「建玉」の意味と、信用取引に必要な考え方
信用取引の「建玉(たてぎょく)」とは、約定後に反対売買や現引き・現渡しされず残っている未決済契約の総数のことです。
証券会社から信用を供与されて、お金を借りて買い建てたり、株を借りて売り建てたりする取引が「信用取引」になります。そのため、買いで借りたお金や売りで借りた株は、期限内に返済しなければなりません。返済されるまでの間、お金を借りて買い建てた株を「買い建玉(かいたてぎょく)」、株を借りて売り建てている株を「売り建玉(うりたてぎょく)」といいます。
建玉の意味
「玉(ぎょく)」とは、決済していない信用取引の建玉の略で、英語では「ポジション」といいます。信用取引をオンライントレードではじめた個人投資家の方々には、玉よりも英語のポジションが馴染んでいるでしょう。
買い建玉は、買いポジション(買いポジ)またはロング・ポジションと呼ばれています。ロング(long)には強気の意味があります。一方、売り建玉には弱気を意味するショート(short)が使われ、売りポジション(売りポジ)またはショート・ポジションと言われています。
なお、ロング、ショートを問わず、ポジションを決済することを「ポジションを外す」または「ポジションを解消する」と言います。
建玉の残高から何がわかるのか
信用取引を利用して建てた買い建玉や売り建玉は、6ヶ月以内(制度信用の場合)に反対売買をして決済するルールとなっています。信用買い残の増加は、期限内に反対売買の売り決済をしなければならないため、需給の悪化や将来の売り圧力として働くことになります。
しかし、考えておかなければならないことが2つあります。1つは、信用買いの増加は、人気のバロメーターだということ。もう1つは、信用買い残が高水準であったとしても、売り返済の期限を迎えるまで、一切返済がなされてないことは、有り得ないということです。
例えば、株価が500円から600円まで上昇する過程で、信用買い残が増加したとします。この場合、まず500円で信用買いした投資家が550円で売り返済し、次に540円で買い直して580円で売り返済し、さらに560円で買い直して600円で売るというように、信用買いの回転売買が効いていると考える方が合理的です。
需給の悪化や将来の売り圧力として懸念されるのは、株価が下がりながら、信用買い残が高水準に積み上がり、誰も儲かってないケースです。このような場合でも、信用買い残が増加してから3ヶ月を目安に逃げ場を作るかのような動きが見られたり、信用取引の決済期日が接近したりすると、期日売りが出る一方で、値運びが軽くなる期日明け後を見据えて、先回りの買いが入ってくることもあります。
信用売り残は、業績の悪化や不祥事、成長神話にかげりが出ることなどにより、割高に買われていた株価が水準訂正されるケースなどで増加します。さらなる株価下落を期待して信用売り残が急増することも珍しくありませんが、期日までに買い戻ししなければなりません。
信用売り残の増加は、将来の買い戻し需要となり、株価は上昇すると考えることはできます。
しかし、建玉の決済方法には、反対売買だけでなく、将来の買いや売り需要にはならない現引き・現渡し(建玉の返済方法で詳しく解説します)も含まれていますから、注意が必要になってきます。
建玉の返済期日
制度信用取引の建玉の決済は、原則として約定日から6ヶ月目の対応する日と決められています。信用取引の期日が、株式市場が休場する土日・祝日の場合は、休日の前営業日が期日となります。ネットで信用取引をする場合、一般的には定められた決済期日の前営業日までに、反対売買または現引き(げんびき)や現渡し(げんわたし)による決済をしなければなりません。
期日の前営業日に、ストップ安比例配分orストップ高比例配分によって、返済できなかった場合は、期日当日の寄り付きで強制的に反対売買が行われるか、現引き・現渡しによる決済が行われます。決済にかかる諸費用については、信用取引をしている投資家が負担します。
信用買いもしくは信用売りの建玉に、上場廃止・株式併合・合併・株式交換・株式移転などがあった場合は、信用を供与している証券会社が定める期日までに返済することになります。
制度信用取引の返済期限が6ヶ月なのに対し、長期間で取引できる一般信用取引は、返済期限を証券会社が顧客との合意に基づき、自由に決められるものを指します。証券会社によって設定した決済期日の前日までに決済しなければなりません。なお、日興イージートレード信用取引の場合は3年としています(SMBC日興証券では一般信用取引はダイレクトコースのみご利用いただけます)。
建玉の返済方法
信用取引の決済には、反対売買以外に現物株を介した現引きと現渡しという手段があります。信用買いの場合は「売り返済」または「現引き」による決済、空売り(信用売り)の場合は「買い返済」または「現渡し」による決済をしなければなりません。
現引き(品受け)とは
現引きとは、買い建玉の約定代金を支払うことで、現物株として保有する決済方法です。買い建玉を現引きすると、現物株として中長期で保有することができます。短期上昇を見込んだ買い建玉の株価が上昇し、中長期的の上昇トレンドが見込める場合には有効となりますが、評価損が発生している買い建玉の現引きは、資金効率が落ちてしまいます。
現渡し(品渡し)とは
信用取引の売り建玉の決済には、反対売買の買い戻しによって返済するか、保有する現物株を渡して、借りている株を返却する現渡しがあります。現渡しが主に利用されるのは、保有している株式の下落リスクを回避する「つなぎ売り」といわれるケースです。
まとめ
信用取引の買い建玉の未決済を信用買い残、売り建玉の未決済を信用売り残といい、これらをまとめて、信用取引の建玉と呼んでいます。信用取引の建玉は、最終期限までに反対売買によって決済する契約になっているので、買いの建玉が多ければ、将来的に売り圧力となり、売りの建玉が多ければ、将来的な買い需要となります。
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