FPの相続コラム「子々孫々へ遺す想い」【第66回】

【第66回】相続人がいないと相続財産は原則国庫に!

2023年2月15日

FPの相続コラム「子々孫々へ遺す想い」では、相続に関連したお役立ち情報から最新の話題までをお伝えいたします。第66回目のコラムは、相続人がいない人の相続財産の行方と、今からできる対策についてのお話です。

相続人がおらず、遺産647億円が国庫に!

子々孫々挿絵

最高裁判所によれば、令和3年度の相続人不存在を理由に国庫に入った相続財産額は647億円超で過去最高だったそうです。ところで相続人となるのは誰でしょう?相続人となる人は、①亡くなった人(被相続人)の配偶者、②子(子が亡くなっていた場合は孫)、③親(場合によっては祖父母)、④兄弟姉妹(兄弟姉妹が亡くなっていた場合は甥姪)です。前述のような相続人がおらず、遺言もない場合には、相続財産を承継する権利を持った人が誰もいない状態となり、このままでは相続財産が放置されてしまいます。このような状況を避けるために、「相続財産管理人制度」があります。

相続財産管理人と特別縁故者に対する財産分与

相続財産管理人とは、相続人が明らかでない場合に被相続人の債権者等に対して被相続人の借金等を支払うなどして清算を行い、清算後に残った財産を国庫に帰属させる人です。つまり、相続人がいない人が亡くなった場合、基本的にはその財産は国庫に納められることになります。中には相続人ではないものの、生前に被相続人の面倒をみていた人等がいる場合には、そのような人に相続財産を与えることが望ましいと考えられる場合もあるでしょう。そのようなときに活用できる制度が「特別縁故者に対する財産分与」です。ただし、令和3年度の司法統計年報(家事編)によれば、特別縁故者に相続財産分与が認容されたのは、約2万7千件の相続財産管理人選任申立のうち、わずか1千件にとどまっているのが現実であり、生前にいくら被相続人の面倒をみていたからといっても、相続財産をもらえる可能性は極めて低いと言わざるを得ません。

身寄りのない人の葬儀は誰が?

通常は火葬や埋葬は家族が行いますが、相続人どころか頼れる親戚等もいない人(身寄りのない人)の場合、被相続人の住んでいた市区町村がご遺体を引き取り、埋葬します。また、市区町村長は法務局長の許可を得て、職権で戸籍に死亡の記載をします。しかし、市区町村が行ってくれるのはここまでです。遺品整理やお住まいの住居の整理・片付けなどは、借家住まいであればその大家さんが、介護施設に入られていた場合はその介護施設が手続負担することとなってしまいます。

今からできる相続対策

相続人のいない人や身寄りのない人が今からできる相続等の準備/対策として有効な手段はいくつかあります。まずは「任意後見契約」です。任意後見契約とは、自分の判断が低下した場合に、日々の生活や契約等に関して判断助言や支援をしてもらう契約のことをいいます。次に「死後事務委任契約」です。任意後見人に自分が亡くなった後、火葬や役所での手続き、遺品整理等を継続して行ってもらう契約です。最後に、誰に財産を遺したいかを遺言書で作成しておくことです。例えば身内であればいとこやそのお子さまなど、また親戚以外の他人でも、生前にお世話になった人に自分の財産を相続してもらいたい意向があれば、その旨を遺言書に記しておくことが可能です。前述したとおり、特別縁故者への財産分与の申立は時間も手間もかかります。そのうえ必ず認められるとは限りません。ですが、遺言書があれば、大切な財産を、自分が遺したいと思った人に確実に遺すことが可能です。なお、せっかく遺言書を作成されるのであれば、遺された方々の負担を減らすために公正証書遺言で作成されることをお勧め致します。

遺言書を遺す場合は「遺言執行者」の指定を忘れずに

遺言書を作成しても、相続発生後に自動的に遺言内容どおりに遺産が移るわけではありません。遺言の内容を実現するためには、相続発生後に相続人等による手続きが必要です。しかし、遺言の内容に反対する相続人がいる場合や、そもそも相続人が誰もいない場合は、手続きがストップしてしまいます。そのような場合でも、遺言執行者が指定されていればスムーズに遺言の内容を実現することが可能です。遺言執行者とは、遺言内容の実現のための職務を執り行う人のことで、遺言の中で指定することが可能です。遺言執行者が指定されている場合は、原則として遺言執行者が単独で手続きを行うことができるので、相続人の中に反対する人がいても、相続人が誰もいなくても手続きを進めることができます。遺言執行者には、遺言によって財産をもらう人(受遺者)を指定することも可能です。しかし、遺言執行者には法律上一定の義務・責任が課されていることに加え、金融商品や不動産の相続手続きに関してもある程度専門知識が必要であることから、一般の方が滞りなく執行するのは難しい場合もあります。確実に遺産を受け継いでもらいたいのであれば、相続に精通した専門家を遺言執行者に指定しておくことをお勧めします。

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