FPの相続コラム「子々孫々へ遺す想い」
【第21回】

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(2015年12月17日)

【第21回】意外と短い 申告期限の「10ヶ月」

FPの相続コラム「子々孫々へ遺す想い」では、毎月1回、相続に関連したお役立ち情報から最新の話題までをお伝えしております。第21回目のコラムは、相続手続きにかかる時間と申告に関するお話です。

「10ヶ月」という期間

みなさんは「10ヶ月」と聞いて何が思い浮かぶでしょうか。人によって色々あると思いますが、相続で「10ヶ月」といえば、ある重要な期間を指します。

ご存じのとおり相続手続きでは、基礎控除額である「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」を超えている課税対象財産をお持ちの場合、評価額に応じて相続税が課され、税務署への申告が必要になります。その税務署への申告期限が冒頭の「相続の開始があったことを知った翌日から10ヶ月以内」です。確定申告を毎年している方からすれば、10ヶ月も期間があれば申告の一つや二つは簡単にできると思われるかもしれません。ですがこの期間、意外と短いのです。

相続手続きで必要になること

相続が発生すると、名義変更等のためには相続人全員で遺産分割協議を行い、同意を得た上で各金融機関等へ手続をすることが必要です。そして同意した内容に基づいて各金融機関へ名義変更等を依頼します。当然ながら、窓口で「私が相続人だから名義変更してください」と口頭で伝えても名義変更はしてくれません。相続手続きであることや法定相続人を確定させるための「戸籍謄本」、他の相続人と協議して同意を得たことを示す「遺産分割協議書」や「印鑑証明書」、他にも金融機関毎に用意している所定の書類など、様々な書類の作成・提出を求められるでしょう。不動産の登記であれば登記申請書が必要になりますし、未成年者が相続人に含まれる場合には、裁判所で特別代理人を選任する必要も出てくるかもしれません。被相続人が生まれてから亡くなるまでの戸籍謄本を集めるだけでも一苦労だというのに、他にも様々な書類が相続手続きでは必要になるのです(戸籍謄本の取得については第17回をご参照ください)。

また、相続財産の把握も相続手続きを進めるにあたって時間を必要とすることの一つです。被相続人がどこの銀行に口座を開設しているのか、自宅以外に不動産はあるのか等を隅々まで詳細に把握している人はなかなかいません。遺言や エンディングノート等がなければ一つ一つ、遺品の中から通帳や郵便物等を調べて確認していく他ありません。調べるには時間がかかりますし、もし相続財産を把握しきれないまま遺産分割協議を終えてしまうとその後、その他の財産が見つかる度に遺産分割協議を行うことになりかねません。

分割協議自体には「いつまでに行わなければならない」という法的な期限はありませんので、1年後や2年後に遺産分割をしても構いません。遺産分割協議等の相続手続きを始めるのは四十九日の法事の後という人も多いでしょう。しかし、申告は待ってくれません。申告期限までに申告しなかった場合、「配偶者の税額軽減」や「小規模宅地等の特例」等の特例は使えなくなってしまいますし、延滞税等も追加で課税されてしまいます。税務調査によって無申告が発覚してしまったとしたら、無申告加算税も課税されてしまいかねません。

“相続手続き対策”も相続対策の一つです

相続対策と聞くと、いかに相続税を軽減できるか、いかに相続人がもめないように対策を練るかという話になりがちですが、“いかに相続手続きで苦労させないか”という視点も大切です。様々な書類を用意して様々な手順を踏まなければ、相続手続きを進めることはできません。いくら相続人同士は仲が良く、分割協議まではスムーズに進んだとしても、その後の書類集めで難儀してしまうことは十分に考えられます。「相続手続き対策」もご自身の財産を次代へと引き継いでいくための重要な要素の一つです。相続人の方の負担軽減のためにも、遺言書やエンディングノートを活用した財産の棚卸をお考えになってはいかがでしょうか。

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