FPの相続コラム「子々孫々へ遺す想い」【第71回】

【第71回】最近の相続税に関するデータとその対策!〜大切なご資産とご家族を守るために知っておきたいポイント〜

2024年2月28日

FPの相続コラム「子々孫々へ遺す想い」では、相続に関連したお役立ち情報から最新の話題までをお伝えいたします。第71回目のコラムは、 2023年12月に国税庁から公表された相続税に関する資料から、最近の税務調査の状況についてご紹介いたします。

はじめに

子々孫々挿絵

新型コロナウイルスの感染症法上の分類が5類に移行し、日常生活においてようやく普段の景色が戻りつつありますが、一方で税務職員による税務調査も以前のような実地調査が増加しつつあるようです。
そこで今回は、国税庁が2023年12月に公表した「2022(令和4)年分相続税の申告事績の概要」 (以下、「相続税の申告事績の概要」)及び「2022(令和4)事務年度における相続税の調査等の状況」(以下、「相続税の調査等の状況」)をもとに、最近の相続税に関するデータと、相続税に関する税務調査の状況についてご紹介します。また、税務調査に備えるポイントもご紹介します。大切なご資産とご家族を守るために、ご参考にしてください。

相続税の申告件数・納税金額が増加!

相続税の申告件数と納税金額は、2015年の相続税法の改正以降、増加しています。「相続税の申告事績の概要」によれば、2022年における被相続人数(死亡者数)は前年比109.0%の1,569,050人、相続税の申告書の提出に係る被相続人数は前年比112.4%の150,858人となり、課税割合(死亡者数に対する相続税申告割合)も前年比0.3ポイント増の9.6%(2014年の4.4%に対し2倍以上の増加)となりました。
課税価格の総額は前年比111.3%の20兆6,840億円、申告税額の総額は前年比114.6%の2兆7,989億円となり、現在では国の税収の4.3%を占めるまでになっています。このような背景もあり、コロナ禍では減少していた相続税の税務調査が増加しているようです。

相続税の税務調査が増加!「簡易な接触」という手法も急増中!

相続税の実地調査は、申告額が過少であると想定される事案や、申告義務があるにもかかわらず無申告であると想定される事案に対して行われます。
「相続税の調査等の状況」によれば相続税の実地調査件数は8,196件と前年比129.7%に増加し、追徴税額(本税+加算税)も669億円と前年比119.5%の増加となっています。実地調査1件あたりの申告漏れは課税価格3,209万円であり、追徴税額は816万円となりました。また、コロナ禍においては「簡易な接触」と呼ばれる調査手法も急増しています。「お尋ね文書」(「資産の買入価格についてのお尋ね」や「申告書についてのお尋ね」など)や電話による連絡又は来署依頼による面接などの調査件数は15,004件あり、その結果、3,685件/686億円の申告漏れが指摘されました。

相続税の税務調査に備えるポイント

「相続税の調査等の状況」によると、現金・預貯金等が相続税の申告漏れの中で最も大きな比率(31.5%)を占めていることが分かりました。
この申告漏れの原因は、相続開始前後に引き出した現金の申告の失念や、タンス預金などが挙げられます。葬儀費用は、相続人が負担した費用を「葬式費用」として相続財産から控除することができるので、使用した金額が分かるよう領収書などを整理し、相続開始前に引き出した金額に残りが生じた場合には手許現金として申告することを忘れないようにしてください。
また、Web口座やネット銀行の普及も申告漏れの要因となっています。ネット上での取引は記録が残りにくく、見落としが生じる可能性があるためです。
さらに、「名義預金」が問題となるケースも多く生じています。贈与のやり方を誤ると名義預金として計上しなければならなくなります。贈与を行う際には、あげます・もらいますという合意に加え、もらった側が自由に使えるお金になっている必要があります。贈与契約書を作成しておくこともおすすめです。また、相続税の申告には相続税に強い税理士に相談することも重要です。税理士のアドバイスを受けながら、誠実に対応することが最も大事なポイントといえるでしょう。

最後に

最近の相続税に関するデータとその対策についてご紹介しました。相続税の申告件数や納税金額は今後も増加することが予想されますから、国税庁はこれからも税務調査には熱心であろうと思われます。ですから、あまりに露骨な相続対策を避け、預金通帳の整理やチェックを行い、相続が発生した際にもれなく申告が行えるようにすることが重要です。
相続は必ずやってくるものです。大切な財産を守るため、そしてご家族を守るためにも、この機会に相続についての対策を始めてみてはいかがでしょうか。SMBC日興証券の各支店には上級相続診断士という資格を保有する専門家が在籍していますので、ぜひお気軽にご相談ください。

  • 参考文献:国税庁の「令和4年分相続税の申告事績の概要」及び「令和4年度における相続税の調査等の状況」

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