偉大な国になった」と称えた。

ロンドン夏季オリンピックの開会式では、エリザベス女王は「女王陛下の007」と登場する演出

エリザベス女王の在位は70年に及んだことから、筆者を含め、大半の現役世代にとって、英国の君主と言えば、エリザベス女王であった。また、英国の国家機関等もこれまでは、全て女王陛下の「○○」となっていた。たとえば、英財務省は「Her Majesty's Treasury」だ。

我が国でも知名度が高いのは1969年公開の映画『女王陛下の007』だろう。原題は『On Her Majesty's Secret Service』。

エリザベス女王も「007シリーズ」はお気に入りだったらしく、2012年7月27日のロンドン夏季オリンピックの開会式では、「007、ジェームズ・ボンド」役のダニエル・クレイグ氏がエリザベス女王とともに乗り込んだヘリコプターから「スカイフォール(飛び降りる)」する演出が行われた。

開会式ではバッキンガム宮殿にクレイグ氏が現れる映像からスタート。エリザベス女王とヘリコプターに乗り込み、開会式会場へ向かう様子が中継され、その後、スタジアム上空にヘリコプターが登場。エリザベス女王とクレイグ氏(実際はスタント)が上空からダイブ。上空にはユニオンジャック柄のパラシュートが2つ舞い、直後に本物の女王がスタジアムに登場という演出に会場は大歓声・拍手に包まれた。

当時は、『007』シリーズ50周年記念となる最新作『007 スカイフォール』の公開を2012年10月に控えたタイミングでもあったが、エリザベス女王の気さくさに感銘を受けた記憶がある。

改めて、安らかな眠りにつかれますよう、お祈り申し上げます。

新国王の即位を受けて、英国では紙幣や硬貨、切手等のデザインに加え、国歌も変更

英王室はエリザベス女王時代、多くのスキャンダルにも見舞われたが、世界中の王室の中で、注目度が世界一だったのは間違いない。

新国王の即位を受けて、英国では紙幣や硬貨、切手等のデザインに加え、国歌も変更される。

今後は各省庁同様、「007」も「国王陛下の007」に

今後は、各省庁同様、「007」も「国王陛下の007:His Majesty's Secret Service」に変わることになる。

但し、「英国の母」として親しまれてきた女王の死去により、英国民の喪失感は極めて大きいものとなりそうだ。

トラス首相は演説の最後、「第2エリザベス朝の時代が過ぎ去り、偉大な国の壮大な歴史に新たな時代が到来します」とし、「神よ、国王をお守りください」と締めくくった。

8月30日には、初代ソ連大統領のゴルバチョフ氏が死去、2022年は歴史の転換点にあたる可能性

8月30日には、東西冷戦を終結に導き、ノーベル平和賞を受賞した初代ソ連大統領のミハイル・ゴルバチョフ氏が死去した。享年91歳だった。

ほぼ、同時代を生きた東西の指導者(元首)が亡くなり、一方で、足元では「新冷戦」と言われように、西側諸国とロシアや中国等との対立が深刻化している。

やはり、2022年は歴史の転換点にあたる可能性が高くなったと言えそうだ。

ウクライナ軍による反転攻勢で、9月に入り、東部と南部の8,000平方キロ以上を奪還

ウクライナのゼレンスキー大統領は9月13日のビデオ演説で、ウクライナ軍による反転攻勢により、9月に入り、東部と南部の8,000平方キロ以上を解放したと述べた。12日のビデオ演説では、「6,000平方キロ以上を解放した」と述べていたので、1日で2,000平方キロを奪還したことになる。

なお、約半分の地域(約4,000平方キロ)では依然として「安定化」の措置が進められているとのこと。

米国のシンクタンク「戦争研究所:ISW」は10日付けレポートで、「ハルキウ州でのウクライナの反撃は、ロシア軍を敗走させ、ロシアのドンバス北部の防衛ラインを崩壊させている」とし、補給拠点でもあるイジューム周辺から離脱しているとしていた。

