FPの相続コラム「子々孫々へ遺す想い」【第14回】
【第14回】遺言書を書いたこと、忘れていませんか
2015年5月21日
FPの相続コラム「子々孫々へ遺す想い」では、毎月1回、相続に関連したお役立ち情報から最新の話題までをお伝えしております。第14回目のコラムは、遺言書の見直しについてのお話です。
遺言書を書いてからも環境は変わります
相続対策として、遺言書は有効です。遺言書がのこされていることで、相続発生時にはご自身の財産をどのように分けてほしいかという意思をのこすことができますし、相続人の方は名義変更や登記などの相続手続きの負担を軽減できます。付言を活用すれば、口頭では伝えられなかったメッセージも伝えられます。しかし、もしその遺言書が何年も、あるいは何十年も前に作られたものだとしたら、かつて遺言書を作成した時とは環境が変わってしまい、その遺言書ではご自身の意思を反映できなくなっているかもしれません。
作成から時間の経過した遺言書によってもたらされる問題
遺言書に有効期限はありません。新しく別の遺言書を作成していたり、遺言の撤回をしていなければ、何年経過していようともその遺言書は有効です。ただ、有効期限がないからといって、一度遺言書を書いてしまえばその後は放っておいても問題ないというわけではありません。何年も前に書かれた遺言書をそのままにしておくと、相続が発生した時、「遺言書に書いた財産はもう残っていない」「最近取得した財産について何も書かれていない」ということが起こってしまいます。あるいは、付言で伝えたい言葉も変わっているかもしれません。
一つ、例を挙げてみます。「A銀行の預金1,000万円を長男に相続させる」という遺言書があるものの、数年前にその1,000万円で土地を購入したためA銀行には1円も残っておらず、さらに購入した土地については遺言書に記載されていない、というケースを考えてみましょう。この場合、「遺言に書かれていない土地があるけど、原資はA銀行の預金だから長男が相続するんだよね」とはなりません。長男が受け取るはずだった「A銀行の預金」は存在しないため受け取ることはできず、土地についても相続人全員で協議して相続する人を決めます。長男にのこすつもりで購入された土地だったとしても、遺言書にその記載がない以上、相続人全員が協議し、同意しなければ長男は土地を受け取ることはできません。
想いをのこす遺言書にするために
遺言書を作成してからも財産額は増減します。財産構成も変わります。先ほどの例でいえば、A銀行の預金で新しい土地を購入することもあるでしょう。持っている財産は大きく変わったのに遺言書はどこかに眠らせたまま放置してしまうと、当初思い描いていたご自身の意思を反映させることができなくなってしまうのです。「作成したらハイおしまい」では、想いをのこすには十分ではありません。
毎日の生活や時の経過で忘れてしまうこともあるかもしれませんが、ご自身の「想いをのこした遺言書」を維持するためにも、作成するだけで満足するのではなく、定期的な内容の見直しもご検討ください。
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