FPの相続コラム「子々孫々へ遺す想い」【第20回】
【第20回】相続人がいないと財産はどうなる?
2015年11月19日
FPの相続コラム「子々孫々へ遺す想い」では、毎月1回、相続に関連したお役立ち情報から最新の話題までをお伝えしております。第20回目のコラムは、財産の遺し方のお話です。
相続人とは
相続が発生した場合、被相続人の財産を引き継ぐ相続人(法定相続人)は、民法で決められています。だれが相続人になるか、そしてその順位は以下の通りです。
配偶者は常に相続人となり、子は第1順位、父母・祖父母などの直系尊属は第2順位、兄弟姉妹は第3順位となります。相続人となる子や兄弟姉妹が先に死亡してしまった場合は、孫や、甥・姪が代襲相続人となります。
相続人がいない場合、遺産は国庫に
では上記に挙げたような相続人が誰もいなかったら財産はどうなるのでしょう。結論からいうと「相続人不存在」として「国庫」に納められることになります。
ちなみに2013年度版の「歳入決算明細書」によると、「相続人不存在」により「国庫」に納められた金額は、約337億円に上り、ここ数年では増加傾向にあります。今後、少子高齢化や、晩婚化によって、「相続人不存在」というケースがますます増えていくことが予想されます。
相続人はいないけれど「被相続人の介護に尽くした」、あるいは「婚姻関係にはないが長年連れ添ってきた」など、被相続人と一定の関係性があった人は「特別縁故者」として家庭裁判所に申し出ることができます。そして「特別縁故者」として家庭裁判所から認められた場合、遺産分与を主張すれば、財産の一部もしくは全部を相続することが可能です。ただし「特別縁故者」が遺産分与を主張しても、すぐに遺産が分与されるわけではありません。
相続発生後、相続人の存在、不存在が明らかでない場合、被相続人の利害関係者(債権者、受遺者、特別縁故者など)からの申立てにより家庭裁判所は「相続財産管理人」を選任します。利害関係者からの申立てがない場合、検察官が申立します。そして官報で「相続財産管理人」が選任されたことを知らせるための公告をします。この公告から2か月経過後、財産管理人は,相続財産の債権者・受遺者を確認するための公告をします。もし、2か月経過しても債権者や受遺者の申し出がなければ、更に6ヶ月以上の期間を定めて相続人を探すための公告を行います。これでも相続人が現れなければ、ここで「相続人不存在」が確定することになります。「特別縁故者」が財産分与の請求をできるのは、「相続人不存在」が確定してから3ヶ月以内となり、とても時間がかかります。
遺したい人がいるのなら
「特別縁故者」に対し財産を遺したいと思っていても、何もしないでおくと財産は全て国庫に納められることになります。もし、「特別縁故者」が財産分与を望んだとしても、まず家庭裁判所に申し立てし、家庭裁判所に認められてから財産分与を申請し、長い期間を経てやっと財産が分与されることになります。
「特別縁故者」に手間や時間を掛けさせずに財産を分与するおつもりであれば、遺言書を作成することをお勧めいたします。遺言により介護施設や団体に寄付することも可能です。換金が困難な不動産等がある場合は、換金が容易な金融資産等に変えておくことも贈られる側にとっては良いかもしれません。
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