11日付けレポートでは、ウクライナ軍は急速な反撃で、ほぼ全てのハルキウ州を奪還し、ロシアに大きな作戦上の敗北をもたらしたとしている。

12日付けレポートでは、ウクライナ軍は南部ヘルソン州で前進を続けており、この地域におけるロシア軍の士気と戦闘能力を着実に低下させているとしていた。

一方、13日付けレポートでは、クレムリンはハリコフ州(ハルキウ州)での敗北を認めたとし、ロシアがこの戦争で認めた最初の敗北であるとしている。

14日付けレポートでは、ハルキウ州東部でのウクライナの反撃は、ロシア軍を弱体化させ続け、ロシアの砲兵部隊と防空部隊を脅かしていると解説。

ロシア側も今回は、ハルキウ州における軍の再編成のみならず、限定的な撤退を認めており、ハルキウ州におけるウクライナ軍の反転攻勢は、ロシア軍が南部に兵力をシフトする中、虚を突かれた形で、ウクライナ軍に広範囲にわたって防衛線を突破されたと考えられる。

HARMとHIMARSがウクライナ軍の反転攻勢の大きな武器に

今回のウクライナの奇襲攻撃で、効果を発揮したとされるのは、米国が8月にウクライナへの供与を発表した高速度対レーダーミサイル(HARM)だ。

オースティン国防長官は8日、訪問先のドイツでの記者会見で、米国が供与した対レーダーミサイル(HARM)が効果を発揮していると指摘した。また、米軍制服組トップのマーク・ミリー統合参謀本部議長は、高機動ロケット砲システム(HIMARS)でロシア軍の補給路と弾薬供給拠点など400以上の標的を攻撃したと明らかにした。

オースティン氏は記者の質問に対し、「ウクライナは、HIMARSやHARMミサイルなどの追加能力を私たちだけでなく同盟国からも獲得したため、戦場でのダイナミクスを再び変化させ始めた」と発言しており、HARM とHIMARSがウクライナ軍の反転攻勢の大きな武器となっていることが窺われる。

HARMは「High-Speed Anti Radiation Missile」を略したもので、正式名称は「AGM-88」。地対空ミサイル(SAM)システム等から放射される電波を探知し、当該システムに誘導する空対地ミサイル(ASM)である。米空軍では F-16Cに、米海軍ではF/A-18及びEA-18Gに搭載されている。

ウクライナ空軍が保有ないし周辺国から供与された可能性のあるMiG-29(ミグ29)戦闘機などを改装し「AGM-88 HARM」を搭載、ロシア軍の対空レーダーや地対地ミサイルを攻撃、目を奪った上で、奇襲攻撃を成功させたとみられる。

米国防総省のパット・ライダー報道官(空軍准将)は13日の会見で、ウクライナ軍の反転攻勢に関し、米国等は驚いておらず、「誰かが驚いたとしたら、それはおそらくロシアだったと思う」と述べている。

今後の戦況、晩秋には再度、ラスプティッツアの到来で南部に重要な戦線がシフトか

今後の戦況だが、ウクライナ軍の攻勢で、ハルキウ州の全面奪還と、ドンバス地方の一部奪還後は、再度、南部に重要な戦線がシフトすることになりそうだ。

背景には、ラスプティッツア(雪解け)の到来がある。4月初、ロシア軍はキーウ周辺等、ウクライナ北部から全面撤退したが、要因として、ウクライナ軍の頑強な抵抗に加え、ラスプティッツア到来を受け、補給や進軍の困難が増したことが挙げられる。

実は、ウクライナ北部やベラルーシ、ロシア等ではラスプティッツアは春と、雪が降り始める晩秋から初冬の2回発生する。キーウ周辺では10月に初雪、11月下旬以降、降雪が本格化する。晩秋のラスプティッツアは降雪が凍らず、泥濘になることで発生する。

