FPの相続コラム「子々孫々へ遺す想い」
【第46回】

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(2019年10月29日)

【第46回】遺言と遺言執行者 −スムーズな相続のために−

FPの相続コラム「子々孫々へ遺す想い」では、相続に関連したお役立ち情報から最新の話題までをお伝えいたします。第46回目のコラムは、「遺言と遺言執行者」に関するお話です。

遺言書の現状

遺産分割をスムーズに行うことなどを目的として遺言書を作成する人が増えてきています。2018年の公正証書遺言の作成件数は日本公証人連合会によると110,471件となり、10年前の1.4倍強になります。また、2018年に家庭裁判所で行われた遺言書の検認数は司法統計によると17,487件となり、10年前の1.3倍弱となっています。自筆証書遺言等の年間作成件数は不明ですが、2020年7月からは法務局による「自筆証書遺言の保管制度」がスタートするので、今以上に自筆証書遺言が増えるのではないかと予想されます。

遺言作成の目的

遺言作成の目的の一つに「法定相続分通りではなく、自分の思った通りに財産を分配したい」というものがあります。遺言は法定相続分に優先しますので、遺言書を作成することにより、その思いを実現することができます。また、遺言書作成は、遺産を分ける際の相続人同士のトラブル「争族」を防ぐ有効な手段の一つでもあります。

遺言書を作っておけば大丈夫?

それでは遺言書があればスムーズな相続が可能になるのでしょうか?
民法には遺留分という一定の範囲の法定相続人に認められる最低限の遺産取得分が定められています。配偶者と子供2人が相続人の場合、それぞれの遺留分は自分の法定相続分の1/2になります。この時、配偶者と長男に1/2ずつ相続させるという遺言があった場合、二男は遺留分侵害額請求という手続きにより、1/8は受け取ることができます。
逆に言うと、その分は遺言書を作成する段階で考慮しておかないと、遺言通りには分けられなくなります。また、分けるためには各種手続きが必要です。相続人の戸籍謄本を集めたり、各種書類に署名捺印したりといったことですが、この時に相続人の中で遺言書の内容に不満を持つ人が非協力的だと、全体の手続きが遅延してしまう可能性があります。

遺言執行者

これを避けるためには、遺言書の中で遺言執行者を選任しておくことをお勧めします。遺言執行者とは遺言内容をスムーズに実現する役割を担うことを職務とし、単独の署名捺印で相続人に代わって手続きを進めることができます。
それでは誰を遺言執行者にすればよいでしょうか?相続人の中から選ぶこともできますが、中立的な立場の人を選ぶ方が増えているようです。

親しい弁護士や司法書士といった専門家の知り合いがいる方は相談されてはいかがでしょう。ただし、相続の発生は将来の話なので、親の代からお世話になっているというような間柄だと、その方自身がそれなりの年齢の可能性もあり、いざという時に十分に機能しないということもあります。一方、知り合いがいない、法律事務所等は敷居が高いという方は、遺言信託を利用するのも一つの方法です。遺言信託では銀行等が遺言執行者になります。銀行等の金融機関の方が身近ですし、金融機関が法人として対応することから年齢の心配をする必要はありません。また、遺言書を作成する際には、なぜそのような遺言内容にしたのかを「付言」という形で伝えることも大切です。「付言」には法的拘束力はありませんが、作成者の「思い」を伝えることにより、不利な遺言内容の相続人に対する心のケアの効果が期待できます。

遺言の作成を検討されている方は、ぜひ、遺言執行者についても併せて検討されることをお勧めします。また、すでに遺言を作成済の方についても同様です。この機会に、その内容も含めてもう一度確認されてみてはいかがでしょうか。大切なお子様たちがいつまでも仲良くお付き合いが続くように。

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