FPの相続コラム「子々孫々へ遺す想い」
【第37回】

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(2017年4月20日)

【第37回】配偶者への居住用不動産の贈与は慎重に!

FPの相続コラム「子々孫々へ遺す想い」では、毎月1回、相続に関連したお役立ち情報から最新の話題までをお伝えしております。第37回目のコラムは、配偶者への居住用不動産の贈与についてのお話です。

税務上のメリット、デメリットは?

夫婦間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除の特例についてご存じでしょうか。これは「婚姻期間が20年以上」の夫婦間で、居住用不動産又は居住用不動産を取得するための金銭の贈与が行われた場合、贈与税の計算上、贈与財産から贈与税の基礎控除額110万円のほかに最高「2,000万円」まで控除できるという特例です。長年連れ添った配偶者の老後の生活保障を意図したもので、同じ配偶者からの贈与について一生に一度に限り認められています。相続又は遺贈により財産を取得した方が、その相続開始前3年以内に贈与を受けた財産は、相続財産に加算して相続税額を計算することになっていますが、この配偶者控除額に相当する額は相続財産に加算しなくてもよいとされています。

それでは、20年以上連れ添った夫婦間であれば、この制度を利用して贈与すれば必ず得になるかというと、そういうわけでもありませんので注意が必要です。なぜかと言えば、まず、配偶者が被相続人の居住用宅地等を相続又は遺贈により取得する場合は、330uまで80%を減額できる小規模宅地等の特例という制度を選択適用することが可能(※1)であり、自宅敷地等の評価額を大幅に引き下げることができます。それだけではなく、配偶者については、配偶者に対する相続税額の軽減特例があり、1億6千万円又は法定相続分のいずれか大きい金額まで相続税が課税されないことになっているため、配偶者には相続税が発生しないケースが多いといえます。相続税が課税されないケースでは、相続に比較して、不動産取得税・登録免許税の負担が重い(※2)不動産の贈与は、コスト負担が重くなる分、税務上のデメリットが生じてしまう可能性があるからです。贈与税の配偶者控除の特例の適用を検討する際には、相続税の試算をしたうえで、贈与コストを見積もり、相続と贈与のどちらが得かを比較検討するようにした方がよいといえそうです。

なお、贈与を受けた配偶者が先に死亡してしまったという場合には、税務上、贈与のメリットはありませんので注意が必要です。

遺産分割との関係は?

相続人が生前贈与を受けた土地と建物は,遺産分けの際に、通常「特別受益」として贈与者の死亡時の遺産に組み込まれます(持ち戻しといいます)。この場合,公正証書遺言に生前贈与した土地と建物の「持ち戻しを免除する」などの記載があったとしても,相続人が最低限取得できる遺産の割合(遺留分)を算定する際には,遺産に含めて考えます。親子間の仲がいいという場合には、配偶者が居住用不動産を取得することについて、子供たちが反対するというケースは少ないと思いますが、例えば親子間の仲が悪いという場合や、贈与を受ける方が後妻で、贈与者と前妻との間にお子様がいるというような場合には、遺留分を考慮に入れながら贈与税の配偶者控除を利用した贈与を行うかどうかを検討することが必要といえます。また、誰に何を遺すかを指定した遺言書を作成するのを忘れないようにすることも重要です。

なお、現在、法務省の諮問機関である法制審議会民法(相続関係)部会では、配偶者の居住権保護等のため、これまで住んでいた住居に住み続けられる権利を守るための案が検討されています。配偶者に対して居住用不動産の贈与を検討されていらっしゃる方は、民法の改正動向にも注意する必要があるといえそうです。

  • (※1)小規模宅地等の特例の適用要件を満たす宅地等(居住用、事業用、不動産貸付用)が複数ある場合には、最も有利になるように選択します。
  • (※2)不動産取得税の税率は、贈与3%、相続は非課税。登録免許税の税率は、贈与2%、相続0.4%となっています。

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