本格的な降雪には、まだ、2か月はあるものの、11月には北部前線は膠着するものと見込まれる。

一方、東部は、北部に比べ、「泥濘」にはなりにくいが、2014年以降、ロシア軍とウクライナ軍が攻防を繰り広げてきた地帯のため、双方とも、防衛線は何重にも構築されている。「ドンバス地方における特殊軍事作戦」が半年以上経過しても、終了しないのも、そうした背景がある。

他方、南部は秋から冬も通常の作戦が可能だ。ウクライナ軍にとっては、西部リビウ等の欧米からの補給ラインとも近い。今後の穀物等の輸送本格化のためにも、ドンバス地方以上に奪還の優先順位は高いとみられる。

東部での戦線が膠着し始めれば、やはり、南部に戦線がシフトする可能性が高そうだ。

一方で、南部にはドニエプル川が流れている。ウクライナ軍はロシア軍の進攻を阻むため、重要な橋へのHIMARS等による精密攻撃を繰り返していると伝えられている。

ドニエプル川北岸地域に取り残されたロシア軍の一部が降伏交渉を始めたとの報道もある。

ヘルソン市等ドニエプル川北岸地域の奪還は可能だろうが、南岸地域の奪還は困難を伴うとみられる。

問題は今冬か、ロシアは冬を待っている可能性

問題は今冬だろう。ロシア軍の動きが停滞しているのは、兵站や士気の問題に加え、冬の到来を待っているとの見方もある。

ラスプティッツアが終わり、北部での機甲部隊の展開がしやすくなる面もあるが、より重要な観点は、欧米での厭戦気分の高まりや分裂だろう。

欧米の緯度の高い地域では、暖房のエネルギー需要が高まる。

既に、高インフレに見舞われている欧州で、天然ガス価格等が再度上昇すると、冬場の国民生活には大きな脅威となる。ドイツや英国等各国では、電気や天然ガスの価格上昇を抑える施策も準備されつつあるが、国単位での負担増は免れられない。

9月25日にはイタリアで総選挙が、11月8日には米国で中間選挙が実施される。

ロシアとしては、いわゆる「エネルギー恐喝:energy blackmail」によって、欧州諸国を揺さぶり、ウクライナ向けの軍事・支援を躊躇させたり、ロシアに有利な状況で停戦に結びつけようとしているとみられる。

また、エネルギー価格の高騰はロシア側の輸出収入を拡大し、戦費を賄うことにも繋がっている。

さすがに、欧米からの半導体の禁輸等で、精密誘導兵器の生産には支障を来していると考えられるが、通常の砲弾等の生産は自国で可能なため、ウクライナ同様、継続戦闘能力が維持されていることも、ウクライナ戦争が長期化する一因となっている。

他方、今冬、欧州が無事、乗り切ることが出来れば、欧州の天然ガス価格等は下落に転じ、ロシアの長期的なダメージが深くなり、ロシアサイドからの停戦機運が高まる可能性もある。

ラニーニャ現象長期化で、今冬はそれなりに寒い冬に

まずは、今冬が暖冬となるか、厳冬となるかが重要だが、ラニーニャ現象の長期化が予想される中、それなりに寒い冬となることが予想される。

気象庁は9月9日に発表したエルニーニョ監視速報で、「ラニーニャ現象が続いている。今後、冬にかけてラニーニャ現象が続く可能性が高い(70%)とした 8月号と比べ、12月のラニーニャ現象の発生確率を60%から70%に引き上げており、長期化の可能性が高まっている。

今冬はウクライナ戦争にとっても、天王山となる可能性がありそうだ。

映画観客動員ランキングで『ONE PIECE FILM RED』が6週連続1位、歴代興収ランキングで14位に

前週末(9月10日-11日)の映画の観客動員ランキングでは、『ONE PIECE FILM RED』が6週連続で1位となった(興行通信社調べ、以下同じ)。累計成績は、動員994万人、興収138億円を突破。歴代興収ランキングで14位に浮上した。

2位には『HiGH&LOW』の最新作『HiGH&LOW THE WORST X』が初登場。

3位は、前週2位で初登場した『ブレット・トレイン』。8月号で特集したが、伊坂幸太郎氏の小説「マリアビートル」をデヴィッド・リーチ監督、ブラッド・ピットさん主演で映画化。

