FPの相続コラム「子々孫々へ遺す想い」【第69回】
【第69回】相続税評価額が2倍!? マンション評価の新ルール
2023年8月29日
FPの相続コラム「子々孫々へ遺す想い」では、相続に関連したお役立ち情報から最新の話題までをお伝えいたします。第69回目のコラムは、マンションにおける相続税評価額の算定ルール見直しに関するお話です。
人気を誇るタワーマンション
“タワーマンション”というと、どのようなイメージがありますか。一般的には高さが60m、20階を超える超高層マンションをタワーマンション、略して“タワマン”などと呼んでいます(以下タワマンと省略)。タワマンは、近くに生活利便施設が多く住環境が整っていること、建物の耐久性が高く災害に対する安全性が高いこと、防犯対策が充実していること等の魅力があるため、自分が住むためだけでなく、第三者に貸すことで賃貸収入が得られたり、相続税対策としても有効な資産であることから近年人気が高まっています。しかし、相続税対策としてタワマンを保有することが今後有効ではなくなってくる可能性が出てきました。
タワマン購入(保有)で相続税対策
まず、相続税の財産評価の考え方ですが、タワマンに限らず、一般的に不動産で相続した方が相続税評価額(相続税算出に必要な財産の評価額)は小さくなります。 1億円の現預金はそのまま1億円が相続税評価額となりますが、不動産は路線価等を利用して評価額を算出するため一般的に市場価格の7〜8割程度が相続税評価額となるからです。これがタワマンとなると、相続税評価額と市場価格との乖離は更に大きくなります。通常、マンションは築年数が浅いものや高層階ほど市場価格が高くなる傾向がありますが、相続税評価額にはマンションの築年数や階数等はそれほど考慮されないため、同じ床面積であれば1階も40階も相続税評価額は大差がありません。また、タワマンは限られた敷地(土地)の中に数100戸(総戸数1,000戸以上の物件もあります)も物件がありますが、相続税評価額は土地面積を全戸数で割って算出します。そのため、高層階であればあるほど、戸数が多ければ多いほど、市場価格に比して一戸あたりの相続税評価額は小さくなります。この相続税評価額と市場価格との乖離が特に大きくなる傾向のあるタワマンを購入(保有)して相続税の軽減を図ることを一般的に “タワマン節税”と呼び、富裕層の相続税対策として広く利用されてきました。
市場価格と相続税評価額の乖離
しかし、この乖離を利用して過度な相続税の軽減を図る事例が増えたことで、国税庁は税の公平性を保つためにタワマンを含むマンションの財産評価の算定ルールを見直す方向で動いています。マンションの市場価格は需要の多さを背景に上昇してきましたが、現行の財産評価の算定ルールは約60年間見直しがされておらず、そのため乖離が大きくなっていました。国税庁の「マンションに係る財産評価基本通達に関する有識者会議(第2回)」資料では、東京都にあるタワマンを事例に、相続税評価額とマンションの市場価格の乖離が指摘されています。事例によると、築年数9年、総階数43階の23階、専有面積67.17㎡のマンション一戸を保有していた場合、マンションの市場価格が11,900万円であることに対し、相続税評価額は3,720万円とされています。この事例では相続税評価額に対して市場価格は約3.2倍となっており、逆の見方をすると、相続税評価額は実際の価値である市場価格の3割程度にまで抑えられていると言えるのです。
算定ルールの見直しで相続税評価額が2倍に?
新しい算定ルールは、今後国税庁の会議等や意見公募等を通じて正式決定されますが、国税庁は相続税評価額を実際の価格の最低6割に引き上げて2024年からの実施を想定して準備をすすめているようです。 ちなみに現在議論されている見直し案は、築年数、総階数、所在階数、面積の4つと市場価格との乖離を考慮した算定ルールになっています。そのためマンションの中でもタワマンは戸数が多く高層階であることから、今回の見直しで相続税評価額が大きく上昇する可能性があります。特に、都内のタワマンにおける相続税評価額は現行の評価の約2倍になることも想定されています。相続税評価額が2倍になると相続税の負担も数100万円単位で跳ね上がるのではないかという試算も出ています。なお、今回の見直しの対象はタワマンだけではなく、マンション1室の算定ルールの変更であるため、タワマンでもなく、相続税対策として購入した訳でもない居住用マンションも対象となるので注意が必要です。
算定ルールの見直しに向けての備え
このようにマンションの財産評価の算定ルールが大きく変化することで相続税の負担増加が想定されます。マンションを保有されている方は、新しい算定ルールでの相続税評価額がいくらになるのかを一度試算してみることをおすすめします。その上で、相続税が発生する可能性があれば、どのような対策を行うことがご自身にとって有効なのかを考えてみる必要があると思います。相続が発生する前にマンションを売却することも1つの手法でしょう。一方で今までのような相続税軽減効果は期待できなくなりますが、現預金で保有しているよりも相続財産としての評価は低いためそのまま保有することも考えられます。また、不動産とは別に預貯金や有価証券などを相続人に生前贈与したり、生命保険を活用して相続財産全体を減らすことも有効な対策だと考えられます。
この機会にご家族で話し合い、必要であれば専門家に相談をする等して適切な相続対策について検討してみてはいかがでしょうか。
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