FPの相続コラム「子々孫々へ遺す想い」【第15回】

【第15回】相続財産の中に含み益がある上場株式!誰が相続したら得!?

2015年6月25日

FPの相続コラム「子々孫々へ遺す想い」では、毎月1回、相続に関連したお役立ち情報から最新の話題までをお伝えしております。第15回目のコラムは、上場株式の相続についてのお話です。

相続で取得した上場株式の買値はいくら?

通常、儲けが出ている上場株式を売却すると、買値と売却価格の差額に約20%の譲渡益税が課されます。相続で上場株式を取得した場合も儲けが出ていれば同じように譲渡益税が課されることになりますが、その買値は故人が亡くなった日の価格や故人の株式口座から相続人の株式口座に移管された日の価格ではなく、故人が生前中に買った時の価格を引き継ぐことになります。つまり、故人が生前中700万円で買ったものであれば、相続した時の価格が1,000万円で、その後1,000万円で売却したからといって儲けが出ていないとは見てくれません。300万円(1,000万円-700万円)の儲けが出ているとみなされ、約60万円(300万円×20%)の譲渡益税が課されることになります。

相続株式の売却に伴う譲渡益税が軽減される取得費加算の特例

相続で取得した上場株式や投資信託、不動産等を、相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに売却した場合は、取得費に相続税額を加算することができます。これを「取得費加算の特例」といいます。例えば、相続した上場株式5,000万円に対する相続税額が1,000万円だったとします。被相続人が生前中この上場株式を3,500万円で取得したものであれば、相続人は3,500万円の取得費(買値)を引き継ぐことになりますが、この上場株式に対する相続税額1,000万円を取得費3,500万円に加算することができるということです。つまり、この相続株式を5,000万円で売却した場合、取得費4,500万円(3,500万円+相続税額1,000万円)との差額500万円が儲けとなって、約100万円(500万円×20%)が譲渡益税として課されることになります。この特例の適用にあたっては、①相続や遺贈により財産を取得した人であること、②その財産を取得した人に相続税が課税されていること、③相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに売却していることが要件となっています。

含み益がある上場株式は誰が相続したら得か

被相続人からみて相続人が配偶者と子、相続財産は基礎控除額を超える場合、配偶者と子が法定相続分通り(配偶者1/2、子1/2)に財産を相続した場合、配偶者には軽減特例が適用されるため相続税が課税されません。この特例は「配偶者の税額軽減特例」といって配偶者の相続する財産が、法定相続分または1億6,000万円のいずれか高い金額までは、相続税は課税されない制度です。この特例があるため配偶者にはほとんど相続税が課税されない仕組みになっています。一方、子はこのような特例がありません。そのため被相続人に基礎控除を超える財産がある場合、子には相続税が課税されることになります。そこで相続後に売却を予定している含み益のある上場株式を誰が相続したら「得」かということですが、相続税が課税されない配偶者については取得費加算の特例は適用されないので当該含み益のある上場株式を相続するのは得策ではありません。相続税が課税される子が相続した場合は、取得費加算の特例が適用されるため、譲渡益税は軽減されることになります。つまり、含み益のある上場株式を相続後に売却する場合、相続税が課税される子が相続した方が「得」だということです。なお、含み損のある上場株式の相続は、相続人自身が運用している上場株式等に含み益がある場合、その売却益と相続株式の譲渡損を通算することで譲渡益課税の軽減を図ることもできます。

上場株式や投資信託、不動産等のように含み損益があるものは、誰が相続するかによって譲渡益税の負担額が変ってきます。今回のお話は生前中に対策できるものではありませんが、先々相続により財産をもらう立場になった時のご参考にしていただければと思います。

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