舞台は東京から京都までの日本だが、車窓の風景はCGを両サイドの大スクリーンで流す形で、撮影は全て米国で行われた。作品上では、「東海道新幹線」ではなく「日本高速電鉄:NIPPON SPEEDLINE」で、「ひかり」ではなく「ゆかり」となっている。公開直後に鑑賞したが、8位に入った『アキラとあきら』同様、「運命」がテーマとなっており、予想以上の出来だった。

4位は、『劇場版 うたの☆プリンスさまっ♪ マジLOVEスターリッシュツアーズ』、5位は『百花』、6位は『トップガン マーヴェリック』、7位は『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』、9位は『ミニオンズ フィーバー』、10位は『キングダム2 遥かなる大地へ』となった。5位以下は本コラムで特集済。

邦画主体に注目作品が続々公開

今後も9月から10月に向けて、邦画主体に注目作品が続々公開される。

9月16日公開の『ヘルドッグス』は、岡田准一さんが『関ヶ原』『燃えよ剣』に続き原田眞人監督と3度目のタッグを組んだクライムアクション。深町秋生氏の小説「ヘルドッグス 地獄の犬たち」を映画化。

復讐のみに生きてきた元警官・兼高昭吾は、その獰猛さゆえに警察に目をつけられ、関東最大のヤクザ組織へ潜入させられるハメに。任務は、組織の若きトップ・十朱が持つ「秘密ファイル」の奪取。警察の調査で相性が最も高い室岡(坂口健太郎さん)との接触を手始めに、着実に、かつ猛スピードで組織を上り詰めるが、その先には誰も予想できない結末が待っていた。

沈黙のパレード

『沈黙のパレード』
2022年9月16日全国東宝系にてロードショー
©2022 フジテレビジョン、アミューズ、文藝春秋、FNS27社

同じく16日公開の『沈黙のパレード』は、東野圭吾氏の「ガリレオ」シリーズ第9弾を原作に、福山雅治さん演じる天才物理学者・湯川学が難事件を鮮やかに解決していく姿を描く大ヒット作の劇場版第3作。

行方不明になっていた女子高生が数年後に遺体となって発見された。警視庁捜査一課の刑事・内海によると事件の容疑者は、湯川の大学時代の同期でもある刑事・草薙がかつて担当した少女殺害事件の容疑者で、無罪となった男だった。男は今回も黙秘を貫いて証拠不十分で釈放され、女子高生が住んでいた町に戻って来る。憎悪の空気が町全体を覆う中、夏祭りのパレード当日、さらなる事件が起こる。

キャストには内海役の柴咲コウさん、草薙役の北村一輝さんらが集結。『容疑者xの献身』『真夏の方程式』に続き、西谷弘氏が監督、福田靖氏が脚本を手がけた。

七人の秘書 THE MOVIE

『七人の秘書 THE MOVIE』
2022年10月7日全国東宝系にてロードショー
©2022「七人の秘書 THE MOVIE」製作委員会

10月7日公開の『七人の秘書 THE MOVIE』はテレビドラマ『七人の秘書』を映画化。

ボスを支え、組織に仕え、目立たぬことこそを極意とする存在、それが秘書。表は、そんな名もなき秘書として働く彼女たちが、裏では、類い稀な潜入スキル、極秘情報ネットワーク、時には秘めた高い身体能力を駆使して、人知れず弱き者を救う「影の軍団」として暗躍していた。熾烈な戦いの末に政界のドンを辞任に追い込んだ秘書たちのもとに、新たな依頼が届く。今回のターゲットは「アルプス雷鳥リゾート」を経営して信州一帯を牛耳る「九十九ファミリー」。

主人公・望月千代役の木村文乃さんらテレビ版でおなじみのキャストに加え、依頼人・緒方航一役で玉木宏さん、九十九家の次男・二郎役で濱田岳さん、九十九家の顧問弁護士・美都子役で吉瀬美智子さん、九十九家のドン・道山役で笑福亭鶴瓶さんがゲスト出演。テレビ版に続き、ドラマ『ドクターX』シリーズの中園ミホ氏が脚本、田村直己監督がメガホンをとった。

10月7日公開の『バッドガイズ』は「ワルをやるなら思いきり」を合言葉に、権力者や富豪から華麗なテクニックで財宝を奪う怪盗集団「バッドガイズ」の活躍を描く、ドリームワークス・アニメーションによる長編アニメ映画。アーロン・ブレイビー氏の同名児童文学シリーズを原作に、短編アニメ『ビルビー』のピエール・ペリフェル氏が監督を務めた。

10月14日公開の『スペンサー ダイアナの決意』はクリステン・スチュワートさんがダイアナ元皇太子妃を演じ、第94回アカデミー賞で主演女優賞に初ノミネートを果たした伝記ドラマ。ダイアナがその後の人生を変える決断をしたといわれる、1991年のクリスマス休暇を描いた。

耳をすませば

『耳をすませば』
2022年10月14日
©柊あおい/集英社 ©2022『耳をすませば』製作委員会

同じく10月14日公開の『耳をすませば』は、スタジオジブリの人気アニメ映画の原作として知られる柊あおい氏の名作漫画を、清野菜名さんと松坂桃李さんの主演で実写映画化。

読書が大好きで元気いっぱいな中学生の女の子・月島雫。彼女は図書貸出カードでよく見かける、ある名前が頭から離れなかった。天沢聖司、全部私よりも先に読んでる、どんなひとなんだろう。あるきっかけで「最悪の出会い」を果たした二人だが、聖司に大きな夢があることを知り、次第に惹かれていく雫。

聖司に背中を押され、雫も自分の夢を胸に抱くようになったが、ある日聖司から夢を叶えるためイタリアに渡ると打ち明けられ、離れ離れになってもそれぞれの夢を追いかけ、10年後また必ず会おうと誓い合う。それから10年の時が流れた、1999年。雫は児童書の編集者として出版社で働く傍ら夢を追い続けていたが、思うようにいかずもがいていた。監督・脚本は『ツナグ』『約束のネバーランド』の平川雄一朗氏。

映画館運営で世界2位の英シネワールド・グループが米連邦破産法11条の適用を申請

『ONE PIECE FILM RED』などが牽引する形で、映画館は盛況が続いている。但し、新作の公開は邦画に偏りつつある。背景には、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックで大作洋画の製作・公開が遅れていることがある。

欧米では、4月のイースター休暇シーズンに加え、7月4日の米独立記念日と9月第1月曜日のレイバー・デーまでの夏季休暇シーズン、及び年末のクリスマスシーズンにかけて、大作映画が公開されることが多い。

結果、9月から11月は端境期となるが、パンデミックの影響で体力を落とした海外の大手映画館運営会社にとって、今秋は一段と厳しい環境となった。

映画館運営でAMCシアターズに次ぎ、世界2位の英シネワールド・グループは7日、米連邦破産法11条、いわゆる「チャプター11」の適用を申請した。パンデミックで債務が膨らみ、資金繰りが悪化していた。

シネワールドは申請前、「今後数カ月、十分な数の映画の公開予定がなく、利益の回復は2022年の年末まで期待できない」とコメントしていた。

シネワールド・グループ(Cineworld Group plc)は1995 年に設立され、現在はヨーロッパを代表する映画グループの1つ。当初は非公開会社だったが、2006年5月に公開会社として再登録し、2007年5月にロンドン証券取引所に上場。米国のリーガル・エンターテインメント・グループを買収したことで、世界で 2 番目に大きな映画館運営会社となった。現在、世界10カ国で747館、9,139スクリーンを運営。従業員は約2万8,000人。2021年末時点の純債務は89億ドル。

シネワールドは9日、南テキサス連邦破産裁判所から第1弾の承認を受けたと発表。「チャプター11」の適用が最終的に承認されれば、債務再編を進めながら映画館営業等事業継続が可能になる。破産法脱却は2023年第1四半期を見込む。破産法に基づく手続き中に取引先への債務を完済し、従業員給与も通常通り支払う計画という。

欧米では2020年、映画館の休業が続いた。AMCシアターズも経営不安に見舞われたが、ミーム株ブームの中、22億ドル以上の株式を調達し、資金繰り難を乗り切った経緯がある。

動画配信ビジネスも現在、サバイバルゲームの真っ只中

実は、過去2年半のパンデミック下で、伸びたエンタメ業界もある。それは、「巣ごもり需要」を取り込んだ動画ネット配信ビジネスだ。

但し、動画配信ビジネスも現在、サバイバルゲームの真っ只中にある。

筆者も視聴しているが、アマゾン・プライム・ビデオは、新シリーズ『ロード・オブ・ザ・リング:力の指輪』の配信初日(9月1日、国・地域によっては2日)の視聴者数が世界で2,500万人を超えたと発表した。プレミア公開の視聴者数として、プライム・ビデオ史上最多となったとのこと。日本を含む世界240以上の国と地域で配信された。

このシリーズでは、英国人J・R・R・トールキン氏の「ホビットの冒険」と「指輪物語」の出来事の数千年前を舞台にした物語が描かれる。なお、トールキン氏は1972年にエリザベス女王から、CBE(大英帝国勲章コマンダー)を受勲している。

アマゾンは映像化権利獲得のために2億5,000万ドルを払い、シーズン1のセット制作のために4億6,500万ドルを投じ、各回の製作費や広告・宣伝費等を含めるとシーズン1だけで10億ドル規模に上るとみられる。最終的に5シーズンまで制作することになると、総予算は30億ドル規模に上るとの試算もある。

アマゾンは2022年3月には『007シリーズ』で有名なメトロ・ゴールドウィン・メイヤー・スタジオ(MGM)を約85億ドルで買収しており、アマゾンオリジナル作品も制作している。

ディズニーが2019年3月に 21世紀フォックスを買収するなど、映画界は再編が進んでいるが、パンデミックの長期化を受けて、今後は他業態も含めた大型再編が起きる可能性も高そうだ。

第74回エミー賞で『イカゲーム』が外国語作品として初めてドラマシリーズ部門で監督賞や主演男優賞など6冠を達成

そうした中、アメリカのテレビの祭典、第74回エミー賞の発表と授賞式が12日、ロサンゼルスで行われ、韓国の『イカゲーム』が外国語作品として初めて同賞のドラマシリーズ部門で監督賞や主演男優賞など6冠を達成した。

ネットフリックス制作の『イカゲーム』は経済格差が深刻化する韓国で、貧困に苦しむ人々が大金を得るために命を懸けて、富裕層が主催するサバイバルゲームに参加する物語。我が国でも話題になりヒットした。

同作品は漫画の「カイジ」や「LIAR GAME」にストーリーが似ているとの指摘もあるが、世界市場をターゲットにエンタメを売り込む気概やノウハウは我が国も見習う必要がありそうだ。

このままでは、世界に冠たる我が国の漫画やアニメなどのコンテンツも「宝の持ち腐れ」になりかねない。岸田首相の指導力に期待したい。

末澤 豪謙 プロフィール

末澤 豪謙

1984年大阪大学法学部卒、三井銀行入行、1986年より債券ディーラー、債券セールス等経験後、1998年さくら証券シニアストラテジスト。同投資戦略室長、大和証券SMBC金融市場調査部長、SMBC日興証券金融市場調査部長等を経て、2012年よりチーフ債券ストラテジスト。2013年より金融財政アナリスト。2010年には行政刷新会議事業仕分け第3弾「特別会計」民間評価者(事業仕分け人)を務めた。財政制度等審議会委員、国の債務管理の在り方懇談会委員、地方債調査研究委員会委員。趣味は、映画鑑賞、水泳、スキューバダイビング、アニソンカラオケ等。

このページの関連情報